英語と全く関わりのない社会人生活を送っていた大久保大輔さんが、留学を決意したのは35歳のとき。観光業への転職を目指し、イギリスの語学学校で半年間英語を学んだ後、一人旅を経て帰国。約1ヵ月でホテルマンへの転身を成功させた。そんな大久保さんに社会人留学の極意とその後の就活について話を聞いた。
2017年 3月 専門学校卒業後、13年間勤めた酒屋を辞め海外留学することを決意
2017年 4月 イギリスの語学学校St. Giles Internationalで半年間一般英語コースを受講
2017年 10月 語学学校卒業後、1ヵ月間イギリス、スコットランドを一人旅。レンタカーを借りて大好きなウィスキーの蒸留所を巡る
2017年 11月 帰国後すぐに留学ジャーナルのキャリアカウンセリングを受ける。ホテルに絞ってネットで2社応募し、第一希望のホテルから内定を受ける
2017年 12月 入社。外国人観光客が8割を占めるホテルでフロント業務、レストラン対応など様々な業務を担当
酒屋で配達業務を担当していた大久保大輔さん。配達をしながら街中に多くの外国人観光客がいるのを見て、「彼らと話ができたらおもしろいだろうな」と日頃から思っていたという。30代も半ばを過ぎた頃、どうせ働くならやりたいことをやろうと一念発起。13年勤めた酒屋を辞め、外国人と英語で話す機会の多い観光業に転職するために留学を決意した。留学先は、ウィスキーが好きなこともありスコットランドも近いイギリスの語学学校を選択。一般英語コースで半年間英語を学んだ。
「留学当時、自分は36歳。語学学校のクラスメイトは20代が多かったので、仲良くはなるものの休日を一緒に過ごすほどの親交は深められませんでした。その代わりに、学校以外で出会う現地の人々との交流を大切にしました。例えば、私はキリスト教徒ではありませんが、毎週日曜の礼拝に出て教会主催のイベントに参加したり、よく行くコーヒーショップやコインランドリーの定員と仲良くなってプライベートで会ったり。彼らと過ごす時間が英語力の向上に繋がったと思います」。
特に英語力が磨かれたと感じているのは、語学学校修了後に行った約1ヵ月間の一人旅だ。きっかけは旅のはじめにウィスキー好きが集まる会に参加したときのこと。参加者がウィスキーを飲みながら楽しく会話しているのに、自分はその輪に入れずフラストレーションが溜まっていた。"自分から話しかけないことには何も始まらないんだ"と痛感した大久保さんは、勇気を出して自分からどんどん話をすることにしたという。幸いウィスキーに関する知識は豊富にあったので、話すネタには困らなかった。
「少々文法が間違っていようと、発音がおかしかろうと、恥ずかしがらずにどんどん話しているうちに、周りも受け入れてくれるようになりました。結局その日は、仲良くなった数人と別のバーに移動して、大好きなウィスキーを飲みながら夜遅くまで語り合いました」。
それ以来、旅先では臆せず積極的に自分から話かけるようになった大久保さん。レンタカーを借りてイギリス・スコットランド各地の観光名所やウィスキーの蒸留所を巡ったりしながら、世界各国の人々との交流を楽しんだという。
留学前は"観光業界で働きたい"と漠然と思っていた大久保さんだが、旅を通してその夢がより具体的に、より明確に目標になっていったという。
「約1ヵ月間ひとつの場所にとどまることなく旅をしていたので、ほぼ毎日宿を自分で見つけて泊まっていました。どの宿泊所にも外観や内装にこだわりがあって、お客様を楽しませたいというオーナーの姿勢が伝わってきました。日本の宿泊施設は小綺麗だけどさほど個性を感じない。そこで自分で小さいけれどお客様に楽しんでもらえるような宿泊施設を日本でやってみたい、と思うようになったんです」。
