
学生時代の海外生活やホームステイに興味があっても、「英語に自信がない」「未知の環境が不安」と一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、大人気YouTubeチャンネル「QuizKnock(クイズノック)」で活躍する須貝駿貴さんの、アメリカでのホームステイ体験談をご紹介します。ホームステイを通して見えてきた「SDGs」の本質に対する独自の視点までたっぷりとお届けします。
また、Q&Aでは須貝駿貴さんの英語の勉強法までご紹介します!
QuizKnock須貝駿貴さんのプロフィール

須貝駿貴さんの留学体験
| 滞在 スタイル | ホームステイ |
|---|---|
| 国/都市 | アメリカ/アナーバー近郊 |
| 滞在期間 | 1ヵ月間(ホームステイ3週間、旅行1週間) |
すがい・しゅんき●1991年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程4年生。専門分野は物性理論(超伝導)。東京大学教養学部2年生だった2012年9月、アメリカのミシガン州アナーバー近郊でホームステイを経験した。2017年11月、QuizKnockに加入。現在はYouTubeチャンネルの実験系動画の企画などを担当。著書に『東大流本気の自由研究で新発見 QuizKnock Lab』(KADOKAWA)がある。
父の勧めで決意したアメリカでのホームステイ

「まずは『海外は怖い所ではないと分かった』と皆さんにお伝えしておきます。皆さん自身がやりたいことや行きたい場所について調べて、あとはやってみるだけです。やってみるってハードルが一番高いと思うのですが、僕の経験から言えば海外生活はそれほど怖がるようなことではありませんでした」
自身のホームステイ経験を振り返り、そう語ってくれた須貝さん。東京大学大学院博士課程に在籍、日本物理学会“学生優秀発表賞”の受賞経験ありという一見とっつきにくそうな経歴ながら、「ナイスガイの須貝でーす!」というフレーズに表象される明るさや、身近なものを利用した実験動画に垣間見える親しみやすさで人気を集めている。
そんな須貝さんがアメリカでホームステイをしたのは、大学2年生の夏休みのこと。きっかけは何だったのだろうか。
「自由な時間が多い学生のうちに行ってきたら? と、父に勧められたのが理由です。高いモチベーションがあったわけではなく正直面倒ですらあったのですが(笑)、家族がそんなに言うならと渡航を決めました。ステイ先は父が以前、海外研修に参加したときに滞在した家庭です。ホストファミリーとして長年さまざまな人を受け入れていて、とても優しいと聞いていたので不安は特になかったですね。秋学期のための参考文献を1冊持って親戚の家に泊まりに行く、くらいの感覚でした」
6歳の子どもとの交流で得た、コミュニケーションの成功体験

