キャリアの達人に聞く22
 
キャリアカウンセラー対談 第22回
実体験こそが、最大の学びの場
今話題の「キッザニア東京」は、子どもたちに職業体験の場を提供するテーマパーク。その仕掛け人である、(株)キッズシティージャパンの住谷栄之資社長にお話を伺った第2回目。「キッザニア」立ち上げに対する思いから、実体験することの意義、「異文化の中に身を置く」留学生に期待することなどについて語っていただいた。
実体験が人間を成長させる

佐藤 ここからは、キッザニアについて伺いたいと思います。キャリアカウンセラーとして私は、留学経験者のみなさんから就職への不安や希望職種についての相談を受けるのですが、職業観のなさを感じることがよくあります。そういった意味で、子どもたちにさまざまな職業体験の場に加え、賃金を得る喜びまで提供するキッザニアはとても有意義で、すばらしい事業を始められたなと感じています。

住谷

ありがとうございます。私は常々、成長過程を含めて人生すべてが教育であり、一般的な学問や学校教育がカバーする領域は狭いと感じています。しかも、私の子ども時代のように自分で何でもしなければならなかった分、生活の中から多くのことを自然に学べた昔と比べ、現代社会は生活が豊かになったり、学業が最優先されたりして、子どもの行動も制限されがちで、体験の中から学ぶ機会が極端に減っている。そのため、マナーや社会性、バランス力といった「生きる力」が弱まっていると感じていたのです。

佐藤

子どもが自然に学ぶことを大人が待ちきれず、先回りして与えすぎたり教えすぎたりしているようにも感じますね。

住谷

「生きる力」を身につけた真の社会人となるためには、幅広くよい体験をたくさん積むことが必要だと思っています。そういう実体験の中から学ぶ場を子どもたちに提供したいと思って立ち上げたのが、キッザニアなのです。

佐藤

すごく好評ですよね。

住谷

予想以上に好評で喜んでいます。さまざまな仕事に、子どもたちが生き生きと取り組んでいます。たとえばお母さんが料理をしているのをみて、こどもが自分もやってみたい と興味を持つのは自然でしょう。でも今は親が子どもを隔離してしまい、そういう興味をかなえてあげられていない社会になっている。「やりたいことをやり、学ぶ」——これが自然の形。だからキッザニアがうけているのではないでしょうか。

佐藤

身体を動かして体験することに、子どもたちは興味を抱き、満足感を抱いてくれたのでしょうね。

住谷

キッザニアでは一業種一企業に絞り、できるだけ幅広く多くの職種を揃えるようにしました。また、職業体験だけでなく、勉強などが優先され、社会とのつながりが希薄になっている現代だからこそ、それぞれがどうつながり、どう機能しているのか、コミュニティ全体についても学んでほしいと思っています。

佐藤

体験から何を感じ、何を学ぶかは人それぞれですし、それをどう生かすかも人それぞれですよね。

住谷

はい。たとえば、昔は家族みんなで家事を分担することで、役割分担や協調性、互いに融通しあうといったことが自然と学べる環境にあった。世の中には誰かに聞いたり、本で読んだりしただけでは学べないことが多いものです。実際に体験することで、しっかりと身につくし、より多くのことが学べるものです。キッザニアが、そうした学びの場のきっかけになることを願っています。
大人が与えるより、子どもがやりたいことを、自分で選ぶという気持ちを大事にするほうが、結果的により多く学べ、意義も高いはずです 異文化体験から、人間関係力を育む

佐藤 実体験の大切さということでいえば、留学もキッザニアと同様に、体験から学ぶ機会です。異文化社会に身をおき、グローバルな社会との関わりを実体験していく。苦労したり、悩んだりしながら、よりグローバルな人間関係力を身につけていける場だと。

住谷

そうですね。キッザニアでの体験も、一種の留学といえるかもしれません。子どもたちにとって、大人の仕事を垣間見る機会は、「異文化体験」そのものといえるかもしれません。それにキッザニアでもいずれ、外国語で運営するパビリオンもスタートさせようと考えています。キッザニアに留学しに来る、という感覚も持っていただけると思います。また今後は、スタッフとして留学経験者も積極的に採用していく考えです。留学で身につけた、よりグローバルな視点からキッザニアの運営に関わってもらえるのではと期待しています。

佐藤

具体的には、留学体験者にどんな力を期待されていますか?

