キャリアの達人に聞く17
 
キャリアカウンセラー対談 第17回
強い意志を持ってキャリアを考える方法
常に「人気企業ランキング」の上位に入るソニー。人気の秘密は斬新かつ画期的なことに取り組み続けるその姿勢にある。採用方法に関しても、早くから学歴不問を取り入れるなど、道を切り開いてきた。今回は入社以来ずっと人事部で活躍する日置さんにインタビュー。ソニーが求める人物像を通して、留学経験者に何が求めてられているのかを伺った。
多くの人にチャンスを与える採用

佐藤 景気回復の話題も多く、“空前の売り手市場”などと報道されていますが、まずは貴社の採用計画から教えていただけますか?今年は何名くらい採用されたのでしょうか?

日置

新卒で言えば400名ぐらいですね。2007年入社予定の社員は、技術名が330名、事務系が70名です。

佐藤

人気企業ともなるとWEBのエントリーだけで応募者が1万人を超えるとお聞きします。中には学歴や大学名でふるいにかける企業もあると耳にしますが、貴社の場合は1万人以上の応募者を選抜する際に、何か特別な方法を用いられていますか?

日置

特別なことはしていませんよ。応募のピークの時期は、人事部だけではなく他の部署にも応援を依頼して、夜食を用意して残業してもらい、『1人何枚!』とノルマを課して(笑)、1枚1枚しっかり目を通しています。

佐藤

ピーク時の残業風景が目に浮かぶようですね(笑)。第一次段階の選考を採用や人事専門のコンサルティング会社にアウトソースしている企業もあるようですが、貴社の場合は全応募者を社員がしっかり選んでいるのですね。

日置

そうですね。うちはファーストコンタクトも含めて、やはり一人ひとりの応募者に社員が接する機会を設定しています。

佐藤

今後も継続されるのでしょうか?

日置

はい。学齢不問はもう十何年も続いており、長いこと弊社のエントリーシートには大学名を書く欄はありません。

佐藤

それ以外にも「フレックス・エントリー」を導入されていますよね。詳しく教えていただけますか?

日置

5つの「フレックス化」を実践しているんです。第1が採用シーズンのフレックス化。3回に分けて採用活動を行うので、好きな時期に応募してくださいというもの。第2が入社時期。最大2年まで入社時期を選べるようにしています。第3が学校推薦の廃止。第4が情報公開。採用スケジュールはもちろん、面接の質問内容など、応募者が知りたい情報はできる限り公開するというものです。そして第5が内定と同時に配属先を知らせるというもの。

佐藤

第2の「入社時期を最大2年まで選べる」というのはすごいですね。

日置

弊社では「フレックス・キャリア・スタート」と呼んでいます。入社時期は決まっていても、じつは博士課程に進みたいとか、海外で学んでおきたいとか、入社前に自分を高める何かに挑戦したいという、各自の思いがあると思うんです。

佐藤

それだけ長いフレックス期間を設定されていると、内定辞退のリスクも高いように思われますが、それを企業の制度として確立されているのは、さすが、世界のソニーさんですね。

日置

採用はとかく一方的になりがちですが、受ける学生さんたちにも、それぞれ都合や思いがありますよね。だから、学びたいという気持ちをストップさせるのもおかしいのではないかという発想から誕生したのが「フレックス・エントリー」です。多くの人にチャンスを与えてあげたい、それも平等・公平にというのがソニーの考え方なんです。
採用はとかく企業側の一方的な都合になりがち。 常に新しいことに挑戦していく
そんな「強い意志」を持ってきてほしい

佐藤 社会がどんどん変わってきて、企業間競争も激しくなってきている今、人材はとても大事だと思うのですが、ソニーさんが求めている人物像は、どういう方なのでしょうか。

日置

ホームページなどにも書いてありますが、「意志」を持っている人ですね。

佐藤

具体的にはどんな人でしょうか?

日置

ソニーは常に新しいことにトライして成長してきた会社です。だから、ソニーで働く人も、自分自身で考え、行動できる人を求めているんです。ある意味、ほったらかしでも、自分の意志で仕事を進められる人。それも、ひとりよがりではなく、いろんな人を巻き込んで、仕事のやりがいを共有できる人。そのために、面接では過去にそんな経験があったかどうかを伺います。

佐藤

つまり、意志をもった人というのは、『自律した人』『主体的に行動できる人』ということでしょうか?そういう意味でいうと、「自分の意志で留学し、何かをなし遂げてきた」という人は、マッチするような気がします。

日置

そうかもしれません。留学生は、学問はもちろん、様々な困難や壁を自分の力で切り抜けるという経験をしてきていると思うんです。どんな目的で留学し、どんな行動をして、結果として何を得て帰ってきたのか。そのプロセスを重要視したいし、期待もしています。ただ・・・

佐藤

ただ?

