今、「留学」の動きから目が離せない! 【ニッポンの留学ウォッチング】

ますます加速するニッポンのグローバル化。それに呼応するように、留学の現状も大きく動きつつある。内と外、双方の観点から、日本の留学を取り巻く環境にアプローチ、様々な視点から、ニッポンの留学の現状をウォッチしてみたい。

【Vol.2】IIEとは、留学生の動向調査でも知られるOpendoorsなどを発行する米国国際教育研究所。プレジデントのDr.Allan E.Goodman氏を、留学ジャーナル編集長が単独インタビュー。

Institute of International Education(IIE=米国国際教育研究所)
プレジデント&チーフ エグゼクティブ オフィサー、Dr.Allan E.Goodman氏

IIE(本部ニューヨーク)は、Opendoorsで知られるアメリカの留学生の調査分析、フルブライト奨学金やギルマン奨学金など公的奨学金の運営、途上国のリーダーなど開発支援プログラムの実施等を行う。世界の主要な大学など約1000の機関メンバー、5000人の個人会員をもつ会員機関であり、大学間の情報交換やネットワーキングの機会も提供している。
グッドマン氏は、このIIEのプレジデントを務めるほか、教育の世界イノベーションサミットの設立メンバーをはじめ多くの国際的組織の代表やメンバーであり、また国際的ハーバード、プリンストン、イエール大学が発行する国際関係の本の著者でもある。


プログラムの仕組み

留学ジャーナル(以下留) さて、さっそくですが、Open Doorsから毎年留学生の数値を発表されていますが、アメリカ側から見た留学生の大きなトレンドというのを教えていただけますか。最新の調査では、現在一位は中国、次がインドで、その母数は10万人以上と大きなものですが、数は少なくても最近増加傾向にある注目していらっしゃる国・目だった傾向があれば教えてください。

Goodman氏(以下G) まず、全体的なところからお話ししますと、インドや中国など非常に人口が多くて、ミドルクラスの層が非常に大きい国が、留学生の数を伸ばしていると思います。そのひとつの理由としては、自国内に高等教育機関を十分な早さで作れないとか、特に教員養成が追いつかず、そのために留学生が増えている要素もあります。
第2に、アメリカは、留学生の出身国がどこであれ、歓迎するという姿勢をとらせていただいています。中国やインドだけでなく、イランやキューバ、ベネズエラからもたくさんの留学生を迎え入れています。学生同士の交流というのはアップダウンがありますし、2国間関係が良好な状態で留学が行われる場合もあれば、その関係が緊迫した関係にあってもなお留学しにきてくださっている場合もありますが、アメリカの留学生の数が増えているひとつの理由は、そういったアップダウンに関わらず、受け入れる体制がととのっているということもひとつの理由であると思います。
次に収容能力という点からもお話をしたいと思います。世界的に見ますと、高等教育機関の数は1万5000にものぼります。その1万5000の高等教育機関のうち、約4000がアメリカ国内にあります。アメリカ全体の学生数に占める留学生の割合は、3%です。ということは、あと100万人留学生が増えたからといって、アメリカ人の母国の入学枠を損なうことなく、余裕で増やせるという部分があると思います。ですのでアメリカの留学生の数が増えているもうひとつの理由としては、単に現在の留学生の数が増加していることだけでなく、これから留学生が増減する余地が多大に残されているということだと思います。

アメリカに留学生が増えている理由

留 キャパシティが大きいということは素晴らしいですね。アメリカの留学生の総数は増えている理由をさらに追求するとしたら、たとえば奨学金や就職という意味ではいかがでしょうか。

G 留学生が増えている原因の最大のトレンドとしては、各国政府の指導者たちが高等教育において海外留学経験をプログラムの一部とすべきだと、声をあげ始めたことが非常に大きな理由ではないかと思いますね。中国の国家主席にしても、日本の首相でも、ブラジルの大統領、ロシアの首相及び大統領、フランス、ドイツの国家リーダーなどすべて留学が高等教育の重要な一部であるといい始めています。これが非常に重要なダイナミズムとして働いて、現在の増加につながっているのだと考えます。 アメリカにおいても同様のことだと思います。ここ半年だけを見ても、アメリカの大統領のみならず、バイデン副大統領、クリントン国務長官、それだけでなく国土安全保障長官とかその他著名な委員などが口々に、この海外留学の重要性について語っています。かつてこういった留学経験の重要性というのは、ときどき政府の役人のひとりか二人がそれに対して言及するというのがせいぜいでしたが、それが大きく様変わりしているようです。

