モノになる留学ができる、その理由
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就職成功の秘訣  
今月の成功者
-- Photo -- 岩崎愛さん(22) Wichita State University(スポーツマネジメント専攻) 卒業、大手スポーツメーカー海外営業部勤務

「大好きなスポーツに関わる仕事ができたら・・・」と考えていた岩崎愛さんは、アメリカの大学ではスポーツマネジメントの研究が盛んなことを知った。現地でインターンシップなど貴重な経験を積んだ後、インターネットを利用して就職活動を開始。見事大手スポーツメーカーへの就職を果たした岩崎さんの軌跡を追ってみよう。
↓
成功のポイント 1)在学中から知人やインターネットを利用し情報収集に努め、チャンスを探した 2)インターンシップやバンド活動などを通して仕事に必要な“実践力”“応用力”を身に付けた 3)留学経験で培ったバイタリティを、就職活動でアピールした
 
岩崎愛さんのステップアップ

2003年5月
高校2年。海外の大学への進学を考え、留学ジャーナルを訪問
2003年夏
アメリカのUCLAに3週間短期留学。アメリカへの進学を心に決める
2005年3月
女子美術大学付属高校卒業
2005年5月
アメリカのWichita State UniversityのESLに通い始める
2005年8月
Wichita State Universityにて授業開始。専攻はスポーツマネジメント
2008年6月
日本に一時帰国。一時帰国中、日本のプロ野球チームでインターンシップを経験したり、東京でキャリアフォーラムに参加したりする
2009年6月
卒業、帰国。企業への応募、面接を続ける
2009年10月
大手スポーツメーカーの海外営業部で採用が決まる
「留学中につらかったことをどう乗り越えたか。それが企業へのアピールになりました」
「運動は得意ではないけれども、スポーツは好き。そんな私にピッタリの専攻分野が、アメリカの大学にあることを知りました」

幼いころから絵を描くことが好きで、中学・高校と美大の付属校に通った岩崎愛さん。高校2年になり、そろそろ進路を意識するころになって、「これまで絵の勉強ばかりしてきたけれど、ひょっとしてほかの道を進むこともできるのでは」と思うようになった。「日本の大学では学んでみたい分野が見つからなくて、海外への留学を考えていたんです。そんなときに雑誌『留学ジャーナル』を見て、アメリカの大学にはとても多くの専攻があること、中には“スポーツマネジメント”のような勉強もあることを知りました」。

自分でスポーツをするのはあまり得意ではないけれど、観戦するのが好きで、アメリカのプロバスケットリーグNBAの試合などをよくテレビで見ていたという。留学ジャーナルへ相談に訪れ、スポーツイベントの企画や運営、選手のマネジメントなどをするスポーツマネジメントの仕事は、「運動は得意ではないけれど、スポーツは好き」という岩崎さんのような人にピッタリの分野だということに気づいた。

高校2年の夏、アメリカの大学UCLAが高校生向けに開いているプログラムに参加し、アメリカの大学に入りたいという意思が固まった。出願したのは、カンザス州にあるWichita State University。TOEFLテストの点数が若干不足していたため、早めに渡米してESL(English for Second Language 留学生向けの大学付属英語集中コース) に入り、大学の授業開始後も約3ヵ月通った。「実はそれがすごく役に立ったんです。授業で出すのに必要なレポートの書き方を、ESLで教えてもらうことができ、一人で悩む必要がありませんでした」。ただし、授業は大変だった。日本では中学生のときから英会話スクールに通っていたので、基本的な会話はできるようになっていたが、「最初のうちは先生が何を言っているかさっぱりわからず、ほとんど泣きそうでした(笑)」。

そんな岩崎さんを助けてくれたのは、寮で同室だったインド人の留学生。英語の得意なその女子学生にレポートなどを手伝ってもらいながら、岩崎さんは数ヵ月かけて大学での生活になじんでいった。

スポーツマネジメントの専攻で学ぶのは、基本的な経営学やファイナンス、マーケティングなど。さらに、授業の一環のインターンシップで、実際にスポーツイベントの運営に携わる機会もあった。「アメリカのプロ野球には、地方の小さい都市で試合をするマイナーリーグというのがあります。マイナーリーグのチームがアメリカ中から集まるイベントが地元で行われ、チケットの販売やグラウンドの整備など、さまざまな手伝いをやらせてもらいました。授業で習った基礎的なことを、実践ですぐに活かすことができたんです」。

しかし、留学生活は楽しいことばかりではなかった。大学があったのはアメリカでも外国人があまり多くない地域で、スポーツマネジメントを専攻している留学生は、何と岩崎さん1人。「みんなに迷惑をかけてはいけないので、『私にとって英語は母国語じゃないから、わからないこともあります』と最初にはっきり伝えました。それでも、私だけついていけないことがありました。普通ではできない体験がしたいと思って地方の大学を選んだのですが、みんな外国人に慣れていないのかシャイなのか、地元の人と気軽につきあうことができずに悩んだ時期もありました」。

  一時は別の大学へ移ることも真剣に考えたそうだが、そんな生活が一変したのが、入学して1年半ほど経った頃、日本人学生とともにバンド活動を始めてから。「メンバーが一人帰国することになりたまたま誘いを受けたんです。3人構成で、それとマネジャーが1人。自分たちでCDを作って地元のバーに売り込み、『演奏させてほしい』と頼んで歩きました」。曲はオリジナルで、歌詞は日本語。最初は「アジア人の学生がなぜこんなところで」とけげんな顔をされたが、いざ演奏が始まると客の態度が一気に変わり、声をかけてくれるバーも増えていったという。「中には、『オレは昔、日本に行ったことがある』という人がいて、話がはずんだりしました。言葉が十分でなくても、音楽という手段で通じ合えることって大きいんだな、と思いました」。

