佐藤 |
小杉先生は、人事の経験もお持ちで、これまで実際に多くの留学経験者の面接もご経験されていると思います。一般の留学でもっとも多いのは語学留学ですが、これは本当にキャリアアップに役立つのでしょうか? |
小杉 |
実際、遊びに行っている人も多いので、「遊学」と思われがちですね。ただし、たとえば留学中に、自分が将来働きたいようなショップで働いて、顧客に接した経験をマーケティングレポートとして提出するとか、何か形にすれば有効でしょう。ただ語学を勉強してきました、というだけでは、何かをやりたいという意志が伝わりにくい。 |
佐藤 |
『英語を使う仕事』に就きたいという方はとても多いのですが、勉強した語学を使って、何ができるかということが大切なのですね。 |
小杉 |
そうですね。例えば、セリエAで活躍する中田英寿選手は、イタリア語で現地の記者達と見事なまでのやりとりをしていますよね。それがまた彼のオーラを倍加させています。英語ですら満足に記者会見できるプロスポーツ選手がほとんどいないことが余計に彼を際立たせている。
では、彼がすばらしいイタリア語の使い手だから賞賛されるのかと言えば、そうではなく、あくまで本業のサッカーの技術、プレーがあるからですよね。これこそが留学、語学力の使い方というものを端的に表していると思います。留学はあくまで手段、語学力はツールでしかない。大切なのは、それを使って何ができるの? ということなのです。 |
佐藤 |
語学習得より目的が先。何かをやりたいから、語学を勉強する、ということですね。そう考えると、語学というツールだけにこだわっている人も多いかもしれませんね。まず語学ができないと、と思い込んでしまっている。 |
小杉 |
ちなみに、中田選手は高校時代から税理士の勉強をしていたことでも有名です。彼は、将来一流のビジネスマンになるという夢も同時に持っていた。イタリア語と税理士の勉強をするサッカー少年はかなり異様だったでしょう。でも、彼は明確なビジョンを持っていたし、さらに「サッカーは一生の仕事ではない」、と言い切れるところが彼のすごさです。 |