留学成功の秘訣
田中さんが英語の勉強をやり直そう、と決意したのは、短大卒業後、百貨店勤務を経て入社した新聞社で記者のアシスタントをしていた時のことだった。「ちょうど、NYで同時多発テロがあった時に、日頃から仕事ぶりを尊敬していた記者の方が電話で取材しているのを目の当たりにしたんです。慌しい現場で話される流暢な英語は臨場感にあふれていました」。これを機に、田中さんは「あんな風に英語を話せるようになりたい!」と、英会話スクールに通い始めた。学生時代から旅行が好きで海外に行く機会もあったが、その度に言いたいことが伝わらないもどかしさを感じていた。国内の英会話スクールに2年ほど通った頃、TOEICのスコアは540点まで上がったが、そこからなかなかスコアが伸びない時期が続く。「留学を決めたのは、英語の上手な人と話をした時に、『生きた英語を身につけるなら海外に行くのが一番』と、聞いたから。若いうちにできることをしたかったし、時間を無駄にしたくなかったから会社を辞めることに迷いはありませんでした」 翌年、カナダにある2つの語学学校に合わせて11ヵ月留学する。母国語禁止ルールなど、厳しい環境で学べるPacific Gateway International Collegeと、少人数制でスピーキングのレッスン重視のLanguage Repair Shop に通った。「とにかく、日本語をできるだけ遠ざけました。日本人の友人でさえ英語で会話をすることを徹底し、勉強に疲れたら、英語のCDやラジオを聴いたり、映画を観るなど、気分転換でも英語に接していました」。その甲斐あって、TOEICのスコアは820点までになった。「別にTOEIC対策としての勉強だけを根を詰めて勉強したわけではないんです。話せるようになりたかったから、スピーキング重視で、目の前のことを懸命にやっていた成果だと思います」 2つ目の語学学校に移る前の7月、田中さんは休みを利用してカナダをワゴン車で横断する現地発着のツアーに参加する。世界各地から集まった10人と一緒にキャンプを張って寝食を共にした。都会出身の田中さんは、テントの組み立て方も寝袋の使い方も、つたない英語で会話しながら必死にコミュニケーションをとった。21日間のツアーが終わる頃には、カナディアンロッキーの雄大な自然だけではなく、大切な仲間が旅の財産になった。「なかなか伝わらない英語で迷惑をかけたこともたくさんあったと思いますが、皆、温かい心で支えてくれたり、助けてくれたりしました。授業では習わないスラングもたくさん教わりました(笑)」。こうした旅行に限らず、様々な人種や国籍の人が暮らすバンクーバーで、自分や自国の価値観を押し付けるのではなく、他者の文化や習慣を受け入れられるようになったことは田中さんを大きく成長させたという。
留学を考える人の中には客室乗務員になることに憧れる人も多いが、田中さんが客室乗務員になることを考えたのは、実は、留学してしばらく経ってからだそうだ。「客室乗務員になろう!と思って、留学を決めたわけではないんです。日本を離れて、ひとりになって自分を見つめなおす時間が持てたんです。『この先私はどうしていきたいんだろう』と考えました。旅行が好き。特に飛行機や空港の雰囲気が好きで、日本にいた頃から、わざわざ伊丹空港に飛行機を見に行ったりしていました。『どうせならやりたいことをやろう』と考え、客室乗務員の仕事に強い興味を持つようになりました」。ただ、田中さんは、留学中に特に留学先から就職活動をしたわけではなかった。「とにかく『留学中にしかできないこと』を、悔いの残らないようにチャレンジしました」 帰国後の1月、インターネットで航空会社のホームページの採用情報を一つひとつ確認した。「探し始めてから1週間後に、たまたま全日本空輸と関連会社の既卒枠の募集を見つけました」。契約社員で70名の募集だった。ネットで登録するところから始まり、数回のグループ面接や筆記試験など、約4ヵ月を経て見事採用となった。田中さんに、採用されたポイントはどんな点だったと思うか尋ねてみた。「正直、自分ではわかりません。緊張が顔に出にくいことと、口下手な性格なので自分を飾らず出せたのが結果的によかったのかもしれません(笑)」と謙遜されていた。「TOEICのスコアや英語力は聞かれませんでしたが、できて当たり前なのかもしれませんし、何よりも自分自身の達成感や自信に繋がったので、目標を決めて頑張れたことはプラスになりました」 8月に仕事を始められたばかりの田中さん。「今はまだ緊張していますが、お客様とのちょっとした会話さえやりがいを感じています」。田中さんに今後の抱負をうかがった。「お客様に最高のサービスの提供を心がけること、これはとても大切なことです。そしてもうひとつ、実際に仕事をしてみて気がついたことがあります。『私たちの仕事はお客様の安全を守る』ことだということです。保安要員として全体を見回せるよう、早く一人前になれるよう頑張ります」。最後に留学を考えている方、留学中の方にメッセージをいただいた。「留学中はとにかく、『今しかできないこと』をやるべきです。同じ英語の勉強でも、留学中にしかできないことを精一杯やってほしいと思います」
あらゆる解決策を知り尽くした経験豊富なカウンセラーがお一人おひとりベストな留学をプランニング。
1983年創刊「留学ジャーナル」は、日本で最も歴史のある留学情報誌。確かな情報のみをお届けします。
UCLAやコロンビア大学など、海外の数多くの教育機関や、各国大使館との協力関係で帰国後までサポート。