自宅から徒歩10分でオフィスに到着 | |
FAOキルギス事務所担当者とスカイプ会議(ロシア語)。多国間基金への案件申請に関わる業務の打ち合わせ | |
欧州・中央アジア地域の気候変動と天然資源管理に関わる分析レポートの執筆 | |
オフィス内で同僚とランチ | |
新規の技術協力プロジェクトの立ち上げに向けた資料作り | |
国際シンポジウムの運営に関する会議にスカイプで参加 | |
メール、書類の整理 | |
業務終了。その後ジム&サウナへ行き、19:30頃夕食 | |
就寝。ショートスリーパーで、朝は5:00に目覚める |
グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた
自宅から徒歩10分でオフィスに到着 | |
FAOキルギス事務所担当者とスカイプ会議(ロシア語)。多国間基金への案件申請に関わる業務の打ち合わせ | |
欧州・中央アジア地域の気候変動と天然資源管理に関わる分析レポートの執筆 | |
オフィス内で同僚とランチ | |
新規の技術協力プロジェクトの立ち上げに向けた資料作り | |
国際シンポジウムの運営に関する会議にスカイプで参加 | |
メール、書類の整理 | |
業務終了。その後ジム&サウナへ行き、19:30頃夕食 | |
就寝。ショートスリーパーで、朝は5:00に目覚める |
「気候変動は、水、土壌、そして生物多様性などの食料生産に必要不可欠な投入物に深刻な影響を与えます。同時に、気候変動に対して最も脆弱であり深刻な打撃を被るのは、現在進行形で慢性的な食料不安や栄養不足の状態にある人々なのです」
そう語る山脇さんは、FAO(国際連合食糧農業機関)が実施する競争力試験(後述)を通過し、ハンガリー・ブダペストに置かれているFAO欧州・中央アジア地域事務所で食料の安全保障の問題に取り組んでいる。
産業として、また人間に必要不可欠な食料の調達手段である農業。その農業にダメージを与える自然災害は、近年気候変動により深刻化し、その頻度やダメージも高まっている。設備インフラと能力開発への投資を行う必要が増しているのだ。
「多くの場合、対策を行う国内資金が不足しています。そこで私たちは欧州・中央アジア地域の国々が気候変動や環境に関わる多国間基金(緑の気候基金や地球環境ファシリティなど)への資金を得やすくなるように、技術的見地からサポートを行っています」
FAO欧州・中央アジア地域事務所では、コーカサス、中央アジア諸国から南東欧諸国までを幅広く統括している。山脇さんも複数の国を担当しており、エネルギーや減災など異なる分野のプロジェクトを同時進行で行っている。
FAOがないエリアに赴くこともある。また赴任4日目に出張したキルギスでは、人口の約3割が農業セクターに従事していた。干ばつなど気候変動が起こると農業に影響があり、国民経済にも影響が出てしまう。
「実際に何が必要なのか、政府と現地の方のニーズを聞き出して、分野を特定し、応募案件を作ります。それが認められたらプロジェクトがスタートする。そういう意味ではやりがいを感じます」
2008年4月大阪大学外国語学部外国語学科ロシア語専攻、入学。マレーシアに語学留学(2週間)
2010年9月ロシア連邦ウラル国立大学
交換留学(1年間)
2014年3月京都大学大学院経済学研究科経済学専攻修士課程修了、在学中、英オックスフォード大学にプログラムにより派遣。
2014年6月京都大学経済研究所リサーチアシスタント。ロシア・東欧の新興多国籍企業(エネルギーセクター)の海外進出動機及び行動パターンの調査・分析
2015年3月国際エネルギー機関(IEA)グローバルエネルギー政策室にて、ロシア、中国、中央アジア間でのエネルギー政策(貿易・投資)に関する調査・分析
2015年9月経済協力開発機構(OECD)国際関係局ユーラシア部門にて、ウクライナのエネルギー市場の効率性向上及び再生可能エネルギー市場の投資環境に関わる調査・分析
2016年5月国際連合食糧農業機関(FAO)
が実施する競争力試験
(Junior Professional
Programme)
へ応募
2017年1月上記試験に合格、オファーレターを承諾
2017年3月FAO欧州・中央アジア地域事務所 気候変動・減災・エネルギーチームにて勤務を開始
高校は国立の進学校だったこともあり、周りの友人と同じく山脇さんも法学部や経済学部への進学を考えていた。ただこれまで一度も海外に行ったこともなく、また外国語も話せないという焦りがあったという。そのタイミングで大阪大学と大阪外国語大学が合併するという話を聞き、外国語学部への進学を決めた。その中でなぜロシア語を専攻したのだろうか。
