UNFCCC事務局 持続可能な開発メカニズム(SDM)プログラムオフィサー 鈴木健次郎さん

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世界のために、できること 国際機関で働こう!

グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた

Vol.12 自分が関わった計算方法が世界中で使われる喜び

UNFCCC事務局 持続可能な開発メカニズム(SDM)プログラムオフィサー 鈴木健次郎さん

気候変動の専門知識を駆使して地球環境に貢献する

鈴木さんの1日
8:15自宅から徒歩5分のインターナショナルスクールへ子供たちを送る
8:20そのまま歩いて、学校のすぐ隣にある職場に出勤
8:30メールチェック。頭のさえている午前中の時間を使い、優先業務の資料を仕上げる
11:00チーム・ミーティング。専門家会合の準備や各案件の進捗状況についてチームで確認
12:30自宅に戻ってランチ
14:00専門家との電話会議。専門家会合で話し合われる各案件について事前協議
15:00担当業務の資料作成。同僚の作成した文書へのレビュー、フィードバック
18:00帰宅
19:00家族と一緒に夕食、一家団欒。日が長い夏の間は、週に1、2度、フルマラソンに向けてナイトラン

 地球温暖化は人類が解決しなければならない最重要課題のひとつだ。ドイツのボンに本部を置く国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は、「気候変動枠組条約」、「京都議定書」、「パリ協定」の実施のために必要な業務を担っており、毎年開かれる気候変動枠組条約締約国会議(COP)の準備、運営のサポートなどを行っている。

 その中で、鈴木健次郎さんが担当しているのが「クリーン開発メカニズム(CDM)」だ。先進国が途上国で温室効果ガスの排出量削減、吸収増大のプロジェクトを行った場合、削減された分の排出権を自国の削減目標に充てることができる。この仕組みのルール作り、方法論を検討する会議の開催、さらには排出削減量の計算方法を考え、世界中で行われている排出削減プロジェクトの審査、評価もする。まさに地球規模の仕事だ。
「自分が関わった計算方法が世界中のプロジェクトで使われ、気候変動問題の解決に貢献していると思うと励みになりますね」と鈴木さんは語る。常に国益を超えた「地球益」を意識しているという。

 具体的な仕事としては、専門知識を生かして計算方法などの新しい方法論を提案し、作業部会を開いて検討する。作業部会にはアメリカ、ナイジェリア、ブラジルなどから招いた外部の専門家5~10人が出席。次に約20人が参加するCDM理事会を開催する。ここで新しい方法論が承認されれば、各国で進められる何千ものプログラムで使われることになる。

 例えば、排出削減量の計算方法は何通りもある。科学的な正確さだけではなく、途上国の人が使いやすいシンプルなものかどうか、コスト面で実現可能かどうかも考えて最適なものを選ぶ。理論と現実のバランスをとり、科学の専門家と途上国の人々をつなぐ役割が期待されているのだ。
 専門家との作業部会では3~5日間、昼夜を通して議論が白熱する。
「国籍もバックグラウンドもさまざまな専門家や事務局の同僚と喧々諤々、議論をするのは刺激的。おもしろいですよ」

 仕事を進めるうえで大事なのは会議の前の準備だ。議論の叩き台を作り、あらかじめ電話会議やメールで専門家と話を詰めておく。会議は時間が限られているので、数点の確認をすれば合意できる形にしておく。

 鈴木さんは学生時代に自転車で世界各地を旅して、途上国の暮らしぶりを目の当たりにした。東京大学大学院農学生命科学研究科を修了すると、ODAなどのコンサルティングを行う会社に就職した。そこで気付いたのは、自分には知識も専門性もないことだった。地球の気候変動に興味を持っていたので地球環境部を希望して異動し、気候変動問題にかかわる仕事で経験を積んだ。

鈴木さんの着任までのStep

2000年3月東京大学農学部卒業。在学中に、半年ほどニュージーランド・オークランドに語学留学

2002年3月東京大学大学院農学生命
科学研究科修了。自転車で
地球の1/4ほどを放浪
 

2002年4月(株)パシフィックコンサルタンツインターナショナルに勤務。インドネシアやトルコでの流域保全などに関するODAプロジェクトに従事

2004年2月パシフィックコンサルタンツ(株)に勤務。気候変動問題、特に京都議定書に関するコンサルティング業務を行う

2008年4月アジア開発銀行(ADB) 地域・持続可能な開発局(RSDD) 勤務。50件以上の気候変動プロジェクトの評価、開発

2010年5月UNFCCC事務局持続可能な開発メカニズム(SDM)プログラムに勤務

国連が採用するのは即戦力
専門性が求められる

「国連が採用するのは即戦力の人材です。入る時点で、ある程度の専門性を求められます。私はこの会社で専門性を付け、かつ途上国に出張して現場を経験させてもらえました。日本企業ならではのよさだと思います」

