キャリアの達人に聞く44
 
キャリアカウンセラー対談 第44回
出会った人から学び、感謝する。それがネットワークの始まり
留学中に国際公務員への道が開けたという富永さん。その進路選択が可能になった背景には、多くの人との出会いがあったからこそという。富永さんが培ってきたネットワークとはどのようなものかうかがった。

留学中に培ったネットワークは、何よりの財産

佐藤 留学中は1年間、人事プロフェショナルの団体であるSHRM(Society For Human Resource Management)でインターンシップをされたそうですね。そして、ここでのインターンシップ体験が、IMFへの応募の際に大きく評価されたとか。ここでのインターンシップは、どのようにして実現したのですが?

富永

私がアメリカの人事制度に興味を持っているということで、留学中友達になった女性が、彼女が勤めていた日本の人事関連団体の上司に紹介をしてくれて、その方からの紹介でSHRMの方にお話をうかがう機会があったんです。話をしてみると、ちょうどSHRMも国際化戦略を練っていた最中だったようで、アメリカ国外、つまり日本での人事経験を持っていた私を気に入ってくれ、インターンシップが実現しました。

佐藤

日本での実務経験を活かせる大きなチャンスでしたね。

富永

その通りです。アメリカでは就職活動の際に前職の上司からリファレンス(推薦状)をもらうのですが、SHRMはアメリカの人事のプロフェッショナルで知らない人はいないくらい高名な団体なので、ここで評価されたことは応募先の企業から信頼していただける大きなポイントになったと思います。

佐藤

そのほかにも、NYでのUNICEFのインターンを並行して行ったり、国際機関への就職を具体的に検討し始めた際には、確かジュネーブやパリまで出向いて、現地の国際機関で働く人にお話をうかがったりと限られた期間で非常に精力的に活動されていましたよね。その中で、留学中だけでなく今も続くメンター的な存在となった人々との出会いなど、富永さんは、非常に人脈作りがお上手な印象があります。

富永

ネットワーキングしようと意識したことはないのですが、要所要所でたくさんのいい方々にめぐり合えたことは幸運でした。特に私のユニセフでのインターン時代の上司にはとてもお世話になりました。豪快できれいできさくな方で、いまでも私の大切なメンターですし、お友達です。知らない人にコンタクトを取るというのは、日本人だと特にずうずうしく思われるんじゃないかと腰が引けがちですが、たぶん世の中の多くの方々は、機会があったら人をサポートしたいとか、力を貸したいと考えているのではないかと思うんです。そうでなかったら、相手から断ってくるでしょうし、その方には二度とコンタクトしなければ良いだけの話で(笑)。実際確率的には大多数の方が親身になってくださり、よく助けてくださったと思います。もっとも、私のほうでもお話をおうかがいするときには、自分はどのような人間で、どういう目的でお話をおうかがいしたいのか説明し、その機会を無駄にしないよう真剣に学ぼうとします。そしてお話をうかがっていると、「ああ、すごい」と思えることがたくさんあります。どんな人でも、一所懸命に学ぼうとしている人のことは、サポートしてあげたいと思いますよね。その姿勢が伝われば、いろいろな情報を教えてくださったり、人を紹介してくださるのではないかと思うんですよ。

佐藤

お話しされていて、富永さんの一所懸命さや真剣さがしっかり伝わって、「この人だったら紹介しても大丈夫」という信頼感を相手に与えているということもあるでしょうね。また、単に答えだけを求めているのではなく、話してもらったことを自分なりに考えて、自分なりのキャリアをしっかり構築しようとしていたことも、大きな理由ではないでしょうか。

富永

そうですね。自分が何を求めているのか具体的な方が相手はサポートしやすいですよね。「何もわからないのですが私はどうすればいいでしょうか」よりも、「私は調べた情報に基づきこういう風に考えるが実際はどうでしょう」というスタンスですね。もうひとつ大事だなと思うのは自分を印象付けるブランディングですよね。私が何を求めているのかわかりやすいでしょうし、印象に残るでしょうから。ブランディングの材料としては今までの経験や、勉強している内容などはもちろんですが、私のブランディングの一部として役立ってくれたのはフルブライトとロータリーの奨学金です。特にフルブライト奨学金はアメリカではとても知名度が高く、例えば、アパートを探すといったこと一つとっても、この奨学金を受けているというと、とても信用してもらえるんです。ブランディング以外でも、両奨学金のネットワークを通じた人脈づくりに大いに役立ってくれました。単に金銭的なサポートだけではなく、組織としてのサポートは留学生にとって大きな支えになると思います。
「要所要所で良い方々にたくさんめぐり合えたことは幸運でした。たぶん世の中の多くの人は、機会があったら人をサポートしたいとか力を貸したいと考えているのではないかと思うんです」 富永こずえさん/国際通貨基金(IMF)人事部人事オフィサー 自分に必要な環境を求めて、留学先を決定した

佐藤 ところで、留学先はどのように決めたのですか?

