異国の地で周囲を巻き込みながら何かを成し遂げたエピソードを聞きたい
携帯電話キャリアauを展開する通信会社KDDIは、近年、電気、金融、コマースなど、ライフデザイン領域での幅広い事業に進出しています。さらに、注目されるのがグローバル事業。現在、ヨーロッパを中心としたデータセンターの運営や新興国ミャンマーでの通信事業などに力を入れています。海外の取引先とのやりとりが増える仕事現場では、どのような人材が求められているのでしょう。採用担当の秋津佳さんにお話を伺いました。
求められるのは、イノベーションを起こす新鮮な発想力
田仲新卒採用では技術系と業務系の割合はあるんですか?
秋津2019年度の新卒採用数は、全体で300名。割合は50対50で、技術系150名、業務系150名で計画しています。
田仲求める人物像というのがWeb上にも書かれていましたが、近年、特に重視している人物像や資質はありますか?
秋津新しい事業をどんどん展開していくなかで、さまざまな情報を自分から吸収して、新しいことにどんどんチャレンジしていく人に魅力を感じます。社内でも、周りを巻き込みながら、新しい事業をがんがん進めて行くような人材は、まだまだ少ない。なので、新卒の学生には、その部分を大いに期待しています。目標は、ユーザーネットワークや通信インフラ、技術力、コンテンツ力といったKDDIの資産を外部のアイデアと組み合わせて、新しいイノベーションを起こすこと。つまり、「オープンイノベーション」を担える人材を育てていきたい。そうなると求められる資質は、新たな事業創造につながる発想力かもしれませんね。新社長の髙橋誠も「ワクワクさせる会社」ということを言っていて、世の中を楽しくさせたいといった思いを持って常に前に進んでいく人材が必要だと思っています。
田仲「指示待ち」の人が多いというのは、私もキャリアカウンセリングの現場で感じることがあります。言われたことは何でもできるし優秀、でも特に自分からこれをやりたいというのはない、という...。
秋津学生のうちからそうなのは困りものですね。やはり学生には、希望に満ちあふれた状態で入社してきてほしい。そのためにもKDDIに入ってから新しい分野にチャレンジする機会というのを人財開発としてもつくっていきたい。現在も当社として戦略的に強化すべき部門への社内人財公募であったり、FA宣言して自ら部署異動したりする仕組みもあります。キャリアは自分でつくれるものだと思っているので、入社後も「これをやりたい」という思いをしっかり持ち続けてほしいですね。
田仲これだけ多彩な事業があるわけですから、若い世代が「今の時代、こうだからもっとこうするといいですよ」と積極的に動いてくれれば、会社にとっても本人にとってもおもしろい展開が期待できますね。
秋津まさにおっしゃる通りです。KDDIという大きな組織だからこそできることが必ずあります。最近は、ベンチャー企業を経験してから、スケールメリットに魅力を感じて、KDDIに転職してくる方も多いです。
田仲キャリア採用にも力を入れて、人的な投資を積極的に行っているんですね。
秋津そうですね、ここにきてライフデザイン企業への変革という事業方針のもとで、新規事業領域に対して人への投資を増やしています。
田仲改めてお伺いするのですが、この巨大なグローバル企業で新しいことにチャレンジする際には、語学力は強みになりますか?
秋津新卒に関しては、語学力がマストかというとそんなことはありません。ただ、求めているのは確かです。会社としても経営幹部向けに半年間の海外語学研修プログラムをつくったり、若手の海外留学サポートの仕組みをつくったりして、社員のグローバル化を推進しています。ただ、やはり入社してしまうと留学したりするのはなかなか難しいので、学生のうちに英語をしっかり勉強しておくよう内定者には伝えています。
田仲エントリー学生の留学経験者の割合は増えていますか?
秋津業務系は本当に英語ができる人が多いですね。もちろん留学経験者も。エントリーシートを見ているとすごいなと思います。1ヵ月の短期留学なんて当たり前になってきているのが実情です。
田仲最近は、理工系の大学でも「これからは英語が必要だから」といって、独自の語学研修をつくったりしていますからね。
秋津英語力に関しては数年前に比べたら格段に上がってきているなという気はします。
田仲そう考えると新卒の学生さんにとっては、エントリーシートで英語テストのスコアが出せるかどうかがひとつの鍵になりますね。
秋津まあ、そうですね。それだけじゃないですが、英語のスコアはひとつの定量化した判断材料となっています。
田仲(英語テストのスコアは)やっぱりあったほうがいい?
