FAO 国連食糧農業機関 食品安全室 ジュニア専門官 白石晃將さん

「なんとなく留学したい」から「具体的な学校選び」まで。
カウンセリングのご予約やメールでのご相談はこちらから。

無料 留学相談

無料ですぐに
お届けします。

無料 資料請求

世界のために、できること 国際機関で働こう!

グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた

Vol.19 自身が学んだ学問で世界の専門家と議論できるのが楽しい

FAO 国連食糧農業機関 食品安全室 ジュニア専門官 白石晃將さん

思い描いた3つのやりがいが全部満たされる専門官の仕事

白石さんの1日
6:30起床
8:00電車でFAO本部のオフィスに出勤。メールチェック
9:00他国際機関との週次電話会議。年内に行われる国際会議の進捗状況を確認、議論
11:30スペイン語レッスンを受講
13:30オフィスで素早くランチ
14:00同僚・上司との週次会議。週間レポートの報告、対象国のフォローアップに関する議論
16:00資料作成、レビューやレポートの作成
18:00業務終了、職場近くでのランニング
20:00帰宅、夕食
22:00オンラインでの語学学習や日本の家族等との電話
24:00就寝

 国連食糧農業機関(FAO)は、全ての人が安全で栄養価の高い食べ物を手に入れられるように、農業の生産性向上や農村の生活改善に取り組んでいる。そのローマ本部に勤務する白石晃將さんの仕事は、食品の安全を守ることだ。
「サルモネラ菌のような病原菌、農薬などの化学物質、ガラスの破片などの異物が食品に混入するのを防ぎ、混入が分かったときは、被害を最小限に食い止める努力をしています」

 所属する食品安全室で世界保健機関(WHO)及びコーデックス委員会と協力して、農薬の使用量、食品加工のルールなどを加盟国で話し合い、世界的な食品の安全基準を定めるのは大きな仕事の一つだ。決まった安全基準を基に、新たにルールを定める国も多い。

 今年の国際会議では、白石さんもいくつかの議題を考えた。食品安全の分野でいまさまざまな変化が起きている、数年後世界的な問題となり得る事象は何であるのか。論文を読み、漁業、栄養、投資分野などの専門家にも話を聞く。例えば、人工知能やデジタル技術の食品への応用利用。オンラインショッピングが途上国に普及したときに、食品安全にどのような影響を与えるかなど、最新の研究や知見を踏まえてテーマを決める。

 現在は今年の秋に東南アジアで開かれる会議の準備中だ。テーマ設定によって会議は実り多きものになる。そんな重要な任務を白石さんは楽しそうに進めている。
「働く上で指針としたい3つのポイントが、いま、FAOでは全部満たされているんです」

 その3つのポイントとは、自分が学んだ応用生物学を生かして世界の専門家と議論できること、国や地域の重要な情報を扱いながら責任ある仕事ができること、そして、いろいろな国の人と働き、仕事以外でも言語の学びや文化や宗教の違いなど気付きがあることだ。

 岐阜県出身の白石さんは、 祖父が手がける畑を見て育ち、自分が食べて身になるもののために働きたいと大学の農学部に入った。微生物の自然界における生態研究に取り組み、2017年に大学院の博士課程を修了。
「研究は一生懸命やったし、むちゃくちゃ楽しかった。でも将来は微生物の顔を見ているより、人の笑顔のために働きたくなりました」

 修士課程2年目の夏休みに国際協力機構(JICA)の短期青年海外協力隊に参加し、1ヵ月間ほどバングラデシュで過ごした。

白石さんの着任までのStep

2012年3月京都大学農学部応用生命科学科卒業

2012年10月京都大学博士課程教育リーディングプログラム「京都大学大学院思修館」応募・選出

2013年8月国際協力機構(JICA)短期青年海外協力隊に参加

2014年3月京都大学大学院
農学研究科修士課程、
応用生命科学専攻修了

2015年3月国連食糧農業機関(FAO)インターンシップ開始

2016年4月日本学術振興会特別研究員DC2採用

2017年3月京都大学大学院農学研究科博士後期課程、応用生命科学専攻修了
京都大学博士課程教育リーディングプログラム「京都大学大学院思修館」修了

2017年4月外務省経済局経済安全保障課勤務(外務事務官)

2018年3月国連食糧農業機関(FAO)
食品安全室ジュニア専門官として
勤務開始

英語がほとんど話せず
オンラインで英会話を学ぶ

 大学院修士1年時から5年間にわたって参加した「京都大学大学院思修館」プログラムも、視野を広げるのに役立った。これは国際的に活躍できる博士人材を育成するもので、企業や官僚のトップと日本の抱える問題について議論したり、専門以外の分野を学んだりする。約200人の参加者が集うバイオテクノロジーに関する会議を開催したこともある。

「研究をしながら会議の準備をするのはつらかったけど、自分のパッションがどこにあるのか見えてきた。自分の核となる研究をしつつ、専門性が生かされるさまざまな業種の方々とお会いできたのがよかったです」
 プログラムの一環として海外に出ることになり、白石さんは興味を持っていたFAOで1年間インターンを体験した。

