キャリアの達人に聞く01
 
キャリアカウンセラー対談 第1回
留学経験をキャリアアップにどうつなげるか?
自社の取締役を務めるとともに、(株)マネジメント・ロジック会長、ほか数社の社外取締役を兼任するかたわら、自律的キャリア開発、組織・人事コンサルティングを行っている小杉俊哉さん。ご自身もマサチューセッツ工科大学(MIT)のビジネススクールへの留学経験で人生を大きく変えたという。そのご経験も踏まえ、留学をキャリアに活かす方法をうかがった。
語学留学はキャリアアップに有利?

佐藤 小杉先生は、人事の経験もお持ちで、これまで実際に多くの留学経験者の面接もご経験されていると思います。一般の留学でもっとも多いのは語学留学ですが、これは本当にキャリアアップに役立つのでしょうか?

小杉

実際、遊びに行っている人も多いので、「遊学」と思われがちですね。ただし、たとえば留学中に、自分が将来働きたいようなショップで働いて、顧客に接した経験をマーケティングレポートとして提出するとか、何か形にすれば有効でしょう。ただ語学を勉強してきました、というだけでは、何かをやりたいという意志が伝わりにくい。

佐藤

『英語を使う仕事』に就きたいという方はとても多いのですが、勉強した語学を使って、何ができるかということが大切なのですね。

小杉

そうですね。例えば、セリエAで活躍する中田英寿選手は、イタリア語で現地の記者達と見事なまでのやりとりをしていますよね。それがまた彼のオーラを倍加させています。英語ですら満足に記者会見できるプロスポーツ選手がほとんどいないことが余計に彼を際立たせている。
では、彼がすばらしいイタリア語の使い手だから賞賛されるのかと言えば、そうではなく、あくまで本業のサッカーの技術、プレーがあるからですよね。これこそが留学、語学力の使い方というものを端的に表していると思います。留学はあくまで手段、語学力はツールでしかない。大切なのは、それを使って何ができるの? ということなのです。

佐藤

語学習得より目的が先。何かをやりたいから、語学を勉強する、ということですね。そう考えると、語学というツールだけにこだわっている人も多いかもしれませんね。まず語学ができないと、と思い込んでしまっている。

小杉

ちなみに、中田選手は高校時代から税理士の勉強をしていたことでも有名です。彼は、将来一流のビジネスマンになるという夢も同時に持っていた。イタリア語と税理士の勉強をするサッカー少年はかなり異様だったでしょう。でも、彼は明確なビジョンを持っていたし、さらに「サッカーは一生の仕事ではない」、と言い切れるところが彼のすごさです。
語学ができれば、単純にキャリアアップになるという考えは捨てる。(佐藤) 社会経験なしの留学は評価されるか

佐藤 大学卒業後すぐ留学する、社会経験がないまま留学するという場合はいかがですか? その成果は語学留学と同様に認められにくいとか、無駄になってしまうのでしょうか?

小杉

留学して、文化や習慣の異なる国で、いままでと違う環境で何かしなきゃいけないということには、当然困難が伴って苦労します(笑)。そういった意味では無駄にはならないですね。

佐藤

文系、理系など分野でも違いがありますか?

小杉

理系の人は、早く大学院で学位を取ったほうが就職後の扱いも違うので、むしろそのまま留学して上の学位を取ることは有効です。難しいのは文系ですね。ビジネススクールに行っても、何か目的を明確に持っていないと、単に日本の大学に行った人と同じ扱いになってしまう。

留学後の受け皿を事前にリサーチ

佐藤 文系にも留学が評価される科目、これから注目のジャンルはありますか?

小杉

医療やホテルのマネジメントなど、ある専門的な分野でビジネスと絡むものというのは有利です。国内では、ホテルの専門学部は限られているし、医療マネジメントの専門学部はないですから。あとはマスコミュニケーション関連のコミュニケーション学科。日本よりもずっと進んでいるから、きちんと勉強してきた人だったら受け皿はあるでしょう。でも、受け皿があるかは行く前に調べたほうがいいですね。

佐藤

どうやって調べればいいのでしょうか?

小杉

簡単ですよ。たとえば、行きたい企業に電話して、こう聞いてみる。
「この会社に入りたいので、○○を勉強しに留学しようと思っていますが、その後で雇っていただける可能性はありますか?」
そんなこと言ってこられて、会ってみていい人材なら、喜んで採用したいと思いますよ。また、それは通常の枠とは違う扱いになるし。こちらが真剣なら、きちんと答えてくれますよ。

佐藤

なるほど。確かにそこまでの熱意が伝われば、採用側の気持ちも動きますね。以前、就職活動の座談会でお会いした大学生は、英文履歴書を片手にシンガポールに行き、3日間で20社の日本企業を片っ端から飛び込み訪問したそうです。もともと受けたい企業はある1社の商社に絞り込んでいたそうなのですが、そこのシンガポール支社へのアプローチも効いたようで、見事希望の商社に入社したようです。
留学ジャーナルに相談にいらっしゃるお客様の中には、「マーケティングをやってみたい」という方も多いのですが、採用状況はいかがですか?

小杉

ホテルで働きたいというなら、たとえばコーネル大学、不動産について学びたいというなら、たとえばニューヨーク大学が強いから、海外に留学する意義があるけれども、単にマーケティングだけっていうのは、やりたいことを証明しにくい。CPA(米国公認会計士)の資格を取ってどうするの? というのと同じ。CPAをやるなら、ふつうは徒弟制で、現地の会社で働きながら取ったりするんです。資格だけあっても英語ができなければ働けない。その学位や資格を取ったらどうなるのか、というのをよく調べないと。
チャンスはとりに行くもの。自分から積極的に行動すればきっとラッキーがつかめます。 専門学校への留学の評価は?

佐藤 海外の専門学校への留学は、就職に有利になるのでしょうか? 書類選考のときの印象でプラスになりますか。それともマイナスになることもあるのでしょうか?

小杉

業界によって違うでしょうね。ホテルとかツーリズムの学校を出て、旅行会社に就職したい、などその業界と関係している分野であれば評価されるでしょう。関係ないと、評価は難しいですね。留学にしても資格にしても、その先、どうしたいために勉強するのか、ということが大切なんですね。でも、「やりたい」と積極的に思ってやったことで、無駄になることはありません。「やらされてる」感があると後悔してしまうけど。
若いうちは、とにかくどんどんチャレンジしたほうがいいですね。チャンスはとりに行くものです。留学は1つのツールにすぎないけれど、1つのチャンスでもある。積極的に何かを取りにいく留学をすれば、それはきっと今後の人生に生きてきますよ。
小杉俊哉
プロフィール
慶応義塾大学大学院助教授、(株)コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長。日本電気(NEC)(株)に入社後、米国マサチューセッツ工科大学スローンスクールに私費留学し、MBAを取得。帰国後マッキンゼー・アンド・カンパニーにて経営コンサルタント、ユニデン(株)や(株)アップルコンピュータの人事総務部長を務めるなど幅広い経験を持つ。まさに留学を活かして世界に羽ばたいた人物。
著書に「29歳はキャリアの転機—留学か、転職か、そろそろ次のことを考えてみようか」(ダイヤモンド社)、「キャリア・コンピタンシー」(日本能率協会マネジメントセンター)、「組織に頼らず生きる」(平凡社新書)、「ラッキーをつかみ取る技術」(光文社新書)など多数。


『ラッキーをつかみ取る技術』
(光文社新書)

留学後、その経験を活かせる場所があるのかどうかは、しっかりリサーチしないと。

留学は1つのツールにすぎないけれど、1つのチャンスでもある。

佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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