キャリアの達人に聞く26
 
キャリアカウンセラー対談 第26回
医療・医薬品業界で活躍する人材像とは?
医薬品の営業として活躍するMR、メディカル・リプレゼンタティブは、医療分野や製品への高い専門性と責任感が求められるハードな仕事。日々学習と自己研鑽が欠かせない。ファイザー株式会社の人材教育を一手に担う、PHA統括部の豊沢泰人統括部長に、同社の教育・研修や人事制度などについて伺った。
MR業務に欠かせない
正確な知識を身につけ、信頼感を築く


佐藤 「PHA統括部」というのは、どんな業務を担当されている部署でしょうか?

豊沢

PHAとは、Pfizer Healthcare Academyの略語であり、社員の教育研修を企画・運営する部署です。管理職の人材開発研修も行いますが、最大の役割としては新入社員向けのMR認定試験対策の研修です。合宿も含めた6ヵ月に及ぶ長期研修になります。合格しないとMRとして活動できませんから、最悪の場合は退職してもらうこともあります。指導する我々も必死です。

佐藤

試験に合格すれば、研修は終了ですか?

豊沢

いえ、合格後も継続的に研修を行い、自己研鑽に努めてもらう必要があります。年間100時間以上継続して教育を行うことを目指しています。他の業界に比べると、研修は格段に多いと思います。

佐藤

100時間ですか!

豊沢

薬品は副作用をはじめ、人体に直接影響を及ぼす特殊な商品。扱うMRは責任重大であり、正確な知識を身につけることは必須です。96年からMR認定資格が設定されたのも、知識を備え、信頼を高めることが目的です。もちろん、生命を預かる仕事でもあり、やりがいも大きいですが。

佐藤

つまり、人材教育も会社の屋台骨を支える重要な業務というわけですね。その一環として「留学プログラム」もあると聞いています。豊沢さんも留学されていますね。

豊沢

はい、海外と国内の大学に年に2名ずつ派遣しています。基本的に文系はMBAを、理系は医学やヘルスケア、医療経済といった分野での修士号取得を目指してもらいます。私は国内組で、慶応大学でMBAを取得しました。また、現社長、岩崎は海外プログラムの経験者です。プログラムには学位取得はもちろん、留学先でのグループ傘下の会社社員との協業の機会も組み込んでいます。

佐藤

どういった方が選抜されるのですか。また、派遣する大学は決まっているのですか。

豊沢

毎年40人ほどが応募してきますから、約20倍ですね。選抜試験の結果によっては、派遣ゼロの場合もありうる厳しさです。大学はランキング上位20校以内であれば本人の自由に選べますが、つまり、本人の実力で合格まで勝ち取らないと派遣されないわけです。実力もそうですが、挑戦意欲・学習意欲の高さも必要ですね。

佐藤

つまり、社内選抜に通ることは、「挑戦権を得ただけ」ということですね。狭き門ですが、挑戦しがいはありそうですね。御社ではまた、「語学研修プログラム」もお持ちであり、昨年は弊社留学ジャーナルが実施のお手伝いをいたしました。

豊沢

昨年スタートしたばかりの、MR中心のプログラムです。一回当たり約15名を3組に分割して、アメリカでの1ヵ月研修プログラムに送り出しました。

佐藤

新たに導入した背景とは?

豊沢

MRは日常業務での英語力はそれほど必要ありませんが、社内公募による管理部門への異動を希望する場合、英語は必須条件です。社として、英語力を磨くTOEICやCasecなどの受験指導もしていますが、数字に追いかけられる多忙な毎日では、元々あった英語力さえ下がってしまうケースも多い。だから、MRが将来のキャリアアップを見据え、モチベーションを維持できるような制度を整備したわけです。

佐藤

将来のキャリアアップを見据えて、人材育成への先行投資。社員にはとても励みになる制度ですね。実は私のところに相談にこられる方の中には、「入社した会社が期待とは違うので留学したい」という方も多いのです。御社のように年に50人もの人材を海外に出すなんて、なかなかできることではありません。

豊沢

研修ではアメリカの語学学校に1ヵ月通ってもらいますが、最終日に現地のMRと一緒に仕事をする時間も設けています。アメリカといっても、MRの業務内容はほぼ一緒。それを実体験できることはよい経験となるようで好評です。社としても、このアメリカのMR体験は語学講座以上に有意義だと捉え、所長や部長クラスの研修プログラムにも組みこんでいます。英語力がないと経験の幅も狭まりますから、若いうちに英語を身につけておくことは強味になります。学習意欲向上を期待しての語学研修プログラムともいえますね。

佐藤

現地のグループ会社との交流ができるのは、外資系ならではのメリットを存分に生かした内容ですね。きっと希望者も多いでしょう。選抜の基準は英語力ですか?

