事務所到着、同僚と挨拶・世間話(タンザニアではかなり時間をかける) | |
ニュースやメールをチェック。その日の予定を立てる | |
毎週あるプログラム・ ユニットのミーティングに参加 | |
新しいプロジェクトのプロポーザルの作成に取りかかる | |
同僚とランチ。敷地内にできた新しいカフェや近場の食堂へ | |
栄養プロジェクトを導入しているパートナーと電話会議 | |
ドナーの現地スタッフとプロポーザルの詳細を詰める | |
メールの返信や書類の整理 | |
帰宅(車で15分程) |
グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた
事務所到着、同僚と挨拶・世間話(タンザニアではかなり時間をかける) | |
ニュースやメールをチェック。その日の予定を立てる | |
毎週あるプログラム・ ユニットのミーティングに参加 | |
新しいプロジェクトのプロポーザルの作成に取りかかる | |
同僚とランチ。敷地内にできた新しいカフェや近場の食堂へ | |
栄養プロジェクトを導入しているパートナーと電話会議 | |
ドナーの現地スタッフとプロポーザルの詳細を詰める | |
メールの返信や書類の整理 | |
帰宅(車で15分程) |
車で10時間揺られて、ようやく目的地に到着することもある。雨が降れば道路が遮断され、キリンや野生動物に出くわすことも。
「どうしてもフィールド(現地)で仕事をしたかった」
こう話すのは、つい最近までタンザニアで学校給食を支援するプログラムなどに携わっていた、唐須史嗣さんだ。外務省の若手スタッフ派遣制度、JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)として、国連の食糧支援機関、国連WFP(World Food Programme)の現地事務所で勤務している。
タンザニアの村々で学校給食が行きわたるよう、親たちや地元農家とも協力しながらプログラムを組んだ。
「土地が乾燥した地域などは食糧不足で、給食が子どもの貴重な栄養源になることもあります。給食があれば、子どもたちも学校に来やすくなるし、集中力が高まり、やる気も出る。とても重要な役割を果たしています」
給食の原料はとうもろこしや大豆など。植物油や塩、砂糖などで調理する。国の食糧庫から安い値段で食材を仕入れることもあれば、地元の政府を支援して地産地消に近い方法を選択することもあり、「持続可能(サステイナブル)」に給食を提供するにはどうしたらいいか、考えるのが唐須さんの仕事だ。
1999年5月中国の対外経済貿易大学にて3ヵ月留学
2001年6月ウィリアムズカレッジ卒業
2001年7月コンサルティング会社Lexecon Inc.
(米国・ボストン支部)のエネルギー部門に勤務。
報告書に含まれる経済的、統計的分析、リサーチ
が主な職務内容。
2005年2月NERA Economic Consulting(米国)の
Securities Practiceでアナリスト、シニアアナ
リスト、コンサルタントとして勤務。ニューヨー
ク支部の証券/ファイナンス部門勤務。期間中
シドニー支部の証券/ファイナンス部門立ち上げ
にも関わる
2009年10月日本の非営利団体TABLE FOR TWO
International(TFT)の米国支部TABLE FOR
TWO USAを設立および運営。資金調達、財務等
あらゆる業務を遂行
2010年5月マラウイで、ミレニアム ビレ
ッジ プロジェクトの総合的な
農村開発投資の効果を研究
2011年5月コロンビア大学院にて、行政学修士号取得
専攻: Development Practice
2013年1月健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
で外部専門家としてリサーチ等に従事
2014年3月国連WFPのタンザニア事務所でJPOとして従事
2016年3月国連WFPのミャンマー事務所で勤務開始
給食を前に子どもたちが喜ぶ顔を見たり、スワヒリ語で一緒におしゃべりしたりする時間は何事にも代えがたいひとときだ。
一方で、難民の現状など、悲しい現実を目の当たりにすることもある。
「タンザニアの北西部にある難民キャンプを訪れると、慢性的な栄養不足に陥っている人が大勢いた。4歳の女の子が、自分の3歳の息子よりも背が低くやせ細っているのを見て、生まれた環境で子どもの生活が異なることに、無力感をおぼえました」
みずからを「地球市民」と考える唐須さんにとって、世界から職員が集まる国連は心地よい場所だ。言語学者の父親は幼少のころからの英語教育が必要と考え、唐須さんは小学校から高校までをインターナショナルスクールで過ごした。米国の大学卒業後は、米企業で経済コンサルタントとして働いた。
