キャリアの達人に聞く21
 
キャリアカウンセラー対談 第21回
「好き」「やってみたい」——自分の感性を頼りに行動を起こすことが大切
2006年10月、東京豊洲のショッピングモール内にオープンした「キッザニア東京」は、2歳から12歳までの子どもたちを主な対象に、職業体験をコンセプトにしたテーマパーク。体験できる職業は約70種にものぼり、すでに数ヵ月先までの予約が順調にうまっている。メキシコ発であるこの新種のテーマパークを日本に持ち込んだ住谷栄之資氏に、海外ビジネスを中心とする起業家としての心得や期待する人材像、職業体験などについてお話を伺った。
「好き」を原点に

佐藤 私がキャリアカウンセラーとして日々接している留学者の中には、将来の希望として海外とのビジネスを挙げる人が多いのですが、外国企業を相手に数々のダイナミックな事業をされてきた住谷社長からは、その成功の秘訣などが伺えるのではと楽しみです。また、子どもたちに就業体験の場を提供する「キッザニア」も大変話題ですが、その仕掛け人としての視点から、職業観や、起業家としてのご経験も踏まえた上で、人材に対するお考えなどについても伺えたらと思っています。まずは社長のご経歴から確認させてください。大学卒業後に入社されたのは、藤田観光(株)でしたね。

住谷

そうです。宿泊施設やレストラン、結婚式場などの運営が主体の会社ですが、入社5年で退職し、大学水球部時代の先輩と一緒に(株)WDI社を立ち上げ、外食産業を中心に事業を展開しました。また同時期に、化粧品会社「シュウ・ウエムラ」の運営にも携わり、出店の営業や店舗デザインなどを15年ほど担当しました。

佐藤

幅広く手がけられたのですね。今でこそベンチャーはブームですが、70年代当時では、20代で起業というのは珍しかったのでは?

住谷

当時あった「脱サラブーム」に乗っかったという感じですかね。ベンチャーに比べて、「脱サラ」にはちょっと後ろ向きの響きがありますが・・・。

佐藤

いえいえ、WDI時代に開業された飲食店はどれも一世を風靡した人気店ばかりですよね。

住谷

起業して3年間はいろいろ模索しましたが、特に可能性を感じたのが外食産業でした。当時はアメリカへの憧れが社会全体にありましたから、KFC(ケンタッキーフライドチキン)を皮切りに、「カプリチョーザ」や「スパゴ」など、米国発のレストランを中心に手がけました。幅広く支持されたのは、食文化だけでなく、たとえば「ハードロックカフェ」に代表されるように、ファッションや音楽などのアメリカ文化をまるごと輸入したこと。つまり、「アメリカ文化の凝縮」がうけたのだと思います。

佐藤

キッザニアもそうですが、その時代に流行するものをいち早くとらえ、機を見て動かれる選択眼のよさと行動力を感じます。

住谷

ビジネスを選択する上で「軸」にしているのは、「自分自身が好きだ」という感性です。たとえば、KFCの開業については、最初は「日本には唐揚がある」という反対意見もあったけれど、私は美味しいと思った。もちろん、感性は時代背景や年齢、環境などで変化しますが、「好き」を原点にする姿勢はキッザニアに至るまで一貫して軸になっていますね。

佐藤

新しいことを始める際にビジョンや理念といってしまうと形骸化しがちですが、「好き」という気持ちや熱意は周囲の人を動かす原動力になりますよね。

住谷

熱意は「好き」が原点。好きなものは自信をもって人に奨められるし、奨めたからには責任感も生まれます。始めたからには一生懸命向き合う。そうした誰か一人の熱意が軸になることで、組織としてのまとまりも出てくるものです。「事業性」を優先する市場リサーチの結果をもとにしたビジネスとは異なっているかもしれませんが、私はそういう姿勢でずっと動いてきました。
どんなビジネスで起業するか、選択の原点は自らの感性。 英語はコミュニケーションの単なるツール

佐藤 WDIのレストランもキッザニアも海外発ですが、住谷さんは留学のご経験はありませんよね。初めて海外と取引するにあたって、英語力や異文化への不安などはありませんでしたか。

