DPPA 国連政務・平和構築局 政策調停部 イノヴェーション・セル政務官 高橋尚子さん

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世界のために、できること 国際機関で働こう!

グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた

Vol.24 AIなどの先端技術で、国際紛争をモニタリングする新たな仕組みを構築

DPPA 国連政務・平和構築局 政策調停部 イノヴェーション・セル政務官 高橋尚子さん

 「私が勤務する国連政務・平和構築局は、いわば国連内の外務省のような役割を担っています。主な仕事は、世界193の国と地域の政情を毎日モニタリングすることです。紛争中、もしくは紛争が起こりそうな地域があれば、その政情を分析し、国連事務総長に報告します。この紛争に対して、国連としてどのようなアクションをとるべきか検討する材料を提供するのが私の仕事になります」
そう語るのは、国連政務・平和構築局政策調停部イノヴェーション・セル政務官の高橋尚子さん。現在は、国連本部のあるニューヨークに勤務している。

ピースメイキングにイノヴェーションを!

高橋さんの1日
7:00起床、世界各地のニュースをチェック
9:00出勤。同僚とコーヒーを飲みながら事業の進捗等を確認
10:00中東、アフリカ地域にいる同僚と電話会議
11:00紛争分析とイノヴェーションの関係について国連事務次長の発言要綱を作成
13:00ランチイベント開催。AIの専門家とフェイクニュースについて議論
15:00ディレクターに進捗報告、資料作成
16:00新プロジェクトについてデザイナーと打ち合わせ
18:00退勤、ストリートスケート仲間と公園で合流し練習
23:00就寝

 高橋さんの朝は、世界各地の紛争情報をチェックすることから始まる。例えば、アフリカのPKOミッションに対して武装勢力による攻撃があったというニュースが飛び込んでくると、まずは国連のネットワークを駆使して、事実確認を行い、次に当該国、周辺国、アフリカ連合やEUなど関係各国はどう反応しているのか調べる。これを事務総長に報告して、その後の動きをさらにモニタリングする。

 高橋さんの仕事は、単純なモニタリング業務に留まらない。最先端のITを用いた紛争解決のための新たな仕組みづくりにも取り組んでいるという。

「現在所属するイノヴェーション・セルは、“ピースメイキングにイノヴェーションを”というコンセプトのもと、AIの機械学習などを駆使した革新的な紛争分析を専門に行っています。これは2019年に立ち上がったチームで、以前から同僚と取り組んできた活動が国連の正式なプロジェクトとして認められた形になります。例えば、紛争が続くイエメンで現地の人々がソーシャルメディアに発信しているアラビア方言を素早く翻訳して、紛争分析に役立てるツールを開発しています。言語学、データサイエンス、紛争分析の専門家がコラボしたユニークな研究です」

 AIなどを用いた新たなイノヴェーションに挑む高橋さんだが、驚くことに理工系のバックグラウンドを持っているわけではない。21世紀に入り、国際紛争のスタイルが変化していくなか、安全保障も新たなテクノロジーとの融合が不可欠と考え、同僚の力を借りながら、さまざまなツールを導入するなかで新たな仕事を創出していった。国連の中にもこうした先進的な取り組みを行う組織があることをぜひ知っておくべきだろう。

高橋さんの着任までのStep

2005年4月上智大学外国語学部ロシア語学科入学。在学中に外務省と「いっしょに国連」プロジェクトを立ち上げる。

2007年4月ロシア国立モスクワ大学留学。

2010年3月上智大学卒業(初代学長賞受賞)。

2010年4月丸紅株式会社入社。ロシア・旧ソ連地域の石油プロジェクトに従事。

2014年9月日本政府・世界銀行共同大学院奨
学金フェローに選出、米国コロン
ビア大学国際公共政策大学院に入学。
在学中UNDPタジキスタン事務所、
国連日本政府代表部、UN Women
本部にてインターン。

2016年5月修士号取得。

2016年8月国連平和維持活動局地雷対策部スーダン事務所にてプログラム官補として着任(空席公募)。

2017年6月同局アフリカ第二部(NY本部)にて政務官補として着任(JPO)。

2018年9月国連政務局の旧ソ連中央アジア担当政務官に就任。

2019年10月国連で初めて紛争分析に最新テクノロジーを活用する専門チーム「イノヴェーション・セル」を同僚と設立、現在に至る。

大学卒業後、総合商社を経て
コロンビア大学大学院に留学

 高橋さんが国連の仕事を意識するようになったのは、大学時代にさかのぼる。上智大学外国語学部でロシア語を専攻していた高橋さんは、在学中からロシア語を使った模擬国連の国際大会への出場を経験し、外国語で討論をする楽しさに目覚める。さらに在学中に1年間のロシア留学にも挑戦、帰国後は外務省の「いっしょに国連」プロジェクトの立ち上げに携わる。身に付けたロシア語のスキルは、現在の仕事でも信頼関係づくりなどの面で大いに役立っているという。

