韓国とアメリカでの留学経験を持つ松山徹さん。日本の大学を1年間休学して挑戦したエクステンションプログラムでは、クラスのなかで最年少。クラスメイトのほとんどが社会人という環境の中で学び、見えてきた具体的な将来の夢とは? 帰国後の就職活動で7社から内定を勝ち取った松山さんの就職活動ストーリーを聞いた。
小学校4年生から約3年間、韓国に滞在しインターナショナルスクールに通った経験を持つ松山徹さん。留学を思い立ったのは、韓国での異文化体験が興味深く、またいつか海外で勉強してみたいという思いがあったから。また、日本の大学では法律を学んでいたので、就職を見据えてもうひとつ自分の専門分野を作りたいと考えたからだ。
「アメリカで経営学を学びたいということは決まっていましたが、具体的にどういうカタチで留学するかは決めていませんでした。自分で調べるのには限界を感じたので留学ジャーナルのカウンセリングセンターで相談したところ、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のエクステンションプログラムを勧められました」。
エクステンションプログラムとは、大学が開講する一般社会人向けの公開講座。大学の授業を履修したり、企業の第一線で活躍する専門家の講義を受けたり、実際に企業でインターンシップを経験したり、より実践的に学ぶことができる。中には社会人だけでなく、職歴のない大学生を対象にしたコースもあり、大学を1年間休学して留学したい人にも人気のあるプログラムだ。
UCSDのエクステンションプログラムでは、2ヵ月間のインターンシップを体験することができる。松山さんはアメリカのビジネスの現場で就労体験できることに惹かれ、UCSDを留学先に決めたという。インターン先は、UCSDエクステンションのサイエンス&テクノロジー部門という教育機関。マーケティングを担当した。
特に印象に残っているのは、所属する教育機関と取引している教授たちとの経営会議に書記として参加した時のことだという。何か意見があれば報告しなさいと指示されていたので緊張していたが、自分自身が提供できる有意義な意見があると考え、その場で主張した。
「インターン生でも意見を主張できる環境に心から感謝しました。それと同時に、ノンネイティブだからといって仕事となると手加減はしてくれません。誰かが手取り足取り教えてくれることもなく、基本的に自分ですべての事にキャッチアップしていく必要があります。そして、常に的確な意見を言う者が評価される、という厳しい現実も学ぶことができました」。
「サンディエゴは、日本人コミュニティがさほど大きくないため、日本では出会えないような起業家や政治家、トップビジネスマンの方々と直接お話しする機会がありました。また、クラスメイトも大企業に所属する現役のビジネスマンや弁護士など様々な職種の方がいました。その方々の意見や価値観から刺激を受けて、自分が今まで持っていた"漠然とした夢"がより具体的になりました」。
両親が事業をしているという松山さん。幼い頃からいつかは母親のようになりたいと漠然と思っていた。今回のアメリカ留学で経営学を学び、実際のビジネスの現場を見たり、起業家の方々の話を聞いたりするなかで、自分も実際に起業したいと思うようになったという。
「将来は起業、という軸がはっきりしたので、20代は自分自身が常にバッターボックスに立ち、全力でバットを振り続けられる環境を選ぼう、失敗と成功を繰り返すことで圧倒的トラックレコードを作るための期間にしよう、と具体的に考えるようになりました」。
帰国後、大学3年生になると同時に就職活動をスタートした松山さん。軸にあったのは、早い段階から"挑戦できるフィールド"がある会社を選びたいということ。若手のうちから挑戦できるフィールドを求めて大手企業、外資系大手企業、ベンチャー企業など満遍なく見ていった。 「そして、就職活動の過程で気付いていったのは"自分自身が常にバッターボックスに立ち、全力でバットを振り続けられる環境"は大手企業よりは外資やベンチャーに多くあるんじゃないか、ということでした」。
外資系コンサルティング会社や日系証券会社、ベンチャー企業など計7社から内定を獲得したが、その中から、松山さんが選んだのはIT系ベンチャー企業だった。
「留学では、TOEIC730点から880点へ上がったことなどハードスキル面の成長ももちろんありましたが、留学先でのネットワークや出会いが自分の意識形成に大きく影響を与えてくれました。そういう意味で、留学ではソフトスキル面で得たもののほうが大きいような気がします」。
世界15ヵ国以上の人と友達になり、インターンシップを通してアメリカのビジネス現場を多少なりとも体感できたことで自信を得たという松山さん。
「韓国の3年間とアメリカの1年間は、自分自身を飛躍的に成長させてくれた転換期になりました。特にアメリカ留学中はすべてのことを自分自身でやり遂げ、辛いことから楽しいことまで一通り経験しました。だからこそ、最高の1年間だったと胸を張って言えます」。
松山さんの就職活動成功の要因のひとつに、「留学のタイミング」が挙げられると思います。日本の大学3年次を休学して1年間留学し、日本に帰国して復帰したのが3年次の4月でした。松山さんの年代の就職活動は、3年次の12月から本格スタート(※1)していたので、松山さんは半年以上の余裕を持って日本の就職活動スケジュールにのることができたのです。さらに、彼の場合、先に就活を経験した同期の友人から「夏のインターンシップが勝負」というアドバイスをもらっていたようで、帰国後すぐ、日本でもインターンシップを経験されました。海外と日本でインターンシップを経験したことで、両国の働き方の違いや考え方、伝え方の違いなどを知ることができたのも、アピールポイントとなったことと思います。
松山さんのように、日本の就職活動スケジュールに間に合うように留学するには、留学準備を早めに計画的に行う必要があります。留学先やプログラムを決めることはもちろんですが、松山さんのように社会人学生が多いエクステンションプログラムに参加するには、それ相応の高い英語力が求められます。エクステンションプログラムの中には、英語研修がついていて英語力が身に付いた段階で実際の授業に参加できるシステムを持つ学校もありますが、トータルの留学期間が決まっているのに英語研修で時間を取られてしまうのはもったいないことです。せっかく第一線で活躍する有名な先生から最先端の授業を受けられる機会が減ってしまいます。このプログラムを目指す場合は、日本で十分な英語力を身につけることをお勧めします。
松山さんは学生でしたが、エクステンションプログラムでは、クラスメイトの多くが第一線で働く社会人です。このため、授業は実際のビジネスで繰り広げられるケーススタディが多く、毎週プレゼンテーションが行われ、ディベートも活発に行われるようで、勉強量も凄まじかったそうです。このように、志の高い世界各国から集まった社会人と一緒に切瑳卓磨するなかで、松山さんは大きな自信を得たことでしょう。また、インターンシップでは、松山さんの提案が実際に採用され運用されることになったという経験も自信につながったはずです。留学相談に最初にいらした頃と帰国後では、表情も大きく変わり一回りも二回りも成長されたという印象でした。高度な授業を頑張り抜いた体験や海外のビジネス現場で自分の意見が採用された経験を留学先でしているので、日本でのインターンシップでは、周りの学生と比べても引けを取らない自分にさらに自信を深めたようです。この自信こそが最大の強みになったと思います。
※1 2015年からは3年次の3月から就職活動が本格スタートとなっている