現地で温かく迎えてくれたのはホストファザーとマザー、シングルマザーの娘と小学生の孫、計4人の家族だった。平日の日中は持参した本を読み、夕方になったら学校から帰宅した子どもと遊び、夜は家族みんなで食卓を囲む毎日。一方週末には、メジャーリーグ観戦やキャンプ、カヌーなどのアクティビティなど外でさまざまな体験をした。印象に残っているのは、ホストファザー・マザーの息子家族と交流した時のことだと言う。
「その家族には6歳の子どもがいたのですが、その子の話すスピードや語彙力が僕にとってはちょうど良かったんです。図鑑を見ながら『これがイカでね』と教えてくれたり、逆に僕が『これは大きくて、これは小さくて』と説明したり。お互いが話す内容を聞き取れて、それに対して言葉を返せて、きちんと会話できている実感がとてもありました。大人と会話すると、話の内容は分かってもそれに応える言葉がうまく出てこない、結局こちらの言いたいことをくみ取ってもらっている―そんな感覚が強かったんですよね。それだけに、その子と言葉でコミュニケーションが取れたことは貴重な体験になりました」
ちなみに、この話にはまだ続きが。「新聞紙で紙鉄砲を作ってあげたら大ウケでしたね。ものすごく喜んでくれたので、その後一緒に折り紙で作りました。その時に大活躍したフレーズが “Like this.” です。1回折るごとに “Like this.” で全部乗り切れました(笑)」
日常生活の中で気付いた日本との違いと言語の壁
またもう一つ覚えているのは、日常にあった日本との違いだそう。
「ホストマザーに、シャワーを浴びる際は水の量に気を付けるよう言われたのが新鮮でした。『ミシガンは大きな湖に接している州だけれど内陸部にある。出しっ放しにしていいほど、水資源は潤沢ではない』と。シャワーは時間制限のルールこそなかったですが、小まめに水を止めるようにしていました」
3週間のホームステイを終え、一人旅をするべく向かったのは東海岸。1週間かけてボストン、ニューヨーク、ワシントンD.C.の3都市を回った。
「ワシントンD.C.が一番特徴的な街でした。まずBlackの人が多いなと思った記憶があります。またホームレスも結構いるように感じました。何より覚えているのは、地下鉄の駅で見知らぬ男性に話し掛けられたこと。その人は確かに英語をしゃべっているはずなんだけれど、僕はほとんど聞き取れなかったんです。何回か聞き返してやっと、『この人は“券売機の使い方を教えてやるから25セントをくれ”って言っとんや!』って分かって。同じ英語でもこんなに違うんだ、こういう英語を話す人もいるんだ、って良い意味でショックを受けました。日本語に置き換えれば、それまで日本で耳にしていたリスニングCDの音声やホストファミリーの話す英語が標準語だとすると、その男性の話していた英語は関西弁、ぐらいの差なんでしょうけれど。日本で英語のなまりを感じることってなかったので、いい経験だったと思いますね」
アメリカでのホームステイ体験から得られた自信
1ヵ月のアメリカ滞在を経て、その前後の気持ちの変化を須貝さんはこう話す。
「何とかなるんだなと思いました。僕に限らず、留学した人はみんな前向きな気持ちになっているんじゃないかな。できなさそうだと思っていたことでも、チャレンジしたらできるんだと。正直僕は英語が全然できないと思っていたわけではないです。ただ、しゃべれるかと聞かれたら『ようしゃべらん』でした。その状態でアメリカのマクドナルドに行ってみたら、商品名や値段は難なく読み取れましたし、普通に注文もできましたし……全然大丈夫やんって。だから未知のものに対する過剰な不安感を払拭できたし、同時に英語しか使わない環境にいても何とかなるという自信を持てるようになったと思います」
SDGsの目標の背景を理解することの重要性

続けて須貝さんは、ボストンで行われた物理学会に参加した時やQuizKnockの活動の一環でカリフォルニアに出張した時、それほど緊張しなかったのはアメリカ生活を経験していたおかげ、とも。“やってみる”ことの価値を体感した須貝さん、実はSDGsについても同じ思いを抱いているという。
「17の目標やそれを表すアイコンを眺めるだけじゃ意味がないと考えていて……。だって、どれも人として当たり前のことを言っているように思えませんか? 『質の高い教育をみんなに』という目標に対しては、確かにそれは必要だよねと感じますし。『安全な水とトイレを世界中に』を見れば、間違いなくそれはあった方がいいよねって気持ちになりますし」
そもそもSDGsを知ったのは2019年、国立科学博物館のサイエンスコミュニケータ養成実践講座でのことだった。サイエンスコミュニケーションの理論や方法を学ぶ一環として、イベントの企画・運営手法についても教わる中、その単語が出てきたのだそう。
「SDGsの達成に取り組むイベントに対して支給される、公的機関からの資金があることを知りました。ただそれに応募するには申請書がいるし、その申請書にはSDGsへの貢献方法が書かれていなくてはいけない。そしてそういった書類を作り上げるには、17の目標の背景を含めた知識や自分の考えが必要ですよね。ゆえに、どれか一つにでも興味を持ってみて、知るために行動しなきゃいけないんだなと。その目標がなぜ設定されているのか、何に問題意識を持っているのか……理解できていないと、主体的に関われないと思いました」
QuizKnockの活動における「サステナブル」とは?
では“サステナブル(持続可能)な社会”実現のために考え、実践していることは?
「社会を“人の集団とその活動”と捉えると、それが持続可能な状態っていうのは“特定のものに依存しない=常に何かしらの替えがある状態”なんだと思います。人材にしても、アイデアにしても。だからQuizKnockの活動においては、自分がいなくても支障が出ないよう仕事を割り振っていますし、大学生のメンバーを集めて意見の出し合いもします。もちろん“ナイスガイの須貝”はオンリーワンの存在でいたいし、いる必要もありますが、一人に頼り切ると組織が続いていかなくなるので。例えば将来、理科のお兄さんが必要になるとしましょう。その時、理科なら須貝(50歳)しかいない体制だったら?お兄さんを名乗るには少し年を重ね過ぎていますよね(笑)」
これからもより多くの人に未知のものと出合う機会を届けたい。そうも語ってくれた須貝さん。思いの原点は自身の体験にあるよう。
「僕は学びを経て“できる”のが楽しいタイプ。だってレベルアップした状態でどこかへ行っtたらすごく道が開けているし、世界に色が付いて見えるから。ちなみに僕の言う学びは、いわゆる学校の勉強に限りません。知らないことを知ったら学びだし、できなかったことができるようになったらそれも学びだと思っています。だから皆さんにも新しいことに出合ってほしいし、自分にできることを探してほしい。そのために僕も見てくれた人を巻き込める、そしてその人自身に変化や行動を起こしてもらえるコンテンツを作りたいですね」
QuizKnock須貝駿貴さんから読者に向けてのメッセージ

