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世界のために、できること 国際機関で働こう!

グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた

Vol.25 宇宙の平和利用を法律、政策の面からサポートしています

UNOOSA 国連宇宙部 政策・法務課 宇宙法務 奥村由季子さん

国連宇宙部(UNOOSA)の奥村由季子さんの仕事のフィールドは、その名の通り宇宙。国連組織を通じ、宇宙の平和を司る仕事だ。
「そもそもは60年代の宇宙開発競争中に設立された宇宙の平和利用を議論する事務局でした。今は政策と法律、技術的側面からも各国をサポートして、平和利用に繋げています」

すべての国に宇宙法を広め、平和的利用を促進

奥村さんの1日
7:00起床、メールチェック
9:00出勤。
各国政府代表との打ち合わせなど
10:30コーヒーを飲みながら課内会議
12:30昼食を取りながら宇宙関連のニュースをチェック
13:30各国政府代表と打ち合わせ
15:00人材育成用の教材開発など
18:00翌日の打ち合わせの資料作成など
19:00帰宅、犬の散歩がてら夫と外食
22:00漫画や小説を読みながら就寝

 事務局の中で、奥村さんの仕事は大きく分けて2つある。ひとつは毎年行われる国連宇宙空間平和利用委員会の業務だ。この委員会は参加国が集い2月に科学技術、4月に法律について小委員会で議論し、6月にそれらを併せた総合的な議論を本委員会で行う。
「事務局は各委員会で10項目以上の議題をフォローし、各国の発言が全て反映された報告書の草案を作ります。最後にその草案を採択するか否か、段落ごとの確認があり、95の参加国全てが合意してくれるまでがゴールになります」
 この期間の業務量は多い。さまざまな調整作業や最先端の情報の検証も必要とされる仕事だが、奥村さんに苦労という感覚はない。「もともと宇宙法をやりたかったので、苦労どころか毎日が楽しいです。各国強い意見があって、政治的な表現をするときは繊細な表現をする必要がありますが、むしろそうした項目がスムーズに採択されたときには、大きな達成感を感じます」。
 そしてもうひとつの仕事は、人材育成支援業務だ。
「国内宇宙法を必要としている国の政府機関の方々を対象に、国際宇宙法についての知見を共有するプロジェクトを担当しています。国際宇宙法の枠組みの下での義務とは何か、宇宙に関わる条約の義務を守りながら国内法を作成・改定するためには何をすべきかを各国に考えていただくことが、宇宙の平和利用にとって大切です」
 すでに宇宙は、地球に加え国際的なもうひとつの活動舞台となっており、その平和利用の維持のために国連の活動は欠かせない。この人材育成活動はSpace Law for New Space Actorsと呼ばれ、奥村さんの大切なミッションとなっている。

奥村さんの着任までのStep

2002年4月慶應義塾大学 法学部法律学科 入学

2003年2月スペイン・サラマンカ大学に語学留学(3ヵ月)

2004年2月フランス・パリ政治学院に留学(1ヵ月)

2006年3月慶應義塾大学 法学部法律学科 卒業

2007年2月ニューヨーク国連本部にて修士論文のリサーチ

2008年3月慶應義塾大学 政策・メディア研究科 修士号取得

2009年1月オーストリア欧州宇宙政策研究所、訪問研究員として勤務

2009年7月アメリカ NASAエイムズ
研究センター 国際宇宙大学
留学(2ヵ月半)

2010年4月日本学術振興会 特別研究員(2012年3月まで)