 博士課程を修了した後は、外務省のFAOを担当する部署で1年間働く。
「FAOにとって日本は世界で2番目に大きい分担金拠出国です。その日本が国として国際機関とどう向き合うのか、今と逆の立場に身を置いて学ぶことができました」

 その間にFAOジュニア・プロフェッショナル・プログラム(JPP)に応募。毎年応募があり、国連職員のポストの空きに応じて合格者の中から選考して採用する、FAO独自の制度だ。
 白石さんは留学経験がない。学部時代は英語が話せず、4年生の終わりから5年間、オンラインで英会話を学び続けた。
「会議の議事録は書けるけど、話す方はもう少し努力が必要。それでも専門家と議論するのは楽しいですね。語学はやる気が大事。上達には使うか、現地に行くのが一番です」

息子のように接してくれる
ローマのホストファミリー

 白石さんはインターンの時からの縁で、イタリア人家庭にホームステイしている。
「イタリア人は家族意識がすごく強いので、息子のように扱われています」

 ローマに住んで2年、イタリア語の日常会話はほとんど不自由しなくなった。今後、専門とする分野で南米の成長に注目し学び始めたスペイン語は、イタリア語と似ていて意味は良く理解できるという。

 現在のポストの任期は2年。約1年残っているが、すでに次のポストを探し始めている。
「3~5年はFAOで経験を積みたい。スペイン語圏のチリにある地域事務所もいいですね。将来は、より責任ある立場で働きたいと思っています」

国際機関で働くまでの道のり

青年海外協力隊で
バングラデシュへ

留学経験はなく、大学時代はほとんど英語が話せなかったが、研究発表のため国際会議に出て必要性を痛感。オンライン英会話を始める。大学院修士課程2年目の夏休みに青年海外協力隊でバングラデシュへ。約1ヵ月の滞在にもかかわらず、地元の人の結婚式に何度も招かれた。このころから国際機関で働くことを意識し始める。

ローマのFAO本部で
インターンシップ

幅広い教養を身に付けて国際的に活躍する人材を育成するための「京都大学大学院思修館」プログラムに参加し、見聞を広める。半年から1年、海外に出るシステムで、自分の将来を見据えて、専門知識を生かせそうなFAOで1年間インターンシップを決めた。多くの学び・経験を得、その後将来もFAOで働きたいと思うようになる。

外務省で資金提供をする側の
立場を経験する

大学院博士課程を修了後、外務省のFAO担当部署である経済局経済安全保障課のポストで1年間働く。国際機関にとって資金集めは最も重要な仕事のひとつだが、この時は資金を提供する側の視点から国際機関を見ることができた。在職中にFAOジュニア・プロフェッショナル・プログラム(JPP)に応募し、FAOへ。

FAOって?

FAO(国連食糧農業機関)の活動

FAO(国連食糧農業機関)は、世界の農林水産業の発展と農村開発に取り組む専門組織。人々が栄養ある安全な食べ物を手に入れ、健康的な生活を送ることができる世界を目指し、1945年に設立された。主要なゴールは、飢餓・食料不安と栄養失調の撲滅、貧困の削減と全ての人々の経済・社会発展、そして現在および将来の世代の利益のための天然資源の持続的管理と利用、の3つ。196の加盟国(準加盟国を含む)とEUから構成されている。本部はイタリアのローマ。


ブダペストのハンガリー
国立食物連鎖安全室植物
生産園芸研究所における
種子認証手順の一環
として、ラボのスタッフ
たちが豆の苗木を検査
する
©FAO/Ferenc Isza
/ FAO
モロッコにあるサニタリー食品安全中央局の施設で、
果樹園の柑橘類の生産状況や包装の様子をチェックする
©FAO/Alessandra Benedetti / FAO
エチオピアのアディスアベバで、
第1回FAO/WHO/AU国際食品安全会議のセッションが行われた
©FAO/Eduardo Soteras / FAO
ローマのFAO本部にて開催
される理事会には、
約190の加盟国が参加する
©FAO/CristianoMinichiello
/ FAO
イタリアのローマにあるFAO本部内
©FAO/Carlo Perla/ FAO

国際公務員になるためのキーワード!

国際公務員としての専門性

最近就活関連で、採用側が求める専門スキルや勤務地などの職務要件を明確にして募集する「ジョブ型採用」が話題だが、国際機関はまさに典型であり、高い英語力に加え、特定の専門性を持つ即戦力が求められる。採用側に専門性ありと判断してもらうには、求人中のジョブで必要とされる専門分野での職務経験(及び多くの場合に関連分野の修士号以上の学歴)を有することが必要だ。必要とされる専門性はポストによりさまざまであり、政治、経済、開発、難民、教育、人権、保健、環境などおのおのの機関の設立目的・任務に直接関連する分野から、人事、財務、法務、調達などいずれの組織でも必要とされる間接部門の関連分野まで、実に幅広い分野で活躍できる。文系だけでなく理系の求人も多数ある。専門性を積んでぜひ挑戦してもらいたい。

外務省 国際機関人事センターhttps://www.mofa-irc.go.jp/

バックナンバー