大学3年次を1年間休学し、ニュージーランドのクライストチャーチにある語学学校へ留学した檜垣まりこさん。語学学校でボランティア活動をする資格を取り、留学最後の2ヵ月間は高齢者施設でボランティアを経験した。“年齢、国籍を超えてどんな人とも仲良くなれる”という自信をつけて帰国した檜垣さんに、ニュージーランドでの留学生活と帰国後の就職活動について話を聞いた。
2015年 9月 成城大学文芸学部英文学科2年次に留学を決意
2016年 5月 大学3年次を休学し、ニュージーランドのクライストチャーチにあるAra Institute Of Canterburyの一般英語コースに入学
2016年 9月~11月 ケンブリッジ検定コースで英語の資格試験FCEの勉強を始める
2016年 12月 一般英語コースの最上位クラス(レベル8)を受講。外部でのボランティア資格を目指す
2017年 1月 高齢者施設でボランティアを開始。午前中は語学学校で学び、午後からボランティアを行う
2017年 2月 帰国し、同大学3年次に復学
2017年 11月 航空会社への就職を目指すことに。翌年3月の就職活動解禁とともに、新卒応援ハローワークに通い、エントリーシートの作成、添削などのアドバイスを受けながら受験
2018年 6月 就活がなかなかうまくいかない中、留学ジャーナルのキャリアカウンセラーに相談。模擬面接を受ける
2018年 7月 第一志望の航空会社から内定を受け、就職活動を終了
2019年 3月 同大学を卒業
2019年 4月 大手航空会社にグランドスタッフとして入社
英語の先生をしている母の影響で中学生の頃から洋楽にはまり、高校生になると海外留学に憧れるようになったという檜垣まりこさん。学校主催の3ヵ月間の短期留学に応募するか悩んだ際、両親から「留学するなら長期で行ったほうがいい」とアドバイスされたことがきっかけで休学留学を決めた。
「大学では英文学科ということもあり、授業は"読む英語"ばかり。将来は英語を使う国際的な環境で働きたいと思っていたので、留学でリスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4技能すべてのスキルアップを目指しました。また、海外でボランティアをすることも目標のひとつに掲げました」
留学先をニュージーランドにしたのは、2009年に起こったクライストチャーチの大規模地震で留学生が激減し、国を挙げて留学生の招致に力を入れていることを雑誌で知ったから。留学生に対する国のサポートがしっかりしているので治安の面で安心だと思い、決めた。そして語学学校は、ある一定レベルの語学力を習得したらボランティア先を紹介してもらえる制度のある学校を選んだ。最初に入った一般英語コースのクラスでは日本人が7~8割を占めていて、檜垣さんは英語漬けの生活環境にするのに苦労したという。
「学校ではなるべく日本人以外とたくさん話すこと、街中や校内、バスの中の広告等目に入った知らない単語や表現は全て書き留めて調べること、何か考えるときは英語で考えるようにすることなど、いくつかのルールを自分に課し、日本語をシャットアウトした生活を心がけました」
一般英語コース修了後は、よりハイレベルなケンブリッジ検定のコースを取った檜垣さん。この頃から学校以外の活動も積極的に行うようになり、学校もプライベートも英語だけの生活になったことで、格段に英語力が伸びたと感じたという。
「現地で人気の"meet up"というイベント紹介アプリを利用して、仲の良い韓国人のクラスメイトとともに、母国語以外の人が集まって話をするというイベントに参加しました。そこで、国籍や年齢を超えて様々な人と出会うことができ、なかでも特に仲良くなった30代のブラジル人、ロシア人、エジプト人とは、朝市やプールに行ったり、1泊で旅行に出かけたりしました。それぞれのバックグラウンド関係なくお互い興味を持ち合ってたくさんの時間をともに過ごせたことは、本当に大切な思い出です」
ケンブリッジ検定コースを終えた檜垣さんは、語学学校の最高レベル8のクラスを12週間受講しボランティア活動の資格を取得。いくつかあるボランティア先の中から高齢者施設を選んだ。スタッフも入居者も全員ニュージーランド人という環境の中で、最初は会話のスピードについていけず、ただ頷くばかりだったという檜垣さん。
「このままでは何も得られない、自分から輪に入らないと!と一念発起して、毎日必ず全員に話しかけることと会話の中で必ず名前を入れて話すことを心がけました。すると、徐々に溶け込めるようになり納得のいく仕事ができるようになりました。帰国前日、私を受け入れてくださった感謝の気持ちを込めてウクレレでニュージーランドの国歌を全員の前で弾き語りをしました。すると"日本人であるあなたが歌うニュージーランドの国歌はとても美しい。私もいつか日本に行きたいわ。楽しい毎日をありがとう"と言ってくださり、短い期間ではありましたが、確かに絆が生まれていたことを実感しました。留学を通して、年齢、国籍を超えてどんな人とも親しくなることができるという自信を得たと思います」