2011年3月慶應義塾大学 政策・メディア研究科 博士号取得

2012年4月東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)調査員として勤務

2012年9月防衛大学校 航空宇宙法講師

2012年9月法政大学 国際法講師

2013年4月日本原子力研究開発機構(JAEA)核不拡散・核セキュリティ総合支援センター勤務

2014年11月宇宙航空研究開発機構(JAXA)法務・コンプライアンス課勤務

2017年2月国連宇宙部 宇宙法務・政務官補
JPO派遣

2019年9月オーストリア・ウィーン大学
法学部 修士号取得

2020年6月国連宇宙部 宇宙法務官補
として勤務

好きな宇宙法に関わり続けたい
その線上にあったのが国連

 そんな奥村さんは、幼少の頃からスター・ウォーズやX-ファイルが大好きな子供だった。好きがそのまま学問に結びつき、宇宙法と出合ったのは日本の大学3年次。学び始めてみると自分がやりたい平和維持活動ともピッタリ合い、将来的にはこのまま研究職に就くのだとざっくりイメージしていたという。国連を意識したのはその数年後だ。
「日本で博士課程に在籍中、ウィーンの欧州宇宙政策研究所で研究する機会に恵まれ、国連で委員会を傍聴することもできました。それまで客観的に整理されたレポートは読んでいましたが、生で見ると、印象がまるで違ったんです。活発な議論に、自分もいつかこの中に参加したいと強く思いました」
 湧き上がる思いが心に残った。
 その後いくつかの組織で働き貴重な体験をしたが、100%宇宙法だけで仕事をしたいという点だけは、満たされていなかった。しかしそうした仕事はなかなかない。そんなときに外務省が行うJPO派遣制度で、現部署の募集が出る。かつて見た国連の委員会に関わる仕事だ。当時年齢は募集条件ギリギリの35歳。「ダメもとで出した」ところ、見事に合格。
 スタートすると、願った通りの仕事だった。宇宙法の知識を駆使して水を得た魚のように働き、さらにこのまま働き続けたいと願った奥村さんは、任期満了を見越してウィーンの大学院に働きながら通うことを決意する。
「法政策に関しては博士号がありましたが、ポスト獲得を有利に進めるために国際法の修士も取得しました。学位はあればあるほどプラスαになります」
 その甲斐があり、JPOの任期を終えた後に再び同じ部署での雇用が決まり、慣れ親しんだ同僚たちと仕事を続けることとなった。
「毎日最先端技術の情報に触れ、朝から晩まで宇宙法についての業務に携われて、本当に幸せです」
 前進し続け、やりたい仕事をつかんだ奥村さん。そのように高い専門性を生かして国際公務員になるにはどうしたらいいのだろうか。
「やはり英語力は必要です。面接で重要になってくるので、論理的に自分の考えを伝えられるような会話力を身に付けてください。そして自分がやりたい専門を見つけること。国連では一貫した専門性が重要です。しかし人生の間には、くじけそうになる困難もあります。それを乗り越えるためにも、まず寝食を忘れて没頭できるほど好きなことを見つけ、研究してください」

国際機関で働くまでの道のり

“国連英語”と
英会話力を身に付ける

国連には“国連英語”と職員に呼ばれる、独特の言い回しがある。それに慣れるには国連が発表するレポートをよく読み、表現の仕方を覚えておくと良い。さらに自分の考えを論理的に話す会話力も必要だ。「私は好きな洋楽を聴いたり、海外留学した機会にブラッシュアップしたりしました」

自分を知り、専門性から
ブレない選択をする

奥村さんは宇宙法をやりたいと自覚し、その道をそらさなかった。加えて防衛大学や法政大学の講師をした経験は人材育成の経験として、また東京電力福島原子力発電所事故調査委員会での勤務は国際法の知識を生かした実務経験として、JPOの応募時に配慮された。専門性に加えてこれらの経験が一つに結実し評価された。

業務遂行に関する
学位を取得する

国際公務員に就くためには、一般的に修士号の学位が必要となる。奥村さんの場合、日本で法政策に関する修士号・博士号を取得した。さらに業務遂行に関連のある国際法の修士号をJPO時代に取得。その熱意と知識は職場でも理解を得て、現ポスト獲得を有利に運ぶ一助となった。

国連宇宙部って?

国連宇宙部(UNOOSA:United Nations Office for Outer Space Affairs)の活動

国連宇宙部(United Nations Office for Outer Space Affairs)は、宇宙空間の平和利用における国際協力を促し、宇宙活動がもたらす恩恵を世界に普及するために活動する組織。本部オーストリア・ウィーン。宇宙に関する情報を加盟国に提供し、宇宙空間に打ち上げられた物体に関する国連登録を維持する。また宇宙科学と技術の利用方法を改善し、特に開発途上国を中心に全ての国の経済社会開発に貢献するほか、災害時における必要な衛星画像を要求する。6つの地域センターを擁し、宇宙科学や技術教育、技術援助も行っている。


国連宇宙部などが入るウィーン国際センタービル ©UNIS
毎年開催される国連宇宙空間平和利用委員会 ©UNIS
トルコで行われた宇宙法に関するイベント ©TUBITAK
宇宙に関する知識を子供たちに伝える人材育成イベント ©UNIS

国際公務員になるためのキーワード!

国際機関で働くための語学力

国際機関で働くためには、利害が複雑に絡み合う状況の中で、さまざまな国籍の同僚やカウンターパートと対等に仕事ができるだけの英語力が必要となる。ここで言う英語力とは、議論や交渉を行う能力はもちろん、レポート等を作成するための高度な文書作成能力も含まれる。また、勤務地やポストによっては英語以外の国連公用語の能力が必要になる場合がある。特に、フランス語は習得していると有利なポストが多いといわれている。

外務省 国際機関人事センターhttps://www.mofa-irc.go.jp/

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