住谷

外国文化体験を、どんな風にどれだけ体験し、何を得てきたか。そしてそれを的確にアピールし、生かせる人。英語圏に限らず、さまざまな国の留学体験者を幅広く受け入れ、力を発揮してもらいたいと思っています。

佐藤

キッザニアの基本理念として、「国籍や性別、年齢にもこだわらず、子どもたちが自主的に作った子どもの王国」と設定していますよね。ボーダレスな社会を、子どものうちから体験する場の提供。これは実際の留学体験ととても重なる部分があると感じます。

住谷

留学体験も含め、自立するという意識や考え方を、子どもの頃から持つことが必要でしょう。今は「教育する」という考え方が主流ですが、キッザニアにやってくる子どもたちを見ていると、環境さえ与えてあげれば、子どもたちは教わるのでなく、自然に学ぶ力を持っていると感じますし、自由に学ぶことがとても大事だと感じています。誰にも向き不向きがあるし、大人が詰め込み式で教えるのでなく、自分がやりたいことを自分で選ぶという気持ちを大事にしてあげたほうが、結果的にはより多く学べ、成果も大きいはずです。

佐藤

まさに、住谷社長が自ら実践されてきたことですね。

住谷

そうですね。留学についても同様で、外国や異文化を肌で感じられる実体験からの学びがいちばんの収穫だと思います。より多くの収穫を得るためには、現地にしっかりと溶け込むことが大切です。たとえば、出発の心構えとして、帰国することを念頭におかず、「その地に骨を埋める覚悟で行く」という意識もあっていいのでは。「片道切符の留学」とでも言いましょうか。

佐藤

「片道切符の留学」というのは面白い考え方ですね。

住谷

ほんの腰掛けでいくのと根づくつもりでいくのとでは、現地の人とのかかわり方や向き合い方も違ってくる、という意味です。短期間で帰国するという意識でいれば、現地の人のあなたへの見方もその程度になってしまう。それでは現地で体験できることも半減してしまう。せっかく行くのにもったいないことです。留学の目的として、ぜひその社会や文化までまるごと学ぶ姿勢をもってほしいですね。それこそが、本では知ることのできない、実体験のよさであり、留学せずしては得られないことだと思います。

佐藤

留学の成果をより充実させるためには、目的を明確にし、それをしっかり覚悟してから出かける、ということですね。職業体験を自立への足がかりとするキッザニアにも通じますが、留学は行くことがゴールではなく、その後の活動のヒントや力を得るきっかけとなるべき体験だということを、キャリアカウンセラーとして改めて実感しました。今日はどうもありがとうございました。
キッザニアも留学も、体験から気づき学ぶ場。この体験をどう活かすがかがカギ。それが「自立」につながるのですね。
住谷栄之資
プロフィール
すみたにえいのすけ/1943年和歌山県生まれ。65年に慶応義塾大学商学部を卒業後、藤田観光(株)に入社。5年で退職し、共同経営パートナーとして(株)WDIを起業。72年、「ケンタッキーフライドチキン」を六本木に開店。以後、「ハードロックカフェ」や「カプリチョーザ」などのライセンスを獲得、飲食事業を幅広く展開する。2000年の社長就任を経て、03年退職後、友人に紹介されたメキシコの「キッザニア」誘致をめざし、04年9月、(株)キッズシティージャパンを設立。06年10月、「アーバンドックららぽーと豊洲」(東京都江東区)内に、「キッザニア東京」をオープンした。





留学体験も含め、『自立する』という意識や考え方を子どもの頃から持つことが必要でしょう。大人が詰め込み式で教えるのではなく『自分がやりたいことを自分で選ぶ』という気持ちを大切にしてあげたい。





客室乗務員として機内食を配る体験をする子どもたち。その表情は真剣だ。





外国文化体験をどんな風にどれだけ体験し、何を得てきたか。それを的確にアピールして生かせる人。そんな人を今後幅広く受け入れて力を発揮してもらいたい。





佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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