オーストラリアの政府機関が運営する職業訓練専門学校

IMG_1080.jpg先月、オーストラリア首都特別地域(Australian Capital Territory:ACT)の政府機関の招待をいただき、シルバーウィークの最中、カウンセラーを派遣し、キャンベラにある職業訓練専門学校と公立中学・高校を視察してきてもらいました。

「キャンベラ」と聞いてピンとこない方も数多くいらっしゃると思いますが、シドニーから飛行機で1時間の場所にあるキャンベラは、オーストラリア連邦政府の直轄地でその名の通り首都特別地域です。

彼女はオーストラリアで大学留学も経験したカウンセラーで、その後、何度もオーストラリアを訪れる機会があったにも関わらず、一度も足を踏み入れたことのない都市への期待と、他都市に住むオーストラリア人が「何もない」と言ってしまう噂が本当かどうかを確かめたいという好奇心から、この出張を非常に楽しみにし、帰国後には、彼女らしい鋭い視点で、キャンベラの魅力を語ってくれましたので、その中からいくつかご紹介をしたいと思います。

IMG_1468.jpg今回訪問をしたCanberra Institute of Technologyは、オーストラリア首都特別地域の政府機関が運営する公立の職業訓練専門学校です。地元の高校を卒業したオーストラリア人はもちろん留学生に対して、卒業後のキャリアに直結した100以上のCertificate(サーティフィケイト)やDiploma(ディプロマ)レベルの高等教育プログラムを中心に開講しています。

学校の話の前に、まずはオーストラリアの職業訓練専門学校について説明をしておきたいと思います。

オーストラリアでは高校卒業後の進路として、大学への進学、専門学校への進学、就職という選択肢が一般的です。ちなみに、日本の短大やアメリカのコミュニティ・カレッジのような教育機関はありません。そのため、オーストラリアでは専門学校が短大の役割も果たす教育機関として、政府機関が運営する公立の専門学校がオーストラリア全土に存在しています。

また、オーストラリアでは高校などの中等教育や専門学校、大学・大学院を対象とした資格や学位の認定基準のガイドラインを、オーストラリア連邦政府の管轄下である教育水準認定機関『Australian Qualifications Framework(AQF)』(オーストラリア資格フレームワーク)により10段階に定められています。

IMG_1008.jpgAQF Level
 Level 1 - Certificate I
 Level 2 - Certificate II
 Level 3 - Certificate III
 Level 4 - Certificate IV
 Level 5 - Diploma
 Level 6 - Advanced Diploma, Associate Degree(日本の短大レベル)
 Level 7 - Bachelor Degree(日本の大学レベル)
 Level 8 - Bachelor Honours Degree, Graduate Certificate/Diploma
 Level 9 - Masters Degree(日本の大学院レベル)
 Level 10 - Doctoral Degree(日本の大学院レベル)

その中で、Certificate(サーティフィケイト)やDiploma(ディプロマ)レベルの勉強ができる職業訓練を『Vocational Education & Training(VET)』と呼び、政府機関が運営する『Technical and Further Education(TAFE)』(公立)または、民間の教育機関(私立)で勉強ができます。

どちらも日本の教育制度にあてはめると「専門学校」として位置づけられていますが、政府機関が運営していることから『Technical and Further Education(TAFE)』の方が多彩な分野で数多くのコースが開講され、またコース修了後に授与される資格も初級レベルから大学卒業と同等レベルまで幅広いことが特徴です。

日本の『高専』に近い、卒業後に大学編入も狙える教育システム

IMG_1498.jpgオーストラリアの職業訓練『Vocational Education & Training(VET)』は高校卒業者を対象としているという話をしましたが、実際には中学卒業レベルを修了した学生もCertificate(サーティフィケイト)の中でも初級レベルのプログラムを受講することができます。

Certificate(サーティフィケイト)と一言でいっても『Australian Qualifications Framework(AQF)』(オーストラリア資格フレームワーク)では4段階に分かれていますので、例えばCertificate IIIからスタートし、Certificate IVへ進級、最終的にDiplomaまで目指すには2年以上の時間がかかることもめずらしくありません。

また、今までは「専門学校卒業後は就職」という進路が一般的でしたが、ここ数年で「Diploma修了後に提携大学へ編入」という進路も増え、学力や経済的な理由から高校卒業後にすぐに大学へ進学できなかった学生にとってチャンスが広がっています。

このように、中学または高校卒業後にまずは実践的な専門スキルを修得し、卒業後にさらに知識を高めるために大学へ編入という進路を選択することもできることから、『Technical and Further Education(TAFE)』は日本の高等専門学校に似ているとも言われています。

業界の第一線で活躍するプロが講師を務める実践的カリキュラム

IMG_1197.jpg今回の訪問で、実際にCanberra Institute of Technologyや授業の様子を見学する機会に恵まれ、そこで担当講師や学生から直接話を伺うことができました。

ビジネスやITネットワーク、旅行学やホスピタリティなどの専門分野はもちろん、看護学や建築学、犯罪科学やファッションの専門分野に至るまで、そこで教えている講師のほとんどが今でもその業界の第一線で活躍する現役のプロフェッショナル。

教科書に書かれた内容を教えるだけでなく、最先端の技術や業界のトレンド、就職活動を行う上での採用の動向などを、リアルタイムで学生に伝えることができるのが最大の魅力です。

また、「最新の機器を使って実習をしなければ意味がない」という担当講師の言葉通り、例えば看護学の実習現場では同じ医療器具でも複数のメーカーのものを揃え、すべての器具を使いこなせるように練習をしている姿が印象的でした。

そして、地元で就職をする卒業生が多いことから政府機関からの経済的な支援は惜しみなく、日本の大学並みの充実した施設のすばらしさには目を見張るものがありました。

業界のプロから伝授されるハイレベルな実技指導と大学への編入が可能な教育カリキュラムが、国の教育水準認定機関によって厳格に管理されているオーストラリア。日本の教育システムと単純に比較はできませんが、政府機関からの手厚いサポートがある恵まれた教育環境であることは間違いありません。

今回のコラム担当

代表取締役副社長 加藤ゆかり

【Profile】

横浜市立大学卒。ニュージーランドでの1年間の海外生活を機に、帰国後、英会話講師を経て現在の(株)留学ジャーナル前身であるICS国際文化教育センターで留学カウンセラーの職につく。名古屋支店長を経て、2001年よりプロダクトマネージャーとしてプログラム開発等に従事し、2003年1月同社取締役就任。現在、(株)留学ジャーナル代表取締役副社長として、日本人の海外留学促進に努めている。JAOS海外留学協議会理事、留学・語学研修等協議会常任幹事。

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