キャリアの達人に聞く07
 
キャリアカウンセラー対談 第7回
変わりゆく時代の中でアイ・カンパニーを育てる方法
企業と個人の双方の成長にモチベーションという切り口でコンサルテーションを行っている(株)リンクアンドモチベーション。代表取締役社長の小笹氏の、熱く、わかりやすいセミナーには定評がある。また自社そのものが『モチベーションカンパニー』のお手本であり、その社員が『アイ・カンパニー(自分という会社の経営者)』という意識を持っていきいきと働く姿は多くのメディアで脚光を浴びている。今月と来月の2回にわたり、多くの企業から求められる人材(=モテる個人)について、また、求められ続けるための『自分創り』の方法について伺った。
企業と個人の関わり方が変わってきた!

佐藤 今回、小笹さんには、ご自身の留学体験ということではなく、現在の採用環境も含めて、どういう人材が求められてくるのかを伺いたいと思っていますが、その前に、御社が何をされている会社か、教えていただけますか?

小笹

そうですね。うちがやっていることを説明すれば、最近の採用・雇用環境の変化もわかると思います。まず、当社は日本で唯一、戦略でもITでもなく、「そこで働く人々のモチベーションをどのように高めて組織の活性化を図っていくか」というテーマに特化した、オンリーワンのコンサルティング会社です。

佐藤

起業に至った経緯をお話いただけますか?

小笹

企業と個人の関係が、ここ10年で変わってきたからなんです。これまで企業は「途中で辞めると損だよ」と年功序列や退職金制度で社員を縛り、社員も「辞めたら転職も難しい」と会社に依存していました。これを僕は「相互拘束型の関係」と呼んでいるんですが、この関係がバブル崩壊・金融危機を経て変わってきたんです。それが「相互選択型の関係」。

佐藤

お互いに選び合うということですか?

小笹

そう。引きがねを引いたのは企業です。「ごめんね、こんな時代だから、みんなを縛って、最後まで雇用を保障するのは無理になっちゃった」と。そして社員を厳しい目で選択し始めた。一方、社員のほうも「だったら僕も、人生を会社に預けるのではなく、自分のキャリア形成の観点から会社を選ぶよ」という意識を持ち始めて、両社の関係が「拘束型」から「選択型」に変わったんです。そして、ここからが本題ですが、選択型になると、二極化が起きるんです。企業で言えば、たくさんの個人から選ばれる企業、つまりモテる企業とそうでない企業。同じく、個人も、たくさんのオファーをもらえるモテる個人とそうでない個人の二極化が起きる。そこで僕は、企業に対しても個人に対しても「モチベーションが高くなるような、モテる企業・個人にしようよ」と働きかけるビジネスが絶対に必要だと思ったんです。「相互選択型の時代では、モチベーションこそが大切になる」という確信がありました。大企業を辞めるという不安を超えて、「世の中に伝えたい」という想いが押えられずに溢れてきました。だから会社を立ち上げたし、今、当社の数10億円という売り上げは、「そうだよね、やっぱり小笹の言う通りだったよね」という共感の結果だと思っています。
今の時代は「モテる企業・モテる個人」と「人気のない企業・個人」の二極化が起きているんです。 「自分」という会社の経営者であるべき

佐藤 二極化の中で「モテる個人」になるためには、どんな意識が必要なのでしょうか。

小笹

個人に対しては「アイ・カンパニー」という考え方をアドバイスしたいですね。自分自身をひとつの会社と考える。つまり佐藤さんなら佐藤株式会社、鈴木さんなら鈴木カンパニーの経営者だという意識を持つということです。これからの時代は、自分の会社(存在)を、エクセレント・カンパニーに育てていく経営マインドが必要なんです。

佐藤

アイ・カンパニーをエクセレントにしていく秘訣はありますか?

小笹

ポイントは「自覚化・言語化」だと思います。例えば留学した、○○で優勝した、勉強をして資格を取ったなど、何でもいいのですが、その事実ではなく、そこで何を考え、何を得たか。つまり「アイ・カンパニー」にどんな付加価値・実績がついたのかを自己解釈をして、きちんと相手に伝えることが大切だと思うんです。逆を言えば、体験したことを「言語」にできないってことは、自覚もできてないってこと。言語化することで、自分の体験が明日の成長に向けてのエンジンになるし、「アイ・カンパニー」の魅力になっていくんです。

佐藤

自らの経験を再認識し、言葉で伝えられるかどうかはすごく大切ですね。漠然と伝えるのではなく、情熱を持った上で、自分を冷静に第三者に伝えられる人は、仕事もできるような気がします。

小笹

その通りですね。面接の場で自分を語るでしょう?そこで起きていることそのものが入社後に起こることなんです。面接で自分の体験を血肉化し、面接担当者にしっかり伝えてくれる姿をみると、「コイツは、絶対、どんな仕事をやらせてもうまくやるだろう」って思いますから。
自らの体験を「自覚化・言語化」することはすごく大切ですね。 いつの時代もチャレンジ精神は求められる

佐藤 新卒や中途、留学経験者も含めて、最近の採用動向で何か傾向はありますか?

小笹

採用マーケットは間違いなく大きくなっています。だからといって慢心してもらいたくないのですが(笑)、かつての氷河期と比べるとかなりいい環境です。理由は2つ。ひとつは企業の不良債権の処理やリストラが一段落して、守りの経営から攻めの経営に転じ始めたこと。そこで何に投資をするかと言えば、最終的には人材なんです。もうひとつが2007年問題。団塊の世代が定年退職して、人員構成のバランスが崩れる。そこで若年層に対しての採用意欲が盛り上がっているんです。

佐藤

採用環境は明るいということでしょうか?

小笹

たしかに。しかし「量」は増えても、厳しい目で「質」を見極めようという企業側のスタンスは変わっていません。質というのは、つまり自立した気持ちを持った人ということ。ありふれた言葉になりますが、主体性やチャレンジスピリットを持っている人ということです。要するに、ここでも魅力的な「アイ・カンパニー」を作る努力をしてきた人が強いということですね。

佐藤

企業はその「質」をどうやって見抜くのでしょうか。

小笹

僕の場合は、その人が人生のターニングポイントでどういう決断をしてきたか。あるいはどんな葛藤を乗り越えてきたかを、ひとつの判断基準にしますね。その人の質、言葉を変えれば「人間性」を知る手掛かりは、その人自身が一番顕著に表れるであろう節目=ターニングポイントにあると思っています。


採用環境は明るくなってきている。でも人材の「質」の追求は厳しいからアイ・カンパニーをエクセレントにする努力が必要なんです。
小笹芳央
プロフィール
おざさ よしひさ/1961年大阪府出身。早稲田大学政治経済学部を卒業後、株式会社リクルートに入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員を経て、株式会社リンクアンドモチベーションを設立。日本で唯一のモチベーションを切り口とした組織・人事コンサルティング企業として成長。今年の学生アンケートで「採用活動において魅力を感じた企業」の1位に選ばれた。(*)
主な著書に『モチベーション・ストラテジー』『モチベーションの自己革命』『アイ・カンパニーの時代』『自己発見の瞬間』など。
(*)2005年2月(株)リクルート実施『採用プロセス調査』 大学生の説明会・セミナー段階における満足度




『「アイ・カンパニー」の時代』
中央公論新社




企業と個人の関係が「拘束型」から「選択型」に変わった。相互選択型の時代ではモチベーションこそが大切になる




人生のターニングポイントでどういう決断をしてどんな葛藤を乗り越えてきたのか、面接の際に人間性を知るひとつの判断基準にします




佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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