「トビタテ! 留学JAPAN」とは、文部科学省が行う留学促進キャンペーンで、返済不要の奨学金給付や事前事後研修といった海外留学支援が官民協働で行われています。
今回は、雑誌「留学ジャーナル2021年5月号」にて、留学前の準備や現地での留学生活をレポ―トしてくれたトビタテ生の体験談をご紹介。誌面では掲載しきれなかった留学中のエピソードもプラスしています!
高校時代に「トビタテ! 留学JAPAN」を利用してイギリスに留学
体験者のプロフィール
大塚 桃奈さん(23歳)
株式会社BIG EYE COMPANY代表(CEO)。高校在学時にトビタテ!留学JAPAN(以下、「トビタテ!」と表記)の高校生コースアカデミック(ショート)に採用され、イギリスにあるロンドン芸術大学の10代向けサマースクールに参加。その後、大学時代にはコスタリカに短期留学した他、トビタテ!留学JAPANの大学生コースに採用され、スウェーデンに10ヵ月間留学した。
大塚さんのインタビューは「留学ジャーナル2021年5月号」にも掲載!
「トビタテ! 留学JAPAN」とは
文部科学省が、2013年10月より開始した留学促進キャンペーンのこと。主な取り組みの1つに「日本代表プログラム」があり、返済不要の奨学金給付や事前事後研修といった海外留学支援が官民協働で行われている。なお2022年以降の事業については2021年夏頃に公表予定(現在検討中)。
大塚さんの留学「前」
留学の目的
- ファッションデザインを学ぶ
- 進路について可能性を広げる
小学生の頃からファッションデザインに興味があり、デザイナーになりたいと漠然と考えていました。中学1年生の時にはデザインコンテストでグランプリを受賞。それ以来いっそう服作りに興味が湧き、海外で自分の可能性を広げたい、日本にはない選択肢を知りたいと思い留学することを決めました。
学びたいこと、経験したいこと
- ファッションデザインの方法論などを教わる
- ポートフォリオの作り方を知る
- グローバルな人脈を築く
知見を広くするため、ファッションデザイン以外のコースにも申し込みました。うち1つは、海外の大学への進学を視野に入れていたので、出願に必要なファッションポートフォリオ(作品集)の作り方などを学べるコースを選択。また授業を通して将来に生きる人的ネットワークも築けたらと考えていました。
留学の軸は英語を使ってファッションの勉強をすること
イギリスの大学で開講されている高校生向けのサマーコースに通う
私は国際系の高校に通っていたので、英語を使って自分の好きなことが学べたら…と思っていました。日本の大学に進学にする意義や、学びの軸に悩んでいたとき、小学生の時からずっとなりたいと思っていたデザイナーになるためには、英語を使ってファッションの勉強ができたら良いんじゃないかと考え始めました。
留学にはお金がかかるので現実味がなく迷っていましたが、試しに現地の大学の高校生向けサマーコースに通って、どのように授業が行われているのか、どのような環境の中で学べるのかを実際に体験してから、また留学に向けて準備をしようと思い、具体的に留学を考えはじめました。
母から「トビタテ!留学JAPAN」の存在を知る
トビタテ!を知ったきっかけは、母が大学生コースのトビタテ!の募集開始を教えてくれたことです。「たぶん高校生コースの募集も開始されるから、これで行ってみたらいいんじゃない?」と提案してくれて。留学をしたくても、両親の理解を得るのが難しいという話をよく聞きますが、家族は留学に理解があって、私の夢をサポートしてくれました。
トビタテ!の第1期生だったので応募書類を用意するにあたり、わからないこともありましたが、いろいろな先生にアドバイスをもらいながらサポートしていただきました。また、トビタテ!の申し込みに学力は問われませんが、自分自身で留学計画を立てなければらず、計画書を作成するのに苦労をしました。
まずは世界に羽ばたくデザイナーになりたいことを目標として書き、留学生活を通してコミュニケーション能力であったり、ネットワークを作ったりするのが、将来デザイナーになるにあたって大切になってくることを書きました。
留学先の大学(高校生向けのサマーコース)を探すにあたって、まずはじめにインターネットでファッションデザインが有名な大学を探しました。最終的にロンドン芸術大学に決めた大きな理由は、アート分野において世界ランキングがトップレベルだったことに加え、日本窓口があり、現地の情報を仕入れやすかったのが決め手です。
大学には自分で直接コンタクトを取ったのですが、さまざまな情報を得たことによって、留学に対するイメージが立体的なものになったと思います。
服づくりに対する姿勢と進みたい道が変化
私は私の興味を大切にすればいい
高倍率の選考を通過し、ついにトビタテ生としてロンドン芸術大学が開講している高校生向けサマーコースの受講が実現。私は6週間で4つの10代向けコース(ファッションデザイン、ファッションスタイリング&コミュニケーション、ファッション業界入門、ファッションポートフォリオ準備コース)を受講しました。
