キャリアの達人に聞く06
 
キャリアカウンセラー対談 第6回
最先端の技術をアメリカで学ぶ意義
現在、三菱電機(株)で防衛防災システムや宇宙に関わる最先端の研究開発に従事されている古市昌一さん。2回目の対談では最先端の研究室で一緒に学んだクラスメイトのバックグラウンドやその後のキャリア、これから注目される分野などを伺った。
留学仲間はみんな、目的意識が明確だった!

佐藤 30代半ばでイリノイ大学に留学されて、4,096台のスーパーコンピュータを使って高速のプログラムを実行するという研究をされていらっしゃいましたよね。一緒に学んでいたのは、どんな方々だったのでしょうか?

古市

研究室の仲間には、私のようにビジネス経験を何年もしてから留学した人は少なかったです。2、3人いたアメリカ人は会社に入ったあと自費で大学院のマスターを取るというバックグラウンドでしたが、その他の学生の多くはインドやトルコなどからの留学生でした。自国の工科大学を出て、マスターはイリノイ大学でという人。

佐藤

そういう方々と意見交換しながら、力を合わせて研究をされていくわけですね。

古市

留学中に、チームワークの大切さを再認識しましたね。自分の担当がコケると全体もダメになるというようなプロジェクトではなく、各自のミッションについては独立性が高かったのですが、仮説を立てて検証してという作業は、それぞれの技術やモチベーションが集結しないとできませんでしたから。時間を忘れてディスカッションしたことも多かったです。ここでの研究の進め方は、ビジネスの現場でのプロジェクトの進め方と同じなんだなあと、帰国後にわかりました。

佐藤

古市さんは、古市さんと同じようにイリノイ大学で学ばれた日本人とのネットワークを築かれていらっしゃいますよね。

古市

イリノイ大学日本同窓会」という組織があり、私はそこの常任理事と、奨学金制度の運営委員を担当しています。

佐藤

みなさん、留学後にどんなキャリアを積まれていますか?

古市

一緒に授業を受けていた友人は、日本の大企業を退職して私費で大学院に留学し、カナダでソフトウェアの会社を作って社長として頑張っています。もう一人の友人は、日本の大学を卒業した後に「並列処理を究極まで研究したい」とやはり私費で留学。夏休み中は大手半導体メーカーのインターンシップに参加し、卒業後はその企業に就職しました。また、女性の後輩は留学の後に帰国して更に進学した後、今は私のライバル会社で活躍しています(笑)。みんな、とても明確な目的を持っていたなあと思います。
各国の仲間とディスカッションしながら研究に大切なのはチームワークだと再認識しました。 これからの注目は遺伝子情報処理分野

佐藤 最先端の場所で留学したいという人も少なくありませんが、これから注目される分野、発展する分野を教えていただけますか?

古市

一般的に言えば、遺伝子情報処理ですか。不老長寿の遺伝子、エイズウィルスに強い遺伝子など、最近の新しい発見はコンピュータ・シミュレーションの中から出ることが増えていますから。これまでの10年間でコンピュータの性能はかなり良くなってきていますが、これからの10年も加速度的に良くなるでしょう。どんな分野でもコンピュータを使った研究は、意義があると思いますよ。

佐藤

日本ではなく、あえてアメリカで学ぶ意義というのは、どこにあるのでしょう?

古市

アメリカの良さは、すぐに実社会で実用化されるレベルの研究ができることです。学生が開発したソフトウェアが商品化され、全世界レベルで使われて億万長者になる・・・というチャンスが普通に存在するんです。しかも、大学や国の機関がきちんと予算を取ってくれる。「学生が学べる資金力」が日本とアメリカでは全然違いますね。

佐藤

自分の研究がビジネスに直結するなんて、とてもエキサイティングですよね。

古市

まったくその通りです。何のために研究しているのかがすごく明確だから、やる気も出るし頑張れる。日本はそこが難しいんですよね。つまり、学生の研究が大きな事業につながる事例がなかなか出にくい。まあ、僕はミリオネアになることが人生の第一目標ではないんだけれど(笑)、これからは、日本もアメリカのように、真の意味で産学共同になっていけば素晴らしいですね。
自分の研究がビジネスに直結するのはとてもエキサイティングな経験ですね 異文化の中で生活できたのは幸せな体験

佐藤 留学を通じて、技術者としてのご自分に最もプラスになったのはどういう点だとお考えですか?

古市

はっきりとした事実は、自分ではやりたかったのに、日本の会社にいてはできなかったこと、学べなかったことを、留学によって実現できたこと。仕事の延長ではあったけれど、1年半という時間をかけてスーパーコンピュータ上でソフトウェアの研究ができたことです。もうひとつは、異文化の中で、家族で生活できたこと。30を過ぎて、英語だけを使う世界に飛び込み、生活して勉強して…こんな貴重な経験ができたことを本当に幸せに思います。それに、住んでいたイリノイ大学近辺は、とうもろこし畑のど真ん中にあるような田舎で、プール付きのアパートが一般的(笑)。夏はプールでひと泳ぎして涼んでから大学に行くような生活だったんです。イリノイでは普通だけれど、日本だったら絶対体験できなかった。

佐藤

これから社会人留学をする方々に、アドバイスをお願いできますか?

古市

私費で行かれる場合は、私のような企業内留学者が持つ以上に、明確な目的を持つことですね。留学後の自分、つまり「何を学んで、それをどう活かすか」をしっかり考えることがとても大切です。ただ「勉強したい」という気持ちだけでは甘いでしょう。卒業したらどこに就職したいのか、そこは中途採用もしている業界なのか、卒業後のプランはきちんと立てるべきです。特に技術系の場合はね。それがあると逆に「どの大学で何を学ぶか」もハッキリしますから。

佐藤

かなりの覚悟が必要、ということですね?

古市

そうですね。ただ、実際問題として、そこまでハッキリと目的を持つことは難しいでしょうから、方向性を決めて、留学先でサマー・ジョブなどを体験しながら修正していくというのもありだとは思います。ともかく「自分なりのゴール」をイメージすることが、社会人留学の場合、とても重要なことだと思います。

佐藤

古市さんは、そうされてきた。その実体験があるからアドバイスにも重みがあります。

古市

私は企業派遣留学だったわけで、自分から志願したとはいえ、「学んだことを帰国後、企業の研究に還元する」というハッキリしたものがありました。繰り返しになりますけれど、自分は何を学び、それを今後にどう活かすのかを、なるべく早く具体化することですね。特に技術系の場合は「この分野ならこの大学」という選び方をしてほしい。偏差値や規模ではなくね。

佐藤

貴重なアドバイスありがとうございました。


社会人留学では、「自分なりのゴール」を早い時期に明確にすることがとても大切ですね。
古市昌一
プロフィール
ふるいちまさかず/1982年広島大学総合科学部卒業。同年三菱電機・情報電子研究所に入社。人工知能の応用に関する研究に従事する。92年から企業派遣留学として、イリノイ大学アーバナシャンペン校コンピュータサイエンス学科で1年半学び、修士課程を終了。帰国後は同社情報技術総合研究所において、並列・分散型シミュレーションシステムの研究開発に従事。また2001年から慶應義塾大学大学院博士課程に在籍し、04年に工学博士を取得した。現在は鎌倉製作所において、モデリング&シミュレーションの事業化を推進中。米国シミュレーション学会・米国航空宇宙学会、情報処理学会など、多数の学会の会員を務める。
イリノイ大学小山八郎記念奨学金留学制度の2006年度運営委員。













留学時代の研究室の仲間達


















今後注目の分野は遺伝子情報処理





佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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