【複数の教科を組み合わせた学習方法】STEAM教育について考察してみた(2)
後編の今回は、世界各国のSTEAM教育への取り組みや、日本がどのようにこの教育制度を捉えているのかを考察します。私たちはSTEAM教育に対して具体的に、どのような取り組みができるでしょうか。
注目される理由。STEAM教育は国を豊かにする?!
まず、STEAM教育が注目される理由を前回とは別の視点から考察しましょう。前編では、STEAM教育がこれからの社会で活躍できる人材に必要な資質を学べる教育であるということが理由で、注目を浴びているとお伝えしました。
しかしそれだけがSTEAM教育が注目されている理由ではないようです。どうやらSTEAM分野を学んだ人材、つまりITテクノロジーを理解している人と、そうでない人では大きな経済格差が生まれるようです。
例えば、アメリカのバンクレート社が出している2019年8月のレポートによると、STEAM分野の学部を専攻していると、卒業後の収入が高く、失業しにくいという結果が出ています。特に社会に出て重宝される専攻のトップ10のうち、7つはエンジニアリング分野となっていますし、10位までは全て理系分野の専攻です。TOP50まで見ても、ほとんどが理系分野の学問で、高収入かつ失業率もかなり低いという結果になっています。
STEAM分野の仕事はAIに取って代わられにくいという推測もあるくらいです。そういった意味で国策としてSTEAM教育を推し進めている国も多く、国力向上にもひと役買っているわけです。アメリカでは将来の社会で活躍する人材を育成するという目的のほか、人種問わず社会で活躍する機会を与え、格差をなくすという目的の下、年間数十億ドルという予算を投下して教育を推進しています。
日本に近いアジア各国でもSTEAM教育は活発で、シンガポールやインドでは国営のSTEM教育施設をつくり教育を受けさせる機会を増やすなど、多くの国や機関でSTEAM教育を進めています。特にシンガポールにおいては科学応用、数学的応用力では世界1位になるなど素晴らしい結果も残しています。世界的に見てもSTEAM教育の重要性および可能性が注目されているということがよくわかります。
STEAM教育分野で出遅れている日本。私たちは何ができる?
日本はどうかというと、埼玉大学STEM教育研究センター、日本STEM教育学会をはじめ、STEAM教育を目的とした機関やプログラムも増えてはいますが、世界と比べるとまだまだ発展途上といったところです。しかし今後は教育現場でのICT活用の促進や、文部科学省で企画しているGIGAスクール構想など、日本もSTEAM教育に一層の力を入れることは間違いないでしょう。
では、時代が変わりゆく中で私達は何が出来るのでしょうか。個人的には一人ひとりがSTEAM教育の重要性を認め、簡単なことから始める必要があると考えています。
・国内のSTEAM教育活動に参加してみる
国内にも子供、大人向けのプログラムを開催している機関が多くあります。こういったものに参加してみるのも良いかもしれません。
・科学館に行ってみる
科学館ではSTEAMについて学べるようなことが多いでしょう。子供を連れて、週末に出かけてみる、学校行事で社会科見学をしてみるなどは有効なのではないでしょうか。
・海外のSTEAM教育プログラムに参加してみる
海外のSTEAM教育プログラムに参加してみると、日本のものとは異なる雰囲気や進め方で学習ができます。たとえば、IT最先端のアメリカのプログラムでは、実際にITテクノロジーが実社会でどのように活かされているのかを目の当たりにすることが出来るのがとても魅力的です。
当社ではこのような海外でのSTEAM教育を提供するプログラムツアーを企画しています。こういったプログラムに参加して、実際にSTEAM教育を受けてみることもおすすめです。
・STEAM教育の一環として学校の授業でアクティブラーニングを取り入れる
先生の授業を一方的に聞くなど受動的に学習を進めるのではなく、生徒に積極的に参加をさせて、能動的に学ばせる教育の仕方です。クラス内でのグループワークやディベートなど、生徒主体で学習を進める方法をクラスに取り入れることで、自発性・創造性・判断力・問題解決能力を養わせるというのも方法です。
このように一人ひとりが出来ることから始めることができればSTEAMへの認識もより一層重要視され、活発化していくのだと考えています。
STEAM教育の課題と今後
STEAM教育では女性のSTEAM人材の少なさが課題として挙げられています。これは日本だけではなく、世界各国で課題となっています。そのため、STEAMから派生した教育方針としてGEMS(Girls in Engineering, Math, and Science)という、女性をSTEAM分野へ進出させるプログラムもあり、いろいろな国や機関が取り組みをするようになっているようです。まだまだ課題があり完全ではないとしても、これからの可能性を多く秘めているのが、このSTEAM教育なのです。
海外のSTEAM教育プログラム例
・アメリカ名門大学STEMキャンプ
・アイルランドを舞台としたSTEMプログラムと英語学習
今回のコラム担当
法人部 学校研修担当 R.H.
【Profile】
学生時代に経験したアメリカへの長期留学に加え、社会人でのニュージーランドでのワーキングホリデーの経験を持つ。前職の法人営業の経験と、海外での就労や活動経験を活かしながら、学校への研修の企画提案を行っている。
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