留 ひるがえって日本の状態ですが、あまり喜ばしい数字ではなく、アメリカに留学している日本人の数は対前年マイナス14.3%と激しく減少しています。企業による新卒の就職システムや家計の状態の悪化など、原因は複数あると推測されています。しかし昨年頃から、政府や地方自治体も、グローバル30などの施策や奨学金の拠出を積極的に開始しまし た。また政府の動きとは別に、最近ひとつの大きなニュースがありまして、東大をはじめとしたいくつかの大学が9月入学というシステムを検討しているというニュースがお耳に入っていると思います。これについてはいかがでしょう。留学を促進する要因になると思われますか。

G あの東京大学の決断というのは、非常に大胆な重要なものであると思いますし、必ずポジティブな結果があるのではないかと見込んでいます。ということは今回そういった動きを東京大学がとることによって、日本の高等教育機関がアメリカ、カナダのみならず、ヨーロッパの高等教育機関ともタイムラインの足並みを揃えることになるからです。ですので、これについては、留学についても必ずや良い影響がでてくるのではないかと期待しています。

東日本大震災時、アメリカの留学生への支援

留 実現するといいですね。少し話題を変えていいでしょうか。東日本大震災のときに、留学生にも大きな影響がでました。アメリカ側では留学生を救うために、いくつかの方策を講じられましたね。その後の留学生たちの動きのフィードバックや動きの変化はありましたか。

G まず申し上げたいのは、あの3月11日の大震災というのは、世界に対し日本が社会として震災に対応するすばらしい姿を見せてくださった、表現は少しおかしいかもしれませんが、感銘を受けた災害でありました。そしてまた日本が世界からの救いの手に対し、自分たちの開襟を開いてくれたということに対しても、私たちは非常に感動しました。つまりあの大震災というのは、日本の震災ではなくて、世界の出来事だったと我々は考えています。
私たちIIEが行っている仕事のひとつは、アメリカの大学に留学している各国の留学生の数、たとえばアメリカから留学している人の数を数字で追跡することです。ですのであの東日本大震災の時に、私たちは何人の日本人がアメリカに留学しているのか、さらには、その被災地域から何人来ているのか、ということに対しての把握をしておりました。ですので、その情報を元に、被災地でご家族を亡くされたり、もしくは失業の事態に遭われた方々が家族にいる留学生の数を追跡することができました。
このような地震や洪水により、国全土もしくは国の一部が自然災害にあったような際に拠出するための、特別な財源を私たちはもっております。

G 震災がおきたときには、福島県からは154名の留学生がアメリカにいらしていました。そのうち、110名から支援の要請をいただき、私たちはそのひとりひとりに対し、支援することができました。彼らがきちんと授業に出て、学位を取得して、帰国できるように、という支援をさせていただいたわけですが、これが可能となったのも、IIEのみならず彼らの留学先の高等教育機関の協力があったからです。支援を要請した110名の学生は、全米30州の高等教育機関にまたがって留学をしていたわけですが、彼らがきちんと学業を終えて、帰国して日本の再建に貢献できるようにと、このような支援をさせていただきました。

留 取材をしていて、海外及び日本の学生たちが寄付をしあった、という話を学生たち自身からも聞きました。国や大学レベルの支援と、学生同士、その2つがあって、彼らが留学生活を続けていけたのだと思います。

G こちらこそ、ありがとうございます。


各種取り組み

留 少し話を戻しまして、高校生にときどきある話をさせてください。アメリカにはハーバードなど世界的なトップレベルの大学がいくつもあります。昔はトップ校は社会人がMBA留学のために行くもの、という考え方が主流でしたが、最近は、中学生や高校生から学部に入りたい、という希望も出始めてきています。しかし彼らが先生などに相談すると、「受かるわけがない」と言われてしまいます。また英語力の弱い日本人としては、英語でまず無理、と思い込みがちです。Goodmanさんでしたら、どのようなアドバイスをなさいますか。

