「国際的な人の往来が再開されつつある今、ワーキングホリデーはどうなっている?」。パンデミック以前、ワーホリ先として日本人が多く渡航していた国の一つオーストラリアが、2022年2月、約2年ぶりに国境を全面的に開放した。
世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフや世界最古の熱帯雨林など数多くの観光スポットを有するクイーンズランド州で、ワーホリの「今」を見てみよう。
ワーキングホリデーとは、日本と協定を結ぶ国・地域で、休暇目的の入国や滞在期間中の旅行、滞在資金を補うための就労を認める制度のこと。ワーホリの略称でも知られ、ワーキングホリデーで滞在している人はワーホリメーカーと呼ばれる。 >>ワーキングホリデーとは?|年齢・行ける国、費用やメリットをわかりやすく解説! |
TEXT : Ryugaku Journal
協力・写真提供:クイーンズランド州政府観光局
※本稿は『留学ジャーナル 2022年8月号』の記事を抜粋・再編集したものです。
クイーンズランド州政府観光局に聞いた、街のこと・働くこと
日本局長 ポール・サマーズさん、マーケティング部長 柴田正三さん
クイーンズランド州政府観光局は、クイーンズランド州ならではの観光や体験のプロモーション、州で行われる主要イベントのマーケティングを世界中で行っている機関 |
クイーンズランド州の現在の状況
――国際的な人の往来が徐々に活発になってきています。日本からの渡航者に対する入国の現状について教えてください。
サマーズさん(以下、サマーズ):オーストラリアへの入国条件を満たし、ワクチン接種2回完了の渡航者は、クイーンズランド州到着後24時間以内のPCR検査または迅速抗原検査で陰性であれば、隔離なしで滞在できます。(2022年5月末日現在の状況)
柴田さん(以下、柴田):入国規制の緩和・撤廃が進んだことで、ワーホリや長期留学を目的とする人が満を持して渡航してきていますね。
――現在の街の様子や人々の暮らしはどうでしょうか。
サマーズ:街はにぎわいを取り戻しつつあります。もともとコロナ感染者数が他州に比べて少なかったこともあり、生活に大きな変化はなく、マスクの着用も定着しませんでした。
柴田:ただし、飲食店やホテルはやや厳しい状況に直面しており、現在も営業規模を縮小している店や施設が多くあるようです。これは感染症対策によるものではなく、働き手がいないためこれまでのような営業ができず、やむを得ない処置だとか。
サマーズ:クイーンズランド州では、コロナ禍で観光業に従事している人が約5万人減少しました。
――それは大きなインパクトですね。同州には魅力的な観光地がたくさんありますが、客足はどれくらい戻っていますか?
サマーズ:入州規制の撤廃で国内の観光客は戻っていますが、海外からはまださほど。日本との直行便も今夏には一部都市で再開予定ですし、増加することを期待しています!
柴田:観光客が一時期激減したことで、海の透明度が増しているそうです。透き通った海を満喫するなら、今がチャンスかもしれません(笑)。
クイーンズランド州で働く魅力
――ワーホリメーカーが気になるポイントの一つに、現地での職探しがあると思います。クイーンズランド州では、どのような仕事に就きやすいのでしょうか?
サマーズ:州の主要産業の一つである観光業にまつわる仕事です。具体的には飲食店やホテルの従業員、ガイドやドライバー、ダイビングインストラクターとか。
柴田:これらの中には英語力があまり必要とされない仕事も。例えばハウスキーピング、調理補助、あと観光業ではないですが、農園での収穫作業なども、英語力が低くても採用されやすい傾向にあります。
――求人数はコロナ前水準と比べて、どの程度回復していますか?
サマーズ:回復どころか増加しています!先ほど少し話がでましたが、特にビーチリゾートでは十分な労働力を確保できていません。コロナ前、これらの仕事の多くはワーホリメーカーが担ってきましたが、約2年にわたる国境閉鎖で人手不足に。
少し前までは観光業に従事するワーホリメーカーに州から奨励金を支給する施策を行うなどして、人材の誘致を試みていました。今も州が運営するWebサイト「ワーク・イン・パラダイス」では、雇用者とワーホリメーカーをつなぐサポートを継続して行っています。
柴田:今は賃金面も恵まれています。オーストラリアの最低賃金は時給20.33豪ドルですが、例えばケアンズのカフェでは25豪ドル前後で募集しているのをよく見ます。売り手市場で、ワーホリメーカーに優位な状況といえるのではないでしょうか。
サマーズ:そうですね。コロナ前はケアンズ、ゴールドコーストなど有名観光地での仕事は競争率が高いことで知られていましたが、今なら採用される可能性が高いかもしれません!
――それは朗報ですね!しかし、ワーホリに挑戦したいけれど、まだ思い切れない人もいます。そんな人たちに向けて、メッセージをお願いいたします。
サマーズ:クイーンズランド州は日本語や日本文化に馴染みのある人が多い地域です。2018年のデータによると、州立高校の選択式第二言語の授業で日本語を学ぶ人は全体の5%、2人に1人が日本語を選んでいます。親日家が数多くいるので、英語力に自信がない人や海外経験が少ない人も溶け込みやすいのではないでしょうか。
柴田:今は感染症のこともあるので、日本語対応の医療機関が州内に13ほどあるのも安心材料になると思います。クイーンズランド州は、風光明媚な観光地、世界自然遺産、希少な野生動物と出合える場所。このような環境の中で学び、暮らし、働き、必ずやワーホリライフを満喫できるはずです。
クイーンズランド州ってどんな所?
