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【保護者・教員向け】ニューノーマル時代に留学の成果を倍増させる学びとは?

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公開 : 2020.11.26

更新 : 2020.12.25

2020年10月31日(土)に早期起業家教育の専門家、株式会社セルフウイング代表取締役の平井由紀子さんにお話を伺った特別オンラインセッション「【保護者・教員向け】ニューノーマル時代に留学の成果を倍増させる学びとは?」。ウェブ上講演として動画とテキストで内容をご紹介します。

早期起業家教育で養われる非認知能力(やりぬく力、諦めない力、失敗を恐れない力)は留学でも身につけられる力とされ、早期起業家教育と留学には多くの共通点があります。コロナ禍の影響やAI技術の進歩で、日々の生活や学び方が大きく変化している今だからこそ、非認知能力を伸ばす教育がまさに注目されています。

海外に行けなくても、いま日本でできること、オンラインでできることなど、将来充実した留学を実現するためのヒントも随所にあります。ぜひご覧ください。

<ゲストスピーカー>
早期起業家教育研究家
株式会社セルフウイング代表取締役 平井由紀子さん

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早稲田大学商学部在学中にアメリカに留学、卒業。留学関連企業を経て、アメリカの教育ベンチャー日本法人に転職、マネージングディレクターを務める。その後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に進み、大学発ベンチャーとして2000年に株式会社セルフウイングを設立。2016年、Selfwing Vietnam Co., Ltdを設立。学術博士(起業家教育)。

留学と起業家教育

留学と起業家教育がなぜリンクするのか不思議に思われるかもしれません。私は、早期の起業家教育を、留学でも身につけられるマインドセットを、どうやって起業家教育プログラムを通じて慣用できるのかを研究、事業にしています。

留学にはニューノーマル時代を迎えて起業家教育と同じ効果があると自分の留学経験をふまえて改めて思っています。

大学時代に留学はしていますが、留学前にも日本で海外の方と接したりすることが多く、海外に出ることも大切だけれども、日本にいるうちにどれだけの準備ができるかが大事と改めて思い起こしているところです。今は海を渡ることができませんが、日本でもいろいろなことができると思っています。

私は、留学を転機にその後、日本で15年間日本の会社と外資系の会社とで仕事をし、起業家教育に出会い、これをライフワークにしようと20年前に創業しました。

今日は私自身の話と起業家教育の話、海外で活躍する大先輩のお話、最後に日本でどんな準備をしておけるかについて、お話しします。

第1章 「早期起業家教育」こそ生涯をかけるテーマ

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留学や仕事を通じて海外に行くチャンスがたくさんあった中で、留学というものがもし真ん中にあるとしたら、留学に行く前と行った後も含めて、お子さんや生徒さんにはいろいろな影響があったのではないかと振り返って思います。

早期起業家教育とは、1996年から産業界、アカデミア(学術分野)、経済産業省(当時)で共同研究をはじめて、今では文部科学省も大学も、それから大学入試まで早期起業家教育で培われる力を重視する形になっています。

1996年頃は失われた20年、30年と言われており、新しいことが起きにくい状況でした。どんどん会社を作る人、新しいことを考える人が減っていた時代に、日本でももっと新しいことを考えられる人、自分で行動できる人を増やさないといけないという機運が高まってきたわけです。

研究していくと、大人だから遅いということはないけれども、気持ちを育てるというのは幼少期からの起業体験(アントレプレナーシップ)が重要で、起業体験をメソッド化されたプログラムを行うことによって、大人になったときにより広いところに感度が向くといったことがわかってきました。英語や数学とは違い点数で測るのが難しいため、この学習をエビデンス化することに取り組んでいます。

一言で言うと起業家精神、やりぬく力、諦めない力、失敗を恐れない力は、まさしく留学でも身につく力ではないでしょうか。海外に行ってこんなはずじゃなかったということが起こった時に、やっぱりそこで諦めずにやりぬく力は留学でも身につくし、起業家教育でも身につくと思っています。

従来の教育を否定するわけではありませんが、昔は前任者を踏襲する人材が求められていました。日本は正確にモノを作ることに高い評価を受けていますが、それは一つモノを作ったり、一つ産業が起きると優位性が長かったためです。

