キャリアの達人に聞く34
 
キャリアカウンセラー対談 第34回
5年後・10年後にわかる、仕事に活きる留学経験
米国Amazon.comのビジョンに基づき、日本でもほぼ同様のサービスを提供しているオンラインストアAmazon.co.jp。Amazonとしての独自性を守るため、ローカライゼーションの一環として英語版サイトの翻訳に関わる人のみならず、ファイナンスや人事など、各セクションが個別に本社とやりとりをしているという。留学経験者の割合も高い同社において、人事部採用課でシニアリクルーターとして活躍している高橋美智子さんに、自身の留学・就職経験について伺った。
本当にやりたいことを見つけ自分に自信をもつ

佐藤 高橋さんは米国の大学で社会学を専攻したそうですが、やはり現在の仕事に結びつくようなことを学びたいと考えていらっしゃったんですか?

高橋

いえ、そのころは「こういう勉強をして、こういう仕事をしたい」というはっきりとした目標があったわけではないんです。日本の短大を出て、米国の大学に留学するにあたり、両親からは「ビジネスなど、実用的なことを学ぶといいのでは」と言われていたんですが、「自分が本当に興味のあることでなければ、続かない」と思い、高校のころから興味のあった社会学を選ぶことにしたんです。

佐藤

20代前半のころは特に、「目的」よりも「興味」が動機になることが多いですよね。ただ、今になって振り返ってみると、そのとき学んだことが、今の仕事にうまくつながっていると思われることがあるのではないですか。

高橋

ええ、物の見方や考え方など、やはり留学していたからこそ、今の自分があるのだと思います。留学中は、ただ自分のやりたいことをやっているだけでも、社会に出ると、自分の進むべき道が何かということが見えてくるんですよね。社会学を学ぶと決めたとき、父親に「今はなくても、そのうちお前が学んだことを活かせるような新しい仕事が生まれるかもしれない。だから、今は自分がやりたいことで一番になっておくのがいい」と励まされました。

佐藤

自分で「留学する」という目標を決め、それを実現すると、大きな自信につながるんですよね。それから先に何かつらいことがあったとしても、「留学中は、苦しいときも乗り切ることができた」という思いが、困難を越えるための大きな支えになることがあります。

高橋

米国の大学で学ぶ社会学は、米国内部のことに深くかかわっていて、実は留学生があまりいないようです。私が行ったウィスコンシン州立大学の社会学部でも、日本人は私1人。かといって、手取り足取り何かを教えてもらえるわけではありません。言葉は思うように通じないし、授業でもわからないことが多いし、最初はずいぶん鍛えられました(笑)。人生は、人に言われて何かをすればいいというレールが敷かれているわけじゃなくて、何をどうするか自分で決めなければならないのだと、そのとき初めて体感しました。

佐藤

日本では、「これから先、どうしよう」と自分の進むべき道について考えるのは、たいてい社会に出てからですよね。でも、米国では、大学にいるうちから先生が「あなたはこれから先何がしたいんですか」と聞いてくるんです。みんな、自分の将来について、否応なしに考えることになりますよね。

高橋

そういう中で私が思ったのは、「仕事は人生の中の多くを占める。それなら、自分が楽しめることをやったほうがいい。自分が楽しめることをやって評価してもらえるなら、それに越したことはない」ということです。今にして思えば、これはAmazonで提唱していることと同じなんです。
留学中は、ただ自分のやりたいことをやっているだけでも、社会に出ると、自分の進むべき道が何かということが見えてくるんですよね。

高橋美智子さん/アマゾン ジャパン 人事部採用課 シニアリクルーター コンサルタントの一言で自分の可能性に気づく

佐藤 米国で特に大変だったのは、どのようなことですか?日本人留学生が一人では、助け合うこともできなかったわけですよね。

高橋

そうなんです。英語で思うようにコミュニケーションが取れないのもつらかったんですが、何より米国人の学生と対等に書かなければならない論文がキツかったですね。提出しても、先生に「あなたが何を言おうとしているかわからない」なんて言われて、何度も突き返されるんです。初めて論文を受け取ってもらえた日には、本当にうれしくて泣きました(笑)。

