キャリアの達人に聞く09
 
キャリアカウンセラー対談 第9回
過去の事実と未来を結んで自分なりのキャリアを見つける方法
外資系企業への就職を希望する学生は多い。なかでも日本アイ・ビー・エムは『働いてみたい人気企業ランキング』などで常に上位に入る人気企業だ。今回は前職では日本アイ・ビー・エム人事部門の採用を担当し、現在は首都大学東京で学修カウセラーとして活躍中の小宮さんを直撃。キャリアデザインのプロフェッショナルである小宮さんに、まずは日本アイ・ビー・エム時代の仕事観とご自身のキャリア形成について語っていただいた。
壁に当たったときが 自己分析のとき

佐藤 小宮さんは、大学卒業後に新卒で日本アイ・ビー・エムに入社されましたが、最初から採用を担当されていたんですか?

小宮

最初の3年間は人事部にいて、4年目からSEになったんです。それも自分から志願して。

佐藤

文系ご出身なのに? やはり新しいことをやってみたいと思われたんですか?

小宮

そんなにカッコいいものではなかったんです。人事部時代に、それなりの仕事はやってきたんだけれど、特に高い評価も受けない。閉塞感をすごく感じていたんです。で、当時社内には「文系でもゼロからの教育でSEになれる」という流れがあったので、新しい世界でやってみようと思ったんです。でも、やっぱりそこでも僕はフツーの社員のままだった(笑)。

佐藤

フツーじゃダメですか(笑)。

小宮

人事からSEって、事業所も仕事内容も違うから、転職みたいなものなんです。しかも、そこには僕の同期がたくさんいて、彼らは3年前からSEをやっているから、僕が1.5倍頑張ってもキャッチアップできない。「小宮は言われたことはちゃんとやる」という評価はあった。でも、自己評価した時、会社に対して新しいイノベーションを与えられるような働きをしてないわけですよ。その頃はよく、会社の近くを流れている隅田川のほとりで、川の流れや、ゆっくり走る船をボーッと見ていましたね。僕の周りにいる「デキる社員・イケてる社員」とは程遠かった。

佐藤

でも、その後、人事部に再び戻られてご活躍された。私の知人のキャリアカウンセラーで、外資系の人事担当者も「小宮さんは新卒採用業界では有名人だった」と言っていましたよ。そこの大きな変化には、何かきっかけがあったんでしょうか?

小宮

SEから人事部に戻った99年が僕の大きな転機ですね。あのね、壁にブチ当たっている時って、人間、自然と自己分析をしているものなんですよ。実はその頃、転職も頭にあったから、自ずと「自分は何がしたいんだろう 何ができるんだろう」と考えざるを得なかった。で、当たり前のことがわかったんです。僕はずっと、同期に3年の遅れがあると悩んでいた。でも僕はその3年間に人事のスキルを身につけていたんだと。その瞬間、考え方が変わったんです。すぐに上司に「人事システムのプロジェクトに自分を入れてくれ」って直談判しました。

佐藤

自分の得意なフィールドを見つけたわけですね。

小宮

そうです。それまで僕は、「人事」と「SE」は別々のキャリアだと考えていた。でも違うんです。つながっているんだと。「自分のできることを、きちんとやればいいんだ」。こんな当たり前のことに気付くまで、6年もかかってしまった。だから僕は、若い人に早くこういう気付きに出会ってもらいたいんです。
一見、別々に見えるキャリアもよく考えるとつながっている……こういう気付きに早く出会ってもらいたいんです。 ダメダメ社員からウキウキ社員に

佐藤 キャリアはつながるというお話ですが、人事に戻られたときに、SE時代のキャリアは活かせたのですか?

小宮

はい。人事部から「戻って来い」と言われたときに、まず「SEで学んだことが活かせる! 人事に風を吹かそう!」と思いましたから。

佐藤

どんな点ででしょう?