帰国後、就職活動を始めた当初から航空業界に絶対入りたいと思っていた檜垣さん。
「私は多く数を打つような就活ではなく、本当に興味がある会社を選び、それぞれに対してしっかり準備をして臨むという就活スタイルでした。エアラインを中心に対策をしたのですが、エアライン受験は一般企業とは面接官に見られているポイントが少し異なります。そのためお世話になっていたハローワークでは航空業界出身の方に何度も模擬面接をしてもらい、注意されたポイントをひたすら改善することに努めました」
それでも就職活動を始めて3ヵ月、航空会社7社のうち5社から不採用を受け続けた檜垣さんは悩み、留学ジャーナルのキャリアカウンセリングに相談した。残りの2社が本命だったこともあり、準備をこれまで以上に行ったという。
「志望する会社に関する本を読み、その会社の経営状況や将来の展望などを新聞や雑誌で読んだり、航空会社出身の人から話を聞いたりして企業研究をしっかりすることにこだわりました」
最終的に本命だった大手航空会社2社からグランドスタッフの内定を得た。
「留学の経験から、分け隔てなく誰に対しても自分から声をかけることで状況や人間関係は確実にいい方向に向かうことを学びました。このことはグランドスタッフとしては大切な要素になるのではないかと思います。2020年に向けてさらに多くの海外からのお客さまが空港を利用することになると思いますが、自分から察して話しかけることを意識してできるようになりたいと思います」
最後に、これから留学する人へのアドバイスを聞いた。
「就職活動を意識した留学よりも、留学でこういう経験をしたいというような目標をいくつか持って行った方が意味のある留学生活を送ることができると思います。私は海外でボランティアをすることを目標に留学をしましたが、例え就職活動において響きのよさそうな活動だけでなくても何か自分にとって難しいかな、と思うような目標がいいと思います。それを達成できたときに必ずその過程で何か学んで得ることができていると思います」
檜垣さんの就職成功の要因は、「コミュニケーション力」と「行動力」だと思います。
高校の頃から、大学に入ったら留学をして英語力をつけ、国際的な仕事をしたいと思っていた檜垣さん。実際に現地での留学生活が始まると、英語ができると思っていたのに、下から2番目のクラスでスタート。なかなか言いたいことが言えずに苦労をしましたが、先生からアドバイスをもらい、ディスカッションでイエスかノーか自分の意見を言う際には、その理由までしっかり考えて答えるようにするなど工夫をしていきました。さらに、学校外でも"meet up"を活用して、同じように英語を学んでいる外国の友達を作るといった努力をしたところ、英語力が上がりスピーキング力が向上していきました。この結果、目標とした一番上のクラスに12週通えるまでになり、目指していたボランティアができるようになりました。
また、高齢者施設でのボランティアでは、日本人一人という環境で、利用者の方一人ひとりと信頼関係を築くよう工夫をして、最後は涙でお別れするまでの心に残る関係を築くことができました。この経験は、短い期間であってもバックグランドの異なる人と信頼関係を築ける力があるからこそ、入社後もゲートで出会うお客さま一人ひとりの心に残る対応ができる、と業務に結びつけたより具体的で効果的なアピール材料になりました。
どんな時も自分が課した目標を達成するために「行動」を起こし、そしてどんな人にも誠実で思いやりのある「コミュニケーション」がとれる檜垣さんだからこそ、語学留学であってもこのように他の学生ができないような貴重な経験を積むことができ、それを就職活動につなげることができたのだと思います。
檜垣さんが目指した航空業界は留学経験者に人気の業界のひとつで、高いコミュニケーション力や接客するスキルに加え、臨機応変に対応する力、判断力、チームワーク力等が重視されます。航空業界に応募する大学生は、留学経験がある人が多いため、単に「留学をして英語力が身についた」というアピールだけですと、なかなか他の応募者との差別化ができません。檜垣さんのように、語学留学でも、日本人一人という環境で2ヵ月間、現地の高齢者施設でボランティアを経験したという経験がある人は少ないので、面接官にインパクトを与えることができました。特に、自分とは異なる年齢、国籍、価値観の人と効果的なコミュニケーションがとれる力というのは、キャビンアテンダント、グランドスタッフどちらにも求められる力ですので、効果的なアピールになったといえます。航空業界を目指す人は、英語力も大切ですが、英語力以上に重視されるのは「現地でどんな経験を積んだか」と「その経験から得た力を、入社後の業務にどういかせるか」という点なので、"誇れる経験"を積める留学にぜひチャレンジしてみてください。