キャリアの達人に聞く28
 
キャリアカウンセラー対談 第28回
国際協力という仕事を通じて得られるもの
JICA人事部の佐久間潤さんからお話を伺う第2回目は、佐久間さんご自身のインドネシア駐在時代の話からJICAでの仕事のやりがいまで、幅広い話題になった。また、JICAの留学制度を利用して留学した佐久間さんの経験から、留学経験を国際協力という仕事の中でどのように活かすことができるのか、留学生へのアドバイスとともに語っていただいた。
3年ごとのジョブ・ローテーションで
さまざまな経験を積む


佐藤 佐久間さんご自身は入構されて何年目になるのですか?

佐久間

新卒で入って19年目です。

佐藤

JICAに入ろうと思ったきっかけなど覚えていらっしゃいますか?

佐久間

学生時代4年間は、障がい児と遊ぶボランティアサークルに参加していたこともあり、就職活動の際には、漠然と人の役に立つ仕事をしたいと思っていました。ちょうどその頃、偶然にも犬養道子さん(※元首相・犬養毅の孫で、難民支援活動を積極的に行った)の本を読みまして、国際協力という仕事をやってみたいと思い、いろいろ探しているうちにJICAに行き着きました。当時はそれほど知られていない組織で、資料を集めるのも大変でしたが。

佐藤

1冊の本がきっかけだったのですね。JICAでは20代、30代でそれぞれ海外駐在することになるそうですね。佐久間さんも海外駐在のご経験があるのですか?

佐久間

私も3年ごとのジョブ・ローテーションに従い、いろいろな部署で経験を積みました。中でも一番印象深いのはインドネシアに3年間駐在したことですね。私の場合は、普通の職員と違ってJICAの在外事務所に駐在せず、初中等教育の専門家としてインドネシアの教育省に派遣されました。小・中・高校などにJICAとしてどのような支援をするべきか、現地の教育省の人たちと相談したり調査をしたりしながら、プロジェクトにしていくという仕事です。

佐藤

相手国の省庁に駐在されていたのですね。関わる人も多く難しそうですが、やりがいも大きそうですね。

佐久間

実は、私がインドネシアに駐在していたときに、JICAとして初めてインドネシアの中学校を支援する教育プロジェクトを立ち上げたんです。これがとても高い評価を得られ、今ではインドネシア側が主体となって続いているのがとても嬉しいです。

佐藤

それは嬉しいですね。佐久間さんは元々『教育分野』がご専門なのですか?

佐久間

大学での専攻は法学部なのですが、入構して2つ目の部署で、たまたまJICA初の本格的な基礎教育プロジェクトの企画立案を担当しまして、その仕事がすごく面白かったところからもっと専門に勉強したいと思い、社内留学の制度に応募したんです。アメリカのスタンフォード大学の教育大学院で修士号を取得して帰ってきました。

佐藤

留学制度があるのですね。JICAの留学制度は、どれくらいの方が利用されているのですか。

佐久間

年間10名程度です。最近では制度の在り方も変わってきていまして、先に海外駐在を経験して、ある程度問題意識を持ってから留学してもらうようにしています。私が留学したのは入構5年目くらいでしたが、今は海外駐在経験のある30歳くらいの人たちが留学しています。
国際協力は「与える仕事」と思われがち。でも実際は、その国の人から学び、彼らの潜在能力を引き出す仕事なのです。 留学中の異文化交流体験は
国際協力の仕事にとって強み


佐藤 JICAの仕事をする上で留学経験が活かせるのはどのようなことだと思われますか?

佐久間

やはりコミュニケーション力の点ではないでしょうか。異文化コミュニケーションは私達の仕事を円滑に進める際にとても重要なポイントですが、留学生の方はそういう経験をすでに持っていると思うからです。

佐藤

佐久間さんも留学経験を経てインドネシア駐在をなさったのですよね。留学経験が活きたという実感をお持ちですか?

佐久間

私にとっては留学時代が初めての海外経験でしたから、英語力の向上や異文化の中での価値観の違いなどを学ぶいい機会でした。いろいろと苦労も多かったですが、この経験は海外駐在のときにかなり直接的に役立ちました。

佐藤

インドネシア時代のお話で一番印象に残っていることはどんなことですか?

