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グローバルに社会貢献ができる国際機関で働くには、どのようなステップが必要なのだろう。
いま活躍する日本人職員に、その道のりを聞いた
きっかけは、大学時代に訪れた中米ホンジュラスで貧困に苦しむ家族との出会いだった。現地で女性の社会進出の問題や弱い立場の人々からの搾取の構造を目の当たりにした。坂本敬子さんが、国際開発の分野に興味を持ち、社会と向き合っていく姿勢を身につけた原体験がここにあった。
坂本さんは今、UNICEF(国連児童基金)のジュネーブ事務所で、広報官として、支援企業の広報業務を担当している。
「UNICEFで企業から資金を集めるための広報活動を行うとともに、協賛してくれた企業が社会貢献活動をより広くアピールできるように支援を行っています。2020年1月からは、同じ部署のパートナーシップ・オフィサーとして、パートナー企業とビジネスの連携を深めるナレッジマネジメントを行うという新しい業務に挑戦する予定です」
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そんな坂本さんが現在の仕事に就くまでの道のりは長かった。まず、中学2年次にオランダから帰国した坂本さんは、中学・高校時代を日本で過ごす。そして、大学はアメリカ西海岸のリベラルアーツ大学に進学する。ここで将来の仕事につながっていくさまざまな経験をする。
「大学では、開発経済学を専攻しました。大学2年次には、中米ホンジュラスで貧困解決プログラムに関する共同研究に参加。さらに、大学3年次には、卒業必須項目である留学を中米コスタリカで実施し、スペイン語を身につけました。現地で経済学を学び、視野を広げることができたのも大きな収穫でした」
大学卒業後、さらに開発経済学の知識を深めるため、コーネル大学公共政策大学院に進学。プロフェッショナルスクールと呼ばれる実践的な学びの環境で、外国政府などを含むクライアントに対して、さまざまなコンサルティング業務を経験した。
「学生という立場ながら、メキシコ政府やタイ政府を相手にコンサルティング業務に挑戦しました。例えば、タイ政府の実施するエコツーリズムプロジェクトの事業改善のために現地を視察し、提案をしました。在学中にPDPオーストラリアでのインターンシップに参加し、国際協力の現場も経験しました」
PDPオーストラリアは日本のJICA(国際協力機構)のような組織からプロジェクトを受注する開発コンサルティング企業。この頃から将来は国際機関で働きたいという夢を持つようになる。公共政策大学院の課程を修了後、坂本さんは、国連職員になるため出願をするも選考から外れてしまう。国連職員になるには、さらなる実務経験が必要だった。
2006年8月(学部)カリフォルニア州にあるリベラルアーツ大学Soka University of Americaに入学。開発経済学を専攻する。2年次に中米ホンジュラスでNGOと貧困解決プログラムに関する共同研究を実施。3年次には、コスタリカの大学にスペイン語留学し、経済学を学ぶ。
2010年8月(大学院修士)開発経済学の知識を深めるため、コーネル大学公共政策大学院に入学。外国政府などを対象にコンサルティング業務を経験し、実務スキルを鍛える。
2012年7~9月UNICEFニューヨーク本部で、Child Protection in Emergencyの年次報告書作成のための情報分析のインターンシップを実施。
2012年10月NGO Quatroに就職し、ラオス南部でJICAが実施する「一村一品運動」を農村開発専門官として支援する。
2014年10月デロイト トーマツ コンサルティング合同会社に就職。企業の事業改善戦略のコンサルティング業務を担当。
2018年4月外務省が実施する、平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に参加し、ボリビア・ラパスの国連常駐調整官事務所で国連グローバル・コンパクトの立ち上げ業務に従事。
2019年3月JPOに合格し、UNICEF Private Fundraising and Partnerships Divisionのあるジュネーブ事務所で広報官として着任。2020年1月からPartnerships Officerとして同部署のBusiness for Results業務を担当している。
そこで坂本さんは、頭を切り換えて、UNICEFのニューヨーク本部でインターンシップをする道を選ぶ。業務は情報分析。無給で3ヵ月間働き、人間関係を構築した。
