留学成功の秘訣
「1年間なら、胸を張って『留学してきました』と言えるだろう」と考えた橋本さんは、「4月から8月までは語学学校で学び、新学期が始まる9月から3月までの半年は大学の授業が聴講できる」という1年間の留学プログラムを選んだ。「ともかく1年間の留学を終えたら、語学力も国際性も身につき、すごく成長できるだろうと思っていました。帰国後に就職活動を頑張れば、楽勝で世界に羽ばたける仕事に就けるだろうって。今考えるとホントに甘い考えですよね」 4月に渡英し、最初の3ヵ月はWarwick 大学内にある語学学校で英語の基礎を学ぶことになるが、留学前からTOEIC800点の実力があった彼女は、余裕のスタートだった。しかし、夏休みに入ると、9月からの大学生活に備えて、プレゼンテーションのやり方やエッセイの書き方をみっちり学ぶハードな日々に変わる。「夏からの勉強はホントに大変でした。学校行く前に勉強して、帰ってきてからは宿題に取り組んで。でも、楽しいんですよ。何が楽しいって、『私、イギリスに住んでるんだ!』っていう実感。例えば、天気がいい日にレンガ造りの寮から学校に行く時。寮の共有キッチンで、外国人の友だちと昼休みに食べるサンドイッチを作っている時。『ああ、イギリスにいるんだなあ』って心が弾んでくるんです」 9月からはWarwick 大学で社会学専攻の生徒となり、新1年生と一緒に授業を聴講する。みんなでディスカッションを交わす授業も多く、そのためには辞書よりもぶ厚い文献を読み込む必要がある。苦労しながらも、彼女はそこで様々な自己発見をする。「英語力には自信があったのに、ディスカッションが始まると、何も発言できない“お客さん状態”になってしまう。自分は思っていた以上にシャイなのかなあとか自己嫌悪に陥りましたね。反面、自分では信じられないぐらい勉強に集中できた時もあったんです。エッセイの提出前は、朝の8時半から10時間以上ぶっ続けで、それこそランチも5分ですませる感じでパソコンに向かっていました。そんな自分が『すごいなあ』って(笑)」。でも、一番の思い出は世界各国に友だちができたこと。「家族だと思えるほどに心が通じ合う仲間ができました。日本人の友人はもちろん、イギリスや中国の友人がたくさんできました。留学生をケアしてくれるスタッフの方もみなさん優しい方ばかりで。多くの人との出会いは、一番胸に残っているし、私の財産です」 1月になると、橋本さんと同じ立場、つまり「帰国後は就職活動」という友人達が、情報収集やエントリーシート提出などで動き始める。彼女にも「動かなきゃ」という意識はあった。でも動かなかった。「今から思うと、なぜあの時にみんなと一緒に頑張らなかったんだろうと不思議です。『関係ないわ』と涼しい顔をしているのは間違っていた。少なくともここで就活の波に乗っていれば、いくつかのチャンスを逃さずにすんだのにって反省しているんです」
3月に帰国した翌日、橋本さんはリクルートスーツを買いに行き、合同説明会に参加するなど、就職活動を始める。第一志望は国際協力関連会社。でも、最終面接で玉砕し、彼女が言うところの「落ちるところまで落ちた暗い日々」が始まるのだ。「甘かったんです。会社選びも『外国に事務所がある』とか『国際部なら良さそう』とかそんな感じ。しかも『自己PRは留学経験を話せばいい』と思っていた。要するに、企業研究も自己分析もしないまま、『何とかなるわ』という気持ちだったんです。しかもうまくいかないから、気持ちはどんどん暗くなり、面接を受けても結果は出ない。典型的な悪循環です」 そんな彼女に喝を入れてくれたのが、家族だった。「年が明けた4年生の1月、日頃は口うるさくない母と大ゲンカしたんです。『あんたはいったい、何がやりたいの!』『わかんない』。そんなやりとりで私、初めて目が覚めました。自分の将来をもっと真剣に考えて、できる限りのことはしなきゃって思うようになったんです」 そこから大学の就職課、無料の就職斡旋会社に行き、就職サイトや就職媒体もこまめにチェック。「もうダメかも・・・」と諦めたかけた時に、内定先となる企業から就職サイトを通じ説明会の案内がメールで飛び込んできた。「説明会に参加した瞬間、本能で『私、ここに入る』って思いました。だから、選考会での作文は気合を入れましたね。私のことを少しでもわかってもらえるように、今までどんなことを考えてきて、これからどんなふうに生きていきたいか、そしてそんな私があるのは家族や友人のお蔭だから、感謝の気持ちを忘れずにいたいこと、そんなことを素直に書いたんです。きちんと伝えられたのは、やっぱり就職で挫折に負けそうになりながらも、将来や自分自身について、じっくり考えてきたからだと思います。あと、留学時代にライティングが鍛えられたことで、論理的思考力や課題に取り組む集中力が磨かれたんだとも感じました」 最後に、これから留学する人へ、橋本さんからのアドバイス。「就職活動に出遅れはしましたが、あえて言いたいのは、就職のことを心配しすぎて、学生生活を満喫できないのはもったいないということ。とりあえず、その土地でしか学べないこと、経験できないことがあるので、『留学している今』を楽しんでほしい。少なくとも私は1年間をめいっぱい楽しんで、友人もたくさん作ることができましたから。ただし、外国でも就職に関する情報収集はできるので、そこは怠らないようにね」
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