この不安定な時代にこそ、留学で本格的に英語を習得したり、海外生活で多様性や自主性、柔軟性などを身につけた「国際社会で活躍できる人材育成」は、今まで以上に重宝されることでしょう。
そのような背景から、高校生の1年間留学の人気が高まっています。そもそも、高校生の1年間留学にはどんな種類があるのか、どんな準備が必要で、どういう経験ができるのかなど、気になることは多いと思います。
そこで今回は、高校生の長期留学の基本的な情報や、実際の事例も交えたメリット・デメリットをご紹介していきます。
高校生の1年間留学の種類
高校生の1年間留学には、大きく2つの種類があります。ひとつは「交換留学」、もうひとつは「私費(正規)留学」です。
交換留学
「交換留学」の「交換」は、文化や考え方などそれぞれの国のことを伝え合うという意味合いで使われています。お互いの国や、そこに住んでいる人たちを理解し、実際にコミュニケーションを取って学んでいく相互理解や文化交流を目的とした留学です。
実施しているのは日本に在籍する学校や留学団体などで、個人的な希望を反映できるのは国を選ぶ部分まで。地域や学校、ホームステイ先などは生徒の適正に合わせて、決められたところに派遣されます。与えられた場所で、自分らしく留学生活を過ごせるタフさが必要となるプログラムです。
留学期間は1Semester(約5ヵ月)、もしくは1Academic Year(約10ヵ月)で、現地の教育機関のスケジュールに合わせて設定されています。基本的にその国の公立高校に入学し、初めから現地の生徒と同じ授業を取らなくてはいけない場合がほとんどです。そのため、それ相応の英語力と適性があるかを確かめる選考試験が設けられていて、合格しなければ参加できません。派遣先国は学校や留学団体によってさまざまで、英語圏に限らず諸外国語圏への留学も可能です。しかし参加枠数に限りがある場合が多いので、交換留学を目指す場合は早めの情報収集、行動が必要になります。
交換留学の場合、公立高校に通いながらボランティアのホストファミリー宅に滞在する場合が多く、費用があまりかからないため、年間で約120万~150万円+航空運賃やビザ申請料などの諸費用くらいでしょう。
私費(正規)留学
一方「私費(正規)留学」は、日本の在籍する高校を休学し、私費で現地の学校に留学することです。交換留学のように文化交流・相互理解を目的にした1Term(約3ヵ月)~1Academic Year(約10ヵ月)の期間はもちろん、現地校を卒業する目的で2~3年の留学も可能です。自分の勉強したいことや挑戦したいことに合わせて国や地域、学校や滞在先、期間を決めることができるので、留学エージェントなどに相談して「オーダーメイド」の留学がかないます。
また、英語力がまだ身に付いていなくても、現地の学校で留学生のサポートがしっかりある学校を選んで英語コースから通うこともできます。交換留学のように英語の選考試験はなく、日本の高校での成績や志望動機のエッセイなど書類審査のみの学校が多いのも特徴です。
交換留学とは違い学校の授業料、ホームステイ滞在費共に支払わなくてはなりませんので、年間の費用は約200万~600万円+航空運賃やビザ申請料などの諸費用くらいが目安となります。また、選ぶ国や地域(都市部か郊外か)、学校(私立か公立か)、滞在方法(寮かホームステイか)によっても費用は大きく変動しますので、予算に合わせて滞在方法や学校の種類を選ぶとよいでしょう。
私費留学で行く場合
「公立」と「私立」どちらがいい?
