キャリアの達人に聞く30
 
キャリアカウンセラー対談 第30回
グローバルなビジネスパーソンになるために、留学中に学ぶべきものは?
世界140ヵ国以上で製品展開をするグローバル企業P&G。日本におけるP&Gのグループ企業では、社員約4200名のうち約1500名を外国人が占め、その国籍は実に26ヵ国。社内の公用語としても英語が使用されている。このようなグローバルで多様性に富んだP&Gの日本人社員には留学経験者も数多くいるのだそう。留学中に何を学び、何を実戦することで世界で活躍できるビジネスパーソンになれるのか。自身も留学経験を持つという人事本部の籾山直威さんと広報渉外本部の長谷太介さんに、お話を伺った。
学ぶべきはグローバルなコミュニケーションスキル

佐藤 社内の公用語は英語だそうですが、社員の方は留学経験者が多いのですか?

籾山

何らかの形で海外経験がある人が多いのは確かですが、マストの条件ではありません。採用に関しても留学生枠というのは、外国人の方も含めて特に設けてはいません。

佐藤

確かに御社ほどのグローバル企業になると、単に留学経験があるからといって、それが即座に採用に結びつくとは考えにくいですよね。では、留学中に心がけて身に付けるべきものとは何でしょうか。

籾山

P&Gが社員に望む能力とは大きく分けて、『戦略的思考』、『リーダーシップ』、『グローバルなコミュニケーションスキル』の3つが挙げられます。留学中に得られるであろうものの1つがこの『グローバルなコミュニケーションスキル』ですね。それはつまり、英語を使えることプラス、相手のことを理解し、自分を理解してもらい、さらに相手を動かせる能力があるということです。ただ英語を学ぶだけではなく、英語を使って何をしようとするかが大切です。

佐藤

異文化の中で、相手に自分を分かってもらうというのは大変な作業ですよね。

籾山

留学中には、バックグラウンドの違う人とたくさん会う機会がありますよね。相手と自分の違いはどこなのか、その違いはどこから来ているのか、そして違いのあるお互いを尊重しあうためには何が必要か。そういったことを学ぶには、留学は最適な環境だと思います。1人で自己完結するのではなく、相手に望むこと。これはコミュニケーションの基本ですからね。弊社におけるダイバーシティ(多様性)とは、解決されるものではなく、活かされるべき強みであると考えています。

長谷

P&Gでは、どこを切っても同じという“金太郎飴的人材”を採用しよう、または作ろうとは考えていません。違うけれども共通している部分を探し、ベン図で重なっている部分がとてもパワフルであること。これがまさにP&Gにおけるダイバーシティです。

佐藤

お互いを理解した上で、周囲を動かす力。しかもグローバルな環境の中で、ということですね。自らが、その目的を意識しながら行動するという意味において、これは、御社が求める戦略的思考にも共通することのように思われますがいかがでしょうか。

籾山

確かに。留学先には戦略的思考を身につけるためのフレームワークはあふれていますからね。戦略的思考を実戦するには日常的に使う努力が必要です。セルフフィードバックとコミュニケーションによる周りからのフィードバックを通して、確実に磨かれていきます。ですから、戦略的思考を身につけるのに特別な訓練を受けなくても留学中には生活の中でいくらでもできる、ということですね。

佐藤

留学中には、考えざるを得ない状況が多々ありますからね。それをどのように解決してどう乗り越えていくか。日本でももちろん『物事の目的』を意識することを習慣にし、戦略的思考を実践する機会はつくれますが、アウェーの地で、母国語ではない分ハードルは格段に上がり相当鍛えられますね。次にリーダーシップということになるといかがでしょうか。

籾山

弊社が考えるリーダーシップとは、「オレについてこい」的なものではなく、進むべき道を明確にし、それを達成するために多くの人を巻き込んでいく力のことを指します。多くの人の中には、もちろん違う国籍の人もいます。そういった人達を巻き込んでいくためには、当然のことながらグローバルなコミュニケーションスキルが必要ですよね。そういった意味で、リーダーシップに関しても密接に関わっていると思います。

佐藤

私は以前、仕事の一環として就職活動を控えた大学生のグループディスカッションのアセスメントを担当していたことがあり、1000人以上の学生を見てきましたが話がそれそうになった時、本来の目的を意識して軌道修正することの重要性を指導していました。物事の本質や目的を理解し、メンバーの意見を尊重しながらリードしていく。仕事の上でも同じですよね、ゴールがあって、それを達成するためには何が必要か考える能力があるということ。留学は、グローバルな場で目的を達成するという実戦をするのに、大いに役に立つと私も思います。
求める能力は、戦略的思考、リーダーシップ そして、グローバルなコミュニケーションスキル。これらを身に付けるのに、留学は最適な環境だと思います。

籾山直威さん/P&G ヒューマン・リソーシーズ リクルーティング アソシエイト・マネージャー 留学する際に一番大切なのは、
明確な目的意識を持つこと


佐藤 採用に関しては、専攻よりもポテンシャルを重要視されますか?

