世界最大手の広告代理店「WPP」の一員であるグループエム・ジャパン(株)に就職し、忙しい日々を送る北條友麻さん。もともと広告業界に興味があったわけではなく、「自分がより成長できる場で働きたい」とこの会社を選んだ。アメリカの4年制大学で学ぶ傍ら、現地企業で約3年間のインターンシップを経験。強い向上心と行動力を持つ北條さんの就職活動について話を聞いた。
2011年 1月 青山学院大学1年次にオーストラリアへ約1ヵ月半の語学留学
2012年 4月 同大学を休学しアメリカの語学学校ESL Santa Monicaへ留学。英語を3ヵ月間学んだ後、10月から現地の大学Fashion Institute of Design and Merchandising(FIDM)に編入学。マーケティングとビジネスマネジメントを専攻
2013年 5月 現地のジュエリー制作会社でインターンシップを開始。注文の受付や工場への発注業務、輸出の手続き書類作成など幅広く仕事を任される
2016年 6月 FIDMを卒業。帰国後すぐに東京サマーキャリアフォーラムに参加。20社ほどエントリーし、採用試験と面接を受ける中で自分に合う会社を絞り込み、最終的に2社から内定を受ける
2017年 4月 第一希望であった広告代理店「グループエム・ジャパン」に就職。現在、メディアエグゼクティブとして市場調査や分析などを行う
もともと、海外を旅して現地の人とコミュニケーションを取ることが好きだったという北條友麻さん。大学1年のときに行ったオーストラリアの留学先で、現地のクラスメイトとの考え方の違いや文化、習慣の違いに衝撃を受けた。これがきっかけで、本気で海外に住んでみたいと思い始めたという。その後、すぐに留学カウンセリングを受けるなどして準備を進めた北條さんは、大学3年次を休学しアメリカへ留学することに。語学学校ESL, Santa Monicaで3ヵ月間学んだ後、ファッションデザイン関連のプロフェッショナルを目指す専門大学Fashion Institute of Design and Merchandising(FIDM)へ編入学した。
「実際にFIDMに入学してみて、果たして自分が本当にアメリカの大学でやっていけるのか、日本とアメリカ、どちらで学んだほうが自分のためになるのか、じっくり考えました。結果、アメリカの大学で学ぶほうが、より自分が成長できると確信できたので日本の大学を退学し、FIDMで学位を取ることにしました」。
最初の2年間はマーケティングを、後半の2年間はビジネスマネジメントを専攻した北條さん。大学で高度な内容の科目を英語で学ぶことに四苦八苦するなか、ジュエリー制作会社でのインターンシップを知人から紹介された。"実務経験を積む絶好の機会"と、迷うことなくチャレンジを決意。同社では、注文業務や輸出の手続き、トレードショーへの参加など、幅広く業務をこなした。
「インターンシップ先の会社は、起業して3年目のちょうどブランドが成長するタイミングだったため、任される仕事も増えていきました。一方で大学も忙しくなり、インターンに行ける時間も限られてきたため、仕事を効率よくするには何を改善すべきかを常に考えるようになりました。注文業務のペーパーレス化やスケジュール・その他連絡事項をオンラインで共有するなど、一つひとつの作業を見直しながら、業務の質を落とさずに効率よく仕事ができるよう、環境を整えていきました」。
こうして、大学で好成績をキープしながらインターンシップを3年間続けた北條さん。学業と仕事の両立に真剣に取り組んだ経験から、何事も諦めずに、どうしたら解決できるかを考え粘り強く取り組む大切さと、自己管理能力が身に付いたという。
「留学当初に直面した"言葉の壁"や"学業と仕事の両立"を、苦しみながらも乗り越えた経験は、私に大きな自信を与えてくれました。就職活動では、この経験について自信を持って話すことができました。留学で得たスキルや経験は、就職活動だけでなく今の仕事においてもアイディアを出す際や、様々な人と関わっていくという点で大いに役に立つと思います」。
就職活動は大学卒業後、帰国してからスタートさせたという北條さん。特に業界は絞らず、"自己成長できそうな会社"で"はじめから仕事を任せてくれそうな会社"、"グローバルな環境"で"人と接する仕事"という条件で探したという。
「海外大学生向けのキャリアフォーラムへ参加したり、留学生向けの就職サイトを利用したりして、業界業種にこだわらず幅広くエントリーしました。各社の試験や面接を受ける中で、会社の雰囲気や特長をリサーチしながら、最終的には"肌感覚的に"取捨選択していった感じです。グループエムでは、最終試験前に社内見学して実際に働く人と話す機会がありました。社内は外国人が多く、話もしやすく、感覚的に合うなと直感し、最終的にこの会社への入社を決めました」。
