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【Letter from New York】ニューヨークの現在

# アメリカ

# 雑誌留学ジャーナル

公開 : 2021.07.16

2020年、世界は大きく変わった。新型コロナウイルスの感染拡大、また時を同じくしてヘイトクライムとそれに対する抗議活動が顕在化。この約1年半の間にアメリカ・ニューヨークでは何が起こり、今、そこに暮らす人々はどんな生活を送っているのか。現地の様子を、現地在住フォトグラファー井田貴子さんが写真と共に届けてくれた。

TEXT : Ryugaku Journal/PHOTOGRAPH : Takako Ida
※本稿は『留学ジャーナル2021年8月号』の記事を抜粋・再編集したものです。写真は2021年4月中旬に撮影、文章は4~5月に行った取材を基に作成しています。
※留学ジャーナルから提供している写真は、加工・無加工に関わらず再利用しないようお願いいたします。

話してくれたのは

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井田 貴子さん
フォトグラファー。アメリカ・ニューヨーク生活歴12年。最近のお気に入りスポットはブロンクスにある小さな島・シティーアイランド。

政治、経済、人の動き―。流れの速さをまざまざと実感

ニューヨークの変化の速さ。この1年半は、それを改めて見せつけられた時間でした。今、街には活気が一気に戻りつつあります。引き金となったのは新型コロナウイルスのワクチン。2021年に入り、ワクチン接種が急速に進んだことでさまざまな制限が撤廃に。

飲食店の屋内営業が再開され、ジムや博物館など屋内施設の収容人数制限もほとんど無くなりました。街行く人を見ると、4月以降マスク着用率がぐんと下がったように思いますし、場所によっては人が密集していることも。いっときは割と保たれていたソーシャルディスタンス、一体どこに行ったのやら...。

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▲観光スポットの代表格、タイムズスクエア

海外からの観光客はほとんどいないものの、だいぶにぎやかになってきた。付近にある劇場街・ブロードウェーは2020年3月から閉鎖されているが、2021年9月に再開される見通しだ。ここ一帯はますます活気づくだろう。

約3ヵ月続いたロックダウン。人影はまばら

1年前、2020年5月頃を振り返ってみると、ニューヨーク市はロックダウン(都市封鎖)の最中でした。3月7日、州知事による非常事態宣言を皮切りに、不要不急の外出禁止、市内の学校閉鎖、持ち帰りと配達を除く飲食店の営業停止などが次々と決定。

その後の約3ヵ月間、経済活動は厳しく制限され多方面でビジネスができない状態になり、私のフォトグラファーとしての仕事もまったく無くなりました。また買い物に出ると、人通りの少なさにびっくり。街全体が息をひそめているようでした。

他方で生活必需品を売るスーパーマーケットの前には、買い物客の長い列が。店内に入れる人数が厳しく制限されていたため、入店を待つ人が並んでいたのです。普段は見知らぬ人と世間話をすることも珍しくないのですが、この時ばかりは会話はなく、みんな黙々と順番を待ち買い物を済ませていました。

できないことばかりが増えストレスを感じる反面、自分と十分向き合い、自身の抱える弱さについて、あるいは将来についてじっくり考えられたのは良かったです。何しろ時間だけは嫌と言うほどありましたから(笑)。

漠然とした不安に駆られないよう瞑想にふけってみたり、新しいスキルとして映像編集の方法を身に付けたり。この時期を乗り越えられた経験は、自信にもなっています。

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ニュースタンダードなライフスタイルと働き方

こうした生活に変化が生じたのは、2020年6月に経済活動が部分的に再開されてからのこと。ただ現在でも、何もかもが全く元通りになったわけではありません。

例えば当初レストランやカフェの食事提供は屋外でのみ許可されたため、多くの店がテラスを(場所によっては多少無理やりに)設けました。屋内でも食事可能な今も、あちこちに飲食スペースが残されています。

私の仕事で言えば、最も変わったのはクライアントの立ち会い方です。撮影場所に足を運ぶのではなく、リモートで撮影風景を見つつ指示を出すスタイルがすっかり主流なりました。

現場での準備に少し手間はかかりますが、今後もこの形式は無くならないだろうと感じていますし、他国に住む人と仕事をしやすくなったと思うとうれしいですね。それから撮影前にPCR検査を受け、陰性証明書を提示するようにもなりました。

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▲マンハッタンのユニオンスクエアパーク

2021年4月中旬、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進むにつれ、街には人が増えてきていた。マンハッタンのユニオンスクエアパークにもハンバーガーを食べたり、友人としゃべったり、チェスをしたりと、思い思いに過ごすニューヨーカーの姿が。

アジアンヘイトの増加。危機意識の持ち直しが必要に

新型コロナウイルスの他にもう一つ、この1年半のニューヨークを語る上で外せないのはヘイトクライム(憎悪犯罪)でしょう。2020年5月からブラック・ライブズ・マター運動が発展する陰で、アジア系の人々に対するヘイトも増えてしまいました。

カリフォルニア州立大学の調査によると、今年1~3月の発生件数は前年比223%に増加しています。また、これはニューヨークの特定の場所でだけ起こっている出来事ではありません。観光名所のタイムズスクエア近くでも、地下鉄の中でも、暴行事件は発生しています。

ただ知ってほしいのは、ニューヨークに住む全員がアジア系の人々を差別し、暴力を振るっているわけじゃないということ。現に私は危険な目に遭うことなく、生活を送っています。

ニューヨークに渡航予定の方は自分の身を守るためにも海外生活の基本のキ―「日本と同じ感覚で過ごしてはいけない」と肝に銘じる、不慣れな一人歩きを避ける、人通りのない場所には行かない―をまずはしっかり守るといいと思います。

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物は考えよう。困難の多い留学は成長のチャンスも多い

そして海外留学を考えている皆さんには、ぜひ留学の楽しくワクワクする面に今一度目を向けてほしいですね。と言いつつも、懸念材料が多くなってしまう気持ちも分かります。

ただでさえ新しい環境で新しい挑戦をするのは勇気が要るのに、今はコロナにアジアンヘイトの問題もあり......未知数すぎて尻込みしてしまいますよね。でも"未知なことが多い"のは、裏を返せば"学びや成長のチャンスが多い"ということでは?だって初めて出合う物事からは、新しい知識や考え方を吸収できますから。

例え失敗や挫折をしても原因分析をすれば次に生かせますし、良いも悪いも考え方次第なのだと思います。留学中、目の前のことに一生懸命取り組めば、絶対に得られるものがあるでしょう。

また、それこそ街の変化の速さなどはそこで生活してみないと分からないもの。海外の良い点も、もちろん悪い点も肌で感じてみてほしいです。近い未来、皆さんが留学を実現させて、海外で特別な時間を過ごせるよう願っています。

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留学ジャーナル2021年8月号では「変わる留学」をテーマに、変化した留学の"今"をご紹介しています。withコロナのリアル留学を実現する方法や、コロナ禍の留学体験談など盛りだくさんの内容です。雑誌の立ち読みはコチラへ。


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