 現在の勤務地のボンでは週末にライン川沿いをランニングし、自宅とオフィスと子供が通うインターナショナルスクールがすべて徒歩5分圏内という快適な生活を送っている。
「最初に勤めた会社ではトルコに6ヵ月、インドネシアに2ヵ月など、長期出張することが多かった。ロマンのある仕事でしたが、家庭を持つとなかなか厳しい。今は先進国にいながら途上国の開発を支援する仕事ができています」
 気候変動の分野で最前線の仕事をしているという充足感も大きいという。

 実は鈴木さんは2回目の挑戦でUNFCCCに採用された。ポジションごとに募集があるので、5つのポストに応募していた。最初にそのひとつの電話インタビューがあり、ボンで面接と筆記試験を受けたが不合格だった。

「国連には独特のインタビュー形式があります。チームワークやリーダーシップの話をするときは具体的な成功事例を出さないといけなかった。私が落ちたときに採用された人が今は同僚ですが、確かに優秀です(笑)。2回目に合格したときは、うれしかったですね」

挑戦しないでいるより
挑戦して失敗する方がいい

 2010年にUNFCCCに入り、最初の契約は1年半、その後は3年ごとに更新されている。その間には、鈴木さんの部署で3割の人が減らされる大リストラもあった。

「国際機関はシビアな面もありますが、それを承知のうえで挑戦してほしい。優秀な人たちと伍していくには、自分の強みは何か、勝てるものは何かを見極め、それを生かすことが大事です。自分のやりたいことを真剣に考え、専門性をきちんと付ける。将来の不確定要素はたくさんありますから、あまり長いスパンで考えない方がいい。It is better to try and fail than fail to try.です」

国際機関で働くまでの道のり

自転車で世界を旅して
途上国の現状に触れる

いろいろな経験を積もうと大学3年生のとき1年休学。ニュージーランドの語学学校で半年間、英語を学ぶ。英語は苦手だった。自転車でイラン、パキスタン、トルコなどを旅し、学生時代に地球4分の1周分を走る。その中で「途上国の“地球環境にやさしい経済発展”に貢献する仕事をしたい」と思うようになった。

コンサルタントとしての
心構えと仕事術を学ぶ

大学院修了後、(株)パシフィックコンサルタンツインターナショナルに就職し、農業開発部でODA案件を担当する。希望を出して地球環境部に異動。気候変動問題のコンサルティング業務を行う。コンサルタントとしての心構えや仕事のやり方を学んだ。「勉強して成長できた時期。当時の経験が今の仕事に生きている」。

より大きな舞台を求めて
東京からマニラ、ボンへ

6年の勤務を経て、国際舞台でより大きな仕事に挑戦したいと思うようになる。環境系の大学院留学も検討しつつ、アジア開発銀行に転職。家族で本部のあるマニラに移る。気候変動プロジェクトの評価や開発を担当した。2年後、気候変動の国際的なルール作りに関わりたいと、ボンに本部のあるUNFCCCへ。

UNFCCC事務局って?

UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局の活動

UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局とは、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を目的とする条約(UNFCCC)及び京都議定書、パリ協定の実施を遂行するための事務局。COPなど政府間プロセスの準備や締約国へのサポート、また気候に関するアクションへのサポートを行う。本部はドイツのボン。職員数は80ヵ国435名に及び、日本人職員は現在8名。締約国は197ヵ国。


ドイツ・ボンにある国際会議場の風景
UNFCCC事務局がサポートする会合のひとつ、
第14回技術執行委員会
2015年にパリで開催されたCOP21では、
2020年以降の新たな国際枠組みを定めた
『パリ協定』が採択された
2017年はCOP(気候変動枠組条約締約国会議)の議長国を
フィジーが務め、11月にボンで開催される
UNFCCC事務局のある、
ドイツ・ボンの
国連キャンパスの風景。
ライン川沿いに位置し、
周辺には緑が多い
©UNFCCC secretariat

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国際機関の採用面接

 国際機関の書類審査を通過後、採用の最終段階で「面接」が実施される。今回のUNFCCCの鈴木さんも電話インタビューがあったと書いているが、国際機関での面接では電話やスカイプを通じて行われることが多い。面接準備として、応募する国際機関やポストのことを調べておくことはもちろんだが、国際機関の面接では、志望動機や専門知識のほか、特にコンピテンシー(適性)に基づいた質問がなされることに留意が必要。過去の具体的行動の事例をもとに、候補者本人の行動の特性を明らかにし、同じような状況に置かれた際の行動をみる面接手法である。例えば、面接では失敗談について聞かれるが、「失敗した経験はない」と回答する必要はなく、その事態にどのように対処したかを答えることが重要。

外務省 国際機関人事センターhttp://www.mofa-irc.go.jp/

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