「恥ずかしながら、小さい頃には貧困=アフリカ、という単純な図式が頭にあったのですが、いろいろ調べる中でロシアや中央アジアで社会主義が崩壊し、資本主義型の経済システムへ移行する過程で、多くの社会問題が異なる形相で発生していると知りました。その問題の解決に携わってみたいと思い、ロシア語を専攻しました。またロシア語が国連公用語であったこともあります」
経済系のゼミに所属するとともに、交換留学中にはロシア政府が実施するロシア語運用能力試験の第3レベル(外交官・通訳レベル)に合格した。同時に、大学院受験の勉強を始め、学部卒業とともに京都大学大学院経済学研究科へ進学した。在学中にはプログラムによりイギリスのオックスフォード大学へ派遣され、その後IEAとOECDでアナリストとして研修を行う機会を得た。実際に国際機関で調査・分析業務に携わることは、学びが多かったと山脇さんは言う。
「大学院では、ロシアなどにおけるエネルギー資源の効率的利用に関わる分析を行ったり、資源経済学の理論に加え、ロシア語の一次資料に多く当たりました。また、国際機関では専門分野に関連する業務を担当させてもらい、研究したことの実践や結果をより意識できるようになりました」
山脇さんは、FAOが実施する Junior Professional Programme(JPP)を通じて勤務を開始した。JPPとはFAOが独自に実施している若手職員採用試験(32歳以下)で、2年間の任期で正規職員として採用される制度だ。
「書類選考と面接試験(英語・ロシア語)、レファレンスチェックを通過し、最終的にオファーレターを頂いたのは応募から半年以上経っていました。国際機関の選考プロセスは長い、とよく耳にしますが、本当だなと実感しました」
若手ポストは高倍率と言われるが、大学院時代の教授やインターンをした国際機関の元上司たちに推薦状を書いてもらうなどの協力も得て、難関をくぐり抜けた。そうやって得たポジションでは着任後半年で自分の分析レポートが欧州農業委員会で報告、出版されたという思いがけない評価も受けた。次は出張でセルビアやアゼルバイジャンに飛ぶ。
「加盟国について一心不乱に考え抜くことで、飢餓のない世界の実現へ少しでも貢献していきたいと思っています」
応募してから採用されるには、最初の書類審査が大切。「学歴もあるのですが、それよりも大学・大学院でどのような勉強をし、なぜその仕事に応募するのかの理論づけが大切です。FAOでは英語が主体ですが、地元の言語も会議によっては有効なので、僕の場合はワーキングレベルでの英語・ロシア語の語学力があったことも大きいと思います」。
インターン時代には、自分に不足しているスキルを痛感した。「自信のあった英語のプロポーザルが真っ赤に直され戻ってきた時には打ちのめされました」。多国籍を相手とする仕事では、言い回しはもちろん、カンマの打ち方ひとつも誤解を生じさせないことが要求される。早い時期にそれを体験したことが、今も大きく役立っている。
国際機関ではほとんどのポストで修士レベルの学歴が求められることが多い。大学院において、幅広い教養と専門分野に関する知識や分析スキルを修得したことに加えて、学術論文執筆のプロセスで論理的に考える習慣をたたき込めたことは、今の調査・分析業務とレポート執筆において非常に役立っているという。
国際連合食糧農業機関(FAO)は、すべての人々が栄養のある安全な食べ物を手に入れ健康的な生活を送ることができる世界を目指し、1945年に設立された。現在FAOの主要な3つのゴールは飢餓・食料不安および栄養失調の撲滅、貧困の削減とすべての人々の経済・社会発展、そして現在および将来の世代の利益のための天然資源の持続的管理と利用、と定めている。約3,400人の職員が、イタリアの本部や地域事務所、国別事務所など130ヵ国以上の国や地域で、これらの目標の実現のために活動している。
国際機関への主な就職方法として、空席広告、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度、国連事務局のヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)の3つがあることは、以前このコラムで説明したが、今回の山脇さんは、FAO(国際連合食糧農業機関)が独自に実施するJPPという採用制度で職員になった。国際機関が独自の若手職員採用制度を持っている例もあり、経済協力開発機構(OECD)のヤング・アソシエート・プログラム(YAP)、国連児童基金(UNICEF)NETI(New and Emerging Talent Initiative)などがある。詳細は、以下のURLを参照のこと。http://www.mofa-irc.go.jp/apply/wakate.html