キャリアの達人に聞く35
 
キャリアカウンセラー対談 第35回
ホテルという企業で必要とされるのは「人間力」
2007年9月、東京・日比谷にオープンした高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」。香港に拠点を持つペニンシュラ・グループが、満を持して日本に上陸、早くも日比谷のランドマークとして定着しつつある。第一級のホスピタリティが必要とされる世界ではどのような人材が求められているのか、中谷恵一人材開発部長に伺った。
外資の社風の中で日本式ホスピタリティを守る

佐藤 ペニンシュラ東京には、今日初めてお邪魔しました。24階建てで客室数314の堂々たる建物ですが、これだけのホテルをオープンさせるのは、並大抵のことではなかったと思います。

中谷

東京の他のホテルから移ってきたスタッフが多いのですが、香港やバンコクのペニンシュラから人を呼んだりもしています。また日本国内でも大卒や専門学校卒を多数採用、最終的には総勢約500人のスタッフでオープンしました。大変なのは確かですが、新しいホテルのオープンはこれまでにも手がけてきたことですし、とてもやりがいがあります。

佐藤

皇居外苑と日比谷公園に面し、銀座や丸の内も歩いてすぐと、ロケーションが素晴らしいですね。お客様はやはり外国の方が多いのですか?

中谷

全体の約55パーセントは海外からのお客様で、日本の方は週末のご利用が多いですね。また、うちは従業員にも外国籍の者が多いんです。欧米やアジアだけでなく、南米やアフリカといった国から来ている者もいて、全部で17ヵ国に及びます。こういう環境の中では、外国人と日本人をいちいち区別していてはやっていけないですね。お客様に対しても、組織の中でも、diversity(多様性)を受け入れられることを大切にしています。

佐藤

日本の社会は、学校といい会社といい、均質なのが特徴です。日本の大学を出てそのまま就職した場合、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる社会の中に入ると、戸惑うことが多いかもしれませんね。

中谷

留学経験のある人は、多様な社会で生活してきた経験を持っているので、あらゆる人に対して公平に接する態度が身についているようですね。ホテルで仕事をする者は、話をする相手を選べないんです。苦手意識を感じるお客様には、自分から話しかけられるくらいでないと。留学経験のある人は一般にオープンで、やりづらいことにぶつかっていくことも得意なようですね。

佐藤

先日のニュースで、今どきの日本の大学生は83パーセントが「空気を読む」ことを意識していると言っていました。空気を読む洞察力は大切ですが、その上で伝えたいことを状況に応じて伝えることがコミュニケーションの上で大切なことですね。外国人と接する機会の多い仕事では尚更自分の伝えたいことをはっきり言葉にすることを意識しておいたほうがいいですね。

中谷

そうですね。言わないと伝わらないですからね。ただ、英語力に関しては、最初から能力がある人を採用するわけではありません。英語ができるようになるポテンシャル、パーソナリティや積極性を見ます。その点がしっかりしている人は、入社してから自分で努力してできるようになります。仕事の上でも、人から指示されるのを待っていないで自分から動ける人、自分の意見が言える人は、伸びるんです。

佐藤

「人間力」とでも言うのでしょうか。ただマニュアル通りのサービスができればいいわけではないのですね。ホテルの仕事は、接客第一という印象があるので、自分の意見が言えることが大事、というのは意外でした。

中谷

純粋な日本の会社では、自分の意見はあえて言わないという風潮もあるのかもしれませんが、ここは外資系ですから、ちょっと雰囲気が違うかもしれませんね。

佐藤

普段忘れがちになっていますが、ホテルも一つの企業ですものね。企業としては、外資系としての色合いが強いんですね。

中谷

そうですね。ただ、ホスピタリティの面では、日本的なきめ細かさを大事にしています。日本人らしさを失ってしまっては、やはり日本にあるホテルではやっていけないと思います。
「『人間力』とでも言うのでしょうか。ただマニュアルにある通りのサービスをしていればいいわけではないのですね」佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー 募集期間が過ぎてもあきらめない!自分でアピールすることが大事

佐藤 採用に当たっては、やはりホテルの仕事の経験者が有利なんですか?それとも、異業種からの転職も可能なのでしょうか。

中谷

以前にコンピュータ関係の仕事をしていた者もいます。組織の活力ということを考えると、ホテルの仕事しか知らない人ばかりを集めるのではなく、違う世界を知っている人が混じっていたほうがいいんです。ただ、採用の核は基本的に新卒で、真っ白な状態からペニンシュラの色に染まってもらえればと思っています。

佐藤

新卒の場合、やはり観光・サービス業に関連したことを学んでいると有利でしょうか。

中谷

専門知識よりも、人としての常識といったことが大切でしょうか。また、チームの中で仕事をしていけるコミュニケーション力ですね。いくら個人として能力が高くても、やはりチームとして動かないと、組織が伸びていきませんから。

佐藤

ここでもやはり、人間力が大切になってくるわけですね。ますます、留学経験者にとっては魅力的な環境だと言えます。ただ、留学生の場合、卒業のタイミングがうまく合わないということを不安に感じている人も多いのですが。

中谷

留学生の場合、卒業前に留学先からメールでアプローチしてくることがあります。うちはそういった問い合わせにも対応しているので、ある意味、通年採用と言えます。「インターンシップをしたい」と尋ねてきたりする人もいます。

佐藤

ということは、時期にこだわらず、自分からどんどん積極的に応募してもよいということでしょうか。

中谷

なんのつてがなくても、海外から自分でメールを送って問い合わせてみよう、という前向きな気持ちがあるのはいいことですよね。日本では、求人のお知らせを見て、募集期間が過ぎたらもう終わり、と思ってしまう人が多いのですが、実際にはそれだけがチャンスとは限らないわけです。

佐藤

留学経験者にとっては、大変心強い言葉です。

中谷

留学経験者だから採用するということではないのですが、留学している人は一般に語学やコンピュータに抵抗がありませんし、積極さという点から考えても、人材としては魅力的ですね。
「組織の活力ということを考えると、ホテルの仕事しか知らない人ばかりを集めるのではなく、違う世界を知っている人が混じっていたほうがいいんです」
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プロフィール
なかや けいいち/赤坂の東京ヒルトンホテル(その後キャピトル東急ホテル)でホテルスタッフとしてスタート、その後ヒルトン東京(西新宿)、ヒルトン東京ベイを経て、パークハイアット東京で人事部長を務める。2007年よりザ・ペニンシュラ東京人材開発部長。

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ザ・ペニンシュラ東京のお客様の約55%は海外からのお客様。従業員も17ヵ国から採用している。マニュアルではない、スタッフ一人ひとりの人間性を活かしたホスピタリティを大切にしている。

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現在留学ジャーナルで受付、オペレータとしてお客様をお迎えしている渡邉はパークハイアット出身。渡邉も留学先から積極的に応募し採用されたそうだ。

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社員用通路に掲げられた『ザ・ペニンシュラ東京』のモットー。『ザ・ペニンシュラ東京ファミリーは思いやりと多様性と団結力を持ち、そして楽しみながら人々に対して情熱を注ぎます』

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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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