キャリアの達人に聞く10
 
キャリアカウンセラー対談 第10回
客観的に自分を見つめて自分だけのキャリアを築く方法
日本でも人気の高い外資系企業・日本アイ・ビー・エムの「顔」として有名だった小宮氏。前回は彼自身の仕事観・キャリア形成について伺ったが、今回は外資系企業に求められる人物像や留学経験の活かし方、そして自分の納得のいくキャリア形成につながるヒントなどを教えていただいた。
仕事ができる人のキャパは無尽蔵?

佐藤 前回は「『自分の事実=経験』という財産を、客観的に捉えて、すべてのフィールドに活かすことを考えろ」というアドバイスをいただきましたが、今回は、まず、外資系に求められる人物像をお伺いしたいと思います。小宮さんの周りで、ハイ・パフォーマーだと思われるのは、どんな方でしたか?

小宮

外資系の特徴は、「自分から行動を起こすことが求められる」ということでしょう。例えば、新入社員には一応コピーの使い方も教えます。でも、カルチャーとしては、「必要だったらあなたから聞きに来なさい。なぜなら、あなたのほうにコピー機を使う必要性があるんだから」なんです。

佐藤

自主性と行動力、ですね。多くの留学生は、それを海外で学んでいますね。

小宮

そうかもしれません。もうひとつの特徴が、「できる人に仕事が集まり、彼らにはキャパシティが無尽蔵にある」ということ。別の言葉で言うと、真に仕事ができる人は、すごくサービスレベルが高いんです。

佐藤

サービスレベル、ですか?

小宮

はい。人一倍仕事をしている上に、僕らが質問や相談をすると、惜しみなく答えやアドバイスをくれる。一部には「僕が時間をかけて調べたことを、なんでキミに教えなきゃなんないの?」という人もいます。でも、本当にできる人は違う。こっちが「そんなに惜しみなくサービスしたら、周りにキャッチアップされて、アドバンテージがなくなっちゃうんじゃないか」と心配になるぐらいに、いろんなことを与えてくれるんです。

佐藤

それでも、できる人は先を歩んでいるということですか?

小宮

その通り。不思議といつも最新情報・ノウハウ・スキルを持っているんです。僕が思うに、惜しみなく与えることで信頼を得られ、その人のところに最新・最良の情報が優先的に集まるようになっているのではないかと。僕もそうならないとだめだなぁと思って、今も「聞かれたらすぐに教えよう」と心がけています。実は、留学経験者は、比較的「与える」という行動特性を持ってる人が多いんじゃないかと思いますね。慣れない海外ではいろんな人に助けてもらっているはずで、「自分がしてもらったことは返そう」と感じているのではないでしょうか。
真に仕事ができる人は自分の持っているものを他人に惜しみなく与えるというサービスレベルが高いんです。 英語を学ぶと同時に、日本語も学べ!

佐藤 留学経験者のなかには「語学力」をアピールする人が少なくないのですが、外資系ではどのくらいのレベルが求められるのですか?

小宮

まず、英語はとりあえず必要です。なぜなら、ビジネスの共通言語だから。たとえ能力が高くても、英語力が低いとやりたい仕事をやらせてもらえない可能性がある。学生には、「損をしたくないなら、英語力は磨いておくべき」と言っています。でもね、それ以上にやってもらいたいのは、日本語、つまり国語力を高めることです。

佐藤

そうですね。いくら外資系とはいえ、日本にいる限りは英語と日本語、両方の言語を使うわけですから、国語力は必要だと私も思います。

小宮

僕は以前、僕の後輩に通訳を頼んで、海外の人々と会議をしたことがあったんです。そんなとき、後輩は英語がペラペラだけれど、僕の核心を突く発言を正しく伝えているとは思えないわけです。なぜなら、後輩の業務における日本語の会話レベルが、その域まで達してないから。たしかに後輩は英語が飛び交う会議では必要だった。語学面では貢献もしている。でも、それだけでは会社では評価はされないんです。しかも、仮にその子がその仕事で満足しているなら、残念ながら、その子には期待できないですね。逆に「今の私は通訳しかしていない。早く私自身が発言をしたい」と思えば、かなりの見込みがあるということです。幸いなことに後輩は後者でしたが。

佐藤

留学経験者には、通訳・翻訳をしたいという方も多いのですが、その方たちもやはり、日本語レベルを高めておけと。

小宮

通訳・翻訳では、語学力に合わせて、コンテクストを理解して共有する努力が大切なんですよ。

佐藤

日本語にあえて訳すと、文脈とか、ある事象の背景という意味ですね?

