手配業者に求めるのは、「安心」それとも「安さ」?

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 この春休み、多くの中高生や大学生の皆さんの語学留学、ホームステイツアーのお手伝いをさせていただきました。卒業を控えた大学生の中には、例年、社会人になる前の、最後の長期休暇を留学に費やす人もいれば、国内、国外、異なるグループで、いろいろな場所へ旅行に出かけるという人も多く、思い出づくりに夢いっぱいの人たちで賑わう空港は、いつも以上にワクワクします。そんなワクワクを一気に消し去る事件、旅行会社「てるみくらぶ」の倒産が報道されました。150億円をも超える大きな負債を抱えての倒産ということで、申し込んだ旅行に行けないという被害に加え、旅行先でホテル予約がキャンセルされている、帰りの航空券が無効になってしまったなど、予定外の出費を余儀なくされた一般旅行者の取材インタビューを聞きながら、数年前に起こった留学会社の倒産劇を思い出していました。

 その一つは、2008年10月に約12億9000万円の負債を抱えて倒産したゲートウェイ21。この時は申し込みをしていた約1300名の留学予定者が渡航できなくなり、留学中の学生約1000人が、授業料やホームステイ代が支払われていなかったため、留学を継続できなくなる学生も多数出ました。なかには授業料免除の救済策をとってくれる学校もありましたが、さすがに行ったばかりで、1年間の申し込みをされていたような方は帰国を余儀なくされた方もあったと思います。そしてようやく収まったかと思った2010年7月、元ゲートウェイ21の社員で立ち上げられたと言われていたサクシーオが約8億の負債を抱えて倒産し、これもまた大勢の被害者を出しました。この2社に共通していたのは今回のてるみくらぶと同じように、「安い」を売りに「早期支払い」を促していたことです。

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 この2社の倒産を機に、消費者庁の指導のもと、留学を希望する消費者の合理的な選択と安心の確保を目的とした審査機関J-CROSS(一般社団法人 留学サービス審査機構)が設立されました。ここで認証を受けられるのは、J-CROSSが作成したルール(基準)を満たし、また財務状況にも不審な点がないことが認められた事業者ということで、留学ジャーナルも2012年4月、第1期に認証申請をし、以来毎年の認証を受けています。

留学先の品質保証は?旅行とは違う「留学」「研修」で優先すべきは?

HSイギリス02縦.jpg 旅行パンフレットに記載されているホテルや名所旧跡、そしてレストランやそこでの食事は、事前に確約できる内容が多く、その内容だから申し込みをするというお客様も多いでしょう。私も自分で旅行計画をするときにはホテルの部屋の写真や記載されている設備、そしてロケーションなどを確認します。それでも提供された部屋がエレベーターのすぐ前で、深夜まで廊下の物音に悩まされ「運が悪かった」と思う事も。

 留学になるとホームステイが滞在方法の主流になります。しかしホームステイはあくまでも一般家庭に泊めてもらうわけですから、それぞれの家庭によって部屋の設備も違えば、出される料理も異なります。よく「ホームステイにはあたり、はずれがある」といいますが、これも家族と滞在する人との相性や嗜好によって同じホームステイ先が「あたり」にもなれば「はずれ」にもなります。そもそも文化の異なる家庭に住むのですから不便があって当然ですし、それを克服していくからこそ成長があるのです。しかし、もちろん誰もが「はずれ」と思うホームステイは同じ対価を支払って滞在いただくには不適当な家庭ということになります。現地の学校がホームステイを手配する場合も、ホームステイ会社が手配する場合も、一定の基準を設けてホストファミリーを募集します。オーストラリアやニュージーランドでは国が留学生の保護政策としてホームステイについても言及しているので、中学生や高校生の研修ツアーも安心して送り出せるのではないかと思います。

 学校は世界中に展開する大手チェーン校もあれば、田舎町で家庭経営のアットホームな環境を売りにする学校もあります。各国政府が認可する就学許可書を出せる学校であることが基本的な品質の保証になるはずですが、ニューヨークやロンドンなど大都市の格安校には、いわゆる「ビザとり学校」と呼ばれる学校も含まれています。この種の学校はマンモス校だったりするので、一見、人気が高くて良い学校と思われやすいかもしれません。

 学校の品質は自社運営でない限り、留学会社が管理できるものではありませんが、例えば留学ジャーナルでは、一定の基準をクリアしていることを定期的にスタッフが視察したり、またお客様からのレポートをもとに確認し、必要に応じて改善を求めるなどして提供できる品質の把握と向上に努めています。また時には、他国の留学エージェントなどからも話を聞き、違った視点での学校評価も参考にします。

 「留学」は楽しいだけの「旅行」とは違い、自分で行動を起こさないと解決しないトラブルもあり、またそれが個人の成長にも繋がります。何でも日本のサービス感覚で揃えてしまうことは、成長の妨げにもなります。現地の環境を理解し、より成果のある「留学」や「研修」をしていただくために何を優先すべきか、手配前にしっかりと伝えていただくことが良い研修を作り上げるうえでは大切な事です。

今回のコラム担当

代表取締役副社長 加藤ゆかり

【Profile】

横浜市立大学卒。
ニュージーランドでの1年間の海外生活を機に、帰国後、英会話講師を経て現在の(株)留学ジャーナル前身であるICS国際文化教育センターで留学カウンセラーの職につく。名古屋支店長を経て、2001年よりプロダクトマネージャーとしてプログラム開発等に従事し、2003年1月同社取締役就任。現在、(株)留学ジャーナル代表として、日本人の海外留学促進に努めている。
JAOS海外留学協議会副理事長、留学・語学研修等協議会副会長。
国家資格キャリアコンサルタント

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