スムーズに就活を進めていったように思える北條さんだが、悩んだ時期もあったという。
「就活を始めた当初は、自分を必要以上によく見せようと取り繕っていましたが、なかなか結果がついてきませんでした。そこで、思ったことを正直に話すようにしました。例えば、高校3年生の後半、学校に行っていなかったことがあったのですが、それも自分なりに強い意志があってのことだということを正直に話したり、大学を中退したことも、より自己成長できる場を選んだだけだということを素直に伝えたりしました。そうすることで、言葉に説得力がつき、うまくいくようになったのかもしれません」。
留学ジャーナルのキャリアカウンセリングもとことん活用したという北條さん。すでに受けたい企業、職種は決まっているものの、どのように表現したら自分の意志を十分にかつ簡潔に伝えられるか、キャリアカウンセラーに何度もエントリーシートをチェックしてもらいアドバイスを受けた。
北條さんの就活期間はたったの2~3ヵ月。これは、北條さん自身の"会社に何を求めるか"という核の部分が、最初から最後までぶれなかったからだろう。何事も計画的に、強い意志を持って行動する北條さんの姿勢からは、就職活動のみならず学ぶべきことが多い。
北條さんがスムーズに就職できた要因は、北條さんの持つ①計画性、②主体性、③チャレンジ精神、④前向きな姿勢と向上心の4つだったと思います。
①の計画性ですが、海外大生の場合、留学している国や卒業時期によって就活スケジュールの立て方が変わってきますので、事前に計画を立てておくことがとても重要です。北條さんは、卒業の5ヵ月前に留学ジャーナルのキャリアサポートに問い合わせて、どのようなスケジュールで就職活動を進めていくべきかメールで相談していました。そして、卒業後すぐに東京で開催される留学生向けの大規模キャリアフォーラム(合同企業説明会)への参加を決め、それに向けて忙しい授業の合間を縫って、応募する企業についてHPなどで調べ企業研究し、それをもとに自己PRなどのエントリー書類を作成し添削してもらうなど、卒業前から計画的に準備を進めていきました。この計画性こそが、帰国後3ヵ月のスピード就職を実現させた要因のひとつだと思います。
②の主体性については、就活に限らず北條さんが現地の大学生活やインターンシップでも発揮している強みの1つです。例えばインターンシップ先のジュエリー会社では、輸出業務、品質管理、資産管理、在庫管理、イベント準備、経理補佐、電話、メール対応とインターン生とは思えないほど幅広い責任ある仕事を任されていました。実際に北條さんの提案により、ホワイトボードで共有されていたスタッフのスケジュールがオンライン化したり、商品を催事場に出店する時に、現場で混乱が起きてしまったことの反省から、自らマニュアルを作成して改善に努めたりと、業務効率化を考えて素早く行動する力は高く評価されていました。こうした主体的な姿勢は就職活動での企業へのアピールに非常に効果的でした。
北條さんの場合、アピールできるエピソードや経験が多かったため、逆にどの点をアピールすればよいかの取捨選択が難しかったほどでした。そこで、それぞれの経験からどんなスキルを身に付けたかを考えてもらい、リストアップしていきました。更に、応募先企業で希望する仕事において求められるスキルも書き出してもらい、それぞれに共通するスキルを選んでエントリーシートに書くようアドバイスしました。エピソードを絞ることで、制限文字数の中でも、具体的でわかりやすく、かつ、強力にアピールできるようになっていきました。
③のチャレンジ精神については、業界を絞らず、おもしろそうだな、とピンときた企業にフットワーク軽く応募する北條さんの就職活動スタイルに表れています。就職活動を始めた当初は、「自分が成長できるか」や「海外経験を生かせる環境か」どうか、という視点で、IT、商社、アパレル、コンサルティングと幅広い企業にエントリーをしていき、そのなかで「モチベーションの高い仲間と一緒に自分が成長できる環境か」という視点で徐々に応募先を絞っていきました。チャレンジ精神旺盛で、自分にあった会社を見つけるという軸を大切にする北條さんに合った就職活動方法だったと思います。
最後に、④の前向きな姿勢と向上心については、印象的なエピソードがあります。Skypeでキャリアカウンセリングを行っていた際、「勉強と就活の準備の両立で大変ですよね、お疲れじゃないですか」、と声をかけたことがありました。その時、明るい笑顔で「がんばることが自分のやりがいなので大丈夫です!」と答えてくれたのが印象に残っています。「忙しい=充実している」と前向きに捉え、大変な状況でも、自分を成長する機会とプラスに考えてベストを尽くす姿勢と向上心は、北條さんの就職成功の一番の秘訣だったのではないかと思います。