小宮

そうですね。例えば、「今日はそばを食おう」をそのまま訳すのではなく、普段からコンテクストを共有しておくことにより「なぜなら、焼肉よりも身体に優しいから」みたいな言葉に表われないけど共有できる部分まで解釈するというか・・・。コンテクストを共有するには、知識も経験も高い日本語力も必要で、「英語が話せればOK」っていうことではないんですよね。
外資系の仕事でも日本語と英語の両言語を使う以上国語力を高めておくことは大切なんですね。 留学は自己財産を蓄積するチャンス

佐藤 先ほどお話いただいたコンテクストが、他者理解やコミュニケーションの本質を理解するということだとしたら、異文化に身を置いて他者を受け入れるという点で、ここでも留学はその経験の宝庫だと言えそうですね。

小宮

留学中には「アイデンティティの所在確認」のようなことが、必ず起こると思うんです。それって、先程も言った「客観性を身につける」ということにつながるんですよね。要は、「日本人である自分って何だろう?」と考えるときに、いろんな人種とコミュニケーションして、それぞれの立場の日本人観を聞くわけですから。そういう意味で留学は貴重な体験です。自己認識をするという「内」の場面と、異文化に触れて適応していく「外」の場面で、得ることや発見することはすごく多いと思いますね。僕の大学でも「留学をしたい」という学生は多いんです。特に1、2年生に。彼らにはまだ、今まで話したような難しいことは言えませんから、とりあえず、「行ったらいいんじゃない?自己財産を蓄積するチャンスだよ」と応援しています。

佐藤

最後に、留学をキャリアプランにつなげるヒントを教えていただけますか?

小宮

過去と今と未来を線でつなげ、ですね。

佐藤

つまり、小宮さんの言われていた「事実を活かせ」ということですね。

小宮

そうです。「留学」を特別な事実として独立させるのではなく、過去と留学を、さらには留学と次のキャリアを線でつなげる。それが苦手な人は、紙に書くとかブログをつけるとか、人に話してみたりすればいいんです。要するに「自己財産の棚卸し」。そうすると、どうやって線が伸びているかが、少しずつでもわかってくると思いますし、そこから自分らしいキャリア形成も見えてくるんです。僕もそういうひとりですよ。SEで得た事実も人事の経験で得た事実も全部つなげて活かしてきた。そうやって自分のこれまでの事実を棚卸ししながらやってきたら、キャリアに係わる仕事がしたいと言えるようになってきた。そして「そこにはないだろう」と言われるところまで貪欲に情報を求めて動いていたら、大学の人材募集を見つけた。見つけるべくして見つけたと思います。そこに太〜い線が見えましたよ。「これだ!ビンゴ!」って(笑)。

佐藤

行動を起こせば事実が蓄積され、「線でつなぐ」という意識を持っていれば、どんな経験も決してムダにはならないということですね。いいお話をありがとうございました。


一つひとつの経験を独立させて考えるのではなく「線で結ぶ」意識を持てば自分らしいキャリア形成が見えてくるんです。
小宮健実
プロフィール
こみや たけみ/1993年早稲田大学社会科学部卒。同年日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。人事、SEを経験後、99年から2004年にかけて新卒採用チームのリーダーを務め、約2000人の採用実績を残す。05年から首都大学東京のチーフ学修学カウンセラーに転身。大学1、2年からのキャリア形成を支援する。またウェブ上では『就活予備校』を展開。キャリアデザインのエキスパートとして、学生向けの自己分析講座や企業の人事担当者向けの採用戦略講座の講師を務めるなど、多方面で活躍中。










留学経験者は慣れない海外で多くの人に助けられているはず。「自分がしてもらったことは返そう」と感じているのでは?










首都大学でのワークショップ風景。留学希望者には「自己財産蓄積のチャンス」と応援しています。










「過去と今と未来を線でつなげ!」。どんな経験もムダにはなりません。










佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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