「伝わる喜び」を感じられる英語学習へ
文部科学省が2013年12月に発表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」は、"初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育環境づくりを進めるため、小学校における英語教育の拡充強化、中・高等学校における英語教育の高度化など、小・中・高等学校を通じた英語教育全体の抜本的充実を図る"として、その体制整備が推進されています。
特に、小学校からの英語教育は、子ども英語塾や英会話スクールの成長に、保護者の高い関心が伝わってきました。
小学校で英語授業を始めることに異論を唱える人も少なくありませんが、今回の教育改革では単に学習開始時期を早めることがポイントではなく、教育の在り方そのものを理解した指導が重要であると思っている方は少なくないでしょう。
「日本で教えられた英語は使えないから留学したい」「大学生になってからでは遅いから、もっと早いうちに行かせたい」と留学相談にいらっしゃった方は、私も何度か対応をさせていただいたことがあります。確かに早いうちから留学をすれば、子どもが言葉を覚えるのと同じで、なんの疑問も躊躇いもなく、聞いた言葉をそのまま口から発することが出来るので、その繰り返しで、言葉を覚え、ネイティブの英語も聞き取ることが出来るようになるでしょう。
しかし、日本の英語教育は、覚える単語数にしても、文法や構文にしても、海外のビジネスシーンでも通用するようなレベルだと思います。ただ足りないのは、それを使いこなすためのトレーニングと、実践に必要な"伝える能力"ではないでしょうか。
これには英語のみならず、多くの子供たちにとって学校で学ぶ授業は、受験のため、点数をとるためという目的だけになってしまっていて、その場しのぎの暗記でいい点がとれれば良しとする教育、テストでしか評価できない教育環境にあると思います。その証拠に、多くの留学生は自分が英語を話せなかったのは英語力の問題ではなく、聞かれたことに対して答えるだけの知識や考えを持てていなかったことだと気づくのです。
最近は学校ごとに特色ある教育がされるようになり、欧米のような「考えさせる授業」を行う学校も増えてきました。小学校からこうした授業を受けて育つ子供たちなら、私たちと同じ英単語数や文法力を持ってすれば、海外の大学留学に必要なTOEFLスコアを高校在学中にクリアできるようになるのではないかと思います。
もうひとつあげるとすれば、間違いを恐れすぎること。そういう私も、自分の英語が間違っていると指摘されるのが嫌で、自分より明らかに英語力があるとわかっている日本人の前では寡黙になってしまいますので、その気持ちはよくわかります。これも学校の授業が「コミュニケーションツールとしての英語」ではなく「試験対策のための英語」になっているためでしょう。多少間違っても、通じるのなら、それなりの点数がつく授業。○か×だけではなく、△があってもいいのではないかと思います。
子供たちの「伝わった喜び」を大きくする英語授業に取り組む教師が増えてくれば、自ずと「伝えたい気持ち」が強くなって、学習のモチベーションも高くなるのではないでしょうか。

今回のコラム担当
代表取締役副社長 加藤ゆかり
【Profile】
横浜市立大学卒。ニュージーランドでの1年間の海外生活を機に、帰国後、英会話講師を経て現在の(株)留学ジャーナル前身であるICS国際文化教育センターで留学カウンセラーの職につく。名古屋支店長を経て、2001年よりプロダクトマネージャーとしてプログラム開発等に従事し、2003年1月同社取締役就任。現在、(株)留学ジャーナル代表取締役副社長として、日本人の海外留学促進に努めている。JAOS海外留学協議会理事、留学・語学研修等協議会常任幹事。
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