キャリアの達人に聞く36
 
キャリアカウンセラー対談 第36回
経験を積み、キャリア市場で自分の価値を高める
一流ホテルでさっそうと働く人々の姿は、多くの若者にとっての憧れだ。職場の環境は日系と外資系でどう違うのか、ホテルの世界でキャリアを積んでいくにはどうすればいいのか、気になる部分をザ・ペニンシュラ東京の中谷恵一人材開発部長にうかがった。

転職は当たり前、さまざまな職種を経験

佐藤 今日こちらのホテルに着いて、ロビーで中谷さんが外国人のお客様をご案内しているのを拝見したんですが、実にスマートでさりげない身のこなしに感銘を受けました。ホテルの世界にはずいぶん長くいらっしゃるんですか?

中谷

最初はヒルトン・ホテルに約20年いたんです。赤坂、新宿、そして舞浜と場所を移り、ハウスキーピングや食品倉庫、レストラン・ウォッシャーなどいろいろ経験しました。舞浜のヒルトン東京ベイでは、仕入担当をしていました。家具や食料、買い入れについては取り仕切るのが仕事で、早朝の築地にも情報を仕入れるために、よく足を運んだものです。

佐藤

私も行ったことがありますが、早朝の築地は活気があっていいですよね(笑)。外国人と早朝のお寿司屋さんに一緒に並んでいる風景も目にしました。中谷さんのように、そうした経験があることも、外国人のお客様とお話するためのいいきっかけになりますよね。それから人事の担当に移られたのですか。

中谷

新宿のパークハイアット東京で4年人事を務めたのち、今の総支配人マルコム・トンプソンと一緒に、ペニンシュラに移ってきたというわけです。

佐藤

英語もとても流暢でいらっしゃいますが、海外生活のご経験があるわけではないのでしょうか。

中谷

私たちの世代では、留学してそれを仕事に生かして・・・ということは、あまり一般的ではなかったですね。海外は、出張で何度か行ったくらいでしょうか。

佐藤

やはり語学は自分で努力して身につけることが大事なんですね。ところで、ほかの業種では、同業他社にいたということはあまり積極的に話さないことが多いんですが、ホテルの世界では、さほど抵抗はないものなのでしょうか?

中谷

まったくないですね。他のホテルに移るのは、むしろ当たり前だと言えるかもしれません。一つのホテルにずっととどまる人は、そう多くはないのです。ただもちろん、ホテルならどこも同じというわけではなく、ホテルによって企業文化がとても異なります。パークハイアットは規模が大きく合理的で、非常にアメリカ的。ここ、ペニンシュラはチェーンを大きくするより1個所1個所を丁寧に作っていくという考え方を持ち、アジアらしいアットホームな雰囲気です。

佐藤

中谷さんは人事に入られる前にいろいろな職種を経験していらっしゃいますが、入社後の配属について、本人の希望はどのくらい通るのでしょうか。

中谷

本人の希望は一応聞きますが、入社後は、まずいろいろな経験を積んでもらうことになります。客室やレストランの係だけでなく、ウェディング・コーディネーターやスパの担当など、ホテルの仕事は実に多種多彩です。目標がコンシェルジュになることだとしても、そういったさまざまな経験を経てこそ、厚みのある仕事ができるようになるのではないかと思います。

佐藤

さまざまな職場でいろいろな仕事を手がけ、また別のホテルに移って経験を重ねる。これは、自分にとって非常にプラスになりますよね。経験が豊富であればあるほど、キャリア市場において、自分の価値を高めることができるわけですから。

中谷

そうですね。経営者の側でも、人材が移動するのは当然、というつもりでいると思います。ホテルの世界では、離職率が1年に10パーセント以内だといいほうだと言われているんです。実際に、1年でどんどん変わっていきますよ。

佐藤

定年まで勤めるという発想はないんですね。

中谷

そうですね。外資系だからということもあるかもしれませんが。ただ、うちは幸いにして通常より離職者の割合が少ないんです。その分新卒採用の割合は減っていますが、それでも昨年は30数名を採用しています。
「さまざまな職場でいろいろな仕事を手がけ、また別のホテルに移って経験を重ねる。経験が豊富であればあるほど、キャリア市場において、自分の価値を高めることができるわけですね」 決断の速さは驚異的 甘えのない公平な職場

佐藤 こちらのホテルは、スタイルは西洋式ですが、内装など、どこかアジア風でもありますね。

中谷

インテリアは、まぎれもなく日本を意識しています。ペニンシュラは、本国トップの考えを押し付けるのではなく、その国独特のものを大事にするという姿勢です。また、総支配人のマルコム・トンプソンはイギリス人ですが、「イギリスと日本では、どこか近いところがある」といって、日本的なものを尊重してくれています。今までのところと比べても、上からのプレッシャーが少なく、非常に働きやすい環境ですね。

佐藤

日本のいいところを生かしつつ、社風は外資系らしいと言いますか、風通しがいいんですね。日系のホテルと外資系のホテルでは、職場の雰囲気はずいぶん違うものなのでしょうか?

中谷

日系のホテルから移ってきた人によると、「外資系の決断の速さは驚異的」らしいですね。夜、何か問題が起こったとしても、翌朝8時前に総支配人に話せば、すぐに解決できたりします。一方で、個人個人に任されている部分が大きいので、自分の能力を生かしやすいとも言えます。会社が手厚く保護してくれるということはありませんが、やる気のある人には、チャンスが与えられる。外資系だから冷たい、ということではなく、甘えのない、公平な職場なんです。

佐藤

日本では、人を上手におもてなしするには、自分らしさを押さえ込まないといけないのではないかと思われていますが、実際は、一人ひとりの個性や意志の強さが大事なんですね。これは新しい発見でした。

中谷

お客様からすると、カッコいい、悪いということでなく、どこかオーラのある人、人間として魅力があることが大事なようです。そういう人の温かさに触れたとき、「来てよかった、また来たい」と思っていただけるのではないかと思います。その個人個人の魅力が、また組織としての力につながっていくのではないでしょうか。

佐藤

そういった方々をさらに支えるのが、中谷さんたち人材開発部のお仕事なんですね。今日は、ホテルの内側をのぞかせていただいたようで、とても興味深くお話をうかがいました。大変ありがとうございました。
「やる気のある人には、チャンスが与えられる。外資系だから冷たい、ということではなく、甘えのない、公平な職場なんです」
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プロフィール
なかや けいいち/赤坂の東京ヒルトンホテル(その後キャピトル東急ホテル)でホテルスタッフとしてスタート、その後ヒルトン東京(西新宿)、ヒルトン東京ベイを経て、パークハイアット東京で人事部長を務める。2007年よりザ・ペニンシュラ東京人材開発部長。


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ザ・ペニンシュラ東京のお客様の約55%は海外からのお客様。従業員も17ヵ国から採用している。マニュアルではない、スタッフ一人ひとりの人間性を活かしたホスピタリティを大切にしている。


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ホテルによって企業文化は大きく異なります。ペニンシュラはチェーンを大きくするより、1箇所1箇所を丁寧に作るという考え方です。



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『日本人が教えてくれるホスピタリティの真髄』。総支配人マルコム・トンプソン氏の著作。親日派のトンプソン氏は日本的なもののよさを尊重し経営やサービスにも反映されている。



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留学を通じ培われた自立心や積極性、多様な文化を受け入れ尊重するマインドなどに期待しています。留学生は日本の学生と卒業時期が異なりますが、採用の有無を直接問合せるくらいに積極的に応募してきて欲しいと思います。



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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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