卒業後の進路を考え始めたのは3年生になった頃。バンドのメンバーの中には、プロのミュージシャンを目指す人もいた。岩崎さんも最初はOPT(Optional Practical Training:専攻内容と関連する仕事をするために最長1年間滞在できる制度)を利用してアメリカで就職することと、日本に帰国して就職することの両方を検討していた。3年目の終わりに日本へ一時帰国。約2ヵ月の一時帰国期間を有効に使い、アメリカにいるうちからネットで調べてコンタクトしていた会社を通じてプロ野球関係のイベントでインターンシップを経験したり、東京のキャリアフォーラムに参加したりした。「そのころはまだ目標が定まっていなかったんですが、アメリカに帰ってからやはり日本で就職したいという気持ちが強くなり、本格的に情報収集を始めました」。インターネットで就職関連のサイトに登録。資料を取り寄せ、自分なりに工夫して書いた履歴書を送り就職活動を続けていった。

6月に卒業、帰国するとともに留学ジャーナルでキャリアカウンセリングを受ける。「最初は“こういうことをしました”と機械的に並べているだけだったんですが、アドバイスを得て、自分の経験から何を学んだか、それが企業にとってどう役に立つかをアピールできるよう努めました」。スポーツ業界に限らず、音楽やイベント、英語や海外での経験を活かせそうな業界や仕事に応募範囲を拡げて本格的に面接などを受けているうちに、あるとき大手スポーツメーカーの海外営業部で採用を行っているという話を聞いた。ホームページに掲載されていた採用の条件は中途採用だったが、「新卒でもかまわないでしょうか」と、自ら電話で問い合わせて応募。「面接では、留学してスポーツマネジメントを学んだことはもちろん、つらかったり苦しかったりする中で、それをどう乗り越えたかをアピールしました」。こうして帰国して4ヵ月目、10月に採用が決定。約50社に上る企業にコンタクトした後に、本当に求めていた仕事に出会った。

「現在の仕事内容は貿易事務で、ヨーロッパを担当しています。電話やメール、書類などほとんどの仕事で英語を使うのですが、インターンシップのときに、仕事で使う英語を習ったのが、今、とても役に立っています」。立場は新卒ながら、現場では即戦力扱い。海外の代理店や船会社とのやりとりが頻繁にあり、気の抜けない毎日だ。「でも、プロ選手も一般の大人の方も子どもたちも、いろいろな方が、私の手で送り出したものを使ってスポーツを楽しんでいてくれている。そう思うと、とてもやりがいを感じます」。

キャリアカウンセラーが分析

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キャリアカウンセラー 佐藤江利奈
留学ジャーナルキャリアカウンセラー。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。(株)リクルートで採用支援の企画営業、人材紹介会社でのコーディネーターなどを経て、現職。これまで大学生から社会人まで幅広い年代2000人以上の就職・転職希望者に対しセミナーやワークショップ、キャリアカウンセリングを行う。
  多くの就職相談を受け、体験談を取材する中で、就職に成功する留学生にはいくつかの共通点があります。今回はそのうちの2つについてお話しします。

まず一つは『情報収集(リサーチ)力』。インターネットの普及で情報収集は随分と便利になりましたが、「調べるべきもの」が明確でないとせっかくのツールも役に立ちません。単なるネット上の「検索力」だけではなく、日頃から人とのコミュニケーションを通じて生の情報を得たり、自分の価値観に気づくことで調べるべき「欲しい情報」を明確にし、キャッチする能力が必要です。岩崎さんの大学には日本人は少なかったようですが、それでも知り合った日本人同士で情報交換をしながら一時帰国の滞在期間を無駄にしないように計画的に動きました。日本の大学にいれば、大学3年生の秋にもなれば、それほど意識しなくても周囲が“就活モード”になりますが、留学生の場合は、意識的に情報収集できたかどうかで差がつきます。

二つ目は『行動力』。『実践力』ともいえます。一つ目で『情報』そのものが、行動に伴って得られることが多いと述べましたが、行動範囲が拡がり難易度の高い挑戦をすれば、時には失敗もあります。しかし失敗から学んだことは記憶に残り、そして体得できます。それらの経験こそ、社会に出てからの応用力として効いてきます。また、異文化の中で多様性を受け入れつつ問題を解決してきたタフな行動力は、顧客・マーケットの多様化や中途採用などで組織そのものが多様化している昨今の企業にとって大きな魅力といえます。

研究職や専門職で深い知識が求められる場合は別ですが、若い人材に求められる社会人基礎力(総合力)という点では、応募先と同業同職種のインターンでなくても、イベントやバンド活動、ボランティアなど、そのとき「どのように考え、動いて、その結果どうなったのか?」そして、「それらの経験は入社後に応用できるのか?」それがイメージできれば人事担当者は、あなたをチームメイトとして迎え入れる可能性が高くなります。

岩崎さんの現在のお仕事は、スポーツメーカーでの貿易事務。「スポーツ」というキーワードで重なるものの、仕事内容そのものは専攻やインターンシップの内容と直接の関係はありません。人気企業欠員補充(1名)、経験者の募集であれば競争率は高かったと予想されます。採用されたポイントはどこだったのか、岩崎さんなりの感想を聞いてみました。「入社してみて、実務そのものは、経験者であっても入社後に覚えなくてはならないことがたくさんあることがわかりました。それよりは、納期の調整を物流会社に依頼したり現地の受注先と交渉したり、性格的にタフでサバサバした人の方が向いている気がします。未経験であってもそこを評価されたのかもしれません(笑)」。

今は、貿易の実務という新たな経験を積んでいる岩崎さん。この経験が、いつか留学時代の様々な経験と重なって新たな価値を生み、更なる活躍をされるのではないかと思います。



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