小宮

SE時代はプロジェクトマネージャーになることを目標にマネジメントを勉強していたんです。で、人事部に戻ったら、仕事をプロジェクトとして提議して、効率的にマネジメントするというスキルを持っている人がいなかった。SEの視点から人事・採用の仕事を見ると、やれることがいっぱい見えてきたんですよ。「自分を活かせる!」と、ウキウキしてきたのを覚えています。

佐藤

見方や考え方を変えるとプラスになる、つまり発想の転換が、停滞からの脱出や成功につながると。

小宮

まさにそうです。自分の経験を「財産」として解釈できるかどうか。僕がダメダメ社員からウキウキ社員に変われたのは、別にすごい努力をしたからじゃない。ただ自分を知っただけなんです。「今までのどんな経験も財産なんだ」って。要するに、Aというフィールドで経験したことは別のBというフィールドでも活かせるわけで、「司法試験の勉強をしていたからSEはちょっと……」ではないんです。その場合も「論理的に物事を考える」という視点で見ると、実は同じフレームなんですよ。

佐藤

ちなみに、日本アイ・ビー・エム社は外資系ですが、どの部署でも英語力は必要なのでしょうか?

小宮

学生さんからも同じ質問をよくされます。僕の場合は、最初の人事部のときはほとんど使わなかった。でもSE時代は、技術を習得する高度なマニュアルや研修はすべて英語でした。留学経験もないし、かなり四苦八苦しましたね。でもそれが、人事部に戻った後、アジア各国のIBMの採用担当者とミーティングをする際に役立った。まさに「経験が財産」というわけです。
「すべての経験が財産になる」という発想の転換が、成功につながるんですね。 持っている「事実」と目の前の「課題」を客観的に捉えるべき

佐藤 小宮さんのように「気付き」に出会うためにできること、心がけておくことはあるんでしょうか?

小宮

目の前にある課題と自分が持っている事実を、いかに客観的に捉えられるか、でしょう。僕は船をボケーッと見ている時にも心の中で「どうにかしなきゃあかん」と思っていたから、自分の持っている事実をポジティブに見直して使うことができた。たぶん、多くの人は使うのを忘れていたり、使うことはできないと勝手に思っていたりしていると思う。だからこそ、まずは「自分の事実=財産を使おう」という意識を持ってほしいと思っています。

佐藤

面接でもそういう部分を見られるのでしょうか?

小宮

そうですね。その人が持っている事実をポジティブに使うことは、そのひとの強みそのものだと思います。もうひとつは、採用の仕事をしていた時は「主観を排除して、いかに正しく採用するか」が大きなテーマなんですけれど、そのために、彼らの事実に含まれる「行動特性」をひとつの軸として見ています。「Aという状況に置かれたときに、どうするか」ということですね。

佐藤

具体的に教えていただけますか?

小宮

例えば「困ったときに、自分で解決策を探す」という行動特性があったとする。その特性は、ビジネスのシーンでも再現されるものなんです。だから、困難度が高いほうが評価されやすい。「100円足らなくて隣の席の見知らぬ人から借りた」よりも、「言葉も通じない外国で道に迷ってしまい、身振り手振りで何人にも道を聞いて、読めない地図を片手に家に辿り着いた」のほうが同じ行動特性でも評価は高いと。もちろん、体験のフィールドに優劣はありません。アルバイトでも、サークルでも、勉強でも留学でもOKです。ただ、「留学」は、そういう体験の宝庫なのではないかと思います。

佐藤

結局、乗り越えた壁が高いほど、社会に出てから目の前にある壁を越える再現性が高い、ということなんですね。


高い困難を乗り越えた経験のある人ほど行動特性が高いと評価します。留学は、そんな経験の宝庫ですね。.
小宮健実
プロフィール
こみや たけみ/1993年早稲田大学社会科学部卒。同年日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。人事、SEを経験後、99年から2004年にかけて新卒採用チームのリーダーを務め、約2000人の採用実績を残す。05年から首都大学東京のチーフ学修学カウンセラーに転身。大学1、2年からのキャリア形成を支援する。またウェブ上では『就活予備校』を展開。キャリアデザインのエキスパートとして、学生向けの自己分析講座や企業の人事担当者向けの採用戦略講座の講師を務めるなど、多方面で活躍中。










小宮さんが担当している『就活予備校』のブログ
現役の学生4人が「予備校生」として参加し、就職活動の現場をレポート。










自分の経験を『財産』として解釈できるか。それは特別な努力をすることではなく、『自分を知る』ということ。










その人が持っている事実をポジティブに使うことは、その人の強みそのもの。










佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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