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本格回復はなるか― どうなる?2022年の留学

# 留学

# 雑誌留学ジャーナル

公開 : 2021.12.20

更新 : 2022.02.01

新型コロナウイルスの世界的流行により、国際的な人の往来が厳しく制限されて約2年。今、海外への扉が再び開き始め、遠ざかっていた留学が、ようやく身近に戻りつつあるように思えるが…。

「海外への渡航って、どんな感じ?」「留学先の感染状況が悪化したらどうしよう」「コロナ下で留学するにあたっての心構えは?」留学に深く関わってきた2人が、2022年の留学について解説します。

TEXT : Yuri Murakami, Ryugaku Journal
※本稿は『留学ジャーナル2022年2月号』の記事を抜粋・再編集したものです。
※本対談は2021年10月中旬に実施しました。

解説してくれたのは

留学の焦点を"国"から"目的"へとする意識転換が必要です。

<Special Guest>

magazine_3.jpg若松 千枝加さん
株式会社ウィッシュ・ウッド代表取締役。留学ニュースサイト『留学プレス』、留学Webマガジン『女子Ryu』の編集長も兼ねる。

幼少期をアメリカで過ごす。留学・ワーキングホリデーの社会への普及のため各種媒体に記事を寄稿する他、留学カウンセラーの健全化・育成のため、一般社団法人日本認定留学カウンセラー協会で幹事として活動している。

完璧を求めると、機会を逸することも。ともかく留学するという気概も大切です。

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『留学ジャーナル』編集長 加藤 ゆかり
株式会社留学ジャーナル代表取締役副社長。雑誌『留学ジャーナル』の編集長も兼ねる。

大学卒業後、ニュージーランドに長期滞在し、帰国後、英会話講師を経て現在の留学ジャーナルの前身であるICS国際文化教育センターに入社。留学カウンセリングから講演・執筆まで、さまざまな活動を通し、社内外問わず日本人の海外留学促進に努めている。

Q.新型コロナウイルスの影響で、留学は深刻な打撃を受けました。現状はどうですか?

若松千枝加さん(以下、「若松」と表記):各国が規制緩和の方向に転じています。新型コロナウイルスのワクチン接種完了者に対して、隔離措置なしでの入国を許可する国は増えています。また、2020年春以降、留学生らの入国を厳しく制限してきたオーストラリア、ニュージーランドも、近く再び門戸を開く見通しです。

加藤:日本への帰国時の隔離も14日間から10日間※へと短縮されましたね。隔離期間を7日間にと望む声が各種業界から多かったので、結果として10日間に落ち着いたのは残念とも言えますが、今後はさらなる短縮を期待します。

若松:例えば2週間の留学をするのに帰国後10日間の隔離が必要となれば、二の足を踏む方は多いはず。また、現状では公共交通機関の利用も禁止されているので、国際空港の近辺に住んでいない人はホテル滞在のコストも必要になりますし。

加藤:そうですよね。一律に撤廃とはいかなくても、感染状況が落ち着いている国からの渡航者に対して、近いうちに隔離なしの入国が許可される可能性はありそうです。

※オミクロン株の出現を受け、2021年12月1日より隔離期間は再び14日間となりました。また日本入国前に滞在した国・地域に応じて、検疫所が確保する宿泊施設での待機・検査が必要です。

Q.規制緩和の動きは、留学にとって追い風となるでしょうか?

若松:すでに追い風になりつつあります。20年と21年に留学を我慢した人が本当に多かったこともあり、22年、特に後半の出発者は大幅に増えるでしょう。今までも、震災や9・11といった有事の翌年に留学生数はその前年以上に伸びていました。

加藤:21年秋から協定校留学を再開している大学もありますね。22年にはほぼ全面的に再開されそうです。

若松:そうですね。協定校留学の解禁は新聞などの大手メディアでも取り上げられやすいもの。これが大きく動けばゲームチェンジャーになると見ています。つまり、協定校留学の全面的な再開により、個人留学に対する心理的なハードルも下がるはずだと。

加藤:確かにそうですね。今まで様子見していた人たちが一気に動きそうです。コロナによる自粛の揺り戻しで消費意欲が上がり、「反動消費」の波も見られているようですからね。子どものために有意義にお金を使いたいと思っている、親御さんも少なくないのでは。

ワーキングホリデーにも明るい兆しが

若松:今のところ、留学生は受け入れてもワーキングホリデー(ワーホリ)はNGという国もあるものの、徐々に門戸は開いてきています。ワーホリが全面的に解禁されれば、留学業界にとってそれが最後の大きな起爆剤になるでしょう。

加藤:少し前まで、カナダにワーホリビザで入国するには先に現地の仕事を見つける必要がありましたが、その条件は撤廃されました。今は「働ける人はどうぞ来てください」という姿勢に転じたと感じています。

