キャリアの達人に聞く46
 
キャリアカウンセラー対談 第46回
勉強以外の経験こそ、仕事の世界で生きてくる
海外の大学・大学院に留学している人だけでなく、留学を終えた人、語学留学・ワーキングホリデーなどの経験を積んだ人に、広く応募の機会を提供している資生堂。採用のポイントは語学力ではなく、海外での経験をいかに仕事に生かせるかだという。グローバル化が進む同社で求められている人材について、人事部人材開発室人材育成グループの川村浩之氏に語っていただいた。

歴史やビジョンを
語る力が求められる


佐藤 「春選考」、「夏選考」と2回に選考を分けていらっしゃいます。特に「夏選考」は留学生にとって応募しやすい時期になっていますが、採用の基準としては、何か違いを設けているのですか。

川村

いえ、春も夏もまったく同じ基準で選考します。留学経験者の方々には、学校で学んだことだけでなく、サークルやコミュニティでの活動など、現地での経験もアピールしてほしいと思っています。語学力が高いというだけで採用に有利になることはありません。

佐藤

留学生の場合、海外にいる分、就職の情報が足らないのではないかと不安に感じている人が多いのですが、例えば留学生のほうが自己分析が完全にできていないとか、そういったことは見られるでしょうか。

川村

その点に関して問題と感じたことはありません。ただ、留学している分、日本では得られない経験を積んだとか、自立心を養ったということを期待していますから、その体験を具体的に伝えてくれるといいですね。

佐藤

日本の大学では、同級生は同じ日本人だというだけでなく、年齢や関心事がとても近く、いわば“あうんの呼吸”で大学生活を送ることができますよね。その点、海外の大学は、国籍だけでなく年齢や職業経験など、バックグラウンドのとても異なる人が集まってきます。そんな中で何かを成し遂げたという経験は、きっと仕事にも生きてきますね。

川村

そうですね。弊社では69の国と地域で商品を販売しているので、多様性や柔軟性が人材要件のひとつであると考えます。例えば、同じ商品を販売する場合にも、それぞれの国で美容の習慣に始まり、現地の法律、現地法人の制度なども異なるため、それぞれ少しずつその国に合わせたものに変えていきます。

佐藤

共通語はやはり英語でしょうか。

川村

英語に加え、中国語も重要な言語のひとつと捉えています。ただ、あくまでも言葉はツールであって、資生堂の理念を海外に伝えるための歴史やビジョンを語れる力、そして世界中のお客さまに資生堂と暮らしていただくために必要なことを実行する力が必要なんです。

佐藤

「一瞬も一生も美しく」というコーポレートメッセージをお持ちですが、単に美容だけでなく、環境問題やQOL(Quality of Life=生活の質)の向上など、社会や個人の生活全体に目を向けていらっしゃるんですね。

川村

ぜひそういう点も理解している方に入社してほしいですね。ただ、採用にあたっては、まず私どもが働きたいと思っていただける会社として選んでいただく立場で、学生の皆さんに応募していただかなくては何も始まりません。そこで、ボストンキャリアフォーラムなどで、できるだけ弊社について知っていただく機会を設けています。
「海外の大学は、国籍だけでなく年齢や職業経験など、バックグラウンドの異なる人が集まってきます。そんな中で何かを成し遂げたという経験は、きっと仕事にも生きてきます」 佐藤江利奈/留学ジャーナル キャリアカウンセラー 留学経験が
自分の「よりどころ」となる


佐藤 社内には留学経験のある人が多いのですか?

川村

留学経験者であるかどうかを意識して採用しているわけではありませんが、短期の語学留学経験者なども含めると、かなりの数に上りますね。

佐藤

もし、留学経験者にとって就職に有利なことがあるとすれば、それは何でしょうか。

川村

社会に出て仕事をするにあたって、自分にとっての強み、あるいはよりどころとなるような、「私にはこれを乗り越えた経験がある」と思えることがあるといいのではないでしょうか。留学経験者の場合は、すなわち海外留学ということになるのではないかと思います。

佐藤

いろいろな壁にぶつかったときに、自分を支えてくれる、よりどころとなるものですね。

川村

そうですね。それと、先ほどおっしゃられたように、バックグラウンドの異なる人の中で生活してきた経験から、先入観を持たず、物事を公正な目で見るという力が養われているかもしれません。

佐藤

その点に関しては、期待できると思います。

川村

弊社では、資生堂社員として育むべき能力と感性の指針を、「美意識」「自立性」「変革力」と定めています。「美意識」とは、単に見た目の美しさだけでなく、立ち居振る舞い、マナー、そして生き方や想いなど、自分に美学を持ってほしいということです。

佐藤

その点はぜひ、応募者の方々に心にとどめておいてほしいですね。世界に資生堂ブランドを根付かせるためには表面的な華やかさだけでなく、“強さ”とも言える美意識が必要かもしれませんね。今日は貴重なお話をありがとうございました。
「『私にはこれを乗り越えた経験がある』と思えることが何か一つあるといいですね。留学経験者の場合は、それが、すなわち海外留学での経験になるのではないでしょうか」 川村浩之さん/株式会社資生堂 人事部人材開発室人材育成グループ
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プロフィール
かわむら ひろゆき/資生堂が積極的な海外展開を始める直前の1992年に入社。就職活動では、仕事内容や扱う商材より、人の喜びを自分の喜びとすることのできる環境を重視した。1996年に資生堂労働組合中央執行委員の任につき、従業員側の視点から人材育成制度や評価制度の構築に関与、皆が持てる能力を最大限に発揮できる環境づくりの重要さを痛感。現在は人事部人材開発室人材育成グループに所属し、社員研修の担当を経て、大学での講演やボストンキャリアフォーラムへの出展など、採用機会の拡大と学生の就業意識の醸成に努めている。


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例年10月頃開催されるボストンキャリアフォーラム。2008年も初日だけで学生参加者数は4000人を超える。


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「多様性の中に身をおいていることで先入観を持たずに公正な目を持つ力が養われる」。そんな点も留学生に期待されているようだ。


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「一瞬も一生も美しく」というコーポレートメッセージには生き方そのものとも言える美意識が窺える。資生堂の社員として育むべき能力・感性の指針として「美意識」「自立性」「変革力」をあげている。



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佐藤江利奈
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
(株)リクルートでの採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを通して、これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
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