留学成功の秘訣
留学の目的は人それぞれだが、角口さんは最初から、自分の将来と留学を結びつけて考えていた。ただ英語を話せるだけではなく、ビジネス英語を身につけて、その英語をビジネスの現場で使ってみたい。「そうすれば将来の可能性や選択肢が広がると思ったんです。『友だちできました、英語覚えました』みたいな留学は、イヤだったんです」。だから彼は、ビジネス英語が学べて、インターンシップも体験できる9ヵ月の留学プランを選択した。 留学先はUCサンタバーバラ校。志が高かった彼は、最初に自分で自分を追い詰めて、ホームシックにかかった。「親から反対されたこともあり、留学を目的にしたくはなかったんです(笑)。絶対日本語は話さない!日本を思い出すものは排除する!って決めてましたね。日本人相手にも英語で話しかけるようなヤなやつで(笑)、毎日のスケジュールも、『朝はCNNを見て、学校から帰ったあとはスタバで本を読んで、映画を見て部屋に戻ったら何時間は勉強する』って、超ストイックな生活を自分に課したんです。そしたら、日本では味わったことないような淋しさを感じてしまって……。そこで、『力もないのに頑なになってもしょうがない。まずは楽しくコミュニケーションできるようにしよう』って、ハードルを低くしたんです」 ビジネスサーティフィケートを学ぶ12週間では、「ヴァンを利用した移動式ライスバーガー店のビジネスプラン」に取り組んだ。チームメイトには、スイス銀行で働くビジネスマンもいて、多くの刺激を得た。「大学生の僕と、実際に社会で働く彼とは、語学力も考え方にも大きな差がありました。でも、だからこそ『ここで僕は何かできるか、僕の役割は何なのか』を真剣に考えて、自分から発言していく強さを積極性を身につけられました」。面白かったのは、大学内のラウンジでくつろぐアメリカ人大学生に声をかけ、アンケートに協力してもらったこと。「ビジネスプランのウケは良かったんです。でもみんなが心配したのがコックローチ(笑)。だからプレゼンでは、衛生面をきちんとフォローするようにしました」 最後の12週間はいよいよインターンシップだ。多くの留学希望者から「海外でインターンシップの経験をしてきたほうがいいか?」という質問を受けるが、角口さんは「実務的なスキルアップは期待はしないほうがいい」と言う。「インターンシップのメリットは『実務スキル修得』より、むしろ『就業経験そのもの』。学生は頭でっかち。まずは、指示されたことを期待通りにこなした上で、自分でできることを考えて行動する。そこから職場での信頼関係を築いていくことでチャンスが開けることもあります。海外のインターンは言葉の壁があるので、そうした、よりチャレンジングな環境の中で評価され信頼関係を築けたことは大きな自信になりました」
彼のインターンシップ先はホテル。最初は人事部配属でのルーティーンワークだったが、与えられた仕事をなるべく早く終わらせたり、人事部によく出入りする人の顔と名前を覚えて話しかけたりと積極的にアピール。その結果、以前から関心のあったマーケティングの部署に異動がかない、自分から日本人向けのパンフレットを作ったり、日本人客を増やすためのレポートを書いた。「ここで自分で考え、自分で動くことの大切さが身についたと思います」 就職活動を考えて12月に帰国した角口さんだったが、実際にはアルバイトやあまり入社意志の強くないインターンで3月までの時間を費やしてしまう。留学経験があり語学力もあるし、何とかなるだろうというおごりがあったと言う。イケイケな気分で、新卒募集をしてない会社に履歴書を持参したこともある。でも、面接を受けると普通に落ちた。「コミュニケーションができてなかったんですね。『何ができますか?』『結果が出せます』みたいな(笑)」 「ブランドマーケティングをやりたい」と強く思うようになったのもこの頃だ。留学前は漠然と人事の仕事に興味を持っていたが、留学中のインターンの経験から、自分のやりたいことは人事ではない、と再度自分を見つめ直す。留学中に体験したマーケティングのインターンや友人の話をきっかけに、本などで調べるうちに「ブランドマーケティング」に興味を持つようになる。「もう一度自分はどういう人間で、将来どうなりたいかを整理して話すようにしました。留学経験も話したけれど、それは『僕』という人間を理解してもらうエピソードのひとつという考え方です。応募企業もブランドマーケティングに強い外資系消費財に的を絞り、ドラッグストアやスーパーの店舗を回ったり商品を研究したりして、『なぜ御社なのか』を明確に話せるようにしました」 角口さんは言う。「英語力があったから外資系の英語面接はクリアできたと思います。英語ができることで選択肢が拡がったのは事実。でも、英語力だけをPRするのは無意味。自分ができることややりたいこと、つまり自分自身をわかりやすく伝えることが大切なんですよね」
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