若松:確かに、欧米諸国では移民が入って来なくなったことによるエッセンシャルワーカー不足が問題になっていますね。貴重な労働力として、ワーホリ渡航者の価値が見直されているので、早期再開が期待できそうです。

ワクチン接種率が高い国でも状況は不安定

若松:予防効果にも限界があるので、残念ながら、ワクチンのみでの終息はなさそうです。今後も感染拡大状況により、各国が国境の開け閉めを繰り返すことも考えられます。

この状況は、留学先決定のプロセスに影響がありそうです。コロナ前は行きたい"国"を軸に留学先を決めるケースも多くありましたが、コロナ下では出発直前にその国に入国できなくなる可能性も。

ですから、 留学先決定の軸として"国"よりも"目的"に重きをおいてほしいと思っています。学びたいこと、体験したいこと、習得したいスキルなど留学の目的を明確にし、その目的を実現できる国々をリストアップし順位付けします。

仮に第1希望の国に入国できなかったら、第2希望の国に渡航するという方法を取れば、コロナ下であってもスムーズに留学できるでしょう。

加藤:目的が明確であればあるほど、留学先での学びも深いものになりますよね。

留学生はワクチン接種すべき?

若松:もちろん接種を受けるかどうかは個人の自由ですが、留学にはワクチン接種は必須と考えるべきかと。それによって入国が可能になったり、隔離が免除されるというメリットが、まずあります。さらに、対面授業やアクティビティへの参加や、ホームステイ先や寮への滞在などに関して接種を必須条件とする教育機関も現実として出てきているのです。

加藤:そもそもコロナ前も大学寮などに滞在するには、特定のワクチン接種が必要なケースがありましたよね。それに国によっては、飲食店や映画館などの利用時にワクチン接種証明の提示が必要となっているので、接種を済ませていないと、日常生活に支障を来すことがありそうです。

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Q.22年に留学するメリットはありますか?

若松:まずは心理的な部分に触れましょうか。先ほど、「有事の翌年には留学生が増加する」とお話しましたが、それは予期せぬ事態が起こったことで、「何でもできるうちにすべき」だと気付いた人が多いからです。

今回のパンデミックでも「チャンスがあるうちに留学しておけば良かった」と後悔した人もいらっしゃるでしょう。今後も何が起こるか分からない。だから22年に国と国との往来がよりスムーズになれば、これはまさに留学するチャンスです。

加藤:東日本大震災の後、「後悔しないように、今のうちに人生における夢を叶えたい」という人が多かったのを思い出します。しかし、日本人はきちんと準備を整えてからでないと動かない人が多い傾向にありますよね。

若松:ええ、「コロナが落ち着いたら」「英語力がもっと上がってから」と、何かにつけ慎重な姿勢です。しかし、留学を成功させる上では「走りながら考える」という能力も必要なんです。現在の条件の中でできることをする。それは留学を成功に導く秘訣(ひけつ)でもあり、その先に留学経験を生かして活躍するためのカギでもあります。

まずはできる形で留学してみるのも大事

加藤:「1年間の留学を希望しているけれど、予算が足りないから」と留学を延期し続ける人もいますが、あれももったいない。1年分には満たなくても2ヵ月分の留学費用があるなら、その2ヵ月の留学を1年間の留学に匹敵するくらい充実したものにする、その方法を考えるというやり方もあると思います。

若松:よく分かります。本人だけでなく周囲も、「2ヵ月ではモノにならないわよ。やっぱり1年間は行かないと」と余計な口を出したりして。

加藤:そうやって完璧さを求めて準備しているうちに、別の問題が生じて留学に行けなくなってしまったという例もあるので。それとは対照的に、コロナ下に子どもを高校留学に送り出したある親御さんは、「行ってしまえば何とかなるものね」とおっしゃっていました。そんな風に、ともかく始めてみることの良さもあるんですよ。

若松:留学に対する興味が湧いてきたなら、今はオンライン留学から始めてみるという方法もあります。そしてある程度自信が付いたら、いざ渡航すれば良いのです。

この流れは他国の留学生の間ではすでに定着しているもの。語学留学もそうですが、大学・大学院留学でもまずはオンラインから始める人が増えています。形にこだわらず、「留学したいと思ったら、すぐに実行する」というスピード感が大切です。

Q.金銭的な面で、22年に留学するメリットはありますか?

若松:はい、各国政府が留学復興に向けて臨時予算を発表しています。それぞれの国がこの予算を使い切る前に留学に行くとその恩恵が受けられるでしょう。

加藤:マルタが語学留学生を支援するために100万ユーロを拠出したのが印象的でした。

若松:ええ、21年6月以降にマルタで英語コースに通う留学生は、1人当たり最大300ユーロ(4万円相当)の買い物券を入手できたのですよね。こちらはすでに終了していますが、他にもイギリスやアイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ドイツなどが臨時予算を組み、留学生を歓迎するムードが高まっています。

今後は語学学校の授業料が上がる...?