佐久間

カウンターパート(現地での受け入れ担当者や機関)となる局長が非常に忙しい方で、最初のうちはなかなか会ってもらえず苦労しました。しかも、インドネシアの人はお酒を飲まないので、周囲の人たちとのコミュニケーションも難しく・・・(笑)。そこで、局長とは用事がなくても週に1回はアポイントを入れて一緒にランチを食べ、周りの人とも積極的に話すようにしました。そうやって徐々に信頼関係を築いていったのです。その甲斐あって、人間関係ができてからはプロジェクトも、とてもスムーズに進めることができました。

佐藤

やはり自分から働きかけて、周りを巻き込んでいくスキルが問われるのですね。

佐久間

もう一つ、大事なことがあります。国際協力というと「与える仕事」だと思われがちで、私自身もそう思っている部分がありました。しかし、インドネシアに行ってみて、そうではないということがよく分かりました。協力を行うとき、私たちと相手国の人たちは、まさにパートナーであり、私たちの方こそが教わることがたくさんあること。そして、国際協力というものは、相手国の人たちが潜在的に持っているポテンシャルをうまく引き出すことなのだと分かったのです。私が携わったのは住民参加型の学校運営プロジェクトだったのですが、カウンターパートや住民の方々の能力ややる気をうまく引き出すことができたために、成果を上げることができました。いいかえると、相手国の人たちから学ぶ姿勢を忘れず、私たちの価値観ややり方を一方的に押し付けなかったことが成功の原因だったのだと考えています。

佐藤

「与える仕事」ではなく「引き出す仕事」という点では、カウンセリングと共通の部分があるかもしれません。『ファシリテーター』という役割ですね。そうやって自分が関わった国が成長していくのを見られるのは嬉しいでしょうね。

佐久間

本当にそうです。しかも、教育というのは未来を作る仕事だけに、やりがいも大きかったです。でも、私に限らず職員はみんな、赴任した経験がある国にはいつまでも愛着があるようですね。帰国後も何かとコンタクトを取ることもありますし、一度赴任した国は、ずっと気になる存在です。

佐藤

これから留学する人や留学中の人で、JICAを志望する人に、何かアドバイスはありますか?

佐久間

まず、何のための留学なのか、目的意識をしっかりと持つことですね。また、これは留学に限ったことではありませんが、人を巻き込むような経験をされるといいですね。皆さん自分の能力を高めるために留学するのでしょうが、自分のためだけでなく、人と一緒に何かをすることが大事。それはボランティアなどでなくても良くて、仲間と一緒にスポーツで頑張るといったことでもいいと思います。

佐藤

人と関わることで気づくことや成長できることは多いですよね。初めてのことを一人で行うという経験も大切ですが、困ったときには解決のために誰かに助けてもらう、協力を得られるというスキルも重要ですね。

佐久間

実は、一人でやるほうが楽なこともあるんです。一人なら自分で全部決めてしまえますが、人と何かをやるということは、相手を説得して同意してもらわないと進められませんから。それは難しいし大変なことですが、ぜひとも経験しておいてほしいことです。

佐藤

確かにそうですね。一人でできることには限界がありますね。そういう意味では、留学は、母国語が通じない分、ハードルが高い中でコミュニケーションをとり、周囲を巻き込みながら何かを成し遂げる。そうした経験をする絶好の機会ですね。佐久間さん、本日は貴重なお時間ありがとうございました。
自分一人ではできないことを知り、周りの人を巻き込むことが学ぶという意味では、留学はとても貴重な経験になるのでしょうね。
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プロフィール
さくまじゅん/大学(法学部)卒業後、1989年に新卒でJICA(独立行政法人 国際協力機構)に入構。92年、企画部に配属されJICA初の本格的な基礎教育支援事業の企画立案に関わったことから教育分野の協力に関心を持ち、94年から構内留学制度を利用して米スタンフォード大学教育大学院へ留学し、修士号を取得。98年から、初中等教育の専門家としてインドネシアに3年間駐在。06年から人事部人事グループ人材開発チームのチーム長として、新卒および中途の採用・職員研修などに携わる。








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JICAの採用スケジュールは一般企業と同様。『春選考』の他に例年『夏選考』でも若干名採用している。夏選考のスケジュールは留学生にとってチャンス。採用情報や仕事情報はHPに詳しく掲載されている。








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国際協力の相手国の人たちは、まさにパートナー。私たちこそ彼らから教わることが多いのです。「与える仕事」ではなく、彼らの潜在的な能力や可能性を引き出すのが私たちの仕事です。この意識やスタンスは非常に大切です。








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人と関わることで気づくことや成長できることは多い。留学は「周囲を巻き込みながら何かを成し遂げる」経験をする絶好の機会ですね。








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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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