私費留学で行くとき、気になるのは留学先の高校が「公立」と「私立」だと、どちらがいいのか?という部分です。選べるならばより良い経験ができる方がいいと考えるのが普通でしょう。さらに費用も異なってくるのですから、何を基準に判断すれば良いのか悩んでしまいますよね。ここでしっかり考えたいのは「自分のやりたいことができるのか」、そして「自分の性格に合う環境はどちらなのか」この2点です。
「公立」の場合
公立学校は、日本と同じように国や地方自治体が運営していて、現地の生徒たちは無料で通える学校です。学区が設けられており、学区内の子どもたちが通います。大きい所だと生徒数が3,000名以上いる学校も!生徒の国籍もその分多岐に渡り、いろんな子たちと交流することができます。しかし規模が大きい分、留学生だからといって優遇されることはあまり期待できない可能性が大きいです。自分からやりたいことや助けてほしいことがしっかりと発信できる、自分から声をかけて友達を作れる、そうした自立心や積極性が求められる環境と言えます。
授業内容は国や州が定めた教育課程に合わせて設定されていて、日本と違うのは、専門的な科目も取れるという点です。日本だと工業高校に行かなければ取れないような技術や車の整備、家具の設計・制作などの工業系の科目、そして日本では部活動とされている合唱、オーケストラ、ミュージカルや演劇などの芸術系の科目がそろっているので、公立でも自分のやりたいことをしっかりと確認をすれば、ちゃんとできる環境が整っています。
「私立」の場合
私立学校は、定員数があり、受験して合格した生徒が通っている学校になります。そのため生徒数は公立よりも少なく、中には幼稚園から高校まで同じ敷地にある学校もあります。学校ごとに宗教や科目の強み、教育理念が違いますので、学校の特色や方針が自分に合っているのかどうか事前にしっかり確認することが重要です。アットホームな雰囲気な所が多く、学校によって留学生用の英語サポートや放課後のチューター制度を設けているところもありますので、コミュニケーションや英語に不安を抱えていても安心して留学ができるでしょう。
滞在方法はホームステイと寮
また、滞在方法はホームステイと寮の2種類あります。全寮制の「ボーディングスクール」は、学校=家になりますので、現地の生徒や先生、寮のスタッフと家族のような濃い関係を築くことができます。現地に行くと安全面を考慮してホームステイでも基本的にひとりでの行動はできませんので、行動の自由度もそこまで大きく変わらないでしょう。
帰国後、日本の高校に戻る場合、基本的には出発時の学年に復学することになりますが、留学中の単位が認められ本来の学年に進級できる場合もありますので、在籍している高校に確認しておきましょう。
1年間の高校留学をするメリット
ここまでいかがだったでしょうか。具体的にどういう流れで準備を進めるべきかイメージが湧いたと思います。最後に、なぜ高校1年間留学なのか、実際の事例も交えてメリットとデメリットを説明したいと思います。
メリット(1)若い時のほうが何事も身に付きやすい
よく聞くのは、若い時のほうが何事も身に付きやすいということ。語学力も早いうちから身に付けておきたいと考える人が多いと思います。1年間だけでは正直に言うと、ネイティブ並み!とまではいきませんが、将来仕事で使えるレベルの語学力は確実に身に付きます。これを社会人になってからと思うと、経済的にも時間的にもかなり無理をしなければ難しいものです。また、未成年であるということは、現地のホストファミリーや寮のスタッフが親身になって関わろうとしてくれるので、語学力が伸びやすい要因のひとつでもあります。
メリット(2)語学力以上に大切なことが身に付く
留学に行った経験者の声を聞くと、「語学力は行けば必ず伸びる。そして、それ以上に大切なことを身に付けることができた!」という声がとても多いことです。それは、英語というコミュニケーションツールを手にした上で得られる、自立心・主体性・多様性への寛容な心・未知の我の発見・アイデンティティの確立など、挙げればきりがない程です。留学に行った本人しか体験できない唯一無二の経験があり、それはその人だけの強みになります。また、そこから学んだものは一生ものだと思います。
少し事例を挙げると、ある高校生は、現地での留学期間が半年も経つのに友達ができませんでした。そこで、友達を作るためにやったこともないバスケットクラブへ入部することを決意し、学年は違いましたが同じクラブの仲間とスポーツを通してコミュニケーションを取り、仲良くなることができたのです。また、ある高校生は発音をきれいにしたいと思い、自ら合唱のクラスを選択して英語やラテン語の歌を練習して、クリスマスにはみんなと大きなホールでコンサートに出るほどになりました。
本人たちは「他に道がない」と思うことで必死に考え、知恵を絞り、何とか自分の状況を打破しようと努力しただけですが、このような体験の積み重ねで知らぬ間に、行動力やとっさの判断力が身に付くのです。高校生の時に留学に行くことの大きな意味がここにあると言えるでしょう。
メリット(3)海外で異文化の中で学ぶ意義
学習面でも大きな変化をもたらす例もあります。ある高校生は、初めて海外の高校の授業を受けた時、現地の生徒たちが我先にと手を挙げて積極的に発言する姿に驚きました。日本とはまるで正反対だったからです。みんな事前に授業内容を確認し、自分で調べ、それを踏まえて授業に参加しているので、授業はディスカッションやディベートがほとんどでした。また、他の国からの留学生に「原爆についてあなたはどう思っているの?」と聞かれたとき、とっさに答えることができませんでした。日本人として世界へ出るということがどういうことなのかを目の当たりにし、自分の意見が言えるまで日々の勉強を自分のものできていなかったことに気付かされ、「勉強すること」の本当の意味を知った瞬間でした。