若松:パンデミックは世界中の語学学校に大きな打撃を与えました。その経済的な損失の穴埋めとして23年以降に学費の値上げを検討している学校も少なくありません。留学に行ける人は、値上げが本格的なトレンドになる前に行った方が良いかと。

加藤:今は各校、探り合いの状態ですよね。どこがいくらで設定するのかという。

若松:はい。そういう中でこれから留学を予定している人たちに気を付けていただきたいのが、この時期の留学エージェントや語学学校の選び方です。今、大きなキャンペーンや割引を行う所に対して、私は正直なところ「大丈夫?」と不安に思ってしまうんですよ。

最悪のケース、急に倒産して留学生が現地に置き去りになる事態も考えられますから。このような不安定な時代だからこそ、値段の安さに惑わされず、母体がしっかりした留学エージェントや語学学校を中心に、慎重に選んでいただけたらと。

加藤:過去の大きなテロや災害時にも、留学エージェントや語学学校によって対応はまちまちでしたからね。実際に起こってみるまで分からないことですが、有事の際には差が大きく出ます。

Q.留学中に感染状況が悪化し、授業が対面からオンラインへ移行してがっかりする人もいるとか。その際のマインドの切り替え方は?

若松:「せっかく渡航したのに」と残念に思う気持ちは分かります。でも、環境に応じての学びが必ずあるはずです。

例えば、一般的に日本人留学生はスピーキングが苦手と言われていますが、語学学校の対面授業では誰かの発言に対して相づちを打つことで、なんとなく会話に参加した気になっている人もいたりします。

しかし、それはオンライン授業では通用しません。オンラインでは発言しないことがリアル以上に目立ちますし、発言者がより明確になるので「話さなければならない」頻度が高くなります。発言量が多くなれば、スピーキング力の伸びも期待できますよね。私は今、スペイン語のオンライン授業に参加していて、まさにこの点を実感中です。

加藤:学生のうちも、そして社会人になってからも今後はオンライン上のコミュニケーションスキルがますます重視されるはず。会話に割り込んだり、リアクションを積極的に返したり、時には場を和ませたり、ここで自分なりに工夫しながら力を付けることで、日本語でのオンライン会議に有効なスキルも体得できそうですね。

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Q.これからの社会で留学がもたらす具体的なメリットは何ですか?

若松:現在、グローバル職種ではオンライン会議が当たり前になり、これまでよりも高い語学力が求められています。国内で英語を学ぶだけでは到底追いつきません。海外で本格的に英語を習得した人材が、今まで以上に重宝されるでしょう。

加藤:英語力と収入の関連性もますます強まっていますね。

若松:はい。その傾向は顕著です。全世代において、英語力の高い人はコロナ発生後に今までよりも高い年収でスカウトを受けているというデータもあるんですよ。

就職や転職時に留学の成果を今まで以上に生かせるチャンス

若松:さらに留学生を後押しするのが、採用活動のオンライン化が一気に進んだ点です。今までは就活のためにわざわざ一時帰国する必要があったのが、面接やジョブフェアへの参加もオンラインでできるようになりました。物理的に移動しなくても、留学も就活も並行して進められる時代になったのです。

加藤:留学が、海外就職や海外移住につながる可能性も高まっていますよね。

若松:そうなんです。オーストラリアやカナダなどが移住に関する基準を変更したのを受けて、海外で働きたい・暮らしたい人にとって留学を経験していることがますます大きな意味を持つようになりました。先進国はこれまで以上に移民の労働力を求めていますから、その流れにも沿っています。

語学面や精神面で得られるものとは

加藤:留学で得られるのは「どこでも生きていける力」。穏やかな時代に楽しい留学をするのももちろん素敵なことですが、この不安定な時代だからこそ得られる力があります。今は目まぐるしく変わる感染状況や政府方針などにアンテナを張りながら、過ごさなければなりません。

そのため、現地でテレビやニュース記事を追ったり、分からないことを周囲の人に確認したりと、必死に食らい付かねばならない時もあるでしょう。そしてその分、言語や現地文化に関する理解が深まっていくのではないでしょうか。

若松:留学を体験すると誰しもたくましくなりますが、今は特にそうでしょうね。

加藤:ええ。マスク越しでスムーズに会話をするにはリスニング力もスピーキング力も今まで以上に必要ですし、体調を崩しても電話で医師に「どこがどう不調なのか」を言語化して伝える必要があります。ジェスチャーが使えないのですから。こういった苦労の一つ一つは、必ずその人の力になるでしょう。

若松:今の状況下での留学は、大きく成長したい人にぴったりなのかもしれませんね。

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雑誌『留学ジャーナル 2022年2月号』はお金特集

『留学ジャーナル 2022年2月号』では留学費用について基礎・基本から解説!2022年の各種料金の変動予測や授業料+滞在費の目安、全10ヵ国・19都市の物価や学費例など盛りだくさんの内容です。雑誌の立ち読みはコチラへ。

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