G まず、私たちは21世紀を生きています。そしてこの21世紀にグローバル化のための教育を受けるということは、よその国に住んでほかの人の文化を経験し、自分の国の言葉以外のものをしゃべる経験を積むということだと思います。それはアメリカ人であっても、日本人であっても、ほかの国の人々にとっても共通のことです。もしかしたら大学で留学するのは難しい事情の人だっているでしょうし、人によっては高校時代に留学をするほうがマッチしている場合だってあると思います。また大学の入学、もしくは卒業近辺で留学するのではなく、その大学課程の一部、まんなかあたりで留学するのがピッタリという人がいるかもしれません。いずれにしても、この21世紀の国際化の教育をすすめていくためには、生徒のマインドのみならず、先生方の見方を変えていかなければならないと思っています。21世紀の教育にあって、日本国内だけ、アメリカ国内だけという教育では不十分だからです。

留 おっしゃるとおりだと思います。先生方にも、ぜひ海外の教育にも目を向けていただきたいと思います。ところで、少し前は、留学といえば必ずアメリカ、という時代が日本にもありました。今お話にでた生徒や先生の話にも関連しますが、いざ留学するときどこに行こうか、という選択肢を考えられる時代でもあります。この時代にあって先ほど収容能力、というお話もでましたが、それ以外で改めてアメリカに留学する意義というのを教えていただけますか。

G いろいろな理由がありますが、まず日米というのは戦略的に非常に重要な2国間関係があります。日米両国は歴史を共有してまいりました。したがって次世代の日本のリーダーがこの日英関係に関し理解すること、また日本とアメリカのリーダーが相互の理解を深めていくことが必要であり、非常に重要になります。まずアメリカに留学すべき第一義の理由としては、日本とアメリカの二国間の戦略的な重要性です。
また、アメリカに留学する人の多くは、そのアメリカ高等教育の質の高さ、多様性、そして柔軟性にほれ込んだ上でアメリカに来てくださいます。たとえばひとつの学科に入学したとしてもそれがあまり自分に向いていないということがあれば、ほかの学科に変更することも、もしくはほかの学校に転校することも可能です。
この2つが最大の勧められる理由です。

留 途中から進路を変更できる柔軟性のあるシステムは、特にまだやりたいことや将来やりたことが見つからない若い世代にとって、とても素晴らしいものだと思います。私たちが感じるのは、「留学は難しすぎる」と思わずに、まずは願書を出してほしい、ということですね。日本人は謙虚に考えるクセがあるので、自分が出しても受かるわけはないと思いがちで、願書を出すアクション自体をおこさない人が多いのですが、アメリカは実力よりもまず意思ありき、ということを受け入れてくださる土壌があると思います。

G いみじくも今回のインタビューの冒頭の部分で、中国やインドの留学生の数がどんどん増えている一方で、アメリカに来る日本人留学生が減っているというお話もありましたけれども、おそらくアメリカの高等教育機関も、もっと日本の留学生が来てくれたらいいのに、と思っている部分もあると思います。日本の皆さんは謙虚なのも知っておりますけれども、まずはやってみようと、よし、アメリカの留学のチャンスを探ってみようかな、と思っていただければと思います。


グローバル人材になるために、必要なものとは

留 では、時間もおしていますので、最後の質問を。グッドマンさんご自身も北京の外交学院で講義をされたり、モスクワで米国の学術交流プログラムの作成を支援されたり、と海外でさまざまなことをされたご経験がおありです。今のような時代に、グローバル人材になるために学生がどのようなスキルを見に付けておくべきか、それにはどのようなアクションが必要かということを、個人的な感想も交えて教えていただけますか。

G 学びというのは教室の中だけでなく、外でもあるべきものであって、そのバランスを上手にとっていくことが必要だと思います。まず我々は共存するということを学ばなければならないし、みんなで協力して問題を解決する能力を備えることが必要です。というのも、原子力問題も地震の問題も、日本だけのものではなくて、世界共通の問題でもあるのです。医学の問題も気候変動の問題も同様です。ですので、次世代のリーダーは「協力する」ためのスキルが必要でしょう。これはアメリカ人の学生にも言えることですけれども、他国の文化や言葉に触れて、そしていろいろな問題解決のアプローチをしていくということが非常に必要で、だからこそ、たとえ短い期間であったとしても海外に出て行くのは大切だと思うのです。

留 ありがとうございました。我々も学生の背中を押して海外に出ていく手助けをしたいと思います。数多くの教育機関を有する広大なアメリカに留学する学生の数が増えることを、心から願っております。

(インタビュー:留学ジャーナル編集長 毛利章子)

このページの掲載内容は2012年9月現在の情報です。学校の都合により予告なく変更される場合があります。
また、このページでご紹介している留学制度及び海外の提携大学に関する情報は、各大学へ直接お問い合わせください。


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