雑誌「留学ジャーナル」編集長が、アメリカ・ウェズリアン大学在学中の山本つぼみさんにお話を伺いました。日本の公立高校から合格するまでの道のりや、リベラルアーツカレッジの名門ウェズリアン大学での学校生活について聞いてみました。海外経験がない人には、手厚いケアが魅力のリベラルアーツカレッジへの進学も選択肢の一つになります。海外大学へ進学するプロセスを知り、留学実現のための第一歩を踏み出しましょう。
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<ゲストスピーカー>
Wesleyan University/ウェズリアン大学在学中 山本つぼみさん
●ウェズリアン大学(Wesleyan University) コネチカット州ミドルタウンにある1831年創立の歴史ある私立大学。少人数で質の高い教育を行うことで定評があり、アマースト大学、ウィリアムズ大学と並びリベラルアーツ教育の名門”リトル・スリー”のうちの一つ。全米大学ランキングの上位常連校。 |
経歴:
2017年3月 大阪府立箕面高校卒業
2017年8月 ウェズリアン大学(コネチカット州)入学
2019年9月 大学2年制修了後に1年間休学、日本でインターンシップ
2020年9月 同大学3年生に復学
山本さんのインタビューは「留学ジャーナル11月号」に掲載!
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雑誌「留学ジャーナル」編集長 加藤 ゆかり
アメリカの高等教育システム
――まず、アメリカの高等教育について簡単にご紹介しておきましょう。
アメリカの4年制大学はリベラルアーツカレッジ、専門・単科大学、総合大学の3つに分類されます。リベラルアーツカレッジは、一般教養を重点的に学び、幅広い教養を身につけることができるため、大学院進学に備えるための大学とも言われています。学生数は1,000人から多くても約3,000人程度と小規模のため、学生一人ひとりが手厚いケアを受けられる点が特徴です。
留学前は、どこにでもいる普通の高校生
――公立高校から全米屈指の名門大学に入学された山本さんですが、どんな高校生でしたか?
山本:どこにでもいる普通の高校生でした。週7日で部活動(ダンス)に打ち込み、部活動のために学校に行っているような生活を送っていました。海外経験も全くなく、英語は一番苦手な科目だったくらいです。
――英語が苦手と言っても、苦手のレベルが違うのでは?
山本:高校受験の直前でも三単現の”S”を理解できておらず、ひどい状態でした(笑)。
――苦手意識のある科目の勉強は嫌になってしまうと思うのですが、高校入学後、どうして飛躍的に変わることができたのでしょうか?
山本:英語に限らず、何事も目標があると燃えると思うんです。英語を勉強するにしても、「留学したい」、「海外で働きたい」という明確な目標が見つかった時に、やる気が出てくると思います。私自身も、「アメリカの大学に行く!」という目標が見つかった時から、英語の勉強を頑張ろうという気持ちになりました。
大学の出願要件を満たすために学校の先生をフル活用
――そもそもアメリカの大学に行きたいと思ったきっかけは何でしたか?
山本:高校1年生の冬に、海外の大学を卒業した日本人の方が学校に来て、アメリカの大学生活について話してくれたことがきっかけです。その方の話を聞いて、海外の大学に憧れを持ったので、アメリカの大学進学について考え始めました。
――目標ができたところで、アメリカの大学進学に必要な英語力、出願に必要な書類って何だろう…というところからのスタートですよね。
山本:TOEFL※1、SAT※2って何?といった具合で、出願するのにどんな書類が必要なのか調べることからのスタートでした。
※1 TOEFL:Test of English as a Foreign Languageの略。留学生が大学、大学院への入学を出願する際に、充分な英語力があるかどうかを判断するために、このテストの点数が求められることが多い。主にアメリカ、カナダで使われている。
※2 SAT:Scholastic Assessment Testの略。アメリカの高校生を対象とした学力テスト。大学の入学審査の際に、このテストの点数を要求される場合がある。日本でも、オンラインまたは郵送での受験申し込みが可能。
――進学に必要な英語力をあげるため、出願に必要な要件を満たすために、塾に通って猛勉強されたのですか?