「UNICEFの職員に国連で働くために何をすべきか聞くと、若いうちにフィールド経験を積むべきだとアドバイスを受けました。そこで、もっと受益者に近い現場経験を積みたいと考え、日本のNGOに就職しました」
NGOクワトロは、ラオスで教育や社会インフラ整備を支援する非営利活動法人。坂本さんは、2012年10月から2年間、ラオス南部のパクセという地域に駐在し、農村開発専門官を務めた。担当したのは、JICAが実施する「一村一品運動」の指導。少数民族がつくる布などの素材で民芸品を開発し、価格設定や利益率などを一緒に考えた。
「ラオスの2年間で本当に多くのことを学びましたが、同時にビジネスの知識が圧倒的に不足していることを痛感しました。そこで、2014年にラオスから帰国し、日本でデロイト トーマツ コンサルティング合同会社に就職し、事業改善戦略のコンサルティング業務を3年半経験します。ここで関わった官民連携業務を通し、民間企業の果たすべき社会的役割の重要性を実感した私は、国連組織で企業と連携し、人権が守られる未来を構築しようと決意しました」
2018年4月、坂本さんは、外務省が実施する、平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に参加し、ボリビアの国連常駐調整官事務所で国連グローバル・コンパクトの立ち上げ業務を経験。国連職員へのステップとしてさらなるキャリアを積み上げる。そして、2019年3月、UNICEFのJPOへ出願し、5度目の挑戦でついに合格。坂本さんは、ジュネーブに勤務することになる。
「UNICEFは国連組織で一番民間連携に力を入れている組織と知り、外務省枠で初めて応募しました。回り道をしましたが、すべての経験が今の仕事で役立つと思っています。今後取り組みたいのは、UNICEFとしてビジネスとの関わりを考えること。サプライチェーン上に児童労働など非人道的な労働環境がないかをチェックするしくみを構築したいと思っています。私の夢は子どもの人権が守られる未来をつくること。国連の職員として、社会を変えていく仕事に大きなやりがいと責任を感じています」
高校卒業後、アメリカ、カリフォルニア州のSoka University of Americaに入学。開発経済学を専攻する。在学中に中米ホンジュラス、コスタリカに留学し、貧困の現場に衝撃を受ける。開発経済学の知識を深める必要性を感じ、卒業後はコーネル大学公共政策大学院に進学。実務スキルを鍛えた。
大学院修了後、UNICEFのニューヨーク本部でインターンシップを経験。UNICEF職員から「若いうちに現場経験を積むべき」とアドバイスを受け、日本のNGO団体に就職。農村開発専門官として、ラオス南部でJICA(国際協力機構)が実施する地域活性化の活動を支援する。
経済の知識の必要性を感じ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社に就職。コンサルティング業務を経験する。その後、外務省の平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に参加し、ボリビアで国連グローバルコンパクトの立ち上げ業務に従事。キャリアが評価され、JPO試験に合格。
UNICEF(ユニセフ: 国連児童基金)は、すべての子どもの命と権利を守るために約190の国と地域で活動している組織。最も支援の届きにくい子どもたちを最優先に、保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV対策などをテーマに支援活動を実施。さらに、災害や紛争地域での子どもの緊急支援、教育や社会参加におけるジェンダー平等の実現にも力を入れている。その活動資金は、すべて個人や企業・団体・各国政府からの募金や任意拠出金でまかなわれている。
国際機関への応募に際しては、最近ではウェブ上の記入フォームで入力していくパターンもありますが、多くは、通称P11と呼ばれるWORD形式の応募書類(履歴書)を用います。P11は、いかに自分が応募ポストに適した専門性を有しているかを証明できるよう、それぞれの欄に簡潔に記入することが重要です。応募するポストで求められている能力やバックグラウンドをよく理解し、自分と合致していることを記載します。英文履歴書は、“I ”や“my”といった主語を省略し、動詞から書き始めるのも特徴です。P11とは別に、応募者の経験、資質、能力が応募ポストにいかに合致するかを示すカバーレターも、提出するのが良いでしょう。なぜ自分はこのポストに関心があるのか、そして、なぜ国際機関側が自分を考慮しなければならないか、という二点を、全体を3、4パラグラフにまとめて記載します。