州都 | ブリスベン |
州面積 | 約170万㎢ |
州人口 | 約517万人 |
日本との時差 | +1時間(サマータイムなし) |
飛行時差 | 直行便で約7時間半~9時間 |
気候 | 北部は熱帯性気候で冬(6~8月)でも半袖で過ごせる。 南部は亜熱帯性気候となり、年間を通じて温暖で冬も穏やか。 |
温暖な気候と気さくな住民、SDGs精神も根付く土地
オーストラリアの北東部を占めるクイーンズランド州は、グレートバリアリーフ、サーファーズパラダイスなど人気の観光地を有する州だ。晴天が多く、年間を通じて明るい太陽の光が降り注ぐことから「Sunshine State(サンシャイン・ステート)」の愛称で親しまれ、その恵まれた気候からか大らかな人が多いオーストラリアの中でも、特にクイーンズランド州の人々は明るくフレンドリーだと言われている。
自然遺産を複数有する土地柄もあり、住民の環境保護への意識は非常に高く、世界でも先駆的存在として知られる。その価値観はSDGs(持続可能な開発目標)の精神と目的に共鳴しており、現地での暮らしを通して、その先進性を体験できるだろう。
2021年9月には食品のテイクアウトやデリバリーで使用される使い捨てプラスチックの使用を一部禁止する法律を施行するなど、サステナブルな社会の実現に向けてさまざまな取り組みが行われている。
人気の都市1.Brisbane ブリスベン
オーストラリア第3の都市で、サンシャイン・キャピタルの愛称を持つ州都。近代的な高層ビルと歴史的建造物がバランスよく立ち並び、街の中心部にはブリスベン川が流れている。
人気の都市2.Cairns ケアンズ
州北部に位置する都市。最古の熱帯雨林クイーンズランド州湿潤熱帯地域と世界最大のサンゴ礁群グレートバリアリーフという二つの世界自然遺産への玄関口としても知られる。
人気の都市3.Gold Coast ゴールドコースト
黄金色に輝く白砂で有名なサーファーズパラダイスは、サーファーのみならず世界中の観光客を魅了する国内有数のビーチ。内陸部には世界自然遺産ゴンドワナ多雨林群がある。
ワーホリメーカーの生の声
毎日が夏で、人がフレンドリーなケアンズの街が大好きです!
- 体験者:MAIKOさん
- 滞在先:ケアンズ
- 渡航前に準備した費用:70万円
- 語学学校:利用あり
- ワーホリで経験した仕事:レストラン・ホテルのスタッフ、カフェのバリスタ(現職)
「ワーホリすべきか迷っていたら、すぐに行動を起こしてほしいです。私も渡航前は外国でやっていけるのか不安でしたが、現地では”日本人は真面目”のイメージがあるので、仕事は見つかりやすいですし、職場でも重宝されますよ」
ゴールドコーストの魅力は「田舎過ぎず、都会過ぎず」なところ
- 体験者:HISANORIさん
- 滞在先:ゴールドコースト
- 渡航前に準備した費用:50万円
- 語学学校:利用あり
- ワーホリで経験した仕事:カーディーラーの整備スタッフ
「日本でカーディーラーの技術職についていましたが、かねてから若いうちに一度は海外に行ってみたいという思いがあったので、ワーホリ制度を知った時『これしかない!』と、思い切って渡豪しました」
見知らぬ土地で未経験の仕事をするって毎日が新鮮です!
- 体験者:NATSUKIさん
- 滞在先:ケアンズ、アサートン高原
- 渡航前に準備した費用:80万円
- 語学学校:利用なし
- ワーホリで経験した仕事:日本食レストラン、ベビーシッター(オーストラリア家族宅)、バナナファーム、葉野菜ファーム(現職)
「最初は農作業ができるか不安でしたが、今は葉野菜ファームで同僚たちと会話をしながら楽しく働いています。一番やりがいを感じる瞬間は、スーパーで自分が出荷した野菜を見かけるときです」
ワーホリの魅力はなんといってもさまざまな人と出会えること
- 体験者:MIYUさん
- 滞在先:ゴールドコースト
- 渡航前に準備した費用:20万円
- 語学学校:利用なし
- ワーホリで経験した仕事:保育士、チャイルドケア(現職)
「18歳の短期留学時と、20歳の時に長期留学で10ヵ月ほどゴールドコーストに滞在。この街が大好きだから、ワーホリでまた戻ってきました。働く中でいろんな価値観や生き方を知れ、自分の人生計画が膨らみます」
クイーンズランド州政府観光局主催のワーホリ座談会
クイーンズランド州政府観光局制作のワーホリ座談会2022年の動画が完成しました。ワーキングホリデー体験者の2人がさまざま質問に答えています。興味がある方はロングバージョン(45分youtube動画)をどうぞ
>>クイーンズランド州政府観光局 WH Interview Main Video 45分編
雑誌『留学ジャーナル 2022年8月号』は本気の学ぶ・働く留学
『留学ジャーナル 2022年8月号』は本気の学ぶ・働く留学!海外で語学あるいは専門分野について勉強し、就業も体験したい方に向けて、学校や働く制度に関する情報について解説。各国の近況やコロナ禍の体験談、オンラインインターンについてもわかる。
雑誌の立ち読みはコチラ。
◆関連記事をもっとみる