日本の大学2年次修了後に、念願だったアメリカの2年制大学への留学を果たした保延芽菜さん。在学中は、4ヵ月間のインターンシップを経験したり、日本語クラブを立ち上げたり、現地の人々と積極的に交流。キャリアフォーラムでは3社から内々定を獲得した。自ら未来を切り開く行動力を持つ保延さんに、就職成功の秘訣を聞いた。
高校時代から海外ドラマや洋楽に興味を持っていた保延芽菜さん。高校卒業後は日本の大学に進学し、一度は海外留学を断念するも、諦めきれず一念発起。日本の大学2年次修了後にアメリカのラスベガスにある2年制大学、カレッジオブサザンネバダに編入学する。「日本の大学の単位をアメリカの大学に移行できると聞いて、日本の大学を退学してアメリカのカレッジに編入学することを決心しました。以前から長期の留学をしたかったので迷いは全くありませんでした」。
日本の大学で観光学を勉強していたことと留学先にラスベガスを選んだことから、専攻はホスピタリティマネジメントに。印象に残っている授業は、必修科目のインターンシップだ。アメリカでは本来、学生ビザでのアルバイトは禁止されているが、授業としてなら就労ができる。4ヵ月間ほどラスベガスにあるレストランで仕事をし、アメリカと日本のレストランの接客の方法がまったく違うことに驚いたという。
学校の授業以外では、友人と「日本語クラブ」を立ち上げ、部長として現地の学生たちに日本語を教えるボランティア活動をスタート。楽しみながら日本語を学んでもらいたいと、しりとりやビンゴゲームなど遊びを通して日本語を学べるよう毎回授業を工夫した。また、大学内のチュートリアルセンターで、日本語の授業を受講する学生のサポートを行う「チューター」としても活動。現地の学生に日本を知って、もっと好きになってもらおうと積極的に取り組んだ。
「日本語クラブで日本語を学んだ何人かの学生さんが、今年日本に留学をするんです。自分が携わった活動が誰かに影響を与えられたということ、自分が海外で発信する側になれたことがとても自信になりました」。
2年次に進級する前の夏頃から就職活動を開始。秋に開催されるロサンゼルスとボストンの留学生向けキャリアフォーラムに焦点を絞り、自己分析や企業研究を行った。「レストランでのインターンシップや日本語教師の経験を通して、人と関わる仕事をしたいと考えていました。業種や職種をあまり絞り込みすぎず、チャレンジできそうなところには積極的にエントリーしてみました」。
キャリアフォーラムでは、事前エントリーを必要とする企業や当日エントリーが可能な企業など、内定までの行程は様々。保延さんは約20数社に応募し、3社から内々定を獲得したという。「企業の担当者から様々な話を聞くなかで、お客さんと直接関わりを持てる小売業界に興味を持つようになりました。どの会社に就職しても一生懸命取り組める自信はありましたが、最終的に1社に絞る決め手になったのは、取り扱う商材が自分の好きなものであること、でした」。中高生時代に6年間ソフトボールを、大学ではフットサルに通っていた保延さん。スポーツ用品を取り扱う仕事は最も身近で、働く自分をイメージしやすかったという。
「入社後、人事の方に私の評価のポイントを聞いてみたんです。日本の大学を2年で辞めて海外に留学したことや、留学先で日本語クラブを自分で立ち上げたことなどを通して、"何か新しいことを始めるための決断力や行動力があることを評価した"とおっしゃって下さいました」。
面接では、自分のことをよく見せようとはせず、留学中に失敗したことや後悔していることを正直に話したことも良かったのではと自己分析する。「マネージャーなど上司にも臆せず自分の意見をきちんと伝えられることも留学のおかげだと思います」。
店舗での販売を経験後、将来的にはバイヤーか海外新店舗の経営サポートをする予定だ。「私が就職する予定の企業はまだ海外店舗が少ないので、自分の英語力を生かしてもっと広げられたらいいなと思います。留学で得た粘り強い力や何にでも挑戦する気持ちは生かされると思うので、上を目指してがんばっていきたいと思います」。
今のところ留学経験が十分に活かされる場面は少ないが、外国人のお客様への接客や2名いる外国人従業員とやりとりに困ることはないという。また、海外生活で培った、人に注目してもらえるような話し方や説得力のある話し方などのプレゼンテーション能力も、仕事の上で役立っている。
仕事以外にも夢があるという保延さん。「将来的には、海外で日本語を教えた経験を活かし、日本に留学したいと思っている学生を受け入れる仕組みづくりができたらと思っています。もちろんボランティアでもいいので日本語の先生は続けていきたいですね。でもまだ全然具体的に決まってないので、まずは今の会社でしっかり社会を学ぼうと思います(笑)」。
新たなステージに立ち、夢が広がる保延さん。持ち前の明るさと行動力を武器にどんな活躍をしていくのか、これからますます楽しみだ。
保延さんの場合、約2年間という短いカレッジ生活のなかで、レストランでのインターンシップ経験や自ら日本語クラブを立ち上げてネイティブの学生たちと交流する経験など、自分の強みをアピールできる体験をしています。その活動を通して「失敗や挫折をどう乗り越えたか」ということを具体的に面接官に伝えられたことが、良かったのではないかと思います。
実は、保延さんが就職活動を開始したのは、カレッジに編入学したての1年生の夏、一時帰国されたときでした。海外でのカレッジ生活がスタートしたばかりで就職活動なんてまだまだ先、と思っている学生さんが多いなか、彼女は「就職活動について何をすればいいのか分からないので教えて欲しい」と早い段階から相談しにいらしたのです。私は、この保延さんの「事前準備の周到さ」こそが、就職活動成功のカギではないかと思っています。
保延さんが特に不安に思っていたことは2つで、「アメリカの2年制大学卒業ということは日本では"短大卒"という扱いになるので、就職先があるのか心配」ということと、「どこで就職活動をすればいいか」ということでした。実際のところ、留学生向けの就職相談会「キャリアフォーラム」に参加する企業でも、2年制大学卒業(短大卒業)の方を対象としている企業はたくさんあります。企業が採用する人材として重要視するのは、「学歴」ではなく、海外で得た経験や知識、スキルをその企業でどのように活かしてくれるのか、ということです。つまり、困難な状況下でどのように問題を解決し、次につながる建設的な提案や具体的な行動が取れる人材なのかを知りたいのです。海外では日本よりも、困難な状況に遭遇する機会は数多くあります。そのたびに失敗や挫折を自分がどのように乗り越えたのか、具体的なエピソードとして整理しておくとよいでしょう。また、留学生の就職活動の方法としては、ボストンやロサンゼルス、ロンドン、シドニー、東京で毎年行われる留学生向けの就職相談会「キャリアフォーラム」への早めの参加をおすすめしています。海外にいながら就職活動ができますし、ビジネス英語を話せるレベルであれば誰でも参加できるので、業界を知るチャンスだったり、面接で聞かれることを事前にリサーチできるチャンスだったりします。
保延さんは当初、「この業界に入ってこの仕事をしたい」という具体的な目標はありませんでした。就職活動を通して業界をリサーチし、自分の適性と業界や職種との相性を見ながら、最終的に行きたい業界や職種を絞りこんでいったのです。就職活動をする前から、「具体的な目標や、やりたいことが見つからない」と悩む人がいますが、そんな心配をする必要はありません。保延さんのように、就活をしながら絞っていくのもひとつの方法なのです。とにかく、留学先で、失敗や挫折を恐れず様々なことにチャレンジしてみてください。そして、早め早めに行動し、情報を集めていくことが大切なのです。