工業時代と言われていた頃は、一つ金型があると長く優位性があるので、ある程度正解がわかっていました。その正解を学習する、暗記する、それをどんどん改善する。Japan as No.1と言われていたように、世界一と言われていた頃は"カイゼン"が外国語になっていました。そのため、一生懸命、知識の教育をしていました。

いまはハーバード大学の先生も言っていますが、知識はコモディティ(商品・日用品)だと。いまのお子さんは生まれたときからデジタルがあったので、調べようとすると情報が入りやすいですよね。

そのため、今大事なことは知識を使って何ができるかということ。ふんだんな知識・情報、そしてその情報を必要なこと、いらないものとに分ける、そういう処理能力を使って、新しいことを興せる人材を育てること、これを早期起業家教育は目指しているわけです。

いまは一つものを作ってもあっという間に新しいモノが出てくる時代ですよね。スマホを見ても、同じものを2年、3年と使わないと思います。次は何が出てくるか、正解がわからない、留学と同じですね。

海外に行ったらこんな問題が起こるんじゃないかと頭の中で試行錯誤して、起きたらこうしようと、ガイダンスを受けても知識・情報をもとにどう行動するかを考えてもらいたい、ここで起業家的精神の発揮が必要になってくるんです。

起業家精神とは何か不確実なことが起こった時に、一生懸命自分で行動してみる、当然失敗が起こる、ただその失敗からもう一度復活してくる力、めげない力を、やはり教育や留学がお子さんや生徒さんを助けてくれると思います。

今のお子さんたちが社会に出たときは、現在の仕事のうち60%以上がいまない仕事に就くと予測されたり、人工知能の発達でなくなる仕事がある、AIに取られてしまうのかと騒がれていましたが、いやそうではないと。

人工知能は2045年、その知能が人間を超えるのではないかと言われていますが、あくまでディープランニング(人工知能の根幹技術)に教える、指示するのも人間ですから、ぜひAIやデジタルと仲良くして新しい仕事を作っていってほしいと思っています。

私たちの時代は留学に行って英語力がついただけでも十分に評価され、海外生活の経験があるだけで重宝されました。でもこれからはその次を目指して留学というものが役に立ってくる時代じゃないかと思います。

いまは大量の情報や技術が入ってくるようになりました。昔は、情報は官庁や大企業、大学にしかありませんでしたが、いまはSNSを使って自分のことを発信できるようになりました。賢い失敗をすることによってニューノーマルな時代に対応する不可欠な資質として、この企業家精神と留学で得られる強い心を達成してもらいたいと思っています。

海外出張中に起こったことですが、各地で今でも紛争や災害が起こっていて、移民の親子が代々築いたものが一夜にして消えてしまった、そんな時にアメリカで言われたことは、「知恵と教育があれば、誰でも新しいことを創造してまた自立することができる」、そう数千人の前でプレゼンしてくれたのが17歳のマイノリティの女の子でした。その強さに打たれ「どうしたらそういうマインドが出るの?」と聞いたときにアメリカでは誰でも1度は起業家教育(アントレプレナーシップ)を受けているということに気づきました。

第2章 海外へ教育を輸出しよう

この起業家教育を日本で20年間研究した結果、相手国から持ってくるだけでなく、日本のものを海外に持っていったらどうだろうと思い、これが私の次のステージになりました。

早期起業教育は知識じゃなくて体験する教育です。アメリカでいうとスタンフォード大学などベンチャー事業をたくさん産み出しているところでも、実際に大学院生が日々この教育を行っています。

驚いたのは輪ゴムをつなげて新商品をつくりなさいとスタンフォード大学の先生がおっしゃっていたのと、何もない段ボールから一番障がい者が使いやすい車椅子を開発しなさい、など、アメリカの頭脳といわれる学生たちが日々真剣に取り組んでいることが非常に画期的でした。

いま海外に行けませんが、逆に日本でたくさんの海外の学生が学んでいます。例えば、サウジアラビアの学生たちですけど、今は石油が出るからよいけれど、50年後に石油が出なくなったときにどういう風に国を作っていくのかということをすでに考えていて、日本に起業家教育を受けにきています。