山本:人に強制されて勉強するのが好きではなく、自分でできることは自分でやりたいタイプだったので、塾には通いませんでした。学校の英語の先生がサポートしてくれたので、毎朝先生を待ち構えてエッセイを添削してもらっていました。先生をフル活用して本気の姿勢を見せることが大切です!
ウェズリアン大学に出願するにはTOEFLのスコア100点以上が必要なのですが、基準に届かず、88点で出願をしました。英語力は足りなかったのですが、アメリカの大学は学生のことを多面的に評価してくれるので、そのほかの出願書類の中で光るものがあれば、私のように合格できるチャンスはあると思います。
――1年生と2年生以降の高校生活では、時間の使い方に変化はありましたか?
山本:高校2年生の9月がひとつのターニングポイントだと思っています。部活動がハードだったこともあり、みんなよりも早く高校2年生の9月で部活動を引退し、勉強を優先することにしました。引退後は、ほぼすべての時間をアメリカの大学へ行くための準備(主に英語の勉強)に時間を充てていました。
海外経験がない分、手厚いケアが魅力のリベラルアーツカレッジに進学
――受験する大学の絞りこみはいつ頃から始めましたか?
山本:具体的に志望校を絞り始めたのは高校3年生になってからでした。ただ、高校3年生の1学期時点でTOEFLのスコアは70点くらい、SATのスコアも低かったこともあり、ランクの低い大学の情報を集めていました。
出願リストを先生に見せたところ、「もっと上のレベルを目指しなさい」と喝を入れられ、両親からも「上のランクの大学に行かなかったら、海外で大学進学する意味もないよ」と言われたこともあり、高校3年生の2学期からはウェズリアン大学も含めて上位ランクの大学を考えるようになりました。
負けず嫌いということもありますが、自分が決めたことに対してあきらめることをしたくない、という気持ちが大きかったです。
――日本の大学も受験しましたか?
山本:アメリカの大学に加えて、 日本とオーストラリアの大学の合計23校に出願しました。多くの大学に出願したのは、不安だったからという理由だけではなく、なによりも後悔をしたくなかったからです。
――結果的に13校に合格されましたが、ウェズリアン大学に進学した理由や決め手は何でしょうか?
山本:進学先の大学を考えるうえで1番のプライオリティは、「アメリカのリベラルアーツカレッジ」という点でした。海外経験がなかったこともあり、丁寧なケアをしてくれる環境で学びたいと思っていたので、個人のサポートに定評があるウェズリアン大学は魅力的な進学先でした。
また、高校3年生の時にウェズリアン大学を卒業した先輩と直接、話す機会があり、先輩の話から大学の良さが伝わってきたことも理由の一つです。この大学なら、後悔のない充実した4年間を過ごせると思いました。
留学を考えている人は、ぜひチャンスを見つけて留学先の現役生や卒業生と話してみてください。より良い大学選びができると思います。
学費から生活費まで、すべての留学費用を奨学金で賄う
――ウェズリアン大学は、授業料や生活費を含めて1年間で800万円もの費用がかかりますよね。そうすると保護者の方は経済的な負担も大きいと思うのですが、山本さんのご家族の反応はいかがでしたか?
山本:家族にアメリカの大学進学について最初に話した時、進学に対する理解を得ることはできましたが、「奨学金を得られないなら、行かせない」といった反応でした。
――奨学金をもらうには、やはり成績の良さがポイントになるのでしょうか?
山本:奨学金に応募する場合、成績ももちろんですが、将来のことや、大学に入学したいという自分の熱意に共感してもらうことも大切です。
――大学に提出するエッセイと共通しているところもありますよね。実際に山本さんが獲得された奨学金について教えてください。
山本:私は「柳井正財団海外奨学金」(返済不要)の給付を受けています。1年間でUS$95,000(約1,000万円)支給される奨学金で、授業料、寮の滞在費、食費、生活費、教科書代、航空券代のすべてをカバーしています。なので、私の親は私の大学費用を1円も払っていません。
山本さんが給付を受けている奨学金 >> 柳井正財団海外奨学金
――奨学金の複数応募は可能ですか?