帰国後、すぐに留学ジャーナルのキャリアカウンセリングで一般的な就職活動の流れと方法を学んだ大久保さんは、ホテル求人の専門サイトに登録。将来自分で宿泊施設を持つために、外国人観光客が多く、ホテル業務の全般を知ることができるサイズのホテルを選んで2社応募した。そのうち、第一希望のホテルから内定を受け、帰国後1ヵ月後には再就職が決まった。
「スムーズに就職が決まった理由は、就職したい先が絞れていましたし、私の働く目的や夢が具体的だったので採用する側も採用しやすかったのだと思います。また、帰国後すぐに就活したので、英語を使って仕事がしたい、将来自分はこうなりたい、という熱い気持ちが相手に伝わりやすかったのかもしれません」。
海外生活では特に、人との出会いを大切にしていたという大久保さん。面接官との話も「勉強になったしありがたかった」と語る大久保さんの謙虚さが、面接官にも伝わり、"一期一会"を大切にするホテルマンの精神を見込まれ、即採用につながったのかもしれない。ホテルマンとしての大久保さんの今後の活躍が楽しみだ。
前職と異なる業種への転職=キャリアチェンジを目指した大久保さんの就職活動がスムーズに成功した要因はずばり、(1)明確な目標設定(2)謙虚さ(3)行動力の3つだったと思います。
まず(1)の「明確な目標設定」について。大久保さんは留学前から観光業/宿泊業にキャリアチェンジしたいという希望がありました。留学を通して、「将来自分で外国人向けに宿泊業をする」という目標がより明確になっていたので、帰国後はその目標達成のために必要な経験やスキルを身につけられる職場を探すというシンプルな活動となりました。具体的には、「お客様は外国人」、「未経験でも応募できる」、「フロント以外にも幅広い業務を経験できる」というキーワードで絞り込み、積極的に応募したことで、内定までスムーズに進んだと思います。
次に(2)の「謙虚さ」について。一般的に30代半ばをすぎると未経験でも応募できる求人は減る傾向にあります。その理由のひとつに、年齢が高いと、年下の上司につくことになったり、新人として一から教わったりすることに抵抗を感じるケースが多いからということが挙げられます。ですが、大久保さんは新しいことを一から学びたい、どんな業務にもチャレンジして経験を積んでいきたい、と常に謙虚で前向きな姿勢で転職活動に臨んでいました。そうした大久保さんの前向きで謙虚、そして誠実な人柄が企業からも高く評価されて、応募から1ヵ月という速さでの内定につながったのだと思います。
最後に(3)の「行動力」について。やりたいことが明確でも、30代に入ると新しいことに飛び込むリスクを考え、なかなか行動に移せないという声もよく耳にします。大久保さんの場合、12年間働いた仕事を辞め留学をするという決断をするのは随分勇気が必要だったと思います。そこで大久保さんは、留学前にキャリアカウンセリングを利用し、帰国後本当にキャリアチェンジが可能かどうか、アドバイスを求めていました。また、留学中は英語力を上げるために、学校以外にも自分からネットワークを広げたり、一人旅にチャレンジしたりと、常に自ら行動に移すことで、課題を解決し夢の実現に近づいていきました。帰国後も帰国2日後という時差ボケが取れないタイミングで早々にキャリアカウンセリングにいらして、条件に合った求人が見つかればすぐに応募していました。この、「悩む前にまず行動に移す」という大久保さんのフットワークの軽さがあってこそ、30代でのキャリアチェンジに成功したのだと思います。
大久保さんのように社会人留学をステップに再就職を成功させるには、留学の目的を見失うことなく、留学中は自ら積極的に行動することが大切です。そして何より、帰国後なるべく早くキャリアカウンセリングを利用することをオススメします。というのも、帰国した時が、転職に向けてがんばろうというモチベーションが高く、英語力も上がっているタイミングだからです。ぜひ大久保さんの留学と就活を参考に、社会人留学にチャレンジしてみてください。