日置

残念なのは、「語学を学んできました」「コミュニケーションしてきました」と、事実だけを語る人も多いんです。おそらくほかにも様々な経験をしているのでしょうが、それを上手に語れない。国内の学生は、就職事情に精通し、早い時期から自己 PR の方法などを学んでいるから、やはり「どうアピールすればいいのか」を知っている。我々もその部分は「彼らは日本の学生ほど慣れていないんだな」と見るようにはしているんですが。

佐藤

私もそれは感じています。「やってきたこと」「やれること」「やりたいこと」の3つがあるとして、それをきちんと整理して、企業に伝えることが大事ですよとアドバイスもしています。やはり、留学経験にあぐらをかかず、なぜ留学したのかという部分も含めて、自己分析をきちんとしてから、面接に挑んだほうがいいということですよね。

日置

その通りです。「やってきたこと」の羅列では、あまり意味がないんです。それから、目的もなく、ただ何となく留学をした、という人は話をしてみればすぐにわかります。これはテクニックではカバーできないと思います。こちらも人事のプロですから(笑)
なぜ留学したのかも含めて海外暮らしを経験している人は多い

佐藤 2006 年春の採用活動を終えて、応募者の傾向に何かお気づきの点はありましたか?

日置

おかげさまで、応募の数そのものは増えています。ただ「メーカー離れ」というのは何となく感じます。昔は「商社とメーカー」「金融とメーカー」と、いろんな業種を受けるなかにメーカーがきちんと存在していた。でも昨今は「メーカーならメーカー一本」という学生が多いんです。他業種を志望する学生がメーカーに興味を持たなくなったというか・・・。

佐藤

なぜそうなっているのでしょうか?

日置

メーカーは「理系が活躍する場所」だというイメージがあるからかもしれません。でも、面白いことに、昨今は理系の方の文系就職はかなり増えているんです。

佐藤

それは面白いですね。ところで、採用された方の中には、留学経験者が多いのでしょうか?ソニーさんといえば、やはり世界的な企業ですので、「語学力」がかなり求められるというイメージがあるのですが。

日置

留学経験の有無は特別視をしているわけではありませんが、結果的にご両親の仕事の関係で子どものころは海外で暮らしていたとか、在学中に留学していたとか、海外経験者は多いと思います。おっしゃる通り、英語はほとんどの部署で使いますし。ただ、語学力は採用の基準にはしていません。TOEICのスコアなども関係ない。「英語ができる人はそれを磨いて、できない人は必死で勉強してね」というぐらいで。

佐藤

留学生の採用はどうなっていますか?「留学生枠」などはあるのでしょうか?

日置

9月にはロサンゼルス、11月にはボストンに飛んで、「留学している日本人学生」のためのセミナーを行います。採用数は未定。いい人がいれば積極的に採用したいですね。

佐藤

1万人を超える応募があるにも関わらず、あえて海外まで出向いて積極的に採用なさっているのはなぜでしょうか?

日置

海外で勉強されている学生さんには、日本の学生さんと同じようには情報が届いていないと思うからです。ソニーを真に理解していただくためにも、求める人材に出逢うためにも、海外まで出張して実際にお会いする機会を設けています。

佐藤

そうした採用姿勢そのものも支持される秘訣なのかもしれませんね。先日、貴社に在籍5年目の友人に、貴社の魅力について聞いみたんです。大手企業5〜6社の内定の中から貴社を選んだのは、面接の控え室で出会ったほかの学生がすごく魅力的だと思ったからだそうなんです。そんな魅力的な人材を集めるだけのブランド力は、今うかがっているような、斬新な制度を含めた採用への真摯な取り組み姿勢、そしてロイヤリティをもった社員が創りだす製品の表れかもしれませんね。

日置

ありがとうございます。待合室でのエピソードは嬉しいですね。

佐藤

ところで、フェアと言えば、海外のキャリアフェアなどでチャンスを得られる学生さんはいいのですが、私のところにキャリアカウンセリングにいらっしゃる方の中には、大学を卒業した後に留学する方も多く、帰国後の就職活動は中途で応募したらいいのか、第二新卒なのかわからない・・・という質問が多いのですが、貴社の場合はどちらで受け付けていますか?

日置

その場合、弊社では、職務経歴がない人は中途採用ではなく、新卒の部署で対応しています。実際、帰国した4月に弊社に応募され、7月に入社した留学経験者の方もいらっしゃいますよ。

佐藤

多くの「意志を持った人々」にチャンスを与えて下さるソニーさんならではですね。次回は、9月にロサンゼルスで開かれたキャリアセミナーの話などもぜひ聞かせてください。


英語はほとんどの部署で使うけれど
日置映正
プロフィール
ひおきてるまさ/1972年静岡県生まれ。95年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、ソニー株式会社入社。厚木テクノロジーセンター厚木社員部、ブロードキャスト&プロフェッショナルシステムカンパニー人事部から、2000年人事センター人事部人材開発グループを経て、2005年1月より人事センター採用部新卒採用グループ、2005年7月より同グループ統括課長。




















『あなたに意志はありますか。』早い時期からユニークな採用姿勢が注目されていたソニーは、意志のある人材を求めている。




















自分の意志を持ちながらも、ひとりよがりではなく、いろんな人を巻き込みながら仕事のやりがいを共有できる人。そんな人を採用するために、面接では過去にそんな経験があったかを伺います。




















既卒で職務経験の無い方は、中途採用ではなく新卒の部署で対応しています。帰国後の 4 月に応募され 7 月に入社した人もいます。




















佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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