留学成功の秘訣
高校では普通科英語コースに在籍し、英語や海外の文化に興味を持っていた伊藤藍さん。海外ウェディングへの憧れがあったことから、「自分の力だけで海外で挙式ができる人は、まだ少ないのでは。それなら、英語を使ってコーディネーターの仕事ができるかもしれない」と、専門学校でブライダル・ビジネスを学ぶことにした。「就職のときは、サービス業全体を広く学ぼうと、ホテルへの就職を希望したんです。でも、人気職種でなかなか採用が決まらず、専門学校の就職課から『宴会部は希望者が比較的少ないだろうから、志望すると有利なはず』というアドバイスをもらいました」。宴会部とは、ブライダルや一般の宴会のオペレーションを行う部署で、まさに伊藤さんが専門学校で学んだことと一致していた。こうして、東京・新宿の京王プラザホテルで念願のブライダルに関わる仕事に就くことになったのである。 忙しく仕事をこなす中で、「いつか海外に出てみたい」という気持ちも抑えきれずにいた。「専門学校の先生に相談したところ、『それなら、ワーキングホリデーに行ってみては』と言われたんです。ただ英語を学ぶだけでなく、いろいろな経験をしてみたかったので、確かにワーキングホリデーは私に向いているような気がしました。オーストラリアやカナダには大勢の日本人が行っていますが、イギリスはまだビザの発給数が少なく、もし実現したら他の人にはない経験ができるのでは、とイギリスへの応募を決意したんです」。 応募を決めると、準備のためホテルを退社、アルバイトをしながら渡航決定の通知を待った。留学ジャーナルのワーキングホリデーセミナーに参加し、情報収集をしたのもこの頃。審査の結果、年間400名のみという厳しい枠を突破、退社から3ヵ月後にビザ取得決定の連絡があり、その5ヵ月後に、イギリスへと旅立つことになった。「まずは語学学校に通おうと、留学ジャーナルに紹介を頼みました。最初はロンドンに行きたかったんですが、授業料や物価が予算に合わず、あきらめました。結局、ブライトンという海沿いの街に行くことにしたんですが、これが大正解だったんです。ブライトンでは、何もかもがカンペキでした!」 日本では仕事中心の生活だったが、ブライトンのさわやかな空気の中で「晴れの日は気持ちいい!」という感覚を取り戻し、朝は自然に起きられるようになった。「ホストマザーはビーチのカフェで働いていて、映画関係の仕事をしているパートナーと一緒に暮らしていました。そこに前のだんなさんとの娘が2人いて・・・と、日本ではあまり見かけないような家族構成でしたね。食事は各々で取ることができて、とても自由な環境で暮らしやすく、結局ワーキングホリデー中、ずっとそのファミリーのところにホームステイしていたんです」。 のんびりしたブライトンの生活にすっかりなじみ、「そろそろ新しいことを始めたい」と思っていたところ、世界的なボランティア団体であるオックスファムの事務所で「ボランティア募集」の張り紙を見つけ、応募することにした。「仕事は、イギリス各地から届く古着の選別。ブライトン大学の学生とか、近所のおばさんたちがやってきて、一緒に楽しくやっていました。週に1回、午前中語学学校に通い、午後はオックスファムの事務所に通うというのが、いい生活のペースになっていったんです」。
そのうち、現地で知り合ったドイツ人の友人の励ましもあって、ホストマザーと同じビーチのカフェでのアルバイトも始めることになった。「食器を下げるだけだから、英語が話せなくても大丈夫と言われたのに、行ってみたらオーダーを取る仕事だったんです!誰かが手取り足取り教えてくれるというわけではなく、自分で覚えなければならなかったんですが、それがかえって英語の上達につながりましたね。お客様からデートに誘われたこともあったんですよ(笑)」。 帰国前には、ドイツやフランス、オランダなど、ヨーロッパ各国を一人でバックパッカーとして回ってきた。「ホテルが見つからなくて、『今日は野宿かな・・・』なんて思うこともありました。結局何とかなったんですが、あの旅の間に、自分がすごく強くなったように思います」。 留学前は、「ブライダル・ビジネスの勉強をして、ブライダルでキャリアを積んで」と一途に考えていたが、イギリスでさまざまな人と出会ううちに、「働き方にもいろいろなスタイルがある」「働くことそのものを目的とするのではなく、自分の人生を豊かにするための仕事があってもいいのでは」と思うようになった。「週末は太陽の光を浴びてのんびり過ごしたり、普段仕事が終わってから習いごとをしたり、そういう生活もあるんだ、ということに気づいたんです」。それでも、人と関わるサービスの仕事が好きで、帰国後に留学ジャーナルのキャリアカウンセリングを受けたところ、「外国人レジデンスのコンシェルジュという仕事がある」というアドバイスを受けた。外国人や外国企業が共同で借りている都心部の住居やオフィスで、英語を駆使して受付業務をこなすものだ。 「そういう仕事もあったのか」と、受付や秘書業務を意識してインターネットの人材派遣サイトに登録すると、ほどなく外資系金融機関の総務に派遣社員として採用された。英語でのやり取りも必要とされる仕事で、「ワーキングホリデーの経験と、前職のホテルでの経験が買われたと思います」。その後、シンガポールに本社を置くアスコットグループと三菱地所による合資会社アスコットジャパンに入社。ビジネスセンター有楽町で、受付業務を担当するようになった。「複数の企業が入居していて、その共通の秘書業務のようなこともしています。利用者には外国人が多く、英語の電話もかかってきますし、ホテルや航空券の手配をしたりといったこともあります。『海外からお客様が来るので、京都の観光旅行をプランニングしてほしい』なんていう依頼があったりもするんですよ」。 仕事の上で英語を駆使する一方で、「もっと勉強しなければ」という思いも出てきたという。「イギリスでは、働いていたといっても、カフェでのくだけた接客の英語。今のオフィスワークの英語とは違います。以前のホテルでの仕事とはまた違う、オフィスの仕事を覚えながら、きちんとしたビジネス英語も身につけていきたい、と思っています」。普段はポッドキャストでイギリスBBC放送のニュースを聴いたり、映画を英語の字幕で見て、リスニング力を鍛えているとのこと。インターネット上のオンライン学習コミュニティにも、最近はまりつつあるそうだ。 「ワーキングホリデー中のことは、今でもよく思い出します。前は自分一人でがんばってしまうところがありましたが、イギリスのゆったりした環境の中でいろんな人に親切にしてもらって、『私ももっと、人にやさしくなりたい』と思うようになったんです。街で困っている外国人を見ると、声をかけてあげたくなったり。前はこんなことはなかったのに、不思議ですね」。
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