技術職でも英語力が強みになる場面がますます増えている
携帯電話キャリアauを展開する通信会社KDDIは、近年、電気、金融、コマースなど、ライフデザイン領域での幅広い事業に進出しています。さらに、注目されるのがグローバル事業。現在、ヨーロッパを中心としたデータセンターの運営や新興国ミャンマーでの通信事業などに力を入れています。海外の取引先とのやりとりが増える仕事現場では、どのような人材が求められているのでしょう。採用担当の秋津佳さんにお話を伺いました。
アジアを舞台に北欧や中東の企業とビジネスで競争
田仲今回、御社のWebサイトを拝見していて、事業領域が広いことに驚かされました。現在、特に力を入れている事業は何でしょう?
秋津ケータイ・スマホをひとり1台以上持つ時代になり、国内の通信事業は成熟期に入りました。そこで、企業として成長を続けるために、新たな事業分野を開拓しています。KDDI全体として力を入れているのは、ライフデザイン事業とグローバル事業です。
田仲ライフデザイン事業というのは、最近、CMでも見る電力販売事業などですよね?
秋津はい。電力販売だけでなく、アプリなどのコンテンツ販売、金融、教育など、生活をする上で欠かせないサービスを提供しています。通信を軸として、ライフデザイン領域に進出していき、相乗効果で国内の通信事業も拡大していくのが狙いです。
田仲もう一方のグローバル事業もたいへん気になります。
秋津通信事業会社としては、国内から海外へどんどん市場を広げていくステージに入ったと考えています。現在は、通信用のサーバなどの機器を管理するデータセンター事業を世界13地域24都市48拠点で展開しています。これは、「グローバルICT」といって主に法人向けのサービスです。そして、2013年からはコンシューマ(一般消費者)向けの事業として、ミャンマーでの通信事業をスタートしました。これからは、日本での通信事業者としての経験やノウハウを活かして、グローバル市場でもコンシューマ向けの事業を広げていくつもりです。
田仲なぜ欧米ではなく、新興国のミャンマーを海外展開の拠点として選ばれたのでしょう?
秋津民主化され、ビジネスとして未開拓の地であったこと。さらに、5,000万人以上の人口がいて、大きな成長が期待できたことが挙げられます。ミャンマーのほうで国策として通信キャリアをつくる動きがあり、2013年に公募があったんです。そこで、住友商事さんとKDDIで合弁会社をつくって、2014年に新規参入しました。当時、ミャンマーは携帯電話の普及率が5%、通信の人口カバー率が30%という状況で、政府としても経済を高度化するために通信インフラが重要なファクターだと位置づけていました。当社を含め、3社の外資系企業を誘致して、競争を促した結果、2017年3月時点で、携帯電話の普及率は101.3%まで伸びました。これは驚異的です。
田仲なるほど。アジアはまだチャンスの宝庫なんですね。ちなみに、競合となる他社はどちらの企業なのでしょう?
秋津ノルウェーとカタールの通信会社です。いずれも資本が豊富な強豪です。
田仲日本の大手通信会社であるKDDIさんがアジアの新興国を舞台に、北欧や中東の企業とビジネスで競争しているなんて驚きです。実は、相当グローバルなんですね。こうした事業に興味を持って、新卒採用募集にエントリーしてくる学生は増えていますか?
秋津非常に多いですね。会社説明会でもミャンマーでの事業を紹介していることもあり、新興国の発展に自分自身も寄与したいといった学生が増えているのは顕著に感じます。学生時代から新興国でNPO活動やボランティアに参加した経験をもつ学生も多いですね。そういう学生たちは、「情報格差をなくしたい」という強い思いを持って、KDDIを志望してきてくれます。
田仲私のイメージですと通信事業者ということで、技術系の採用も多いと思うのですが、理工系の学生さんたちもグローバル化は進んでいますか?
秋津ひと昔前はやはり技術系の学生は、「自分の研究分野の専門知識はあるけど語学はちょっと・・・」みたいな人が多かったのですが、最近は、技術と語学の能力を兼ね備えた学生も増えてきていますね。まだまだ業務系の採用者と比べると少ないですが。
田仲私も最近、都内の理工系大学で話を聞いたところ、TOEICの卒業までの目標スコアを600に設定して、入学時からとても英語に力を入れているとのことでした。今やそういう時代なんだと驚きましたね。
秋津技術系でも留学経験や語学力があることが当たり前になる時代になっていくのかもしれません。そもそも通信系の新しいテクノロジーは欧米発信が多いので、最新情報を得るために英語で論文や記事を読む必要があると認識している学生が多くなっている気がします。
田仲確かにインターネットの普及で、海外の情報も即時に入手できるのですが、英語がわからないと翻訳されるまで手に届かないわけですからね。
秋津そうです。語学を学んで、情報を自ら取りに行く時代です。
田仲御社の仕事の現場でも海外出張に行ったり、海外の技術者と話したりするときに、英語でのコミュニケーションが必要ですよね?
秋津そうですね。ますます増えていくと思います。