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イスラムの人たちなので、膝を出している女子高生と一緒に勉強するのもはじめてで、勉強だけでなく文化も体験に来ている。ここでもやはり日本人の許容性がすごく高く評価されていて、彼らは決まった時間にメッカを向いてお祈りしますが、東京タワーを見学しているときもお祈りの時間になったら日本の人たちも展望台のところで、あちらがメッカだよと場所を開けてくれて彼らを尊重してくれたことを覚えています。今は外に出られなくても日本にいてできることはたくさんあると実感しています。

第3章 「日本の教育」を持って世界へ

今まで教育について欧米寄りの話をしましたが、私自身はアジアで仕事をしています。2016年に日本の教育を海外に紹介したいという思いで、ベトナムに会社を作りました。

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真ん中にいる方は菅首相も最近会われたフック首相です。首都ハノイからベトナム中部にいらっしゃり、日本の教育、日本人から学ぶものがたくさんありますよ、というとてもありがたいお言葉をくださり、私たちを歓迎してくれました。

私はアセアンで起業家教育をやりたかったのですが、これは留学でも同じですけれど、他の国に行ったら自分がやりたいことだけを押し付けるのではなく、相手の国・人が何を求めているかを学ばなければいけないなとつくづく思いました。3年間本当に一生懸命、日本から求められている教育や何が必要なのかを学びました。そしてベトナムの中心にある美しい街ダナンに日本の方に集結していただき、研究をしました。

第4章 日本の教育輸出へ。SELFEING V-KIDS幼稚園とV-Gardenの設立

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日本式でもベトナムの教育を尊重した幼稚園です。ベトナムはまだ昔の日本のように子どもの数が多いので一斉保育が主流ですが、自分で考えて行動できるように一斉保育をやめています。このように、日本の教育、他の国の教育、自分の国の教育を受けています。

国とつながろうとすると留学先の学校とだけつながっていてもだめですね。そこで、地域・コミュニティとつながろうと、若いベトナム人スタッフのアイデアで「パパママカフェ」を作りました。自分たちで日本の棟梁に直談判して、木材も大工さんも日本から来てもらい、ダナンに突然日本家屋ができました。

ぜひ留学先に行ったり、また行けない間日本にいても周りに外国の方がたくさんいらっしゃると思うので、ぜひそういうところでつながって日本にいながら十分準備をして、さあ来年行くぞ、行けるぞとなったときに準備万端で日本から若い方たちに飛び立ってほしいなと思っています。

また、言葉でなく文化を教えてほしいというのがベトナムの保護者の考えでした。カフェの経営も運営もベトナム人の大学生がやっています。だからみなさんも留学で自分の国でできることはたくさんあります。

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海外で仕事をする、海外の人と仕事をするということで言語を超えた点数で測れない価値がたくさん出てくるのではないかと思っています。

第5章 日本の教育を輸出してみたい世界

留学や仕事をしているとき、日本人はすばらしいと言われた一方で、自分のアイデアや考えをなかなか共有してくれないとも言われました。こんなことを言って笑われたらいやだな、はずかしいな、とか、まだ完璧じゃないとしっかりした準備をしてから表現するのが日本人かもしれないけれど、途中でもいいからどんどん言ってくれと。何も言わないのは何も考えていないのと同じだよと随分言われました。

国際会議に行って何が難しいかって、日本人に発言してもらうことが一番難しいともよく言われました。ですので、日本にいる間にぜひどんどん発言する練習をしてほしいなと思います。

それから、これは私の好きなことばです。

その人に「魚の釣り方」を教育すれば、その人は一生自立できる

魚一匹もらったら、その日一日はおなかいっぱいかもしれないけど、その人が魚の釣り方を覚えれば、その人は一生幸せです、という意味です。逆に自分に置き換えると、もし私たち、こどもたちが何かをもらうのではなくて、自分で釣り方、作り方を覚えれば一生幸せだよ、ということだと思います。

そんな世界が見えればいいな、こういう教育を日本から発信したいと思っていますし、海外に出たらぜひその国で、それぞれの国で自分の魚の釣り方を覚えてもらえればと思っています。

