日本の大学を卒業後、カリフォルニア大学アーバイン校のエクステンションプログラムへの留学を経て、念願の海外就職を果たした川和瞳美さん。日本とは全く異なるアメリカでの就職活動をどう成功させたのか。与えられた環境の中で最大限の努力をすること、人との出会いに感謝すること、そして何より決して諦めないことをモットーに、“失敗の先に成長がある”と信じて前に進み続けた川和さんに、海外就職の成功ストーリーを聞いた。
海外への憧れが強くなったのは大学3年生のとき。思い出作りにと軽い気持ちで行ったカナダへの6週間の短期留学で、英語を使ってコミュニケーションをとることの楽しさに気づいたという。もっと英語がうまくなりたいと、帰国後すぐに英会話スクールに通い始めた川和さん。しかし、なかなか英語力は伸びず、このまま日本で就職していいのだろうかという将来への漠然とした不安も重なり、留学して自分を見つめ直したいと思うようになった。
留学ジャーナルカウンセリングセンターで相談をしたところ、短い期間の就学でインターンシップを経験できるカリフォルニア大学アーバイン校のエクステンションプログラムを紹介された。プログラム修了後、現地で就労できるチャンスがある点にも魅力を感じ、このプログラムに決めた。
川和さんが選んだカリフォルニア大学アーバイン校のエクステンションプログラムは、10週間は大学でのビジネス関連のコース、次の10週間はマーケティングコース、その後の10週間は学んだことを活かして実際の企業でインターンシップを経験するもの。プログラム前に大学付属の語学コースを受講した。
「学業の面で大変だったのは語学コースからエクステンションプログラムに移ったときでした。レベルが一気に上がったので先生の言っていることが全くわからず、クラスでビジネス未経験は私一人だけという環境のなか、クラスメイトに助けられながら毎日必死で勉強しました」。
ビジネスアドミニストレーションコースではほぼ毎週グループワークとプレゼンテーションがある。限られた時間の中で全体をまとめて大事なところを発表していく必要があるため、大量のデータや読み物を一気にまとめる力、そして何よりプレゼンテーション力が身についた。
「面接は自分の魅力をどこまでアピールできるかのプレゼンに似ていると思います。また、実際の仕事でもプレゼン力は必須のスキルです。留学中は失敗の連続でしたが、そこから学んだことが多かったからこそ今の自信につながっています」。
プログラム最後のインターンシップは、学校では履歴書の書き方や面接の指導をしてくれるだけなので、インターン先を自分で探さなければならない。過去にインターン生を採用した実績がある会社や憧れの会社に履歴書を送り、何度も連絡して面接にこぎつけ、ようやくWCCT Globalという治験会社に採用された。
「アメリカでは自分からすべて行動を起こさないと何も始まりません。日本のように決まった履歴書の書式やエントリーシートなども用意されていないので、自分をより魅力的に見せるような内容の履歴書にすることが大切でした」。
プログラム修了後、引き続きアメリカに残ってオプショナルプラクティカルトレーニング(以下OPT)で仕事をするための就職活動はさらに厳しかった。インターネットや現地の就職援助会社を通じて10社ほどに履歴書を送り面接を受けたが、どこからも内定をもらえなかったという。
「OPTで働くにはエクステンションプログラム修了から3ヵ月以内に仕事を見つけなければなりません。周りの友達はほとんど帰国してしまいました。私の場合は、憧れていた製薬業界でかつ就労ビザまでサポートしてくれるような企業を探していたので本当に狭き門でした」。
そんな孤独の中、川和さんはどのように自分をポジティブに保ったのか。 「絶対に帰国はしたくない。まだここにいて自分を成長させるんだ、という強い思いで就職活動を続けました。アメリカでは履歴書を送っても先方から連絡が来ることはまれ。何度もしつこいぐらい連絡したり、面接でよく聞かれる質問をまとめて英語と日本語で繰り返し練習したりと、できる限りの努力をしました」。
そんなとき、インターンシップをした治験会社の上司から連絡があり、同社の面接を受けることに。その結果、無事にOPTとして内定を獲得。諦めかけたこともあったが、今では諦めなくて本当に良かったと思っている。
就職活動の面接で役に立ったのが、自分の"成長ノート"だ。留学前に自分の中で直したい、成長させたい点を記録しておく。そして留学中も大変なことがあるたびに記録し、克服したり成長したと感じたりしたらそれも書き留めておく。就職活動が始まったときにそのノートを読み返すと、それぞれが繋がって自分の成長が目に見えてくるという。
「アメリカでは日本のように一斉に新卒を採用するのではなく、必要に応じて必要な人材を雇うので、自分がどれだけ会社にとって必要な人材かを具体的にアピールする必要がありました。そのため、成長ノートに記録しておいた内容は、自分の強みを具体的に表現するヒントになりました」。
OPTで念願の製薬関連企業への就職を果たした川和さん。仕事を始めてからも試練の連続だったという。英語力にまだ自信がない中で、毎日現地の人からかかってくる電話に対応。難しい医療用語が溢れる会話から、的確に相手の要望を聞き取らなければならない。