 大学卒業後、高橋さんは総合商社に就職し、ロシア・旧ソ連地域の石油関連プロジェクトに従事する。ここで学んできたロシア語のスキルを活かすチャンスを得たと同時に、平和構築のためには、民間による経済交流も重要だという後の仕事につながるヒントを得ることもできた。そして、入社から4年後、高橋さんは、かねてから志望していた海外の大学院進学を決意する。留学先は、名門コロンビア大学国際公共政策大学院だった。

「大学院では、International Security Policy(国際安全保障)を専攻しました。授業では、石油資源を巡る紛争のシミュレーションなどを行いました。現地政府、NGO団体、村人などの立場に立って、問題解決の手法がどう変わるかなどを徹底的に考えました。また、政策と経済を融合して解決策を模索するポリティカル・エコノミーの考え方もここで身に付けることができました」

 大学院在学中は、UNDP(国連開発計画)タジキスタン事務所などでインターンシップを経験。そして修士号を取得後、国連平和維持活動局の空席公募に応募し、ついに国連機関で働く夢を実現した。そしてNY本部へは外務省が行うJPO試験を通じて着任。

「模擬国連でディベートをしたこと、ロシア留学をしたこと、商社で働いたこと、アメリカの大学院で学んだこと。さまざまな経験が今の仕事で私の強みになっています。現在の目標は、各国の行政、民間企業などと幅広いパートナーシップを構築すること。欧米圏だけでなく、アジア、アフリカなどにも範囲を広げていきたいですね。そのためにも国連政務・平和構築局の活動をもっと広く世界にPRするのが私の仕事だと思っています」

国際機関で働くまでの道のり

模擬国連の国際大会で
ロシア語での討論に挑戦

上智大学在学中に模擬国連のロシア国際大会に参加。エネルギー問題や安全保障問題について、ロシアの学生とのディベートを経験し、国連の仕事を意識するようになる。1年間のロシア留学も経験し、大学卒業後は総合商社に就職、ロシア・旧ソ連地域の石油関連プロジェクトに従事した。

名門コロンビア大学
国際公共政策大学院に留学

4年間勤めた商社を退職し、日本政府・世界銀行共同大学院奨学金を受け、コロンビア大学国際公共政策大学院に留学する。大学院では、国際安全保障を専攻し、UNDP(国連開発計画)タジキスタン事務所、国連日本政府代表部、UN Woman本部にてインターンシップを経験した。

国連平和維持活動局を経て
国連政務・平和構築局へ

コロンビア大学の修士号を取得後、国連の空席公募に応募し、合格。国連平和維持活動局地対策部スーダン事務所にプログラム官補として着任した。また外務省のJPO試験にも20代のうちに挑戦しており、約1年後、同局のアフリカ第二部(NY本部)に政務官補として着任した。

国連政務・平和構築局って?

国連政務・平和構築局(UNDPPA:United Nations Department of Political and Peacebuilding Affairs)の活動

国連政務・平和構築局(UNDPPA:United Nations Department of Political and Peacebuilding Affairs)は、国連が複雑化している紛争に対して、より包括的かつ迅速に平和と安全活動を行えるように改革した組織のひとつ。世界193の国や地域の紛争を日々モニタリングし、国連事務総長へ提言、停戦や国への支援の呼びかけなどを行う。「イノヴェーション・セル」はその中で高橋さんと同僚が立ち上げた新組織で、機械学習や自然言語処理などAIの先端技術を駆使して、国際紛争をモニタリングし、予測・分析を行う新たな仕組みを模索している。


Augmented Reality(拡張現実)の最新技術をオフィスでテスト
©DPPA
最新技術と紛争分析の可能性に関するワークショップをNYで
開催 ©DPPA
イノヴェーション・セルチーム内で同僚とプロジェクトについて打ち合わせ
©DPPA
国際連合中央アフリカ共和国ミッションで武装グループとの
対話のためアフリカ中南部に向かう ©DPPA

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国連事務局で働く

国連事務局は、ニューヨーク本部を筆頭に、ジュネーブ、ウィーン、ナイロビに3つの地域事務所がある。グテーレス事務総長をトップとし、日本人職員も軍縮担当の中満泉国連事務次長を筆頭に活躍している。国連予算や人事等の内部管理を含め、紛争予防、平和構築、持続可能な開発、気候変動、ジェンダー平等など多岐に渡る分野での活躍の場があり、高度な専門性を活かしながらのこれらの任務を、是非多くの日本人の方に目指していただきたいと思う。

外務省 国際機関人事センターhttps://www.mofa-irc.go.jp/

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