どのコースもヨーロッパからの学生がほとんど。同年代とはいっても共通の話題をあまり見つけられず、私は周りになじめなくて…。1人で海外生活を送るのが初めてだったことも重なり、初めの2週間はホームシックでした。でもだんだんと「周りに合わせる必要はない、私は私の興味を大切にすればいい」と思うようになり、気持ちを立て直せました。
最も印象に残っているのは、ファッションポートフォリオ準備コース
4つのコースのうち最も印象に残っているのは、ファッションポートフォリオ準備コースです。1週間の間に構成やレイアウトの仕方など制作の基礎を学びつつ、テーマに沿ったポートフォリオを完成させる内容になっていて、私たちに与えられた大きなテーマは「サブカルチャー」でした。
日本の文化や自分のアイデンティティとデザインとを結び付けて考え、1つのものを作り上げたのはこの時が初めてで、まさに未知への挑戦でした。最終的に私は「わびさび」に焦点を当て、現代に合うようにアレンジしたデザインを考案し提出しました。わびさびという文化が「サブ」かは怪しいですが(笑)。
またファッションスタイリング&コミュニケーションコースで、プロの写真家やライターの指導のもと、スタジオで写真撮影をしたり記事を書いたりしたことも。ファッション雑誌は好きでしたが、その制作過程や技術を知っているわけではなかったので、私にとってはおもしろいチャレンジでした。ちなみにこのコースにおける課題制作にも、日本人としてのまなざしを意識して取り組みました。
服を取り巻く社会課題を解決する方法を考えたい
留学生活を通してファッションへの向き合い方が変化
留学生活を通じて変わったのは、ファッションへの向き合い方です。服をデザインするよりも、服を取り巻く社会課題を解決する方法を考えたい、と強く思うようになりました。世界には才能にあふれたデザイナーの卵がたくさんいると目の当たりにしたと同時に、トレンドを追うファッション作りに限界を感じたからです。そして、サステナブル※な服づくりを考える人材が世界的にもっと必要なのではと感じました。
実は留学直前、映画『ザ・トゥルー・コスト』を見て、ファッション業界の大量生産・大量消費システムが人権問題や環境汚染を生み出している現況に衝撃を受けていました。
しかし現地の授業でエシカル消費についてディスカッションした際、私以外の学生はみんなそれらの問題を知らなかったのです。担当の先生から「これからはサステナビリティという視点を大切にしながら、ファッションに関わらないとね」と言われたことも後押しとなりました。
結果、この留学中の気付きと変化が今の仕事にもつながっています。中高生の皆さんも、自分の興味にブレーキをかけ過ぎず、行動してみてください。
挑戦したいことを考えて、実現方法を探して、信頼できる周りの人の手を借りて実行して…そうして夢を1つカタチにすると、それが次へのステップになりますし、この先を生きる自信の源にもなりますよ!
※ サステナブル:サステナブル(Sustainable)は、sustain(持続する)とable(~できる)からなる言葉。「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。現在、世界中で「サステナブル」な社会の実現を目指して取り組み始めています。
大塚さんの留学「後」
留学を通して身についたもの
- 世界で起きていることを俯瞰する力
- 日本の魅力や課題を見つけようとする意識
興味ある分野について、海外ではどういった活動が行われていて、どのような視点が重要とされているのかを知ることができたのはもちろん、日本の良い点と改善すべき点を見いだすこともできました。ファッションとの向き合い方、もっと広く言えば物の見方が変わったと思います。
今後取り組みたいことや夢
- ごみについてポジティブに考える場づくり
- サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進
- ごみをゼロにする取り組みを次世代と世界に広げる
イギリス、そして大学時代のコスタリカやスウェーデンへの留学を経て、人にとっても環境にとってもサステナブルな物作りにはそれを支えるコミュニティーが必要だと考えるように。今は徳島県にある上勝町ゼロ・ウェイストセンターで、地域や企業を巻き込みながらごみを減らす活動に取り組んでいます。
まとめ|奨学金を利用して留学を成功させるには
いかがでしたでしょうか。中高生の留学はかなりハードルが高い、費用がかかると思われている方は多いと思いますが、大塚さんのように「トビタテ!留学JAPAN」の支援制度を利用することで、費用を抑えた留学を実現できます。
奨学金をはじめとした留学の支援制度を利用し、しっかりとした目的と成果を意識して留学することは重要ですし、なんとなく留学する場合と全く身につくものが変わってきます。
約50年にわたる実績をもつ留学ジャーナルでは、一人ひとりの目的に応じた最適な留学プランをご提案しています。「トビタテ!留学JAPAN」をはじめ、海外の学校から提供される奨学金情報などもありますので、皆さんのご相談をお待ちしています。
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