秋津あったほうがいいですね(笑)。
田仲確かに同じ条件で同じ経験をした大学生でも、英語力のない人とある人とでは、入社後に活躍できるフィールドに差が出ますよね。
秋津そうですね。実際会社に入ってみると、グローバル事業だけが英語を使うわけではなくて、さまざまな現場の取引先がグローバルになってきているのが現状です。
田仲そうなんですね。例えば、最近はインバウンドのお客さまが増えているということで、訪日外国人がお客さまになる可能性もあります?
秋津もちろんありますね。
田仲なるほど。そうすると、最近入社された方は海外経験がある方は多いのでしょうか?
秋津正確な数値は出していないですが、数年前に比べると何らかの海外留学や居住経験がある方は増えているのかなという気はします。
田仲そうなんですね。例えば、海外の大学・大学院を卒業した学生さんというのは、日本の大学を卒業した学生さんとは違う就職活動になりますが、そうした日本人留学生の採用についてはいかがですか?
秋津海外の大学を卒業した人を積極的に採用できていないのが実情です。ただ、ダイバーシティ(多様性)の観点からもそういった人材との接点を持っていきたいと思っています。そのため、秋ぐらいまで選考期間を延ばして、海外で大学を卒業した学生を受け入れられるように今年から見直しを行いました。
田仲留学経験者に何を期待しますか?
秋津留学したという事実よりもそこで何をしてきたかが重要だと思うんです。最近は1ヵ月間、語学留学しました、TOEICは何点です...だけでは響かない。現地でこんな活動をして、こんなことを学びましたっていうところを、きちんと自分の言葉で話して、自分の行動につながっているのをアピールしてほしいと思います。
田仲確かに、留学を目的化してしまっている学生さんもいますよね。就活がもうすぐ始まるけど、何もアピールするものがないから留学でもしておくか...という人も多い。やはり、留学は中身ですよね。
秋津そうですね。面接でも留学経験というだけでは他の応募者との差別化はできません。外国の文化・歴史を知るとか、宗教を知るとか、海外で学んだことをアピールしてほしいですね。
田仲逆に、面接をして「おっ」と思う学生さんとはどういうタイプでしょう?
秋津海外でボランティアなどの活動に参加して、現地の人と協力しながらチームで何かを成し遂げたというエピソードを聞くと「いいな」と思います。こういう人は、入社後も多国籍のチームで活躍できるのではないかと。
田仲多様な人々と一緒にチームとして何か成し遂げたっていうところがポイントなんですね。
秋津そうです。会社に入ると、ひとりでする仕事はほとんどありません。何かをやるにしても、誰かと協力して、巻き込むことで、やっと大きな成果にたどり着きます。そういった意味では、チームでリーダーシップを発揮して、何か大きな成果を出したという経験は非常に魅力を感じますね。学生は働いたことがないので、学生時代の行動や経験を聞いて、入社後も活躍できるのかなということを想像するわけです。やってきた経験と業務がリンクすると、この人は大丈夫だと思えます。
田仲そうですね。学生さんは就業経験がないからこそ、学生時代にやってきたことの「再現性」を企業が見ていると私も伝えているのですが、実際のところなかなか何をアピールしていいかわからないという人も多い。うまくいった経験だけではなくて、失敗しても諦めずにやり遂げたという部分を企業はむしろ評価しているんだということを、もっと知ってほしいですね。
秋津繰り返しになりますが、大切なのは周囲を巻き込んで、何かを成し遂げること。「絶対にこれをやりたいんだ」という気持ちを周りが応援する風土が、この会社にはあります。ぜひ留学を経験した学生さんには、自分のことを簡単に理解してもらえない環境で、少しずつ協力者を見つけて、自分の世界を広げた経験を大いにアピールしていただきたいですね。