富永

人材開発(Human Resource Development)や組織開発(Organization Development)について学びたいと思っていたので、その関連の大学院をピックアップし、7校に申請を出しました。受かった中で、コロンビア大学大学院とジョージワシントン大学大学院のどちらにするか、実は非常に迷いました。レベル的には、コロンビア大学のほうがいいと勧めてくださる方が多かったのですが、教授たちの具体的な授業内容や少人数クラスであること、場所柄などを考えて、私にはジョージワシントン大学のほうがいいと判断しました。特に、ワシントンという場所柄、仕事をしながら学ぶ人が多いというのが決定打になりました。私自身が人事としての職業経験がありましたから、その道のプロの人たちとたくさん交流したいと思ったんです。

佐藤

自分が何を勉強したいのか、留学でどのようなことを身に付けたいと思っているのか、しっかり考えていたからこその判断ですね。出願の際に書いたエッセイでも、その辺りが評価され名門大学に合格されたのでしょうね。

富永

出願エッセイでは、自分がどんな人間で、なぜ学ぶのか、その先に何があるのか、というようなストーリー性が非常に重要ですよね。それをしっかり書く経験は、後々非常に役立ちました。特に国連関連の募集に使用されている特殊な様式のP−11という履歴書を書くときはこれまでの経験などを書くのですが、そこでもいかに具体的に、自分がやってきたことをわかってもらうかは非常に重要なんです。日本人の応募書類は結構アッサリしすぎていて、上手に自分が伝わっていないことが多いようなので、ストーリー性を持たせるように書く訓練をすると役立つと思います。

佐藤

特に社会人の場合は、実際に働いた経験の中に、留学を考えるきっかけを持つ方も多く、それを掘り下げて留学目的を明確にすることが大切ですね。ただ、富永さんのお話をお聞きしていて、やはり、留学という大きな決断をしたら、その先でも受動的に学ぶだけでなく、限られた時間と機会を最大限に活用することが成功のポイントだと改めて感じました。ジョージワシントン大学のキャリアセンターを訪ねた際に、職員の方と富永さんが立ち話をしているのをお聞きしたのですが、職員の方がIMFに合格することの難易度と共に、富永さんを非常に高く評価されていたのをうかがって、富永さんが培われてきたものの大きさを感じました。30代になってからの留学に迷う女性も多いようですが、自分が求めることが明確であれば、留学だけでなく、その先でどんな行動を取るか、年齢や経験があるからこそそれを活かせることもあると感じます。

富永

アメリカでは、30代はまだまだ若者です。また、人事という仕事柄、女性上司と働く機会が非常に多いのですが、こちらでは女性が重要な地位に就きながらも自然に働ける環境が整っているということを、つくづく痛感します。ワシントンD.C.では働く30代日本女性によくお会いしますが、みなさん本当にパワフルで、素敵な女性ばかりです。いろいろな経験をしてきたからこそ得られることも大きいと思うので、漠然と考えている方はぜひ具体的にプランをたてて、これまで自分でやってきたことに自信を持ってチャレンジしてほしいと思います。もちろん、国際公務員にも、多くの方が挑戦してくださることを期待しています。
「留学という大きな決断をしたら、その先でも受動的に学ぶだけでなく、限られた時間と機会を最大限に活用することが成功のポイントですね」 佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー
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プロフィール
とみなが こずえ/国際通貨基金(International Monetary Fund)人事部人事オフィサー。慶應義塾大学文学部卒業後、外資系会計事務所、ソフトウェア会社等で人事業務の経験を積んだのち、2006年フルブライト奨学金及びロータリー奨学金を獲得し、アメリカ合衆国ワシントンD.C.にあるジョージワシントン大学大学院にて人材開発修士号を取得。現在はIMFに人事オフィサーとして勤務する傍ら、日本人の国際公務員への就職支援、女性のキャリア支援、ワークライフバランス等に興味を持っている。社会保険労務士(渡米中につき登録抹消中)、産業カウンセラー、PHR(プロフェッショナルHR認定)、SHRM会員。


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富永さんの母校であるジョージワシントン大学でのキャリア講座の一コマ。学部生向けに先輩たちがインターンシップの体験談を語っている。ワシントンD.C.という地域の特徴かインターン先は国際機関や政府関連の団体が多い。


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「自分はどのような人間で、どういう目的でお話をうかがいしたいのかを説明し、その機会を無駄にしないように真剣に学ぼうとする」—紹介をしていただくときや、信頼関係を築いていくときに大切なことだと思います。


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アメリカでは、30代はまだまだ若者です。漠然と考えている方は具体的にプランを立ててこれまでの経験に自信をもってチャレンジしてほしいと思います。




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米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
佐藤江利奈
 
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