最後に、読者の皆さんに向かってメッセージをもらった。
「SDGsに興味をもっているのは素晴らしいことだと思います。でも、先ほども述べたように、17の目標を見ているだけでは何も生まれません。なぜその目標が含まれているのか、個々のバックグラウンドを調べてみてください。その一歩で世界の見え方は大きく変わり、自分の果たすべき役割がより鮮明になると思います。あなたがやるべきことを見つけたら、ぜひ僕にも教えてくださいね」
QuizKnock須貝さんへのQ&A
Q1.英語の勉強方法を教えてください!
僕の英語力は基本的に大学受験で鍛えたもののお釣りと、論文読解で必要にかられて付いた力の二つから成っています。
リスニングに関しては受験勉強の際、参考書付属のCDを毎日1レッスンずつ聞きシャドーイングを繰り返しました。1~2時間かけてCD音声と全く同じタイミング、同じ発音で話せるようになるまで徹底的に、です。その日の内容を暗唱できるほど、ずっと声に出してやり続けました。それ以外の勉強ができなかったとしても、それだけは絶対にやっていましたね。読解については、簡単な文を早く読む練習が結構良かったと思います。僕は高校の英語の授業で500wordsくらいの文章を数分で読む練習をしていました。今、論文の概要を読むときもそのような気持ちで取り組んでいます。
一方で論文を精読するときは、読むスピードより内容理解の速度が圧倒的に遅いので、何度も往復して読んでいます。結果的にどこに何が書いてあったか覚えてしまうほど。その過程で単語などは必然的に覚えてしまいます。
Q2.海外で外国人とのコミュニケーションを取るコツはありますか?
聞き取れないときはすぐ聞き直していました。もう1回お願いします、と。それでも聞き取れなかったら、さらにもう一度聞き返す。ホストファミリーの場合は、そうするとゆっくりしゃべってくれました。
話す方については、思い付いている単語を全部言った方がいいと思います。例えばあなたが日本語の単語を並べて説明されたとしたら、どうですか? たとえ正しい文になっていなくても、言わんとしていることが何となく分かりますよね。外国語でも一緒で、相手は分かってくれることが多いです。あとは言いたい単語の対義語が分かるなら、not~で伝えるのもあり。実例を挙げると、カヌーに乗ったとき「浅い」を表す英単語がすぐ出てこなかったので、ここはnot deepだねと表現しました。その後、“How do you say ‘not deep’ in English?”と聞いて、それはshallowだねと教えてもらったのも覚えています。
ただ自分の発した言葉がすぐ通じなかったこともあります。僕は“L”atinと言っているつもりなのに、相手にはLではなくRに聞こえていたらしく……。何度かトライしても通じず、文字を書いて伝えました。
Q3.留学前に日本で準備しておくべき物や、覚えておくべき英語フレーズはありますか?
アメリカの経験を基にしているので人によっては参考にならないかもしれませんが、日本にある物は基本的に現地にもあります。必要なら買えるので、あまり不安を抱かなくていいと思います。
また日常会話は、指さし説明するときのthis one、やってみせるときのlike this、道を譲るときのgo ahead、発表などを終えるときの I’ve doneを知っていればほぼこなせるかと。あとは留学先で自分の専攻について学ぶ人は専門用語を英語の教科書や論文から抜き出して、覚えておくといいんじゃないでしょうか。
写真・久富健太郎、スタイリング・林かよ、ヘア&メーク・宮下奈己
※本稿は『留学ジャーナル2021年2月号』の記事を抜粋・再編集したものです。
※留学ジャーナルから提供している写真は、加工・無加工に関わらず再利用しないようお願いいたします。