「慣れるまで本当に大変でした。正直、私にはこの仕事は無理、、、と感じることもありましたが、諦めたら日本へ帰国しなければならないので必死でがんばりました」。
現地の友達に発音を矯正してもらったり会社の先輩たちに助けてもらったりしながら、なんとか慣れていったという。この辛い経験があったからこそ英語力が一気に伸びたと感じている。
OPT 修了後、引き続き同社で働くために就労ビザの申請をしたが、アメリカ連邦政府の抽選に外れ、残念ながら日本に帰国しなければならないことに。ところが、上司が別の製薬会社を紹介してくれ、電話面接と直接面接を経て無事にアメリカでの本就職の切符を手にした。
「人との出会いって本当に大切だと感じました。OPT で働くチャンスをくれたのも、今働いている会社を紹介してくれたのも、インターンで働いていた会社の上司。私にこんな素晴らしいチャンスをくれた上司に本当に感謝しています」。
今の自分があるのはこれまで出会ったすべての方々のおかげ、と何度も口にする川和さん。何事にもひたむきに努力すること、そして何より周囲への感謝の気持ちを忘れない謙虚な姿勢こそが良縁を引き寄せる秘訣なのかもしれない。
最後に、留学は川和さんに何をもたらしたのかを聞いてみた。 「留学をして初めて、"失敗の先に成長がある"ことを実感しました。留学前の私は自信がなく、いつも周りと比べて劣等感を感じていました。そのため、失敗することが恐怖でした。でも、海外では失敗するのが当たり前。失敗から多くのことを学べることを知ったので、人と比べることもなくなり自分に自信が持てるように。今ではどんどん失敗を繰り返してさらに成長していきたいと思っています(笑)」。
良いことも悪いこともすべてを消化し自分の力に変えていける川和さん。彼女の海外での挑戦はまだまだ続く。
エクステンションプログラムは、短い期間でビジネスやマーケティングなど実践的な勉強ができる上、企業でインターンシップが体験できたり、OPTとして現地で最大1年間働けたりできるため、海外で働く経験を積みたい方に人気のあるプログラムです。ただ、インターンシップや就業先は自分自身で探して応募し面接を受けなくてはならず、現地で働くのは簡単ではありません。そうした中、川和さんは目の前の壁を1つずつ乗り越え、3年かけてエクステンションの勉強→インターンシップ→OPT→現地での就職、と見事夢を叶えました。
英語力をつけること、現地で授業を受けること、英語でプレゼン経験を積むこと、現地企業に応募し面接を受けること、現地の人の中で働くこと、すべて初めてのことばかりで戸惑うことも多かったと思います。さらに、川和さんは就業経験がないため、即戦力を重視するアメリカで自分を雇ってくれる企業を見つけ出すのは大変難しかったことでしょう。そんな厳しい条件の中、川和さんがいかに海外就職を成功させたのか、要因を3つ挙げてみました。
ひとつは「強い意志」です。川和さんの場合、日本の大学卒業後すぐに留学しているので、帰国後日本で就職する場合は「既卒」扱いとなり、就職活動が厳しくなることを自覚していらっしゃいました。だからこそ、最初から「エクステンションコース後はインターンシップとOPTをやるんだ」という強い意志を持って留学に臨まれました。就業経験がないというハンデにも関わらず、OPTでの就業先、さらには就労ビザでの就職先まで見つけて海外で働くことができたのは、まさに川和さんの諦めない姿勢と強い意志があったからこそだと思います。
2つ目は「準備力」だと思います。川和さんは、留学前から留学中、一時帰国時など、節目ごとに何度もキャリア相談を利用されました。相談内容は、プログラム修了後の就職を見据えて留学前、留学中は何をすればいいのか、就職のためにTOEICはどの位を目指せばいいのか、キャリアフォーラムには参加すべきか、面接対策、就職活動の進め方など、具体的な質問ばかりでした。常に一歩先のことを考え、やれるだけのことはすべてやれるよう準備をしていたからだと思います。多くの人にとって留学がゴールになりがちですが、川和さんは「留学はあくまでも夢実現のための通過点」として、最初からブレずに入念に準備をしていたように思います。
最後は、やはり「周囲への感謝と配慮」です。川和さんは留学中もこまめにキャリアサポートのお礼や近況報告のご連絡をくださっていました。周りへの感謝の気持ちを忘れない謙虚で前向きな姿勢は、アメリカで出会った方たちにもプラスの印象を残していき、一緒に働きたいと思わせたのではないかと思います。こうした川和さんのコミュニケーション能力や誠実さ、人間性が上司や一緒に働く人たちに評価され、様々なチャンスに繋がっていったのではないかと思います。就職活動においては、川和さんのように人からの紹介やネットワーキングも重要になってきます。留学中は、積極的に出会いの場に飛び込んでいき、社会人の方の話を聞いたり、こんな仕事に興味があるということを周りの人に話したりして、アンテナを張り巡らせて情報収集していくことが就職成功の鍵となるでしょう。
川和さんの場合、現地で働きたいという強い意志をもって、ひたむきにがんばられたことが、夢を実現させる力に繋がりました。これから留学される方も、最初から無理だとあきらめるのではなく、川和さんのように失敗してもいいんだ、という気持ちでチャレンジしてみていただきたいと思います。出会いに恵まれ、思いがけないところから夢への突破口が開けることがあります。