高校生のうちに世界へ出て他の国の人々と接することは、とてもインパクトが大きいことです。そして世界に対して、また自分が日常でしている行動に対しても問題意識を持って行動できる人に成長できるのだと思います。これに気付けたかどうかで、その先の大学での学習や研究、そしてさらなる将来にも大きな差が出るでしょう。
1年間の高校留学をするデメリット
デメリット(1)日本の高校生活が1年間なくなる
もちろんデメリットもあります。留学に行く判断をする時に一番悩むのは「日本の高校生活が1年間なくなる」ということです。友達との関係やこれまで打ち込んできた部活、勉強など心配になることが多くあるでしょう。
デメリット(2)ホームシックなどになることも
留学中は知らない人々と知らない土地で、慣れない言語を使いながらの生活を送りますので、ホームシックになったり、意思疎通が食い違ったりして、トラブルが生じることもあります。しかし、現地にはサポートをしてくれるスタッフがいますし、日本には応援してくれる家族がいます。そういうトラブルを通して、まわりの人たちの優しさや家族の大切さに気付くことが大切だと思います。
デメリット(3)通常の大学受験方法が厳しい場合も
1年間日本の勉強が抜けてしまいますから、通常の大学受験方法だと厳しいことでしょう。ですが、国際系の学部や英文科などは英語ともう1教科だけという受験方法を設定する大学や、外部の英語資格を認めてくれる大学が増えています。AO推薦など1年間の留学経験を活かして大学に自分をアピールする方法もあります。本人の努力次第ではありますが、現在は以前よりもはるかに可能性が広がっていますので、しっかり情報収集をすることで、自分に合った受験方法が見つけられると思います。
準備期間は1年間?高校留学へ行くまでのスケジュール
プログラムについて少し理解を深められたところで、実際にプログラムに参加するにはどのようなスケジュールで動けばいいか、説明したいと思います。
留学準備スケジュール
国や地域によって学校スケジュールはさまざまです。
★学校の学期スケジュール例 | ||||
アメリカ | カナダ | オセアニア | イギリス | |
1月 | 2学期 | 1学期 | ||
2月 | 2学期 | 1学期 | 2学期 | |
3月 | ||||
4月 | ||||
5月 | 2学期 | |||
6月 | ||||
7月 | ||||
8月 | 1学期 | 3学期 | ||
9月 | 1学期 | 1学期 | ||
10月 | 4学期 | |||
11月 | ||||
12月 |
出発はだいたい学期始まりの1週間ほど前~直前の週末を目安に設定されることが多いです。留学に行くと決めて動き出すのは、この出発日の約1年前からがいいでしょう。留学者が未成年(18歳未満)であるということから出願やビザの申請に必要な書類数は多く、保護者が取得しなければならないものも少なくありません。余裕をもって事務的な作業を終わらせるには、やはりこれくらい前からの準備が必要です。
これまで高校生が1年間留学に出発するその多くは高校2年生でしたが、最近は受験のことを考慮して高校1年生が行くパターンが増えてきました。そうすると、中学3年生の時にはもう動き出さなくてはいけないということになります。その場合、日本の高校には進学し、最初の1学期間を通ってから留学手続きを踏むのが一般的ですので、受験と留学両方の準備を同時にする必要があります。
学習面の準備もしておこう
さらに事務作業だけでなく、留学に行くための生活面や学習面での心構えも整えておく必要があります。これは現地へ行ってから「こんなはずではなかった」と思うことを防ぎ、有意義な留学生活を送るために必要不可欠な準備です。
子どもを送り出す保護者も日本からのサポート方法をしっかりと確認をしておく必要があります。過度な干渉は時に子どもの留学環境に影響が出てしまうことがあるので、連絡頻度や手段など出発前までに相談しておくといいでしょう。多くの留学団体では事前にガイダンスやオリエンテーションを設けて、このような準備ができるようにしています。
また、英語力を上げる時間も必要です。現地生徒と同じ授業を受けるわけですから、4技能すべてをフル活用させなくてはいけません。苦手だと思う部分はしっかりと鍛え、語いやフレーズを覚えるだけでなく使えるようにしておくことが必要です。
おすすめは好きな洋画を英語音声と字幕で繰り返し見ること。リスニングをしながら文字を読めますし、自然な会話のフレーズなどもつかむことができます。現地で取る科目によっては日本の高校では習わない単語が多く出てくることも。数学や理系の科目に使われる単語は自主的に調べ、頭に入れておくと現地に行ってから少し助けになるはずです。エッセイやレポートを書く宿題が出ることも多く、英語でのレポートの書き方を調べ、ライティングの練習をすることも大切です。現地ではほとんどPCで課題を提出しますので、WordやPower Pointなどが使えるようにしておくとなお良いでしょう。
★準備スケジュール例(4月出発で英語コースから通う場合) | ||
~10月 | 相談・カウンセリング 留学プログラム申し込み | |
11月 | 出願、書類作成・審査 | 英語学習 |
12月 | 合格発表 | |
1~2月 | 渡航手配・準備開始 | |
3月 | 出発前のガイダンス | |
4月 | 出発 |
まとめ:留学ジャーナルの高校留学安心サポート
ここまで、メリット・デメリットも含めて、高校生が1年間で行ける高校留学の種類と、必要な準備やスケジュールについて説明してきましたが、いかがでしたか?多感な時期に親元を離れて海外へ留学することは、大きな決断と勇気が必要なことかもしれません。
もし少しでも悩んでいたら、20年以上高校生を海外に送り出してきた実績とノウハウがある留学ジャーナルに相談して、「将来なりたい自分に近づくためには今何が必要か」を知るところから始めてみてください。
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