山本:可能ですが、主催団体の規定によっては併給が認められていないこともあるので、チェックする必要があります。私自身も、複数(5~6)の奨学金に応募し、書類審査で落ちてしまった奨学金もありましたが、とにかくあきらめずに応募し続けた結果、奨学金を得ることができました。
――山本さんのすごいところは最後まであきらめない、という点ですよね。ウェズリアン大学の合格も、最後の最後まであきらめなかったからこその成果でした。
山本:アメリカの大学でも5~10校の併願は普通なので、ウェイティングリスト(補欠合格者リスト)が存在します。私はウェズリアン大学のウェイティングリストに入っていましたが、追加で大学にエッセイを送り、自分をアピールしたことも合格に近づいたひとつの要因だと思います。
最初の授業では先生の言っていることがほとんど理解できなかった
――ここからは大学生活の話を伺いたいと思います。大学生活がスタートした時期は苦労もあったのではないですか?
山本:入学当初の勉強については涙なしでは語れません。最初の授業で、先生の言っていることが95%理解できず、授業後に先生に聞きに行きました。半泣き状態でしたが、先生は丁寧に授業のレビューをしてくれて、リベラルアーツカレッジのケアの手厚さを感じました。先生が「内容を理解するのは難しいかもしれないけれど、あきらめずにがんばろう!」と言って励ましてくれて、以降、毎回の授業後にレビューをしてくれました。
――リベラルアーツカレッジの特徴のひとつとして、先生も教えることが好きなんですよね。
山本:教育に対するパッションを持っている先生が多く、いつでもオフィスアワー※3に来て質問していいよと言ってくれたり、オフィスアワー外でも時間調整をしてくれたりと、いつでも先生に会って質問ができる環境が整っています。
※3 オフィスアワー:教師が授業時間とは別に、学生との面接のために空けている時間。教師により曜日や時間が決まっていて、授業に関する質問事項や相談に応じる。教師によっては、事前に日時の予約が必要な場合もある。
――山本さんが考える、ウェズリアン大学の良さは何ですか?
山本:教育面での魅力はもちろんですが、学生がみんな優秀です。全米のディベート大会で優勝した人や、世界各国のトップ校から来た留学生たちとのディスカッションは新たな考え方の発見があり、楽しいです。最近の夕食時には、「宇宙開発の際の倫理学」というトピックでディスカッションをしました。
できない理由よりも、できる方法を探そう
――山本さんの専攻は何ですか?また、将来的にはどのような方面に進むことを考えていますか?
山本:私の専攻は社会学です。具体的な進路は未定ですが、1年間の休学期間を経て、政策立案について興味を持ちました。ただ、1年後は他のことに興味を持っているかもしれません。
――いろいろな人との出会いによって自分の考え方も変化しますよね。
山本:入学した段階では経済学に興味を持っていましたが、文系・理系を問わずさまざまな学問に触れる中で、マッチする学問(社会学)に出合うことができました。さまざまな考え方を持つ人や学問に触れられるのがリベラルアーツカレッジの良さだと思っています。
――最後に、これから海外の大学進学を目指す中高生の方にエールをお願いします!
山本:一言で表すと、「できない理由よりも、できる方法を探そう」です。できない理由はいくらでも挙げられますが、そればかりでは前に進めません。どうやったら実現できるかを考えてみることが大切です。
コロナ禍の今、留学をあきらめがちになっている方も多いかもしれませんが、「留学したい!」という気持ちを持ち続けましょう!同じ空間を共有することで生まれる会話や、友人とのディスカッションは、海外留学の醍醐味です。
最後に、私は留学準備のスタートが遅すぎたことを後悔しているので、皆さんは留学に興味を持ったなら明日にでも動き始めて欲しいと思います!
まとめ
ウェズリアン大学に在学中の山本つぼみさんのトークセッションをレポートしました。
コロナ禍で留学の予定を立てづらい状況ですが、大学留学を検討しているのであれば、今から準備をしたとして留学できるのは早くても来年秋頃でしょう。留学できる状況になった時に、あの時準備をしておけば良かったと後悔しないためにも、まずは来年、2021年秋入学を目指して準備を進めるのが良いでしょう。
とはいえ、どこの大学で、何を学ぶか、海外の大学で自分はやっていけるのかなど、疑問や不安に思うことがあるでしょう。コロナ禍の現状ではなおさらです。
まずは冷静に判断できるように、正確で最新の情報を集めることが大切です。
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