豊沢

3000人のMR全員を対象に、直属の上司による推薦制をとっています。日頃の貢献度が推薦のポイントになるでしょう。英語力ありきでなく、あくまでも仕事ありきですね。

佐藤

採用条件でも伺いましたが、英語力でなく、人間力などが基準というわけですね。

豊沢

外資系ということもあり、英語への関心が高い社員が多いのは事実です。それにPHAでは、「ファイザーユニバーシティ」という名称でe−ラーニングも開講していますが、約200講座の大半は英語関連です。管理部門では英語は必須ですから。ファイザーユニバーシティは任意の学習の場であり強制はしませんが、早いうちから自主的なラーニング努力を獲得しておけば、あとあと生きてくるでしょう。
社員は会社を支える重要な要素。事故研鑽の機会を提供することは、会社として重要な取組です。

——豊沢泰人さん/ファイザー株式会社 PHA統括部 統括部長 異性、異年齢、異文化・・・、
Diversityの理解が不可欠


佐藤 ところで、豊沢さんは海外赴任のご経験がおありですが、留学も含め、海外体験についてどのようにお考えですか。

豊沢

当社の業務に関していえば、有意義だと思います。うちには外国人スタッフもいますし、女性のMRも多い。また、チーム制をとる関係上、異年齢の人との関わりも深く、さまざまなバックグランドをもつ人々との活動が日常的に行われています。相違、つまりDiversityが理解できることは仕事を進める上で大変重要ですが、最近の新入社員には子どもの頃に幅広い友達と遊んだ経験が少ない人が圧倒的。そういう意味では、異文化の中で、さまざまな人たちと関わることになる留学体験は貴重な機会であり、仕事にも大いに役立つものだろうと考えます。

佐藤

たしかに、自ら異文化に飛び込み、さまざまな人たちとの交流体験を経てきた留学生には、幅広いコミュニケーション力が期待できそうです。

豊沢

それに、「タフさ」も身につきますよね。海外ではスムーズにいかないことがいっぱいありますから。トラブルに対応し、乗り越えていくことで状況適応力がついているはずです。アルバイトをしながら苦学を続けるハングリーな人も多いですし。挫折経験のない人は仕事上で何か失敗したときにすぐにポキッと折れてしまうことが多い。留学によって経験した挫折や失敗体験は財産。将来的にきっと強味になるはずです。

佐藤

留学経験者の強味を、実感されるようなことはありますか?

豊沢

MRの場合、好業績を上げるのは一般的にコミュニケーション力の高いMRなんですが、業績のよい社員のバックグラウンドを調べてみると、海外体験を持っている人の割合が高いようです。やはり、海外での幅広いコミュニケーション体験が役立っているのだろうと思います。営業成績がよければ、希望部署への異動や派遣留学といったチャンスが与えられる可能性も高まります。また実際、さまざまな形で選抜される社員の中に、留学などなんらかの海外体験をもつ人の割合が年々増えているような印象もあります。

佐藤

海外という非日常の場での体験が、生かせる仕事だということの現れとも言えますね。それにしても、医薬品という高い専門知識を必要とする製品を扱うわけですし、優秀な人材を育て長期にわたって活躍してもらえるような制度を会社として整えていくことも、企業の発展には欠かせないのだと改めて思いました。人材を大切にされている御社の取り組みの様子が、よくわかりました。どうもありがとうございました。
幅広いコミュニケーション力と、挫折に負けないタフさを身につけるには、海外経験はうってつけの場かもしれませんね。

——佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー
--photo--
プロフィール
とよさわ やすと/1983年台糖ファイザー(現ファイザー株)に入社。MRとして8年の勤務後、社内留学制度により慶応大学でMBAを取得、93年からマーケティング部門に異動。99年からはグループ傘下のオーストラリア・ファイザー社にマーケティング担当として赴任。2000年の帰国後も各疾患領域マーケティング部長として、マーケティング部門に5年、05年から循環器領域の営業統括部長を経て、06年12月から現職。











--photo--
現社長の岩崎氏も、海外プログラム制度の経験者。昨年からスタートしたMR向けの海外語学研修プログラムは留学ジャーナルでお手伝いさせていただいている。












--photo--
研修ではアメリカの語学学校に1ヵ月通ってもらいますが、最終日に現地のMRと一緒に仕事をする時間を設けています。












--photo--
相違=Diversityが理解できることは重要です。業績のよい社員のバックグラウンドを調べてみると海外体験を持っている人の割合が高いようです。












--photo--
佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
<帰国後の就職も考えよう トップページへ > もっと見る
留学ジャーナルモノになる留学へ。
帰国後の就職も考えようキャリアの達人に聞く26の紹介ページです。
短期留学や語学留学はもちろん、ワーキングホリデー、大学留学、大学院留学まで幅広くご紹介している留学ジャーナルが、皆さんの海外留学への思いをカタチに変えます。海外留学の実現は、留学ジャーナルで!