住谷

留学は大学時代に憧れましたが、資金不足もあって断念しました。藤田観光時代にも海外との接点はなかったし、もちろん英語が得意だったわけでもありません。それでも海外取引が中心になるWDIの経営に飛び込めたのは、若さでしょうか。英語力はあればプラスですが、ブロークンでも何とかなりました。海外とのビジネスにおいて重要なのは、優れた英語力よりも対人間とのコミュニケーション力だと実感しています。

佐藤

「英語力アップ」は、今でも留学の大きな目的の一つなのですが。

住谷

私自身は、「英語はツール」と捉えています。大学3年の時に水球部の遠征でブラジルに行きました。初めての海外体験でしたが、スポーツは万国共通。英語ができなくてもコミュニケーションはとれたし、英語圏以外の人の多くは英語に苦労していることがわかった。「なんだ、同じじゃないか」と外国を身近に感じたし、自信もついた体験でした。その後のビジネスでも、言葉ができなくても人間として相手にちゃんと向き合ってコミュニケーションすれば何とかなることを、身をもって体験してきました。言葉はあくまでもコミュニケーションのツール。自分にはよいツールがないからだめだと自信をなくすことはありません。

佐藤

要はコミュニケーション力が大事ということですね。

住谷

コミュニケーションにはいろいろな形があります。言葉だけでなく、文字もボディランゲージもある。私は、行動のすべてがコミュニケーションだと思っています。

佐藤

「行動がすべて」というのはおもしろい考え方ですね。

住谷

相手は行動を通してあなたを見ているということです。留学によって英語力は伸びるでしょうが、流暢な英語力さえあれば、取引相手から信用されるかというとそうではない。たとえ日本語しかできなくても、日本についての理解や努力の仕方、仕事をこなす力など、相手はあなたの総合力で判断します。円滑なコミュニケーションのためには何を伝えたいのか、何のためのコミュニケーションなのかを理解しておくことが不可欠。同様に、「英語を使って何をしたいか」が大事だと思います。英語力というツールがあってもそれを使いこなす場面がなければ、無意味なツールになってしまいますから。

佐藤

たしかに、留学が一般的になった現在では、英語力や留学の事実だけを評価して採用する企業はほとんどありません。留学経験は個人の引き出しの一つであって、企業は「留学によって何を得たか」「それによって何ができるのか」という部分をより強く見ているように感じます。

住谷

日本文化への理解は不可欠ですね。それが、異文化を理解する助けになるからです。また、英語力アップの勉強なら、日本にいてもできるはず。より効果的で有意義な留学にするには、「英語を使って何をするのか」という目的を明確にしてから行くことが大事だと思います。たとえば、インテリアデザインなど、日本よりも進んでいる分野の学科や専門学校への留学は学ぶこともより大きいでしょう。留学後の仕事のことまでイメージした留学なら、帰国後の就職活動に悩む必要もないのでは。現地にいてこその異文化体験や、日本では学べないことなど、留学しなければ得られないことを体験する留学をしてほしいですね。
何を伝えたいのか、何のためのコミュニケーションなのか。
住谷栄之資
プロフィール
すみたにえいのすけ/1943年和歌山県生まれ。65年に慶応義塾大学商学部を卒業後、藤田観光(株)に入社。5年で退職し、共同経営パートナーとして(株)WDIを起業。72年、「ケンタッキーフライドチキン」を六本木に開店。以後、「ハードロックカフェ」や「カプリチョーザ」などのライセンスを獲得、飲食事業を幅広く展開する。2000年の社長就任を経て、03年退職後、友人に紹介されたメキシコの「キッザニア」誘致をめざし、04年9月、(株)キッズシティージャパンを設立。06年10月、「アーバンドックららぽーと豊洲」(東京都江東区)内に、「キッザニア東京」をオープンした。







ビジネスを選択する上での「軸」は「自分自身が好きだ」という感性です。







行動のすべてがコミュニケーション。相手は行動を通してあなたを見ています。







キッザニアは『職業体験』をコンセプトにしたテーマパーク。体験できる職種は約70種にのぼる。







佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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