多様性はどんな形でもいい。ただ起業する、自立するといっても自分の幸せの形を探してねということです。ソーシャルな問題があるのか、必然性があるのか、それとも技術やいまの時代の機会ととらえて何かをしていくのか、どんなことでもいいので、ぜひ自分の得意なところでの魚の釣り方を留学先で会得してほしいですし、海外に行けない間にその下準備をしておいてもらえればよいなと思います。

第6章 「いつでも」「どこでも」「誰でも」受けられる教育

「いつでも」「どこでも」「誰でも」そして「安く」受けられる教育についてお話しします。

ベトナムに限らず、私の知っている国には留学が夢のまた夢というお子さんがたくさんいます。日本でもそうかもしれません。そのため、留学に行ける幸せをしみじみありがたいと思うとともに、行けなくてもがんばれる状況を作りたいと思い、自粛中に「On-line V-Lids(R)ノート」というプログラムを作りました。

オンラインで会社を作るプログラムで、東京からの募集でしたが、北海道から四国、愛知、ベトナムそして日本にいる外国の子供たちが集まって、一緒に"魚の釣り方"を覚えました。

どんな風にしたら私たちの会社がメンバーにとっていいこと、世の中にとっていいことがあるのか、ということを考えてみたり、みんなが良くなるには「三方よし」でなく、未来もよしの「三方プラスワン」という考え方で、日本から発信し、海外に行ったらそれを誇りに思って留学先で過ごしてほしいなと思います。

今回はマスクを作る会社を作るということで、マスク作りはもちろん、宣伝ポスターを作ったり、計画表や結果をまとめたりしました。赤字になった会社もありましたが、それだけチャレンジもしていました。失敗から学ぶことが大事。そしてこれを客観的に評価することが大事です。

これは"教えない"ことでやっている教育です。大学・大学院で指導していた時のものと内容は同じで、子ども用に言葉だけわかりやすくしたもので、子どもだからといって優しいものを教えているわけではありません。子どもに本物を知って、魚の釣り方を知ってほしいなというのが20年来の願いです。

稼いだお金をどう使うのか、いまSDGsの教育を世界中でやっていますけれど、SDGsを知識の教育としてやることも大切ですが、知識を得たら、それを使って本当に何ができるか、ということをやってもらいたいがゆえに、自分で価値を生んだらそれで人のため、将来のためになろう、ということを実は私はリアルでその場に行って、海外からも学生が来て、ということをやっていたわけです。

でもこんなに長く海外に行けないのは、人生初めてです。しかし、デジタルを使いテクノロジーと仲良くなって助けてもらうと、逆に行けないことをバネに、いつでも誰でもどこでも安く、教育を共有できると。そのため、このプログラムは英語版もベトナム版も当然ありますが、他の言語で、若い人の失業率が40%以上の国などもあるので、そこへオンラインで届けたいなと思っています。

第7章 ALL JAPANで「最高の教育」を世界へ

最後に、いま海外で活躍されている方をご紹介します。

fair-report2_akimoto.png・株式会社パン・アキモト

パンの缶詰を作られた社長さんがベトナムに作ったパン屋さんです。このパン屋さんを通じて、技術を教え、魚の釣り方を教えました。今ここからどんどんベトナムの若い人が経営するパン屋さんがフランチャイズになり、自分たちのお店として経営しています。



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・株式会社CTMサプライ

日本の給食室を作りました。デリバリーも覚え、ベトナムの子どもたちがきちんと食事ができるようになりました。



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・ミズノ

正式にベトナムに認められ、日本の体育を広めました。モノを売るのではなく、体育の先生を5000人育てています。



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・株式会社ブレインワークス

ベトナム人と一緒にアフリカへ出て、若い人たちの勉強を終わったあとの仕事作りを行っています。お互い尊重しながら新しい仕事を作っています。


最後に

海外に行けないいまだからこそデジタルを使って日本でできる準備をしていきたい、海外からいい教育も日本にもってきたいと思っています。いろんな形で海外につながれますので、来年、再来年、デジタルを使って、オンラインを使って、世界とつながりたいと思います。

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