長谷

何をやったかという点においては、希望する職種に近いほうがよいとは思いますが、それをやった目的は何か、そして壁があった時にどう乗り越えたか、が大事です。それは留学に限らず、スポーツでも生徒会でも同じことです。動機と目的を聞くことにより、弊社が求める論理的思考というものは、自然と導き出されると思います。

佐藤

お2人とも留学を経験されているそうですが、どのような目的だったのですか?

籾山

私の場合、最初の留学は、学生時代の短期の語学留学です。理由はお恥ずかしながら、皆がしていたからというありふれたものです(笑)。ただこの短期留学をきっかけに「もっと海外で勉強したい」という意識が高まり、就職して3年経ったらもう1度留学しようと決めました。最初に入った会社は日系の保険会社だったのですが、ちょうど私がいた2000年前後というのは保険業界の自由化に伴い、海外の保険会社も多く日本に参入してきた時期でした。このような業界の流れの中で、グローバルなビジネススキルの大切さを身に沁みて感じていましたので、それを身につけるべく、海外留学に行ったというわけです。留学先はどうせ海外に行くなら、いろんなバックグラウンドを持った人が集まる場所へ、ということでアメリカのビジネススクール・サンダーバードに決めました。サンダーバードの生徒は半分以上がアメリカ人以外ですから。

佐藤

若い頃の語学留学がきっかけになって、本格的な留学をする人は多いです。第1ステップとしては、短期の語学留学も価値のあるものだと思います。長谷さんはどのような留学をされていたのですか?

長谷

私は父親がヘアメイクアーティストをしておりまして、私も世界で活躍できるヘアメイクアーティストになりたいと思っていました。そのためには英語力が必要だ、ということで中学3年生の時、単身イギリスへ渡りました。本来は中学卒業と同時にその道に入る予定でしたが、経済学に興味を持ち始め、高校・大学への進学を決意。中学同様、高校もイギリスの学校で学びました。そのままイギリスの大学に進学するつもりでしたが、そのためには奨学金をもらうことが経済的条件となりました。奨学金のオファーが出た大学は数学専攻が条件だったため、やむなく帰国し、経済学が学べる慶応大学に入学しました。大学卒業後は、大学院進学と就職で悩みましたが、P&Gなら私の留学経験も経済学も生かせると思い、入社しました。

佐藤

お2人のお話を伺っただけで、御社には、単に“留学”とひとくくりにはできない、多様な経験をされた方がいかに多くいらっしゃるか、ということをひしひしと感じました。最後に御社の採用担当者として、これから留学する方や、留学中の方へメッセージをお願いします。

籾山

採用担当者から、というと大げさに聞こえますので、留学経験者から後輩のみなさんへのメッセージということで。まずは、これから留学される方へ。そもそも何のために留学するのか、その目的のためには本当に留学する必要があるのか、もう一度自分の中で確認してください。はっきりとした目的があってこそ留学はあなたの実になる経験となることでしょう。現在留学中の方へ。日本にいてはできない経験をたくさんしてください。当たり前に流されるのではなく、今身の回りで起きている現象に対しての自分のポジションというものを意識的に明確にするように心がけてください。目的意識を持ってそれを達成するスキルを身につけるのに、非常に有効な実践になると思います。
グローバルな場で目的を達成するという実戦をするのに、

留学は大いに役に立つと思います。

佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー
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プロフィール
もみやまなおたけ/P&G ヒューマン・リソーシーズ リクルーティング アソシエイト・マネージャー。1999年大学卒業後、日系保険会社に入社。2002年に退職後、アメリカのサンダーバード国際経営大学院にてインターナショナルマネージメントを学ぶ。03年卒業後帰国。04年に組織人事系コンサルティング会社に入社。06年P&G人事本部入社。約1年半に渡り、リクルーティングに携わる。




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プロフィール
はせだいすけ/P&G エクスターナルリレーションズ 広報・渉外 スーパーバイザー。中学3年生でイギリスに単身留学。語学学校を経て、イギリスの中学、高校を卒業。経済学を志すが、イギリスで奨学金のオファーが出た大学が数学専攻が条件だったため帰国。1996年慶応大学経済学部入学。2000年同校卒業、P&G広報渉外本部入社。入社以来約7年間、広報のスペシャリストとして活躍。




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食品から日用品まで身近な顔ぶれが並ぶ。P&Gブランドの中には戦略的に敢えて社名を前面に出さないものも。




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留学はダイバーシティ(多様性)を理解し、それらを活かす実践の場として最適と言えます。




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日本ではできない経験をたくさんしてください。当たり前に流されず、身の回りの現象に対して『自分のポジション』を意識することが大切です。




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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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