佐藤

ウィスコンシン州立大学があるミルウォーキーは、人種構成が多様で、富裕層も貧困層も集まった、社会学を学ぶうえでは非常に興味深い都市だといえますが、何かミルウォーキーならではの経験をしたことはありますか。

高橋

授業の中に、貧困層が集まっているエリアの小学校を訪問するというものがあって、現地まで自分で行かなければならなかったんです。とても治安の悪いエリアとされていたので、普通はみんな自分の車で行くんですが、私は車を持っていなかったので、タクシーで往復してきました。そのころは「どうしてもその授業が取りたい」という思いが「怖い」という気持ちを越えていたんですね。今だったらもう行けないかもしれません(笑)。

佐藤

アマゾン ジャパンで採用の仕事をするようになったのは、どのような経緯からなんですか。

高橋

最初は日本のリサーチ会社に就職したのですが、どうも合っていないような気がして、知り合いに紹介されたキャリア・コンサルタントに会いに行ったんです。そうしたら、「あなたは採用の仕事に向いている」と言われ、確かに、自分は営業とかマーケティングよりも、バックオフィスにいたほうがいいのかもしれないということに気づいたんです。それからインテルで採用アシスタントとしてスタートし、その後アマゾン ジャパンに採用リクルーターとして入社しました。

佐藤

誰かに言われた一言で、自分の可能性に気づくことってありますよね。そうすると、今、アマゾン ジャパンで採用の仕事をされているのは、高橋さんにとってピッタリの選択だったわけですね。

高橋

自分ではわかっていなかったんですが、意外に米国の大学で学んだことが生きてくるんです。採用の仕事は、常に社会の動きを見ていなければならない一方で、社内の人とのつながりも大事にしなければならない。そういった複数の視点を持つということは、かつて大学で鍛えられたように思うんです。

佐藤

留学中は、自分の学んでいることが5年後、10年後にどう活かせるかということが、なかなかわからないですよね。高橋さんの場合、留学先での経験をきちんとご自分のリソースとして活かしていらっしゃるわけですよね。

高橋

今はもう、自分が採用以外の仕事をするとは想像できないんですが、留学当時は、自分の学んだことをこんなふうに仕事に活かせるとは思ってもみませんでした。Amazonという会社はコミュニケーションを大事にするので、その点も、人と人との結びつきを大切にしたい私としては、働きがいがある理由の一つです。日本企業的な分厚い階層があるわけではないので、社員一人ひとりが、経営に関するようなことも自由に発言できる空気も気に入っています。

佐藤

自分でゴールを設定し、それを自身の努力でクリアしてきた方ならではの言葉ですね。大変魅力的なお話をありがとうございました。
留学中は、自分の学んでいることが5年後、10年後にどう活かせるかということが、なかなかわからないですよね。

高橋さんの場合、留学先での経験が、きちんとご自分のリソースになっているんですね。

佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー
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プロフィール
たかはしみちこ/日本の短大を卒業後、米ウィスコンシン州立大学社会学部に留学。帰国後はリサーチ会社を経てインテル株式会社に入社、採用アシスタントおよび採用スタッフィングコンサルタントを務める。2006年にアマゾン ジャパン株式会社に採用リクルーターとして入社、現在はシニアリクルーターとして、採用業務全般を統括する。





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書籍に始まり電化製品や化粧品、ベビーグッズまで現在14ジャンルのストアがオープンしている(※画面は2008年1月現在)。





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「今はなくても学んだことを活かせるような新しい仕事が生まれるかもしれない。だから、今は自分がやりたいことで一番になっておくのがいい」。お父様からの言葉の意味を社会経験を経た今実感しているそうだ。





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撮影時に偶然通りかかったアマゾン ジャパン社長ジャスパー・チャン氏に加わっていただいた。高橋さんの言葉どおり風通しの良い社風を実感した瞬間だった。





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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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