コンサルタントの仕事は面白かったが、使命感や「やりがい」はそれほど感じなかった。
「30歳になるまでには心からやりたいことに挑戦したい」
それが国際貢献だった。20代後半、ニューヨークの大学院に進学し、開発を学んだ。
「国連で働くには高い専門性が必要だと一般的には考えられています。でも自分は大学院で、栄養や食糧などについて広く学ぶ専攻に進んだ。専門性はあまりありませんでしたが、そこで学んだ開発の専門用語や計量分析などは、いまの仕事にも役に立っています」
在学中から、世界の食糧や子どもたちの問題に関心があった。『20円で世界をつなぐ仕事』という著書を読んでTFT(テーブルフォートゥー)という、日本発の社会貢献プログラムを知り、創始者の小暮真久さんに「米国でもこの活動を始めたい」と直接かけあった。
企業や団体に働きかけ、肥満を解消するメニューを食堂に取り入れてもらう一方で、売上の一部をアフリカの子どもたちの学校給食のために提供するプログラム。「2つのテーブルをつなぐ」というのがコンセプトだ。
唐須さんは数人のスタッフとともに、卒業後も含め計4年このプログラムに携わり、全米50以上の参加企業を集め、またアフリカの学校への視察にも出掛けた。
「もっと地元の人たちと近くなりたい。多国間で成り立つ国連のような組織で、使命や理想に基づいて仕事をしたい」
TFTでの活動を続ける中で、このような思いが強くなっていった。国連WFPでタンザニアに派遣されてから、実行した給食プログラムで、TFTとの連携もした。過去に活動した仲間たちとも協力し合いながら、新しいアイデアを提案し続けている。
タンザニアで2年勤務した後、次のフィールドはミャンマーに決まった。
「タンザニアのダルエスサラームも、ミャンマーのヤンゴンも、経済が発展していて家族で安全に住める地域。ひとつ悔いがあるとすれば、家族を連れていけない勤務地での経験を、20代で積んでおけばよかったと思う」
今後は、新しいフィールドでさらに新しい経験を積む予定だ。ミャンマーは昨年、台風の災害で、緊急の食糧支援を必要とした地域もある。
「これまでは開発にかかわる中、長期的な支援をしてきたけれど、緊急支援にも関わってみたい」
常に新たな挑戦に満ちていることが、やりがいにつながっている。
英語で書くのが好きだという唐須さん。国連では報告書の作成も多いので、ライティングのスキルは重宝される。留学時代に論文の作成など、英語の文章力をできるだけ鍛えるようにすると役に立つ。「新聞に、開発のテーマのほか、さまざまなトピックで投稿をしていました。フォーマル(公式)な文体で書く力を磨くにはいい方法だと思います」
国連では大学院の修士レベル以上の学歴を求められることが多いが、「特定の分野の専門家にならなくとも、ジェネラリストとして幅広く使える教養もある」。開発、農業、栄養等の知識やライティング力、計量分析など、大学院で幅広い教養を身につけることでフィールドで勤務する下地をつくることができた
フィールドで外国人の少ない地域に出向くと、警戒されたり、信頼関係を築くまでに時間がかかることも多い。いかに相手と打ち解けて、お互い心を開くことができるか、「メールのやり取りに頼らず、直接、現地の言葉で話したり、同世代の男性たちとは一緒に食べたり飲んだりしながら話をたくさんして仲良くなるようにしています」
国連WFPは、飢餓のない世界を目指して活動する国連の食糧支援機関。設立は1961年。すべての男女、子どもが、健康的な暮らしを送るために必要な食糧を常に手にできる世界を実現することを目標とする。戦争や内戦、自然災害時等では必要とされる場所に食糧を配給し、人々の命を救う。また食糧支援によりその後の復興も助ける。2014年には82ヵ国8,000万人に320万トンの食糧支援を実施。約1万5,000人の職員の9割近くは途上国の現場で、飢餓に苦しむ人々を直接支援している。
今回インタビューに登場している唐須さんは、在学中から世界の食糧問題に関心があり、NGOで食糧援助に係わる仕事に参画し、その経験がひいてはJPOへの合格と現在の国連WFPでの活躍につながっている。
国際機関への就職には専門性が求められ、その分野の職歴もあらかじめ必要になる。活動には民間企業とは異なる部分も多いため、特別な職歴が必要となる場合もある。国際機関で働くには、前回紹介した国連ボランティア(UNV)や青年海外協力隊(JOCV)の経験も有効だが、国際的に活動するNGOも非常に有意義な経験を提供してくれる。
一方国際機関にも人事、会計、調達、法務、IT等のいわゆる管理部門と呼ばれる職種もあり、こうした分野の専門性と職歴は民間企業でも十分積むことができる。